陰陽師少女   作:花札

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翌朝……


外は昨日の天気が嘘のように、晴天だった。


スキー教室

スキー靴を履き、外へ出る生徒達。

 

 

「えぇぇぇ!!

 

星崎君、初心者コースなの?!」

 

 

初心者達の中にいた大輔を見た女子達は、意外そうに言った。大輔はゴーグルを調整しながら、呆れ顔で彼女達を見た。

 

 

「スキーなんざ、やったことねぇよ。

 

俺は島育ちだから」

 

「なぁんだ。私、初心者コースにすればよかった」

 

「私もぉ」

 

 

ガッカリしながら、女子達は中級コースへ行った。

 

 

「モテモテだねぇ、星崎」

 

 

手袋を嵌めながら、麗華は悪戯笑みを浮かべながら大輔をからかった。

 

 

「意外だな。お前もやったことないとは」

 

「あぁ……スキーね。

 

やったことは、あるにはあるけど……」

 

「けど?」

 

 

思い出す過去……

 

雪山の中……その辺に落ちていた木の板に乗り、麗華は傾斜を滑り落ちた。その背後には、自身を追い掛けてくる妖怪の姿があった。

 

 

(あん時は、無我夢中で逃げてたから……

 

スキーをやったとは言えない)

 

 

スキーをする生徒達……そんな彼等の姿を、教員は個人で滑りながら練習をする生徒達をビデオやカメラで撮っていた。

 

 

初心者コースでは滑り始める仲間の中、麗華と大輔はスピードを出し傾斜を滑り落ちていた。

 

 

「す、凄ぇ……あの二人」

 

「お、おう」

 

「コラァ!!

 

先に行くなぁ!!怪我するぞぉ!!」

 

 

後から追ってきた剛田は、二人を追い駆けながら怒鳴った。

 

 

午後の休憩……二人は頭を抑えながら、お昼ご飯を食べていた。

 

 

「ったく、思いっ切り叩きやがって」

 

「星崎のせいで、私まで叩かれた」

 

「いや、お前のせいだろう?」

 

「アンタのせいよ」

 

「お前だ」

 

「アンタ」

 

「お前」

 

「アンタ等二人だ!!」

 

 

喧嘩仕掛けた二人に、一緒に食べていた杏莉は仲裁するかのようにして怒鳴った。

 

 

「全く、くだらないことで喧嘩しないでよ」

 

「……」

 

「けど二人共、凄いスピード出してたよね?

 

初心者達の中じゃ、話題だよ」

 

「好きであんなにスピード出したわけじゃ無いんだけど」

 

「俺もだ」

 

「え?そうなの。

 

あのスピード出してた時、二人共凄い笑ってたみたいだけど」

 

「幻だ(結構楽しかったなぁ)」

 

「幻(見てないところで、もう一回やろう)」

 

 

その頃、焔は……

 

鼬姿になり、宿の猫と昼寝をしていた。

 

 

 

 

夕方……冷え切った体を、風呂に入り暖まる生徒達。

 

 

「フー……足腰に効くぅ」

 

「杏莉、何か婆臭いよ」

 

「相変わらず、麗華はいい体してるねぇ」

 

「白鳥がエロ爺になった……」

 

「人を年寄り扱いしないでよ!!つか、爺じゃなくて婆でしょうが!」

 

「いや、気にするところそこ?!」

 

「年寄り臭い事するからでしょ」

 

「もぉ!!」

 

 

頬を膨らませながら、杏莉は湯に深く浸かった。一緒に入っていた夕美は、ソッと後ろから手を回し麗華の胸を掴んだ。

 

 

「うわっ!!な、何?!」

 

「胸の大きさはイマイチね。

 

もう少しあれば、ボン・キュン・ボンだったのに」

 

「アンタはスケベ婆か」

 

「早く浸からないと、時間来ちゃうよ!二人共」

 

 

お風呂から上がった女子達は、部屋で女子会をやっていた。その中にいた麗華は、膝の上で腹を見せ甘えてくる白猫を撫でながら、彼女達の話を聞いていた。

 

 

「やっぱり、男子人気のトップは大輔と翼か」

 

「二人共、格好いいじゃん!」

 

「頭いいし、クールだし!」

 

「ねぇ!」

 

「それに、星崎君は今剣道部の期待の星だし」

 

「大野君は、軽音部の中で超人気だし」

 

「どっちもカッコイイ!!」

「どっちもイケメン!!」

 

 

同じ部屋にいた夕美と歌奈は、大の字に寝ながらはしゃいだ。

 

 

「そういえば……

 

麗華って、あの二人と仲良いよね?」

 

「?二人って」

 

「大輔と翼よ。

 

ほら、しょっちゅう一緒にいるじゃん」

 

「言われてみれば……」

 

「確かに」

 

 

疑問に思った夕美と歌奈は、素早く起き上がり麗華に迫った。

 

 

「ズバリ、二人とはどういう関係なの?」

 

「どういう関係って……

 

普通の友達」

 

「本当に?」

 

「何か怪しい」

 

「……白鳥と立花には話したと思うけど、星崎は彼女いるよ」

 

「……え?!」

「……え?!

 

 

本当なの?!それ!」

 

「本当。地元の子でね」

 

「う、嘘ぉ……」

 

 

部屋の隅で体育座りをした歌奈は、半べそをかいた。

 

 

「……まさか中野って、星崎狙いだったの?」

 

「らしいわね」

 

「儚い恋だったわね」

 

 

 

同じ頃、男子達も部屋で男子会をやっていた。

 

 

「やっぱ断トツ一位は、神崎か」

 

「神崎さん、綺麗だよなぁ」

 

「名前の通り、美人でスタイルよくて……

 

あ~、一度でいいからお話ししたい!」

 

「そういや、大輔達はよく話してるよな?神崎と」

 

 

遊びに来ていた虎猫と遊んでいた翼と卓也、ヘッドホンをしていた大輔は、男子達の方を向いた。

 

 

「まぁ、同じ班だからな」

 

「とか言って、本当は神崎狙いじゃねぇのか?」

 

「んなわけねぇだろ」

 

「幼馴染みである卓也君、是非意見を聞きたい」

 

「卓也に変な質問すんな!!卓也、何も喋るな!!」

 

「って、言ってるんで僕は何も……」

 

「チッ……

 

そんじゃあ、大輔は?お前、アイツ(神崎)と結構仲良いよな?」

 

「昔馴染みだからな。

 

言っとくけど、俺彼女いるから」

 

「またまた、そんな冗談を」

 

 

携帯を開き、大輔は写真を見せた。写真は久留美とツーショットのものだった。

 

 

「この子、確か文化祭に来てた可愛い子!!」

 

「何だよ!!お前の彼女かよ!!」

 

「せっかく目ぇつけてたのに……」

 

「人の女を取ろうとするな」

 

「クッソォ!!」




その夜……

静まり返る雪山の中……白息を吐く二匹の獣。唸り声を上げると、二匹は森の中へと姿を消した。

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