「えー、では……
文化祭でやる出し物を決めたいと思います。何か案ある人は手を挙げて下さい」
「メイド喫茶!」
「定番過ぎ。
展示会やれば」
「つまんねぇよ」
「じゃあ、お化け屋敷は?」
「お!いいね!」
「面白そう!」
「そんじゃあ、お化け屋敷で!」
「賛成!!」
「賛成!!」
「待って待って!
お化け屋敷するとなると、驚かし役や衣装作りに道具作りって、いろいろ決めないと」
「そうだね。
予算のこともあるし」
「お化けのデザイン役は、山本にやって貰えば?」
髪を弄りながら、優梨愛は言った。
「え?僕」
「そうよ。
アンタ、妖怪関係の話結構詳しいんじゃないの?」
「そ、それは……そうだけど」
「じゃあ決まり。
道具係は、山本で決定でーす!」
「え、ちょっと勝手に」
「何か文句でもあるの?オカルトオタク」
「っ……な、無いけど」
「道具係、俺もやりまーす」
優梨愛を睨みながら、翼は軽く手を挙げた。
「その話は今じゃなくて!
お化け屋敷でいいのね?賛成の人は手を挙げて」
朝妃の質問に、全員手を挙げた。人数を数えた彼女は、歩夢に頷き話を進めさせた。
文化祭当日……
「で?
何で、私が貞子の格好で客引きしなきゃいけないの?」
髪の毛を下ろし、白いワンピースを着た麗華は朝妃を睨んだ。
「だ、だって麗華…準備期間中色んな人から声掛けられてたから」
「あれは知り合いの先輩」
「そ、そう……ごめん」
「まぁ、いいけど。部活の仕事も行けそうだし。
あ、でも……明日は無理だよ」
「え?何で?」
「知り合いが来るから、その子案内しないと」
「成る程ねぇ。分かった!
入れないようにするよ!」
「よろしく」
「副委員長、そろそろ文化祭始まるよ!」
「はーい!
じゃあ、頑張ってね!」
一つ目のお面を着け、朝妃は中へ入った。彼女と入れ違いに、死神の格好をした大輔は骸骨のお面を取りながら出て来た。
「あれ?いいの?」
「お前と一緒に客引きだとさ。
あ、そうだ……
今日、九条達が来るってさ」
「……え?!」
「昨日電話があって、それで」
「……」
「神崎ちゃん!」
「?」
振り向いた瞬間、突然シャッターの音と共にライトが光った。
「坂口先輩……」
「貞子姿の神崎ちゃん、ゲット!」
「何撮ってるんですか!?」
「これを待ち受けにして……」
「しないで下さい!!」
「まぁ、これはさておき……
着ましたよ!お化け屋敷!
さぁ、想太!入るわよぉ!」
「腕を掴むな!」
強引に平野の腕を引っ張りながら、坂口は中へと入った。
「取りあえず、二人」
「だね」
その後、外部から続々とお客さんが入り各地が賑わっていた。
午後……控え室でクラスTシャツに着替えた麗華。その時、携帯が鳴り出た。
「はい、かんざ」
「麗華ー!?
久し振りー!!」
デカイ声で叫んできたのは、久留美だった。
「ねぇ!大輔は?今、校門前にいるんだけど」
「知らないよ。私、部活に行くから」
「え、ちょっと!
遥々島から来た友人を見捨てる気?!」
「遥々って……行くって決めたのアンタじゃ」
「いいから、早く私達を大輔の元へ連れて行きなさい!!校門前で待って……!?」
後ろから形態を取られた久留美は、驚きながら振り返った。携帯を耳に当てた大輔は、彼女の頭を手で抑えながら話し出した。
「神崎、早く部活行け」
「あ、あぁ(何で、星崎が?)」
袴に着替えた麗華は、弓道場へ着くと射的の準備をしていた先輩達の所へ駆けて行った。
「あ!神崎ちゃん!」
「先輩、今すぐに朝撮った写真消してください!!」
「え~、あれ私の待ち受けにしようと」
「しないで下さい!!」
「先輩!その写真とは!?」
「あー、これこれ」
「見せないで下さい!!
平野先輩、助けて下さい!!」
「遊んでねぇで、さっさと的を立てろ!!客が来るぞ!!」
夕方……
的を貼り返る部員達……
「いや~、たくさんお客さん来ましたね!」
「毎年ながら、いつもいつも多いなぁ」
「弓を実際に引けるから、人気なんだよ。
それにしても、今日来た神崎ちゃんのお友達……結構楽しい人達ね!」
「二人を除いて、一人は単に彼氏に会えて嬉しかったんですよ」
「へ~……」
「あれ?神崎さん、明日来ないの?」
壁に貼られたスケジュール表を見ながら、伊藤華純は麗華に話した。華純に釣られ、猪熊一稀も駆け寄りスケジュールを見た。
「あ、本当だ!神崎の欄、何にも書き込まれてない」
「何で?他の皆は入ってるのに」
「明日、従姉弟が来るから」
「従姉弟?」
「勝手に回せとけばいいじゃねぇか」
「そうはいかないの。
明日兄貴と兄貴の婚約者、さらに二人の先輩が来るから」
「え!か、神崎先輩来るのか!?」
「ハイ。
明日、婚約者と一緒に」
「やったぁ!!」
「先輩、明日の打ち上げは神崎先輩達と!」
「呼ばない」
「呼びません」