陰陽師少女   作:花札

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先に出た陽一は、ムスッとした表情をして外で待機していた。外に出て来た麗華は、寄ってきた氷鸞と雷光の頬を一撫ですると陽一の元へ行き、問答無用で自身の方に向かせると頬にキスをした。


(あらぁ……)

(大胆)

「機嫌直った?」

「……」

「ほら、戦いに行くよー」

「応……」

「君、もう少し大人になって下さい」

「うるさいわい!!」


戦闘再開

霧の中を歩くマジムンと蟲達……すると濃かった霧が、徐々に晴れていきそれに気を取られていたマジムンに向かって、氷鸞と雷光は水と雷を放った。

 

当たったマジムンは、すぐに後ろを振り返り上を見上げた。

 

 

「お!気付いた気付いた」

 

「あのマジムン、もしかしてあそこの崖付近にあった祠に封印されてた奴?」

 

「多分、そうだと思う。

 

馬に連れて来られて、一度見には来てる」

 

「馬?あら、それってミーナって子かしら?」

 

「そうだけど……知り合いなの?」

 

「あの娘、元々私が住んでる森で暮らしてた馬よ」

 

「道理で」

 

 

話をしている内に、マジムンは雄叫びを上げ砂浜に隠れていた蟲達を呼び出し、一斉に麗華達目掛けて攻撃してきた。

 

 

「ウゲェ……また気持ちも悪いものを」

 

「あの蟲達はあっし達が惹き付けるんで、マジムンの相手をして下さい!」

 

「頼んだで!風月、氷月!」

 

 

寄ってきたシーサー達に乗り移る麗華と陽一……麗華は、獣姿となった氷鸞と雷光の頬を撫でてやり、彼等はその行為を受けると、先に行く風月達の後に続いて行った。

 

 

「牛鬼、雷光達の援護に回って」

 

「分かった」

 

「アカマタもお願い」

 

「あら、お嬢ちゃんに命令されちゃうなんて!嬉しい!」

 

(早う行け、蛇オカマが)

 

 

二人が去って行った後、麗華と陽一はシーサーから霊力を貰いそのまま飛び降りると、マジムン目掛けて薙刀と刀を振り下ろした。二人の攻撃に続いて、アカマタから霊力を貰っていた晴彦の放った矢が、彼の頭に当たった。

 

 

「やったか?!」

 

 

頭を振ったマジムンは、空を見上げると咆哮を上げそして飛び立ち、晴彦目掛けて攻撃してきた。

 

 

「晴彦!!下がれ!!」

 

 

マジムンの動きを見た晴彦は、咄嗟にシーサーの背中から飛び降りた。シーサーは突進してきたマジムンを、自身の頭で受け止め押し通した。

 

落ちていく晴彦を、もう一頭のシーサーが拾い麗華達の元へ連れて行き降ろした。

 

 

「無事か!?」

 

「えぇ、何とか」

 

 

その時、携帯が鳴り麗華はすぐに出た。それは明理の携帯から掛ける安土からだった。

 

 

「こっちはいつでも封印できる!アカマタかシーサーをこっちに寄越してくれ!」

 

「分かった」

 

 

携帯を切った麗華は、口笛を吹いた。その音に黒シーサーは気付き、彼女の元へ寄ってきた。

 

 

「僕が知らせに行きます。

 

麗華はんはこのまま陽一はん達と」

 

「そのつもり、晴彦頼んだ」

 

 

晴彦は寄ってきたシーサーの背中に乗り、明理達がいる元へ向かった。

 

 

その頃、蟲達を相手にしていた風月達は、牛鬼達の霊力を借りて、各々の技で攻撃していた。風月と雷光が風を起こし蟲達を巻き上げ、そこに氷月の雷と氷鸞の水が加わり、巨大な水と雷を覆った竜巻へと変貌した。

 

 

「とっとと死滅しな!」

 

 

水を止めた氷鸞と入れ違いに、風月は口から火を吹き竜巻に加えた。蟲達は鳴き声を発しながら、燃えていき下にいた蟲達は一斉にバラついた。

 

 

「やったか!?」

 

「まだ下にいる!」

 

「切りが無い」

 

「くっそぉー……こういう時、波の姐さんがいるといいのに!」

 

「同感。

 

氷鸞達も、そうじゃない?」

 

「っ……」

 

「焔の兄貴の威力、あっしより遥かに上ですからね」

 

「二人の力、偉大」

 

「そうそう」

 

「こういう時、何で主の傍にいなきゃいけねぇ野郎がいなくて、どうでも良い式神がいるんだか」

 

 

二人の言葉に続いて最後の牛鬼の言葉に、何かがキレたのか氷鸞と雷光は目を光らせた。そして姿を変え強大な水と雷の技を、蟲達目掛けて放った。

 

 

地に降りていた麗華は、その力の波動に気付き空を見上げた。

 

 

「あの二人、覚醒してる」

 

「おぉ!やっぱいつ見てもかっけぇ!!」

 

「風月達、二人の癇に障ることでも言ったのかな?」

 

「癇に障ること?何や?」

 

「いや、それが」

 

 

話そうとした時、突然シーサーが飛んできて麗華の足下に倒れた。

 

 

「シーサー!!」

 

「…!?何や、この強大な妖気は!?」

 

「陽、あれ!!」

 

 

指差す方向に目を向けると、荒く息を吐くマジムンが二人を睨んできた。シーサーは立ち上がり、頭を振ると咆哮を上げてマジムン目掛けて突進した。同様にマジムンも咆哮を上げ、突進してきたシーサーの頭を受け止めた。

 

 

「さ、参戦するぞ!麗!」

 

 

刀の柄に、シーサーの霊力を封じた札を貼った陽一に続いて、麗華は薙刀の柄に同様の札を貼り、二人は一斉に飛びかかった。背中を切られたマジムンは、悲痛な声を上げて振り返り鋭くなった手で二人に向かって攻撃した。すぐに飛び上がり、攻撃を避けた二人は地面に着地すると、掴み直した武器でもう一度振り下ろした。

 

 

“キーン”

 

 

「固っ!!」

 

「刃が通らん!!」

 

 

その時、携帯が鳴った。陽一は麗華を自身の後ろへ行かせて、放たれてくるマジムンの攻撃を、刀で全て防いだ。麗華は携帯をスピーカーにして、攻撃を防ぐ陽一に聞こえるようにした。

 

 

「いつでも封印できる!!誘導頼む!」

 

 

それだけを言うと、電話をしてきた安土は通話を切った。陽一はマジムンに攻撃し、麗華は距離を取ったのを見ると、煙玉を投げ目眩ましをした。

 

麗華は口笛を吹き、空で蟲達を退治していた雷光を呼び付けた。マジムンの放つ攻撃に、麗華は薙刀で防ぎ避けながら、砂浜を走り出した。マジムンの次の攻撃が当たる寸前に、雷光は雷を放ち攻撃し怯んだ隙を狙って、麗華を自身の背中へ乗せ、彼女に続いて陽一も乗せた。

 

マジムンは咆哮を上げると、残っていた蟲達を自身の身体へ戻すと巨大化し、雷光に乗る二人の後を追った。




その頃、麗華達が午前中に行った牧場から、柵を跳び越えたミーナが、道路を駆けて行き何処かへ向かった。


同じ頃、大輔は何かを察したのかホテルの外へ出て行き、彼の後を鈴村はついて行った。


「星崎、どうしたんだ?」

「……鈴村、中に入ってた方が良い。

嫌な妖気が、こっちに……?」


何かが当たり足下を見ると、そこには蟲が這っていた。恐る恐る顔を上げると、ホテルの門に置かれていたシーサーがいつの間にか壊れており、マジムンの身体に戻らなかった一部の蟲達が、ホテルの敷地内に入ってきていた。


「蟲?!神崎達、まさか」

「違う。多分、残党だ。

すぐに大野達に言って、結界札を建物に付けてさせて下さい!!」

「わ、分かった」

「(効くか分からねぇけど)ニア!リユ!メル!

力、貸せ!」


出て来た三匹は、球体に姿を変えると大輔の中へと入った。彼は姿を変えると、蟲の群れに目掛けて雷を放った。雷に当たった蟲達は、ひっくり返り息絶えたがそれを超えてゾロゾロと、他の蟲達が迫ってきた。


「ウゲェ……気持ち悪。

水に流すとするか」


二つの扇を出した大輔は、宙に水の玉を作り出すとそこから水鉄砲を出し、蟲達をホテルの外へと追い出した。すると、再び入ってこようとする蟲達に鋭い爪で刺し殺す四つの目を持った獣が、彼の前に立ち入った。


「な、何だ?こいつ」

「ニエル!そのまま攻撃しろ!!」


ホテルの外から出て来た伊達は、そう叫びながら大輔の元へ駆け寄ってきた。


「何で出て来たんですか?」

「後輩一人に任せてられるか。

ホテル内には、ちゃんと大野達が結界札を這って貰った」

「……戦闘終了次第、神崎に怒られて下さい」

「何でだよ!!」

「神崎から出るなって言われてるだろうが!!」

「それならお前も」


言い合っている時、突然馬の鳴き声が聞こえその方向を見ると、蟲の群れを飛び越えたミーナが姿を現し、大輔の元へ行くと彼の背中を押した。


「な、何だ?!今度は」

「来いって、言ってるんじゃねぇの?

!もしかしたら、神崎に何かが」


そう言った瞬間、大輔はミーナに飛び乗り蟲の群れを飛び越えると、そのままホテルの敷地外へと駆けて行った追いかけようとした蟲の一部に、伊達はニエルに指示を出しその群れを鋭い爪で刺していった。

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