ゼロの使い魔~白黒の自称普通の魔法使い~ 完結 作:WryofuW
魔理沙たちが飛び立ってから数時間が経過し、自室に篭るルイズは意を決し静かに馬小屋へ向かうのだった。
メイドや生徒は全員自室へ戻され一時待機を命じられていた。その為誰とも会うことなく目的地へ進むことができていた。
そこで丁度召喚の儀式を行った場所を通りかかり、初めて魔理沙を召喚した時の事を思う。もし魔理沙じゃなくて別のものを召喚していたらどうなっていただろう、と考える。今思うともしも風竜を召喚できたとしても、私はここまで笑ったり泣いたり物事に対する視野が広くなったり・・・あとは性格が丸くなっていただろうか?・・きっと魔理沙以外では難しかっただろう、と考えると胸が熱くなる思いだった。
だから今度こそ私が魔理沙を・・・。
そう考えていると広場に見たこともない紫色の光が集まっていく。地面を見ると見知らぬ文字のようなラクガキが書かれており、徐々に光が強まっていく。何が起こっているのか分からないルイズはただそこに佇み、その場を見ていた。
同時刻、学院長室にいたオスマンとコルベールは今後の事の話し合いをしていた。戦争の終わった後、王室から多分学生を対象に徴兵が行われる。他にもここが一つの拠点になる可能性など・・・。
それを考えていると窓の外、広場から高濃度の魔力と共に紫の粒子が集まっていた。オスマンはもしかしたら敵の襲撃という可能性を考え、オスマンとコルベールは広場へと向かうのだった。
途中で運よくギトーやシュヴルーズと出会うことができ、シュヴルーズには生徒の安全を、ギトーは共に同行してもらうことに。
「な・・なによこれ・・も・・もしかしてレコン・キスタ・・!?ど・・どうしようぅ」
「ミス・ヴァリエール!何故あなたがここにいるのですか!自室に居なさいと忠告したでしょう!」
「まぁそうカッカしなさんなミスタ・コルベール。もっと薄くなるぞい?」
「オ・・オールド・オスマン!?それにミスタ・コルベール!あとミスタ・ギトー・・・こっこれはその・・」
「そんなことより、これは何かわかるかね?ミス・ヴァリエール?」
ルイズが分からない と発言しようとしたが、一瞬光が激しくなり4人とも光を防ぐ為目を閉じてしまう。
オスマンとコルベールが先に目を開くと、そこには数人の女性が立ちこちらを見ていた。
長年の経験から2人は目の前にいるこの女性は危険だ、と判断し静かに杖を抜く。遅れてギトーも杖を抜き相手に向けており、ルイズも目を開け同じ方向を見るが何故か3人とは別の反応をする。
「ふぅ、楽でいいわね転移魔方陣は・・・あら?あなた方はお出迎えかしら?」
「・・・何者かね、おぬし等は」
「あら、パチュリー・ノーレッジも気が利くわね。それより名乗るなら自分から名乗るのが普通よ?まぁいいわここじゃ部外者だものね。私は八雲紫、そこの娘とその連れに用があるだけよ?邪魔しないでくれるかしら」
紫がそう言いつつルイズへ指差し一歩進む。すぐにコルベールは、ルイズを守るように前へと立ち杖を紫へ向ける。
杖を向けられても怖がる様子は無く、紫はその場で立ち止まる。オスマンとコルベールは何をするのか分からず、相手の出方次第で使うか使わないかを決めることに。それがどんなに平和ボケしていた行動か、すぐに知ることになるのだった。
幻想郷から来た3人は、紫が何をするのかすぐに分かった為手を出さず傍観するのだった。
「ふうん、話し合いする気無いのかしら?それともこれを取っちゃえば嫌でも話す気になるのかしら?ねぇどう思う?」
「何をい・・!?私の杖はどこへ!?」
「・・・むぅ・・何かに引っ張られるように無くなってしまった・・。これは・・?」
「これのことでしょ?ここの魔法使いは本当弱いわねえ・・。まぁ扱いやすくていいんだけど」
紫の手には3つの杖があり、それはオスマンとコルベール、そしてギトーの持っていたものだった。無論紫の持つ力、境界を操る程度の能力である。杖をとられたギトーだがあきらめた様子は無く、懐へ手を入れる。しかしギトー自身、相手の力量を読む経験は無いに等しかったが貴族としての誇りか予備杖を抜き魔法を唱える。
「ラナ・デル・ウィンデ・・エア・ハっ・・うぉっ!?」
ギトーはエア・ハンマーを唱えようとしたが、いつの間にか杖を盗られ後ろの謎の人物に首元にナイフを突きつけられていた。時間を操る程度の能力を使い時間を止め、相手の無力化をした咲夜である。
オスマンもコルベールもギトーがいる後ろを見ると、自分たちの目の前にいたメイド服の女性がいつの間にか後ろでナイフを突きつけていた。当の本人のギトーでさえ何が起こったか分からず、唖然としている。
紫は咲夜の行動を特に咎めることなく周囲を一度見るとさて、と紫はどこか話せる場所の提供を求めた。しかし杖を取られた時点で拒否権は無く仕方なく学院長室へ連れて行くことに。
その間、ルイズは最初に紫と目線を合わせた時から何か恐ろしいものを見てしまったかのように、体が震え動きを停止してしまっていた。しかしその視線にどこか見覚えがあり、どうにか思い出そうと一言も発することをせず考えていた為、今どういう状況か分かってないでいた。
歩いている途中でルイズは恐怖を抑え、紫へ質問をする。
「あ・・あの・・・どこかでお会いしたこと・・ありませんか?」
「あら?忘れてるかと思ってたけど意外と覚えてるのねぇ・・じゃあ夢、で分かるかしら?うふふ」
「夢・・?っあ!魔理沙と誰かがだんまくごっこ?見たいなのしてる時に私と話をしてた・・」
「へぇ本当すごいわねぇ、記憶力がいいのね。その通りよ、まぁ目的とか後で話すわ」
「(紫さんっていっつもへらへらしてるけどやるときはやりますよね)」
「(あなたがへらへらしてるとか指摘できる立場?)」
「(いやー・・あはは・・ほら怒らないで?ね?咲夜さんん・・)」
「(・・はぁ、いつもどおり緊張感ないわね・・・私いらなかったと思うんだけど・・)」
各々の思いもあるが、この中で一番疲労しているのはどう見てもオスマンとコルベールである。これなら王室からガミガミ言われたほうが楽かもしれない、と思うほどである。オスマンほどの人間なら紫だけでなくアリス、咲夜、美鈴一人ひとりの実力はなんとなく分かってしまっていた。
どうあがいても勝てない、と。あの頃のワイバーンが可愛いと思えるほど・・・。
そして学院長室、一同が集まり紫の気まぐれか杖を返却しさらに学院側を困惑させる事になっていた。
「んんっ・・先ほどは失礼した。わしはこのトリステイン魔法学院長のオスマン、こっちの薄いのがここの教師の一人、コルベール。その隣がギトー君じゃ。そしてそこの子が「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールです・・!」・・じゃよ」
「あらご丁寧に。じゃ改めて私、霧雨魔理沙の住む幻想郷を創るのに携わった一人の八雲紫といいますわ。そしてこの子がアリス・マーガトロイド」
「子ども扱いしないでほしいわ」
「うふふ、そしてそこのメイド服のが十六夜咲夜。そしてその隣のチャイナ服のが紅美鈴よ」
「よろしくねー」
へらへらと笑いながら美鈴は手をオスマンたちに振っていると、咲夜が軽く前に足を振りそのまま美鈴のすねへかかとを当てる。ひぎぃ、と短く声を上げその場に座り込みすねを擦っている。
さて、と紫が話しはじめる。
「ここの責任者として聞きますわミスタ・オスマン?幻想郷から勝手に霧雨魔理沙を連れ去ってどう責任を取るおつもりで・・?・・んーその前にどうやって連れ去ったのか今一度聞きたいわ」
「・・。召喚の儀というものが2年生になるための試験があるのじゃ。そこでミス・ヴァリエールが召喚したのが霧雨魔理沙・・というわけじゃ。その術者に合った使い魔が召喚されるため対象を選ぶことは出来なのじゃ」
「ふうん・・・博麗大結界に軽い干渉だけですり抜けてくるなんて・・いやこの子に問題があるか・・それより魔理沙はどこにいるのかしら?」
「そ・・それはじゃの・・・」
言いにくそうにオスマンが口ごもるが、ルイズは全て知っているため手を上げ発言したそうに紫を見ていた。
元気な子は好きよ と一言言い発言の機会を与える。
「魔理沙は・・・タルブ村って言うところで今戦争が行われています。そこに巫女さんを送るため行ってしまいました・・」
「みこ?珍しい名前ね、それより戦争・・?これだから人間は・・・あの子にそんな経験させたくないのだけれど・・・今すぐにでもあなたたちを殺してやりたいわ・・けどそうしたらあの子も悲しむだろうし考えておいてあげるわ」
「紫は魔理沙に優しい、いや甘いというのか・・」
「あら?私は幻想郷に住むものには優しいわよぉ?」
「どーだか・・」
紫とアリスが会話をしながら周囲を見渡すと、オスマンもコルベールもハンカチをおでこに当て汗を拭いている。。
さて、と改めて魔理沙に会いに行くためそのタルブ村へと案内をさせるべく、その村に行ったことがある者を探すべくオスマンへ聞くと、オスマンが口を開く前にルイズが発言する。
「わ・・わたしつい最近いってきました!」
「あら、あらあらこれは好都合じゃない。じゃあ先生方この子借りますわよ。・・言っておくけど拒否権はないわ」
みすみす生徒をいい様に扱われようとしているにもかかわらず、手出しができない状態にオスマンもコルベールも力の無さに打ちひしがれていた。
そんな様子も関係ないとばかりに紫は、ルイズに対し頭に手を置き一言伝える。
「そんな怖がらなくていいわ。そのタルブ村という所を強く思い浮かべなさい。もっと言うとそのタルブ村の一番印象に残った場所ね」
「っ・・は・・はい(一番・・一番・・あの赤い門みたいなのとぼろっちいけど安らぐあの木の建物・・)」
ルイズの思考を読み取った紫は、その思考内容に目を見開き疑問が生まれる。どうして、と無意識に呟いてしまうほどだ。
「(どうして?どうして博麗神社が?いや酷似しているだけっていう可能性・・は無いわね。も・・もしかしてさっきの みこ と言うのは巫女という意味・・?)「紫どうしたの?」・・いえ・・大丈夫よ。さて念には念をこめて先行する人を選ぶわ」
「人間である私が適任かと」
そう発言したのは、幻想郷から来た中で唯一人間である十六夜咲夜である。紫も同意見だったのか頷くそれと同時に美鈴も手を上げる。しかし即却下され結局のとこ、ルイズと咲夜で先行することになった。
オスマンたちの目の前でスキマを使い、タルブ村までの道をつなげる。
「!?な・なんじゃそれは・・先住魔法か・・!?」
「で・・ですが今まで見たことないものですぞ・・オールド・オスマン」
「さぁルイズをつれて先行しなさい。適当に手で合図でもすればいいわ」
オスマンたちの疑問に答えず咲夜と怖がるルイズをあやしながらタルブ村へのスキマへ入らせる。
入る前に交流を深めようと思いルイズは一、二言咲夜に質問することに。
「あ・・あのずいぶんこういった事に手馴れているようですが、本当にメイドなんでしょうか・・?結構お若そうですけど・・」
「そうよ?紅魔館っていう吸血鬼を主とする屋敷のメイド長よ?」
「ひぃ!?き・・きき吸血鬼ぃ!?で、でも咲夜さんは人間なのでは・・?」
「そうよ?こんなこと普通よ普通。あと若そう、っていうけどあなた・・ルイズと変わらないと思うわ」
「え?私16歳なのですが・・・おいくつで?」
「17よ」
その瞬間、ルイズに衝撃走る。あの鋭いナイフの様だが気配りは完璧、学院は愚か、ヴァリエール家のメイドでも比較にもならないだろう。そしてルイズは自分を 天下に冠する美少女、と自己評価していたが一瞬で崩れ去っていた。魔理沙は美少女というより可愛い、という方面なので大丈夫だったが・・。
その様子に咲夜は意図を読めず、首をかしげながらルイズを連れスキマへ入っていく。
入ったのを確認すると、紫たちはオスマンたちに視線を向ける。アリスもオスマンへ顔を向けようとした時にあるものが気になっていた。
それに手を伸ばそうとしたが、素早く逃げてしまった。が事前に配備していた人形により退路を立たれ、アリスにつかまってしまう。
「あらねずみ・・・普通のねずみではないわね。魔力を持っているしなかなか長生きしてるじゃない。妖怪?」
そう呟きつつ、そのねずみと繋がっている魔力の糸(アリスが人形たちを操作する時のものと似ている為、見えるのである)の先を見る。
すると糸の先には・・オスマンがあわてた様子でこちらをみていた。
「ふうん、オールド・オスマンだったかしら?あなたとこのねずみは強い魔力の糸で繋がってるわね。人形じゃないし・・すると使い魔、かしら?」
「う・・うむそうじゃ。魔力の糸とは・・なんじゃね?」
「まあ気にしなくていいわ、その道に精通してるから見えるだけで気にすることでもないわ。なかなか信頼し合える仲みたいね、それに良い子。これからも仲良くしなさい」
アリスはそう言うとねずみを優しく離し、オスマンの元へ戻るねずみを見守る。じゃれ合う姿を見るとこれももしかすると自分の夢への知識になるかもしれないと考え始める。
先ほどから気になっていた質問をコルベールは意を決し、恐る恐るだが聞くことに。
「あなた方は杖もなしに見たこともない呪文を使う・・まさかエルフ・・なのですか?」
「エルフ?いいえ違うわ、といっても吸血鬼でもなければ人間じゃないわ」
「では亜人・・でしょうか?」
「んー・・・言い方の違いかしらね?まぁその認識で間違いないわ。私たちの言葉で言うと 妖怪 って言うのよ。覚えておきなさい」
コルベールもオスマンもまさか霧雨魔理沙の知り合いに、これほどのものが居たとは思っておらず胃が締め付けられる思いだった。
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年齢は自分で適当に決めています。幻想郷側の人間はだいたい17歳だろうと考えてます。