陰陽師少女   作:花札

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光に包まれた大輔の容姿が変わった……胸下まで伸びた深い青色の髪を耳下で結い、青と黄色の瞳に青い下半身の道着を穿き、羽衣を身に纏った姿へとなった。


「……神崎、これどうなってんの?」

「憑依したから、その姿がコピーされたって言えばいいのかな?」

「何でそんな疑問形なんだよ」

「後で調べるから、その前に目の前の問題を!!」

「言われなくても!!

神崎、お前の力この球に!!」

「言われずとも!」

「雷光も頼む!」

「承知!」


角に溜めていた玉を大輔が支える玉へ放ち、麗華も雷と風の力を玉に向けて放った。玉は大きくなり、風と雷、さらに海の水が渦巻く巨大な球へと変わった。


「星崎今だ!!」

「消えろぉ!!」


大輔は、力強く玉を投げた。玉は海の水を巻き込んで、巨大な竜巻となり周りに雷を放ちながら迫りくる波に当たった。


波に当たると、玉は強烈な光を放ち島全体を包み込んだ。


精霊の力

光りに包まれた波の勢いは徐々に収まり、穏やかな波が海近くの道路にかかった。暗く覆っていた分厚い雲が薄くなり、その合間から太陽の光が差し込み島を照らした。

 

 

 

メル達が祀られた島の浜辺に、寝そべる大輔……そこへ、焔の背から降りた麗華は彼の元へ歩み寄った。

 

 

「生きてる?」

 

「死んでねぇよ……体のあちこちが痛い」

 

「憑依した後遺症だね」

 

 

「大輔ぇ!!」

 

 

小島にフラフラと氷鸞が着陸し、彼の背に乗っていた久瑠美は飛び降りると一目散に駆け寄り彼に抱き着いた。

 

 

「大輔、心配したんだからぁ!!」

 

「痛ぇ!!九条、抱き着くな!!体が!!」

 

 

痛みで叫ぶ大輔を眺めながら、麗華はフラフラと起き上がる氷鸞の頬を撫でてやった。

 

何とか起き上がり、砂浜に座った大輔は隣に座る半泣きの久瑠美の頭に手を置き、そっぽを向きながら言った。

 

 

「悪かったな……心配かけて」

 

「……もう!!何で何でも抱え込むのよ!!

 

 

彼女の意味ないじゃん!!私」

 

「心配かけたくなかったんだよ。

 

 

俺の問題に、お前にまで迷惑かけたらどうしようって思って」

 

「何言ってんのよ!?

 

心配かけなさいよ!迷惑かけなさいよ!

 

 

それが恋人同士ってもんじゃないの!?何も言ってくれなきゃ、私は大輔にとって何なの」

 

 

大粒の涙を流す久瑠美の顔を見た大輔は、彼女を抱きよせ力強く抱きしめた。

 

 

「ごめん……現場を見せてねぇから、相談しても何も……」

 

「話だけなら聞くよ?

 

アドバイスだってする……だから、もう少し私に頼ってよ」

 

「そうするよ。

 

 

本当ごめん、抱え込み過ぎたわ」

 

 

その時、大輔の胸が淡く光りそこから三つの魂が出てきた。その光は小人の姿へと変わり、それは小さくなったメル・ニア・リユの三人だった。

 

 

「……え?」

 

「何?この小人」

 

「神崎……これ」

 

「ちょっと待って!私、これは専門外!!」

 

「いや、これ何なんだよ!?」

 

 

慌てる大輔の傍で、メル達は三人とじゃれ合うと彼の周りを飛び回り両肩に乗ると頬擦りした。

 

 

「ど、どうなってんの?」

 

「何か、おとぎ話に出て来る妖精みたい……

 

可愛い!」

 

 

頬擦りしていたニアは、久留美の周りを飛び回ると彼女の頭にちょこんと座った。

 

 

「とりあえず、島に戻ろう。

 

皆、星崎のこと心配してるだろうし」

 

「俺的には、白鳥達が何か文句言ってきそう」

 

「あり得そうだな」

 

 

氷鸞を戻した麗華は、久留美と大輔を雷光に乗せ島へと戻っていった。

 

 

 

 

数日後……

 

 

砂浜で遊ぶ、七海達と樹里達。砂浜に建てたテントの中で、大輔は久留美から背中に湿布を貼って貰っていた。

 

 

「はい、貼れたよ」

 

「サンキュー。

 

はぁ、体が動かせるようになって良かった……」

 

「一昨日まで凄かったもんね。

 

痛みからの絶叫パレードで」

 

「痛みの他に、熱出すとは思わなかったがな」

 

「麗華も熱出して、寝込んでるって話よ」

 

「だから見舞いに来なかったのか」

 

「そう言えば、あの子達は?」

 

「メル達なら、神崎に預かって貰ってる。

 

扱い方、俺分からねぇし」

 

 

 

川島宅……

 

 

携帯を耳に当て話しながら、麗華は体温計を脇に挟み布団の上に座っていた。

 

 

「じゃあ、害はないって事?」

 

「あぁ。

 

恐らく、信仰のなくなった精霊の力と星崎だっけ?その男の霊力によって消えかかっていた奴等の存在が、再生したんだろう」

 

「へぇ、そんなことがあるんだ(36.5度……何とか熱下がった)」

 

「まぁ、詳しいことを聞きたいんであればまたこっちに来い。俺が指導する」

 

「……ねぇ、毎回思うけど…仕事大丈夫なの?」

 

「仕事の傍らやってることだ。文句あるか?」

 

「ありません……体壊さないでよ。拓海こないだ三歳になったばっかりなんだから」

 

「死ぬわけねぇだろう。

 

お前のガキ見るまで、死ねるか」

 

「長生きして下さいよ?輝三」

 

「勝手に言ってろ。

 

 

悪い、切るぞ」

 

「はーい」

 

 

通話を切った音が響く中、ずっと不思議そうに自分を見るメル達に麗華は目を向けた。

 

 

「心配ないよ。お前達は、星崎の所にいても平気だって」

 

 

その言葉を理解したのか、三人は麗華の周りを飛び回りながら大はしゃぎした。すると、部屋の戸が開き外からスイカを持った杏莉と朝妃が入ってきた。

 

 

「あ!麗華。

 

もう起きて平気なの?」

 

「うん。さっき熱測ったら下がってたから」

 

「良かった!

 

 

あぁ、さっきおばさんがスイカ切ってくれたんだけど食べれそう?」

 

「後で食べるよ。

 

それより、星崎は?」

 

「今海斗君達と一緒に、砂浜にいるよ」


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