陰陽師少女   作:花札

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「お!麗華達が見えた!」

「明理、準備を!」

「う、うん!(大丈夫……大丈夫)」


描かれていた陣の中心に、小さな壺を置きその傍に明理は座り、息を整えた。


依り代

駆ける雷光の背中に乗る麗華達の傍に、蟲達の相手をしていた氷鸞達が寄ってきた。

 

 

「さっきの蟲達、全部マジムンに集まってますよ!主!」

 

「何か、最終決戦って感じやな!」

 

「言ってる場合か!」

 

「……?

 

主、後方から別の妖気」

 

「え?後方」

 

「また別の妖怪か?もう手一杯や」

 

「俺が見てくる」

 

 

そう言った牛鬼は、一度止まり方向転換し後方へ行った。向かっていくと、そこには大輔を乗せたミーナが走っており彼等を追う蟲達がいた。

 

 

「(あれで全部じゃなかったのか?)

 

大輔!」

 

 

牛鬼の声に、頭を下げていた大輔は頭を上げて彼の方を向いた。

 

 

「状況報告してくれ」

 

「ホテルに突撃してきた蟲達だ。こいつが蟲達を追って今に至る」

 

「方向は今麗華達が向かってる場所と同じだな……

 

このままこいつが向かっている方向に行け。この事は麗華に言ってくる」

 

「分かった」

 

 

そう伝えると、牛鬼は麗華の元へと戻り、彼女に大輔の事を話した。二人が話をしている最中、アカマタは首を傾げながら唸り何かを考えていた。

 

 

「どうしたの?さっきから唸って」

 

「何か大事なことを忘れてるような気がするのよね~……何なっだかしら」

 

「それ、何?」

 

「それが分かれば、こんなに悩んでないわよ」

 

「森の中に入るよ!

 

氷鸞、上空からお願い!」

 

「はい!」

 

 

森の入り口付近に建てられた柵を、飛び越えた雷光といつの間にか追い着いたミーナは森の中を駆けて行った。

 

 

「何その馬!?早くね!?」

 

「知るか!

 

神崎、お前等どこに向かってるんだ?!」

 

「封印場!

 

今、明理達に待機して貰ってる!」

 

「その言葉で、全部理解した!」

 

「流石や!大輔!」

 

 

茂みを駆けていき、抜けた先には地面に描かれた人の傍に、構える明理と彼女を護衛するようにして立つ安土がいた。

 

明理の傍に駆け付けた雷光から降りた麗華と陽一は、武器を構えた。同時に追い駆けてきたマジムンは彼女達を囲うようにして、蟲を放ちその姿を現し陣に足を踏み入れた。

 

 

「今だ!!明理!!」

 

「影から生まれし悪霊よ、我の名に置いて闇へ還れ!」

 

 

陣から出てきた無数の黒に帯が、マジムンの体に纏わりついた。叫び声を上げるマジムンを合図に、蟲達は一斉に明理目掛けて攻撃を仕掛けようとと迫ってきた。その前に火を纏った矢を、晴彦は無数に放ち燃え盛る炎に、雷光は風を起こし蟲達を追い払った。

 

 

黒い帯で壺の中へと引き擦り込まれるマジムンは、吸い込まれまいと必死に抵抗したがその抵抗虚しく、壺の中へと封印された。

 

 

「ふ、封印……完了」

 

「やったの?」

 

「封印したは良いが、蟲の勢いが減らない」

 

「どうして?首は封じたのに!!」

 

「主、キリがない!」

 

 

その時、大輔と共に来たミーナの周りに黒い霧が漂い、ミーナを覆った。すると麗華達を攻撃していた蟲達は一斉に、ミーナの方に向かって前進していった。

 

 

「何?どうなってんの?」

 

「明理!壺!」

 

「ツボ?

 

え?!何で、割れてるの!?」

 

「用意した壺が妖気に絶えられなかったってこと?」

 

「嘘ぉ!!」

 

「ど、どなんしよう……私のせいで」

 

「明理のせい、違います」

 

「けど」

 

 

黒い霧から出て来たミーナ……前足で地面を蹴りながら、鬣を振り麗華達を見た。

 

 

「なるほど……ミーナは元々マジムンの依り代だったって事か」

 

「俺は、ただ単に誘導係にされてたってことか?」

 

「可能性、十分あるね。

 

私を乗せた時、封印されてるであろう祠に連れて行かれたから」

 

「あ!思い出したわ!

 

マジムンには、確か依り代がいたのよ!黒い馬!

 

 

 

数年前、この森にいたはずなのに何故かいなくなっていて……やっと思い出したわ!」

 

「何でそんな大事なことを、今まで忘れてるんだよ!!」

 

「仕様が無いじゃない、忘れてたんだから」

 

「このクソ蛇が」

 

「と、とにかく戦闘開始や!!」

 

「雷光達とシーサー達に乗って!」

 

「はい!」

 

 

座り込む明理を、晴彦は立たせると寄ってきた雷光の背中に乗せ、雷光は二人が乗ると飛びだった。同時に麗華と陽一を乗せた氷鸞も飛び立ち、メル達と憑依していた大輔は、牛鬼達と共に飛び立った。

 

その直後ミーナは鳴き声を上げると、自身に群がる蟲達は一斉に攻撃を仕掛けてきた。迫りくる蟲達を牛鬼と安土、アカマタは一斉に攻撃し足止めをした。

 

 

「蟲達は俺等で食い止める!」

 

「麗華達は、マジムンを頼む!!」

 

「分かった!そっち、頼んだ!」

 

 

牛鬼達を見届けると、麗華と陽一は寄ってきたシーサー達に飛び移った。

 

 

「明理、場所を変えて封印の準備!」

 

「う、うん!分かった!」

 

「晴彦、頼んだ」

 

「はい」

 

「雷光、二人を降ろしたらそのまま彼等の護衛に回れ!」

 

「御意!

 

氷鸞、麗殿を頼みます」

 

「承知の上です」

 

 

麗華に頬を撫でられた雷光は、晴彦達を乗せて移動した。麗華と陽一は薙刀と刀を出すと、シーサーを移動させてマジムンの元へと行った。

 

 

「先に攻撃するから、追い撃頼む!!」

 

 

シーサーの背中に立った陽一は、マジムン目掛けて一文字斬りした。去って行く彼の背後から、麗華は薙刀を振り翳した。それを見たマジムンは、突如口から巨大な毒蜘蛛を放った。放たれた蜘蛛は、尻から糸を噴射し麗華の身柄を拘束された。

 

 

「麗!!」

「麗様!!」

 

 

落ちていく麗華を、大輔はすぐに助けに行き腕を掴んだ。体に巻き付いた糸を取る彼女を大輔は、寄ってきた氷鸞に近付き、彼の背中に乗っていた陽一に渡した。彼等に襲い掛かろうとしたマジムンに向かって、二匹のシーサーが体当たりした。

 

 

「参戦してくる」

 

「すぐ応戦する」

 

 

そう答えた陽一は、去って行く大輔を見送ると氷鸞に明理達がいる所へ行くよう指示した。

 

島へ着き降り立つ氷鸞から降りた陽一は、駆け寄ってきた晴彦にふらつく麗華を受け渡した。

 

 

「身体が戻るまで、麗を頼む!」

 

「分かりました」

 

「氷鸞、陽達の援護をお願い!」

 

「はい。雷光、麗様を頼みます」

 

「承知!」


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