ゼロの使い魔~白黒の自称普通の魔法使い~ 完結   作:WryofuW

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第七話 虚無の力

 そして場所と時は戻りタルブ村近く。

 魔理沙と巫女はすでに結界に囲まれたタルブ村を視認できるほど近くにおり、結界前で巫女を下ろすため降下する。

 

 

 「魔理沙、私は村長に話をつけてから地上の敵を掃討する。それまでは頼むよ 威嚇だけでいい」

 

 「あいよ。お任せあれなんだぜ!」

 

 

 下ろし終わった魔理沙は、上空でいったん待機すると結界近くに集まる敵兵士がわんさかといるのがわかる。調べているのだろう、槍で突いたり剣で斬ったりとしている。

 魔理沙は八卦炉で一気に殲滅するか悩む。魔力増幅薬に魔力回復薬は常備している為、とりあえずは問題ない。

 そして巫女はというと・・。

 

 

 「村長待たせたな。大丈夫か?」

 

 「ん?・・・お・・おぉぉ!?巫女さん、戻ってこられたのですか・・・学院からこんなに早く戻ってこられたのですね・・」

 

 「あぁここの危機とあってはな・・まあこの速さも上にいる魔理沙のおかげだよ。さて状況を説明してくれるか?」

 

 「はい、とは言えこの結界を突破されず今だ問題ないですがの・・それもこの領地の兵士の足止めのおかげでもあるのですが・・」

 

 「そうか、ただもうここも限界かもしれんな。亀裂が入りかけている・・もっと結界の学を学んどくべきだったな・・。いやそれより村人を反対側に誘導してすぐにでも逃げられるよう準備しておくんだ」

 

 「それはもう全員完了しておりますじゃ」

 

 「そうか、なら村長も用意しておくんだ。ここは私に任せろ・・何も言うな いいな?」

 

 

 村長は、何か言いたげな表情だったが事前に口止めされた為うなずくだけにする。

 そして敵の集まる前方側へいくと誰かが指揮を執っているようだ。

 

 

 「お前たちは一旦下がれ、私が破壊してみせよ・・ん?誰だお前は」

 

 「ここを守るものだ」

 

 「・・・そうかお前がこれを創ったやつか、卑怯者め」

 

 「お前らが言うか」

 

 

 巫女の視線の先には、ウェールズと共に死んだと思っていたワルドであった。しかし片腕は無く表情に余裕も無い醜い姿だった。

 それを知らぬ巫女はそんな姿をどうでもよく思っており、考えているのは敵でありそこらへんのよりはやる・・という事だけである。

 会話していると上から高出力の魔力と共に何とも言えない高音が鳴り響く。その音にワルドは聞き覚えがあり、すぐさまフライと共に大きく横へ避ける動作をする。

 

 上からの攻撃は、地面を削りながら敵兵に光線が直接当たっていく。光線が通った道の敵兵の鎧は、焼け焦げたり熔けていたりしていた。この一撃でそこにいた多数の敵の8~9割は戦闘不能に陥っていた。残っているのは、ただ射線に入っていなかっただけである。

 

 一掃した魔理沙は出会ってしまう。またか、と面倒くさそうな顔をしながらワルドをみている。

 しかしワルドは獲物を見つけたかのように笑みを見せ、巫女を無視し魔理沙へ顔を向ける。

 

 

 「ふは・・ふははっガンダールヴ!この瞬間を待っていた・・!」

 

 「私は待ってないけどな・・なーんで生きてるかな」

 

 「ふふふ・・あの時のも偏在さ。とは言っても情けないことに精神力は尽きてしまって崩落からは逃げられなかったが・・・しかし生きていればこうして借りを返せるというもの・・・!」

 

 

 あの時、ウェールズが命がけで捕らえていたワルドは偏在だったのである。それを隠れて逃げる算段だったが、思ったより精神力を奪われており這いずりながらの逃亡は、アルビオン崩落という形で妨げられてしまった。

 しかもその崩落により片腕は胴体を離れ、もはやこれまで・・と言うところで運よくワルドの顔を知る盗賊らに発見され、今の状態にいたる。

 

 

 「さぁあの時の決着と行こうじゃないか!ガンダールヴぅ!」

 

 「ストーカーって言うんだよなこういうの・・さすがに引くぜ・・」

 

 

 そう言うとワルドは、グリフォンを呼びつつ自身をフライで浮かせ魔理沙へ向かおうとする。がしかしいつの間にか真後ろにいた巫女に殴られ、地面を軽くバウンドし接地する。

 

 

 「魔理沙、ここは私に任せろ。この程度の相手、問題はない」

 

 「ひょーカッコいいな!私もそんな言葉言ってみたいぜ!」

 

 「・・ぅぐっ・・おのれ平民ごときが私の顔を殴ったな・・ガンダールヴは後だ、まずはお前からだ!」

 

 「戦闘中よく喋るやつほど弱いと相場は決まっている、来るなら来い」

 

 「あーあはは・・ま・・まぁ巫女さんそいつはこの国の裏切り者だから容赦しなくていいんだぜ」

 

 

 巫女の言葉に少し耳の痛い魔理沙は、苦笑いをしつつワルドの事を巫女に任せ自分は別方面からの敵を探すことに。

 

,,,

 

 

 「さぁ行くぞ平民 油断はせん、エア・ハンマー!」

 

 

 巫女の斜め前から見えない風の一撃が降ってくるが、巫女はまるで見えているかのように横をすり抜けワルドへと向かっていく。

 たまたま避けたと思い次は2段構えで仕掛けることに。

 

 

 「デル・ウィンデ・・エア・カッターぁ!」

 

 

 まるで退路を断つかのように扇状に撒くこのエア・カッターも普通なら見えない攻撃である。風が複数の刃となり敵を切り刻むものだが、巫女は自分の当たる攻撃だけを見極め、来たものだけを両手をうまく使い握りつぶすようにしながらワルドへ走っていく。

 無論、握りつぶしているわけではなく霊力を両手に込めてコーティングしたまま、巫女の能力(反射する程度の能力)を使い一時的にエアカッターを吸収していた。吸収しているとはいえ、これを外に出さねば身体に悪影響を及ぼす事になる。

 又、吸収には限度がありそれを超えると水風船に穴が開き、水が漏れる様に体中から対外へ排出される。

 使い勝手の悪いように見えるが、使いこなせれば敵なしと思うほどである。

 

 

 「なんなんだこいつは・・し、しかし近づいてきたのは予測どおり!この距離なら避けれまい!ライトニング・クラウドっ!」

 

 

 光の一線がすさまじい速度で巫女へと向かっていく。巫女もさすがにただ吸収してはい終わり、という訳には行かないだろうと予想するが、こういう時に相手の予想を超える行動をしてこそ勝利がつかめるだろうと考える。

 

 左手を前に向ける事でライトニング・クラウドのダメージをすべて左手で防ぐが、手から煙が出ており痛みに顔をしかめる。がそのままワルドに近づく巫女に対し流石に気味が悪いのか、ワルドはすぐに冷静に思考を変え一旦下がるためフライを唱え浮かぶ。

 しかし体が浮遊している感覚はあるが足がいつまでたっても地上から離れず、さらにはなぜだか足の痛みを感じていた。足元を見ると誰かがワルドのつま先あたりを踏んでいるではないか。痛みの原因もわかりその足の正体を判明させるため、正面を向くと・・・。

 

 

 「きっ・・・きさま・・」

 

 「そうだ、私だ 哀れなやつだ」

 

 

 すぐさま呪文と唱えようとするがフライ中はほかの呪文が使えない。という制約があるが、この状態ではそれ以前の問題だった。

 焼け焦げた左腕でワルドの首をつかみ、右腕で今まで吸い込んだ魔力をパンチと共に開放する。

 

 

 「さらばだ、裏切り者」

 

 「っっっおっごぉぁ・・っ」

 

 

 オークを倒すほどの攻撃に、声にならないほどの痛みにワルドは意識を手放すがすぐに痛みで覚醒してしまう。・・それを何度も繰り返しつつ血を撒きながら森方面へと吹き飛んでいく。

 巫女は先ほどの攻撃により負傷した左腕で首をつかんでいたが、自分の行った能力の衝撃が左腕にも伝わり痛みで離してしまった為、ワルドは吹き飛んでいってしまったのだ。

 

 ふぅ、と一息吐き上空にいるはずの魔理沙を探すがどこにもいなかった。もしや村に先に戻っていると考え、そちらへ方向転換する。何か眩いものを感じ空を見るとそこには・・・・・。

 

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 そして時は巫女とワルドと別れた辺りの魔理沙へと視点と共に戻る。

 

 巫女に言われたとおり空からの援護をしようと思っていたが、敵兵は先ほどのマスタースパーク一発と巫女とワルドの一対一の戦いのためこのタルブ村から退避していってしまっていた。

 

 その為地上は無視する形になっていたが、その代わりに空からグリフォンらしきものに乗り込んだ敵が向かってきていた。 

 杖を持っているのを見るとメイジなのだろう。しかしあんな大きな体の魔物に乗り、魔法を使うとなると死角が多く隙を見せやすい。

 その点、魔理沙はそのままの状態で高速戦闘ができ、さらには魔法も詠唱を必要としていない。

 

 結果、敵にすらならないと言うあっけない展開になってしまう。それを2~3回行ったが気がついたときには近づく敵さえいなかった。魔理沙は心底つまらなさそうにため息を吐くと、誰かの声がきこえてきた。

 こんな上空で聞こえてくる人の声は何かに乗っているのだろうと考えるが、その声は頭に響くような声だった。その声はルイズであり、何故か魔理沙の片目に映る視野がタルブ村を見ており これが視野の共有なのか と判断する。

 ルイズが私を必要としているのだろうと思い、急降下しタルブ村へ向かうのだった。

 

 

 そしてタルブ村・・・ルイズと咲夜はスキマ移動から無事到着し、きょろきょろと周りを見ている。

 合図をするため振り返ると、そこには見慣れた建物があり咲夜は唖然としてしまう。

 しかし思考を一旦止め、とりあえずは安全と判断すると咲夜はスキマに向かって合図を送る。すると中から紫、アリス、美鈴が出てくる。咲夜が向こうに誰か置かなくていいのかと聞くと、紫は 何も問題ない と一言いい納得させる。

 

 このタルブ村の異常を紫とアリスが感知しまわりを見ている。

 

 

 「これは・・・結界ね。博麗大結界って訳じゃないけど博麗の雰囲気を感じるわ」

 

 「それもそうだけど、この建物みなさいよ。どうみても・・」

 

 

 幻想郷では見慣れた建物である博麗神社がそこにはあった。だれもが疑問を持ち色々な意見が飛び交う。

 紫はとりあえず思考を止め、ルイズに魔理沙を呼ぶよう指示するが周りを見てもその気配すらない。

 

 

 「契約したのでしょう?それなら呼べるはずよ。あなたが本当に必要と思えば、それが必ず魔理沙に届くわ。使い魔の契約なんてそんなものよ、まああなたの場合は他のとは違うから仕方ないのかもしれないわね」

 

 「・・・分かったわ・・・魔理沙・・私はこの戦争を終わらせたい・・私の使い魔なんだから常に私の近くにいなさいよっ!」

 

 

 余計な感情も含め魔理沙へ今必要としている事を伝えると、その数分後すぐに空中から降りる影を見つける。

 いつもどおり魔理沙は降りてきてルイズに挨拶すると共に、周りに控える人たちに驚く。

 

 

 「うぉぅ・・・紫にアリス、咲夜に美鈴まで・・・そっかとうとう繋がったんだな。まぁパチュリー辺りが頑張ってたのかね」

 

 「その通りよ、結構時間かかっちゃったけど元気そうね」

 

 「おう咲夜もいつも通りで安心なんだぜ」

 

 

 美鈴とは今は言葉を交わさず、笑顔と手を振り合うだけに留める。なんだかんだ美鈴とは意思疎通ができる仲の良い友なのだろう。

 アリスは素っ気無い態度でため息を吐くだけで何ともいえない表情をしていたが、魔理沙は笑顔で ありがとうな と言うと はいはい と返事が返ってきた。

 素っ気無いが、心配しているアリスに魔理沙はいつも通りでこれまた安心していた。

 

 

 「私からも色々聞きたい事があるけど、とりあえず自分たちの国のことの問題くらい自分たちで終わらせなさい。魔理沙もルイズの手助けをしなさい。これが最後かもしれないんですものね」

 

 「・・・あぁ、さてルイズ。あれやるのか?」

 

 「ええ、エクスプロージョンを・・・大丈夫私ならやれるから。そう確信できるわ」

 

 「ん、ならいつも通り空の旅をしようぜ、な?」

 

 

 魔理沙と共に箒に乗ったルイズが魔理沙に捕まるとそのまま上昇していく。

 少し近づき敵の艦隊もよく見える位置で停止するとルイズは深呼吸する。詠唱をする前にルイズは魔理沙を見る。

 

 

 「私がんばるから・・!」

 

 「おう!・・あ、そうそうさっきよ。ワルドがいたんだぜ?」

 

 「えっ!?い・・生きていたの!?」

 

 「そーそー、まぁあの巫女さんが相手にしてるから何というか・まあご愁傷様って感じかな?」

 

 「・・まぁ私自身もうあの人に対して特別な感情なんてないし・・・ふぅなんだかどうでもいい話だったけど魔理沙と話をしたおかげで緊張がほぐれた気がするわ」

 

 「そっかそっか、ならどーんと派手にやったれー!」

 

 

 その言葉にルイズが頷き、杖を敵艦隊へ向け長い詠唱に入る。

 

  ・・-エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド・ベオーズス・ユル・スヴュエル・カノー・・

 

 

 詠唱の間は無防備のため、使い魔である魔理沙が護衛をしなくてはいけないが敵はこちらに気がついてないようで空に敵はおらず、気持ちのいい風のみだった。

 魔理沙は面白い呪文だな、と関心しつつそれを聞いていた。

 

 ・・-オシェラ・ジェラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル・・・!

 

 

 「(私が指定するのは敵艦の風石のみ・・その中にいる敵を殺す必要はない。・・・もうひとつ指定するもの・・・それはトリステインを裏切り、私を裏切り魔理沙に悲しい決断をさせた張本人・・ワルド・・!・・・・....)」

 

 

 詠唱が終わった途端、ルイズの杖の先を中心に眩い光が大きく・・大きく、さらに大きく拡大していく。遠くから見ていた者は口々に 2つ目の太陽が出現した といっていた。

 

.......


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