陰陽師少女   作:花札

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スターターピストルが鳴り響く、鈴海高校……


「オッシャー!!赤組勝つぞぉ!!」

「オォー!!」

「何を言うか!今年勝つのは、黄色組だ!」

「何を言っているんだ?君等は?

勝つのは、去年優勝した青組だ!」

「今年こそ勝つぞ!!緑組!!」


各色チームの応援団長が、大声で叫びながら言った。


体育祭

青い鉢巻きをして、スタートラインに立つ麗華……

 

 

「ウォォーー!!

 

青組応援団!!全力で我が弓道部の女神を応援しろ!!」

 

「オォー!!」

 

「騒がしい!」

「騒がしい!」

 

 

叫んでいた中村に、体育祭を見に来ていた龍二と真二は拳骨で彼の頭を叩き静まらせた。

 

 

その様子を麗華は、呆れながら深く溜息を吐いた。

 

 

競争終了後、麗華は真二に抱き着かれていた。

 

 

「おぉ!さすが俺の親友の妹だ!

 

余裕の一着!」

 

「兄さん、抱き着かないで!

 

皆が見てる!」

 

「いいだろう!

 

大学に入ってから、お前に抱き着けなかったんだから!!そのストレス発!」

「疑いを掛けるようなことをここで言うな!!

 

性的行為で逮捕するぞ!」

 

「何を言う!

 

この俺は、二十歳を過ぎていない女に手は出さん!!」

 

「アンタは一旦、寝てなさい!!」

 

 

騒ぎ出した龍二達の所から離れた麗華は、大輔達の元へ駆け寄った。

 

 

「相変わらずだな。神崎の兄さん」

 

「母校に来てまで、騒がないで欲しい」

 

「そりゃあ言えてる」

 

「えっと次の種目は……

 

男子による棒倒し」

 

「あ~、上半身裸になるあの……」

 

「俺、脱ぎたくない」

 

「俺も」

 

「そんなこと言わずに、とっとと集合場所に行くよ!」

 

 

委員長である藤江幸仁(フジエユキヒト)は、大輔と翼に声を掛けながら移動した。二人は深く溜息を吐きながら、立ち上がり集合場所へ向かった。

 

 

 

「よりによって、棒倒しの係がお前かよ」

 

 

腕章を着けた麗華を見ながら、大輔は言った。

 

 

「男の裸を見慣れてるのは、私くらいだからね。

 

見てもキャーも言わないし、赤面もしないし……」

 

「おいそこ!!

 

我等弓道部の女神に、その汚れた」

 

 

言い掛けた瞬間に、転がっていたボールを麗華は中村と藤宮の顔面に当てた。

 

 

「はーい、余計なことを言わずにとっとと服脱いで、整列して下さい」

 

 

笑顔を浮かべながら、麗華は優しく言った。その後ろに怒りに満ちた顔が見えた中村と藤宮は、即座に服を脱ぎ列に並んだ。

 

 

 

棒倒し終了後、お昼の時間になった。

 

 

「?」

 

 

何かを感じたのか、教室で弁当を食べていた麗華と大輔、翼は箸を止めた。

 

 

「翼、どうかした?」

 

「いや、何か……」

 

 

チラッと麗華の方を見る翼……彼女は残した弁当をしまい、鞄を持ちどこかへ行った。その後を大輔は、追い駆けていった。

 

 

「どうしたんだろう?二人共」

 

「妖怪絡みかしら?」

 

「何か、大輔って本当に麗華のこれ(恋人)じゃないのよね?」

 

「前に言ってたじゃん。

 

大輔には、故郷に恋人がいるって」

 

「……そっちより、こっちの方がお似合いだと思うんだよねぇ」

 

「うんうん、その気持ちよく分かる」

 

「でしょー……って、夕美!?いつの間に!?」

 

 

 

昼休みが終わり、午後の種目へと入った。

 

最後の種目、色別リレー……この種目で勝てば、青組が優勝。

 

 

「リレーの戦士達よ!!

 

これに勝てば、青組が優勝だ!!全力で行けぇ!!」

 

「弓道部の女神!!青組に、勝利の女神を微笑ませ!!」

 

「黙らないと、全員一発殴りますよ?

 

先輩後輩問わず!」

 

「女神よ!頑張れ!!」

 

「女神ぃ!!」

 

「喧しい!!」

 

 

スタートラインに立つ麗華達……彼女を見守るようにして、四方に立つ龍二達。

 

 

彼女達が走り出したと同時に、地面から鎌を持った白い獣が姿を現した。

 

 

「キャァアア!!」

 

「ば、化け物!!」

 

 

獣は咆哮を上げると、麗華に目を付けた。襲い掛かろうとした瞬間、大狼になった渚が体当たりした。

 

 

「さぁ!!始まりました!

 

伝説の生徒会長!神崎龍二さんによる、妖怪ショー!!

 

司会を務めさせて頂くのは、私滝沢真二と!」

 

「日野崎緋音で、お送り致しまーす!」

 

 

司会係から、マイクを取った二人は笑顔で言った。

 

 

「凄え、伝説の生徒会だぞ!」

 

「キャー!滝沢様!」

 

 

騒ぎ出す生徒達。彼等を見ながら、麗華は龍二の元へ駆け寄った。

 

 

「氷鸞出して、俺等を中心に氷を張れ」

 

「分かった」

 

 

指を噛み血を出し、札にそれを付けた。札は血に反応すると煙を上げ、中から氷鸞が姿を現した。彼は龍二を中心に氷の壁を作り上げた。

 

 

「さぁ、久し振りに暴れようぜ!渚!」

 

 

札から雷を出した龍二に合わせて、渚は水を放った。

 

 

「おおっと!これは見事な連係プレイだ!」

 

「さぁ、ここからとっておきのショーが始まりますよ!」

 

 

怯んだ獣に、渚は再び水を撒きその上から龍二は氷を出し、獣の足下を固めた。動けなくなった獣は、咆哮を上げ、傍にあった鎌を操った。

 

攻撃を受ける寸前に、龍二は剣を出しそれを受け止めた。

 

 

「おぉ!敵の鎌を、どこからか出した剣で受け止めたぁ!!

 

さぁ!どうなるこの試合!」

 

 

後ろへ下がる龍二……その時、空から火の玉が落ちてきた。獣は火に怯み、後ろへ下がり逃げようとした。

 

呆気に取られていた彼の隣に、焔から飛び降りた麗華が降り立った。

 

 

「キャー!!私の麗華ちゃーん!」

 

「何と!!ここで、新たな味方が登場!!」

 

「あの解説者達、どうにかして」

 

「出来てれば、とっくにどうにかしてる」

 

 

飛んでくる鎌に、麗華は薙刀で受け止めた。獣が動きを止めた隙に、龍二は剣を振った。鎌は真っ二つに切られ、獣は咆哮を上げて倒れた。

 

 

「敵、ノックアウトか!?」

 

 

「鎌が主体って事かな?」

 

「だな……渚」

 

「分かった」

 

「焔、アンタも」

 

「了解」

 

 

人の姿になった渚は折れた鎌を持ち、焔は獣を立たせた。獣は鳴き声を上げ、飛び去った。彼の後を二人は追い駆けていった。

 

 

「おおっと!!妖怪が去って行った!!」

 

「と言うことは……

 

 

神崎兄妹の大勝利!!」

「神崎兄妹の大勝利!!」

 

 

司会二人のテンションに乗せられ、生徒達は歓声を上げた。

 

 

マイクから大声を上げようとした真二と緋音に、麗華と龍二はコーンで二人を叩いた。

 

 

「喧しい!!」

「喧しい!!」




体育祭結果……


四位、緑組。


「クソ!またビリだ!」

「次こそは絶対一位を!!」


三位、黄色組。


「ビリから脱した!!」

「次は二位を取るぞ!!」

「オォー!!」


二位、赤組。


「ウォォーー!!またもや、青組に負けたぁ!!」

「クソォ!!何が足りないんだ!!」


一位、青組。


「どうだ!!赤組!!」

「見たか!!俺等青組の力を!!」

「お前、赤組だろ!!」

「勝利の女神は!弓道部の女神に微笑」
「喧しい!!」


持っていた竹刀で、麗華は騒ぐ二人を叩き倒した。


「騒がしい先輩達だな」

「麗華って、人気者なんだね」

「伝説の生徒会長の妹だからだろ」

「仲良くしておけば、先輩達と繋がれるだろ?」

「なるほど」

「いや、納得しちゃ駄目でしょ!」

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