ゼロの使い魔~白黒の自称普通の魔法使い~ 完結 作:WryofuW
ルイズの使った虚無魔法の基本であるエクスプロージョン。それは視野内の相手の艦隊を一撃で撃沈し、勝敗は一瞬で明らかになっていた。
王都、トリスタニア方面にはトリステインの旗が複数ありさらには王女の紋章がある為、そこにアンリエッタがいるのがわかる。
ルイズはそちら側を見ているが、体は疲労感なのか重く魔理沙に寄りかかっている。
「はー・・すごいな・・・ルイズお疲れ様なんだぜ(ちょっとビックリして落ちそうになったとか言えないんだぜ・・)」
「・・・お腹減った・・疲れたわ。あれちょうだい」
「あれ?・・あぁ、あれね。はいはい」
あれとは空中に漂う星成分で作られた魔理沙特製のお菓子である。作ってあげればルイズに奪い取られ次を催促してくる。そういったやり取りをしつつタルブ村まで2人は戻っていく。糖分は乙女の燃料とはよく言ったものだ。まさにその通り、ルイズがふにゃっとしていたが、元気を取り戻しつつあるようだ。
その場面を遠くから見ていた物が一人。双眼鏡から見ていたアンリエッタである。
双眼鏡自体は珍しいものとして献上されたものであり、偶々アンリエッタの手元にあったものをついでにもってきただけなのである。
「そんな・・あのピンクの髪と黄色・・いや金髪で分かりやすい2人組み・・・ルイズと使い魔の、マリサさんなの・・・?じゃああの光の玉は・・」
光が収まった後に中心にいたものを他は気がついていなかったが、アンリエッタは双眼鏡のおかげで気がついたのだ。隣ではマザリーニが動揺する兵士に対し何か言っていたが、自分自身はそれどころではなかった・・・。
そんな様子に気がつかず、マザリーニは的確に指示を出していく。
「では元帥、落ちた船からまだ敵が襲い掛かる可能性があります。先鋒をお任せします。逃げる相手を無理に追う必要もないでしょうから降伏は受け入れる形で、忘れないよう・・・」
「言われなくともわかっていますぞ・・それでは部隊を引き連れ、私は先に向かいます」
「お気をつけて・・・姫殿下?いかがなされた?・・ふむ、先ほどの光の玉ですかな?」
「・・え・・ええなんなのでしょうね・・」
「・・・なるほど、その物で何か見えたのですな?」
「ぎくっ・・・あ、いえ私はそんな人なんて見てないのです オホホホ・・・」
「ふむ・・・あの方向はちょうどタルブの村がありますな・・そこにいるやもしれませんな。姫殿下タルブの村へ向かいますがよろしいかな?」
「え?あっ・・・いやそれは・・そうですね!行きましょう何かわかるかもしれませんからね!・・」
目を光らせアンリエッタにそう告げるとマザリーニは、部隊の指揮へと向かってしまった。完全にやらかした、とアンリエッタは思う。ただ一言言うなら・・ルイズごめん・・。
・・・9代目の博麗の巫女はタルブ村へ戻る魔理沙たちを発見し、手を振ると向こうも気がついたようで振り返している。すると魔理沙はある場所へ向かえと言わんばかりに腕である方向を示しているが、その方向は自宅として使っている博麗神社がある方向だ。
もしかしたら何かあったのかも知れないと考え、巫女は走ってその方向へ向かう・・・。
そこで巫女が見たものは・・一生会えないと思っていた人物がそこにはいた。
後姿だが直感で八雲紫だとすぐに判断する。その周りにはアリスや知らないだれかが数人いるようだ。多分今の幻想郷の者なのだろう。今すぐにでも飛びつきたい衝動に駆られるが我慢し、一つあの頃の様に紫へ仕掛けることに。
後ろからゆっくり近づく巫女にアリスが気がつき目を見開いている。巫女は黙ってるよう人差し指を自分の口に持っていき、一つ笑みを見せる。
「あの光はなんなのかしらねぇ・・魔理沙はあんなのできないだろうし、あの娘よね。ルイズって言ったかしら・・・「だーれだ?」っっ!?」
いきなり現れた巫女に美鈴や咲夜が警戒するが、アリスが静かに宥めこの様子を見守るようだ。
紫自身この者の気配を探知する前に悪戯をされ能力を使おうと思ったが、アリスたちが静かなのを見るととりあえず様子を含めこの余興に乗ることに。
とりあえずこの後ろにいる奴が誰であろうと一発は殴ろう、そう考えつつ自分の手で相手の手を触ってみることに。
「魔理沙な訳ないわね・・だれよ、声は・・分からないわ。手は・・・しわしわね」
「うぐ・・・しわしわは無いだろう・・そりゃぁもうこんな歳だからな・・なぁ?・・・紫?」
自分の名前を呼ばれた途端、まるで走馬灯のようにある思い出が蘇る。
そうそれは異変もなく9代目に会おうと博麗神社へ行った時だ。
ー・・・ ふふ、だーれだっ 、・・!?・・はぁ、あのねぇ気配を断つのが上手いのは分かるわ。けどそれをこんな遊びに使って・・本っ当変わらないわあなたは。 、私は私だよ。やる時はやる、気を抜くときはとことん抜くさ そういう部分は変わらないのは、お前が一番分かっているはずだ なぁ、紫? ・・・-
自分の声が震えそうになるが歯を食いしばり、一息つくと目を隠しているその者の腕を優しく触れながら口を開く。
「全く・・貴女はいくつになっても変わらないんだから・・・き・・・緊張感が無い・・わ」
「はは・・・こんな事をするのは紫だけだよ。特別さ・・・紫・・・会いたかった。ようやく会えた。長かった・・」
会いたかったー・・・... それはこちらのセリフよ と思っても言葉にはできなかった。言ったら情けない姿を見せなくてはいけなさそうだったからだ。
いつの間にか手も離れ、前が見える状態になり美鈴も咲夜もこの状況を分からないでいた。アリスは会っているから知っているわけだが驚いた様子で自分を見ている。・・・今はそれどころじゃない。振り向かないと・・・。
そうして振り向くと先に魔理沙がこちらをみて笑っているのが視野に入り、そしてそこには9代目の博麗の巫女・・別名、攻めの博麗がいた。
少しずつ視界がぼやけるのが分かっており、我慢するので必死な紫だったがここで唐突に美鈴が咲夜とアリス、そして魔理沙とルイズに向け休憩できる場所へ移動しようと提案し、ルイズを先頭に無理やり移動を開始するのだった。
「えっえっ?ちょ・・ちょっとめ・・めいりんさん・・でいいのよね?急になにするんですか!」
「まぁまぁそんな怒らずに。ね?ささ、案内してくださいよ。魔理沙さんもルイズちゃんと一緒に先頭で案内役になってくださいよ!」
「???・・・あー・・へいへいわぁったよ、ルイズいこーぜ」
「ちょっと魔理沙まで・・あぁんもう!分かったわよ。とりあえず村長さんに話つけなきゃだと思うからそこにいきましょ」
そそくさと退散する美鈴、魔理沙、ルイズを見て咲夜は一言 そう言うところは私より鋭いんだから・・ちょっと悔しい気もするわね と呟きそれをアリスが拾うように そこが美鈴の良いところなのでしょう? と小さく笑みを見せついて行くのだった。
チラリとルイズは紫の後姿を見ると、水滴一粒ほどのものだろうか、光に反射するものが重力にしたがって落ちるのが一瞬見えたのだった。
その行動に紫は よけいな事を・・ と思いつつも感謝していた。
「いつのまにかあなたの手はしわしわね・・?けどあの頃の雰囲気、今でも変わらないわ」
「そうかそうか、私ももうおばあさんになりかけさ。ふふん、いいだろう紫?しわしわの手だ」
「えぇ・・っ・・えぇそうね。私たち妖怪は老化というのを捨てて長生きするわけだから一生自然にはならないもの」
巫女は自分の手を見せびらかすように紫に見せ、それを微笑ましくも悲しみの表情を浮かべながら紫は頷いていた。
巫女は一息吐くと真剣な表情をし、紫に言いたかったことをポツポツと話していく。
「紫、急にいなくなってしまって申し訳なかった・・。許されることではないのは分かっている。どんな罰でも受けよう。ただこれだけは分かってほしい・・故意でこちらに来たわけでもないし、幻想郷が嫌いになったとかそう言う事もない」
「分かってる・・えぇ分かってるわ。あなたがそういう事をする人じゃないのは知ってるし、嫌いじゃないという事も分かってる。と言うより、あなたはあの頃から幻想郷の事が好きだ と豪語してたじゃないの」
「はは・・よく覚えてるな・・・。もう30年・・くらいはたってるんだがな」
「これでも賢者と呼ばれてますから」
ごもっともで と笑いながら巫女は言うと、紫は自然と笑顔になっており、気がついたときには心が嬉しさで満たされていたのだった。
生きていたのは本当によかった、しかしどうしてこの世界にきたのか、どうやってきたのかを明確にしなくてはいけない。
その様子を察してかとりあえず魔理沙もそこらへんは含めつつ話し合おうと提案する。
「そうね。案内してもらってもいいかしら?」
「無論だ。お茶もあるからゆっくりしていくといい」
・・・・・
村長宅へお邪魔した魔理沙たちは、紫たちを待つまでとりあえずここにおいてもらう事に。
急な訪問だったが、村長自身嫌な顔をせず笑顔で迎えてくれていた。
「いやぁ悪いね!村長さん」
「はっはっは、こんな美人さんばかりの訪問ですからむしろ大歓迎ですじゃ。しかし貴族様はお顔が広いですなあ・・・ここトリステインでは見たことない方々のようですが・・シエスタも幸せものですのぅ」
「え?あっ・・そのー・・」
「まぁ気にすんなって!人生色々ある、っていうだろ?」
ルイズはおどおどしていたが咄嗟の魔理沙のフォローにより問題なく、それもそうか と村長は深くは突っ込んでこず、納得しそのままお茶を用意し別の部屋へ行ってしまった。
その様子を目で追いかけつつ申し訳なくなるがそういえば、とルイズは先ほどの美鈴の行動の理由を伺っていた。
「さっき美鈴さんが無理やりあの2人と離れたじゃない?どーゆーことなのよ」
「ん?あはは、誰だって知られたくないこともあると思うのですよ。私は詳しくは知らないですけどね?」
「知らないのにあんなこ「美鈴にはそういう能力があるんだよ」・・能力?」
「応用なんですけどね?私は気を使う程度の能力というものを持ってますよ。あの2人の気を読めば何となく雰囲気くらいは感じられますから。応用ですよ?本当ですって」
能力といわれてもいまいちピンとこないルイズは、首をかしげ魔理沙に顔を向ける。ルイズの顔を見てふと思い出したように声をこぼす。
「そいやぁ私の能力なんて教えたことなかった気がするな。私は魔法を使う程度の能力なんだぜ」
「なにその程度って変なの ていうかずるいわ!私もそれほしい!」
「たはは・・「待たせたわね」 お、遅かったな」
巫女を先頭に紫が入ってきたため、ルイズの話はとりあえず中断となった。魔理沙がちょっと紫を弄ろうと思い、ニヤニヤしながら大袈裟な動きを交えつつ、口を開く。
「おぉっと!紫!目元赤いんだぜー!シャッターチャンスってやつだな!」
「なっ・・・ちゃんと直してからここにきたはずなのに・・「嘘なんだぜー紫でも自爆するんだな!」・・」
「巫女さんと会って動揺しすぎなんいだだだだだだ。それは・・・いた・・い・・んだぜ,,,」
紫は自分の両腕をスキマを経由し、魔理沙の頭の左右でこぶしを作る。そしてそのままグリグリと容赦なく頭を締め上げる。これを笑顔でやる紫にルイズは引いているようだった。
改めて今後のことを含め、貸しきり状態となったこの部屋で会議をすることに。魔理沙は頭を押さえつつ、涙目でヒーヒーいいながら椅子に座っている。そしてそのとなりに哀れみの目で見るルイズ。
「…おほん…さて、改めてこの人は霊夢の一応先代に当たるもう一人の博麗の巫女よ」
「紫とアリスは私のことを知っているだろう?9代目の巫女だよろしくたのむ。・・しかしまぁ妖怪と人間が争うだけの時代はとうに過ぎていたんだな」
「うーんこの美鈴と咲夜に関してはレミリア・スカーレットっていう吸血鬼の元で働く紅魔館の門番とメイド長よ。・・まぁ血を流す時代は、スペルカードの導入と共に終わったようなものね。それも今の博麗の巫女、霊夢のおかげね」
霊夢がほめられているのだが、何故か魔理沙はニコニコと嬉しそうにしている。ルイズは何故か気分が悪くなり次第にムカムカと感情が不安定になっていた。つまり嫉妬である。
それに気がついた途端、魔理沙の足を踏んでいた。
「いったい!・・???・・。ルイズなにすんだよー!」
「ふんっ知らない!」
「あらあら。ルイズは嫉妬してるのかしらねぇ霊夢に」
「は・・はぁ!?そんなわけないじゃない!まず見たこともない相手に何が嫉妬よ!・・・」
ふうん・・・と紫は笑みを隠さず微笑ましく見ており、その視線に耐えられなかったのかルイズはそっぽを向いてしまった。
魔理沙は気がつかずなにか私が悪い子としたんじゃないか と勘違いをしていたのだった。
「しかしあなたも皺くちゃじゃない。魔法使いか仙人にでもなればいいって提案したのにそれを蹴って人間のままでいいっていうんだから」
「はは、アリスも人間になればきっと分かるさ。これでいいんだよ。人はな?老いることも楽しむものなのさ。それに新しい時代を作るのは老いた人じゃない、若いのにそういうのは任せるものだ。世代交代は大切だよ」
「ふうん・・まぁ私は老いるなんて結構よ。そんなんになったらやりたい事ができなくなるもの。まだ目的も達成してないのだから」
アリスも変わらないな と苦笑いをする巫女にその言葉、そのまま返すわ と返事をするアリスであった。
ルイズはここで疑問が出てきたが後で聞くことに。アリスは人間じゃないのか?と・・。
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