陰陽師少女   作:花札

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これは、麗華が中学生の頃の話。

※ぬ~べ~キャラが出てきますが、全て自分の妄想で書きますので予めご了承下さい。


中学生編
夏休みの帰省


蝉が鳴く校舎……プールサイドを、麗華は郷子達と掃除をしていた。

 

 

「ったくよぉ、何でこんなクソ暑い日にプール掃除なんかしなきゃいけねぇんだよ」

 

「仕様がないでしょ、クジで決まっちゃったんだから」

 

「あ~、暑い。早く輝三の家に行きた~い」

 

「伯父さんの所、涼しそうだもんね」

 

「けど、部活有るんだからそう長くは居られないだろう?」

 

「まぁね」

 

「そう考えると、小学生の頃が懐かしいぜ」

 

「確かに。宿題少なくて、遊び放題だったもんな」

 

「そうそう!」

 

 

他愛のない話をしながら、麗華達は掃除の手を進めた。

 

今日は中学の終業式……生徒一同は校舎の大掃除をしていた。広と克也、勝はデッキブラシでプールの中を磨き、郷子と美樹は麗華と共に、サイドを箒で掃いていた。

 

 

「夏休み前の授業で、プールに入ったとはいえなんでこんなに汚れるのかねぇ」

 

「ちょっと美樹、手ぇ動かして!」

 

「水泳部があるから、そいつ等が使ってんでしょ?」

 

「だったらそいつ等にやらせればいいのに……」

 

 

その時、戸が開く音と共にツッカケを履いた教員が出て来た。

 

 

「あ!先生」

 

「ちゃ、ちゃんと掃除してまーす!」

 

「そんな事はいい。それより、神崎は?」

 

「え?麗華ですか?」

 

 

呼ばれた麗華は、動かしていた箒を止めて教員の方を見た。

 

 

「神崎!叔父から電話が入ってる!」

 

「え?叔父?」

 

「三神輝一さんからの電話だ!」

 

「三神って、確か麗華の従兄弟の名字じゃ」

 

「稲葉、ここ良い?」

 

「うん」

 

 

箒を郷子に渡して、麗華は教員と共に職員室へと向かった。

 

 

 

 

職員室へと来た麗華は、保留になっている電話の受話器を取った。電話から聞こえてきた輝一の言葉に、彼女は思わずその言葉を繰り返した。

 

 

「え?緊急会議。

 

 

このまま、京都に向かえばいいの?兄貴は?」

 

 

麗華はポケットからメモ帳を取り出し、電話越しで言う言葉をメモした。数十分話すと電話を切り、麗華は部活の顧問の所へ行き何かを話すと一礼して、職員室を出ていった。

 

 

「何かあったんですか?」

 

「何でも、京都にいる親戚の方で少し厄介事が起きてしまったみたいでね。

 

しばらく、部活を欠席するそうだ」

 

「……」

 

 

プールへと行き、郷子達に事情を話した麗華はサイドに置いていた学生鞄を持って、学校を後にした。

 

 

 

 

新幹線の中……セーラー服のスカーフを結び直しながら、麗華は窓から外を眺めて、時間を潰した。数時間後、新幹線は京都駅に着いた。

 

荷物と共に駅へ降りた麗華は、鳴り出した携帯に出た。

 

 

「もしもし……うん、今着いた。

 

改札出るね」

 

 

携帯を切ると、荷物を持って麗華は駅を出た。外へ出ると、目の前に車をバックに美幸が立っていた。彼女から受け取った荷物をトランクに入れると、美幸は運転席に乗った。

 

車に乗ろうとドアを開けると、助手席には既に龍二が座っていた。

 

 

「意外に早かったな?」

 

「突然過ぎて、色々持って来られなかった」

 

「こっちで買うから、気にするな」

 

「……」

 

「麗華ちゃん、シートベルトして。

 

今から本家だった家に行くから」

 

「私、制服だけどいいの?」

 

「緊急だ。今回はその格好でいい。

 

陽一達も、その格好だからな」

 

 

しばらく道路を走っていると、辺りの空気が異様なのに気付いた麗華は車窓をチラッと見た。霧が漂う中、妖怪らしき影が、チラチラと見えていた。

 

 

「……ねぇ、兄貴」

 

「何やらかしたんだ……アイツ等は」

 

「一応、結界のお札この車に貼ってるさかい、襲うてはきいひんけど……

 

いろんな意味で、なんか嫌や」

 

「早く着いて、寛ぎたい」

 

「寛ぐな!着いたら、そのまま会議だ!」

 

「えぇ……」

 

 

数時間後、、閉まっている門前に車は着いた。車から降りた麗華と龍二は、荷物を受け取ると脇戸を開け中へと入った。

 

 

「……何、出迎えもないの?」

 

「それだけ緊急事態って事だ」

 

 

聞き覚えのある声が聞こえ振り返ると、そこにはスーツに身を包んだ輝三と輝一がいた。

 

 

「輝三、仕事は?」

 

「抜け出してきた。

 

つか、京都府警から長野県警に連絡が来たんだよ」

 

「うわぁ、スゲぇ」

 

「伯父さん、お店は?」

 

「他の従業員に任せてきた。

 

静華と陽一は後から来る」

 

「一緒じゃないんだ」

 

「連絡した時、丁度陽一部活中でお母さんが迎えに行ったんや」

 

「そうだったんだ」

 

「部屋用意してあるから、そこに荷物置いてこい。龍二はスーツに着替えろ」

 

「ヘーイ」

 

 

用意された部屋に荷物を置き、龍二は持って来てたスーツに着替えた。すると、障子がゆっくり開き外から果歩が入って来た。

 

 

「あれ?果歩、何で」

 

「ママと来た。麗華お姉ちゃん!」

 

 

龍二の質問に答えながら、果歩は麗華に飛び付いた。飛び付いてきた果歩を撫でていると、鬼の形相をした里奈が入ってきた。

 

 

「果歩!!勝手に行くんじゃない!!」

 

「里奈さん、落ち着いて!!」

 

「待って!俺まだ着替え途中!」

 

「ママ怖〜い!」

 

「待っててって言ったでしょ!」

 

「里奈!やめなさい!

 

果歩ちゃんと拓海君、怖がって泣いてるじゃない!」

 

「だってお母さん!」

 

「だってもあさってもありません!」

 

「あのぉ、ここで喧嘩はやめて……」

 

「何騒いでんだ」

 

 

後ろから声をかけてきた輝三に、里奈達は声を静めた。

 

 

「里奈、今回は出なくていいって言っただろう」

 

「山桜神社と山藤神社が出てて、椿谷神社が出てないとおかしいでしょ!」

 

「おかしいどうこうの前に、神主が来なきゃ意味ねぇだろう」

 

「仕方ないじゃない!文也、今日一昨日から出張に行っちゃってるんだから!」

 

「……」

 

「兄貴、色んな職業に関して疑問に思っていることがあるんだけど」

 

「何だ?簡単な質問だったら、答えられるぞ」

 

「公務員が副業していいんですか?」

 

「これは副業じゃない。家業にちょっと足突っ込んでるだけだ」

 

「……」




「神崎輝三様」


着物を着た女性が、後ろから声を掛けてきた。振り返った輝三に、女性は礼をしながら話し出した。


「そろそろ会議のお時間です。

本堂に集まるようにと、当主の方が」

「分かった、すぐ行く」


再び一礼して、女性は去って行った。すると、麗華の肩に乗っていたシガンが飛び降り、霊気を放って鎌鬼の姿になり、背後から麗華の肩に手を乗せた。


「鎌鬼、何で?!」

「こんな、危険極まりない妖気が漂ってんじゃ、シガンのままだと君等を守れないだろう?」

「そうだけど……」

「輝三、ちょっと聞いてもいいかな?」

「ん?」

「君等が本家のはずなのに、まだ分家の扱いされてるの?」

「形だけだ。

京都にあるこの本拠を、管理及び護っているのは元宗家の奴等だ」

「だから、表面上は分家扱いだけど……

本堂に行ったら、宗家になるって事かな?」

「まぁそうだ。

里奈、今回椿川神社の代理として俺が出る」

「え?お父さんが?」

「元々あの神社は、俺が管理している神社だ。

美子、悪いがここで里奈達と待機しててくれ」

「えぇ、分かったわ」


「ぎりぎり間に合った!」


その時、息を切らした泰明がネクタイを手に駆け寄ってきた。


「本当にギリギリだったな」

「無理だよ……現場行ってたんだから」

「そのまま出るぞ」

「えぇ!休ませてくれねぇの?!」

「もう会議始まる」

「そんなぁ……」

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