最近アリスちゃん成分が足りないと思ったんだ。
でも本編じゃアリスちゃんprprできるのはいつのことだ? と思って。
突発的に作ってしまった。反省も後悔もしていない。
本話には、多分な妄想が含まれております。
とりあえずみんな「アリスちゃんprpr」しながら読んでください。
【モノガタリノマエニ】
少女は孤独だった。
一人街をさ迷い続け、時折自身が見える人間を見つけては“トモダチ”を増やす。
だが物言わず考えることもしない、自発的に動くことも無い“ドモダチ”など人形と変わりも無い。
幼い子供が人形やぬいぐるみを“トモダチ”と称するように、少女もまたそれがただの人形遊びなのだと言うことに気づけるほど成熟した精神は持っていなかった。
永遠に無垢であることを決められた少女。
故にこそ少女は永遠に埋まることの無い孤独を埋めるために人形を作り続ける。
少女は生が止まっていた。故にこれ以上にもこれ以下にもならない。少女が少女であるようにとした大人たちはそれを嘆きながらもけれどそれでも少女のためにと骨を折った。
少女はあらゆる世界にいた。
あらゆる世界で同じ末路を辿り、同じ結果へと辿り付いた。
けれど、全ての世界で同じ結果を辿った、と言うことも無かった。
まあそれは今語るべきことではないので省くこととする。
問題は、末路と結果は同じだと言うのに過程が違うことだろうか。
幾多ある世界の一つ、少女は朝から街を歩いていた。
現実と薄皮一枚隔てた世界を歩く。今日は一体どうしようか、幼い心が向くままに動き。
そして少女は見つける。
一人の男を。
一目見た瞬間、鏡でも見たのかと錯覚した。
自分に良く似ている、けれど全く違う存在。
この人が“トモダチ”になってくれればこの物足りなさも紛れるだろうか。
そこまで明瞭な思慮があったわけでもない。
ただ少女は物足りなさが求めるがままに手を伸ばした。
例え少女がそうと意識していなくとも。
無意識に望んだ。それだけで男は少女に引き寄せられ…………。
あっさりと、男が死んだ。
* * *
【アリスと図書館】
「…………………………」
ぺらり、とページをめくる音だけが辺りに響…………。
「~~~♪ ~~~♪」
訂正、ページをめくる音とアリスの鼻歌だけが辺りに響く。
「…………………………」
じー、っと先ほどからアリスを見つめているがアリスはこちらに気づいた様子も無く鼻歌を歌いながら本をめくっている。
兎の絵が表紙の絵本らしきそれを机の上に広げ、楽しそうに目を輝かせて見ているアリス…………を隣でぼー、っと呆けながら見ている俺。
「…………………………」
「~~~♪ ~~~♪」
それにしても楽しそうだな、と思いつつ図書館の空調によって調えられたほどよい温度に眠気を感じ、欠伸をかみ殺す。
「…………………………(欠伸)」
「~~~♪ ~~~♪」
再度の欠伸。重くなった瞼にウトウトしながらゆっくりと体が机に沈み。
そうして意識が落ちたのはすぐだった。
「……………………ん?」
ふと目を覚ますと外は夕暮れに染まっていた。
図書館に備え付けの時計を見ると時刻はすでに五時を回っていた。
もう一時間もすれば図書館の閉館の時間だ。
ふと隣の席に視線をやると、俺と同じような体勢で机に突っ伏したまま眠っているアリスがいた。
どうやら絵本は自分で返したらしく、すでに机の上には無かった。
「……………………」
こうして見るとただの子供にしか見えないが、れっきとした悪魔なのだから世の中不思議なものだ。
ツンツン、と指先で頬を突くと、むに、と柔らかな感触が返ってくる。
「…………ん…………ん~」
身じろぎして体を揺らすが起きる様子は無い。
再度ツン、と指先で頬を突き、今度はさらにぐりぐりと回す。
スベスベの肌にむにむにとした感触が意外と癖になりそうだったが、俺は別にロリコンと言うわけでもないので止めて普通に肩を揺する。
「ん…………ありす?」
眠そうに目を擦りながら起き上がり、まだ半分閉じてとろんとなった目で俺を見るアリス。
「帰るぞ、起きれるか?」
「ん~…………おんぶ」
両手を伸ばし、今か今かと待つアリスに呆れたようなため息を吐く俺。
「何アホなこと言ってるんだ、立って歩け、帰るぞ」
普段ならCOMPの中に強制送還だが、人目のあるところでそんなことをやるわけにもいかない。面倒だが今のアリスは他人にも見えているのだから。
そんな俺の弱みを知ってか知らずか。
「やーだー、おんぶー」
寝ぼけた声で駄々をこねるアリス。
「……………………っち、分かったっつーの」
こんな寝ぼけた状態で連れ回しても途中でこけるだけか、と内心で言い訳しつつ身を屈めて背中を差し出す辺り俺も相当に甘いと自分で思う。
「ん~、ありすのにおいがする」
俺の背中に寄りかかりながら両手を首に回し、背中へその顔をぐりぐりと押し付ける。
「変なことするな、じっとしてろ」
両手を背に回し、アリスをしっかりと抱えると足で椅子を戻し、図書館の中を出口目指して歩いていく。
まだ残っていた利用客の何人かがこちらを見て微笑ましそうに笑っているのがどうにも気恥ずかしい。
「おいアリス、途中からは自分で歩けよ? …………アリス?」
「………………くぅ…………すぅ」
背中越しにアリスに声をかけるが、返ってきたのは寝息だった。
このまま家まで? そう考えてしまい。
「勘弁してくれよ」
思わず愚痴がこぼれた。
* * *
【アリスと映画館】
アリスは意外と娯楽が好きだ。
意外と、と言うのはいらないか。まあ、とにかく子供らしく娯楽が好きだ。
一度映画館に連れて行ったことがあるが、それ以来時々連れて行けとせがまれる。
こういう文化的な遊びは初めての経験らしい。
まあふらふら街中歩いて人を殺してるだけの日常じゃ無理も無いと思うが。
アリスは映画が好きだ。
と言っても女の子らしい恋愛映画や子供らしいアクション映画などはあまり好まない。
じゃあ何を好むのか、と言われると。
『キャアアアアアアア!!!?』
悲鳴。
すぶしゅっ、ぐちゃ、ばき、ぐちゅ、ぐty
血飛沫、そして何かを食らうような音と骨が折れたような音。
そう、スプラッタなホラー映画だ。
こういうところだけ悪魔っぽいのはいかがなものだろうか。
チャンチャンチャンチャン♪ チャンチャンチャンチャン♪
チャンチャンチャンチャン♪ チャンチャンチャンチャン♪
携帯に送られてくる未来の自分の死ぬ瞬間の動画、と言う設定の某ホラー映画を見に来ていた。
「…………?」
反応が薄い。基本的にホラーはホラーでもスプラッタじゃないと盛り上がりに欠けるらしいちょっと危険なアリスの感性だった。
と言うか、ホラーじゃなくてもスプラッタならなんでも良いらしく。
『GYAAAAAAAAAAAA!!!』
「キャー!!」
現代に蘇った恐竜、と言う設定の某映画では、恐竜に人が食われるたびに叫び声を上げている。
周りの客は子供が怖がって悲鳴を上げているのだと思っているのだろうが、違う。これは歓喜の叫びだ。
「たのしかったね、有栖!」
「…………良くあんなので盛り上がれるな、お前」
俺の言葉にアリスがうん? と首を傾げ、そしてポン、と手を打つ。
「そっか。有栖はあのていどじゃもりあがれない「違うからな」」
おかしな方向に行こうとしていたアリスの発想を無理矢理止める。
「もっと恋愛映画とかアクション映画とか。子供らしい、もしくは女の子らしい映画見ないのか?」
「なんで? すぷらったおもしろいよ? おもしろいのみちゃだめなの?」
ぐ、と言葉に詰まる。楽しいから見ている、それじゃダメなのか? と聞かれれば良いに決まっている。
正論なのだが、だからと言って鮮血と死肉が飛び散るスプラッタで興奮する幼女と言うのは何か大きく間違っている気がする。
「………………まあ、いいか」
結局、こいつが楽しめるのなら、それで良いか。と思うことにする。
「うん、またいこうね、有栖!」
ま、今はこいつが楽しそうにしている…………それで良しとしよう。
* * *
【アリスと墓】
「……………………」
手を合わせる。と言うこの行為にどれほどの意味があるのかは知らない。
そもそも俺は無宗教であって、墓の前で手を合わせると言う行為に聊かの意味も見出していない。
そも死者と意思疎通したいのなら俺の隣でじっと墓石を見つめる少女に頼めば良いだけだろう。
死霊遣いだる少女ならその程度造作も無いことだろう。仮初であるなら一時的に生き返らせることもできるかもしれない。
けれども…………墓の主と、両親と会話できる方法がありながら俺はそれを実行してこなかった。
「……………………」
墓の上でこちらをじぃ、っと見つめている両親の姿が。
だがだからこそ何も言えない。
あの時は夢中だった。ただ一心に死にたくないと願った。
けれど。
「俺は本当に生きてて良かったのか?」
今の自分の両親の仇も取らぬままにこうしてのうのうと生きている。
それが何よりも不義理な気がして。
手を合わせるより他に、することはできなかった。
少年の複雑な心境。
それは契約によって繋がっている少女にも伝播する。
良く分からない、と言うのが少女の素直な感想。
会話したければ会話すればいいし、生き返らせたいのなら生き返らせれば良い。
何を躊躇しているのかは知らないし、分からない。
それは少女が未だに幼いせいだろう。ヒトで無いこともあるかもしれないが、それ以上にそう言った人間の機微を理解できるほどに少女の情緒は成長していない。
そして、子供だからこそ、生死の概念が薄い。
じっと墓の上の男女を見る。
有栖の両親…………一時期自身が“トモダチ”にしたヒトたちだ。
けれど有栖と契約してアリスの“トモダチ”は全員埋葬された。有栖の言によって。
良く分からなかった。
ずっと満たされない思いを抱えていた。
だから“トモダチ”がたくさんいれば満たされるのだと思っていた。
けれど。
数十人いた“トモダチ”はみんないなくなって。
代わりに有栖一人だけが傍にいる。
数の上では比べ物にならないくらい少ない、なのに。
不思議と今は足りなかった何かが満ちていた。
満たされなかったその思いを、孤独と呼ぶには…………少女はあまりにも幼かった。
ただ満たされた今は、昔と比べてトモダチはいなくなった今は…………決して悪くなかった。
『俺の死後をお前にくれてやる、だから俺の生前にお前をくれ。所詮俺らは魂で繋がった
あの日の約束は…………未だに破られていない。
* * *
【アリスと家】
ざあざあ、と雨が降っている。
「………………ふーむ」
ぺらり、ぺらりと小説のページをめくって読み進めていく。
俺と俺の仲魔たちしかいないこの家。両親の残した家だが、いつもは無駄に騒ぐ仲魔たちがいるのだが、今日に限っては静かだ。
外は雨で、出かける気にもなれず朝から暇つぶしに小説を読んでいたのだが、朝方がやがやと騒いでいた連中も今は静かに…………要するに精神年齢が子供な仲魔たちが全員昼寝しているのだ。
少し暑いのかフロストを抱き枕にして眠るアリスと、フロストに寄りかかって眠るランタン。そして抱き枕にされた上に寄りかかられて苦しそうなフロスト。
仲魔全員がCOMPから出ているが、全員写し身のようなものなのでどうこう言うつもりは無い。
簡単に言えば、分霊のさらに分霊みたいなもので、能力などを一切持たない代わりに存在していてもほとんどマグネタイトを消費しない省エネモードみたいなものだ。そこまでして外に出たいのか、と思いつつもまあ普段あまり外に出さないから家の中くらい好きにすれば良いか、とも思う。
「………………なんだかな」
どうにも本を読む気分でもなくなったので、閉じた本を棚に戻しすやすやと眠る仲魔たちを見る。
フロストとは…………あの病院で出会った。
あの時は本気で死ぬかと思ったし、ランタンに言われたとは言え仲魔にするのは無理だ、と思ったが、何故か仲魔になっている。あれは本気で謎だった。
ランタンとは…………この街の地下の発電所で出会った。
あの時も本気で死ぬかと思った。酸欠で意識が朦朧としていた上に、時間制限付きで、しかも仲魔はアリス一人という色々と無理のある状況だったが、紙一重で倒して仲魔にできた。
アリスとは…………この世界で初めて会ったのはあの晩だろう。
あの時ももうちょっとで死ぬかと思った。と言うか、アリスがいなかったら死んでいた。
それから…………。
『死んでくれる?』
あの時の言葉を思い出す。
死者しかトモダチを作れない少女。
何故か自分に擦り寄ってきた少女。
自分に生きるチャンスを与えてくれた少女。
もし、もう一度尋ねられたら…………俺はそれを断れるのだろうか?
「…………まあ断るわな」
きっとこの先もずっとそうだろう。
契約する。心で、魂で繋がる。COMPなんて便利なものも無かったから、だから未熟ながらも精一杯の契約。
俺とアリスは魂で繋がっている。
だからこそ、ある程度だがアリスの感情が伝わってくる。
感じたのは孤独。
満たされない、満たされたい。
だから“トモダチ”がいればきっと満たされる。
子供染みた、実際に子供の理論。
間違ってもいない、だが間違っている。
アリスの“トモダチ”は“トモダチ”ではない、ただの人形だ。
物言わない、思考もしない、ただアリスの命令に従って動く、そんなもののどこが“トモダチ”なのか。
だからだろうか?
「お前は今…………楽しいか?」
ふとそんなことを呟いたのは。
そして…………。
「たのしいよ、有栖」
答えが返ってきた。
ふと見れば、アリスが目を覚ましていた。
「へっくち」
ぷるぷると震えながらくしゃみをするアリス。
「つめたい」
「フロスト抱いて寝るからだろ、一応そいつ霜の妖精だからな」
妖精二人組みはまだ寝たままだ。いつの間にか互いに抱き合って、フロストが溶けかかっている。
と、妖精たちを見ているとふと、とん、と押されるような感覚。
見るとアリスが俺に抱きついていた。
「えへへー有栖あったかーい」
「俺が寒いんだが」
とんでもなく冷えているアリスの体が容赦なく密着してくる。
俺まで寒くなってくる。
「ちょっと待ってろ」
立ち上がり、台所で暖かいココアを作る。それからアリスは熱いのは苦手なので、ミルクも注いでほどよい温度を作ってやる。
ココアの入ったカップを持って戻り、アリスに渡してやる。
「わーい」
慎重に温度を確かめながらココアに口をつけるアリスを見ながら苦笑する。
「なんともまあ…………」
平和な日だ。
だが…………こういうのも悪くない。
そう思った。
着信○りをテレビで見て、その後数日は夜中トイレに行くときに天井が気になって仕方なかった作者です。
ところで着○ありとデビルサバイバー2って似てない?
寒くてぷるぷるしながら「へっくち」さらには抱きついてきて「あったかーい」
俺書いてて萌え死ぬかと思った。