ゼロの使い魔~白黒の自称普通の魔法使い~ 完結   作:WryofuW

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第五話 幻想郷からの来訪者

 巫女が魔法学院へ来てから数日がたった。

 オールド・オスマンじきじきの計らいで、学生にも巫女に対し礼儀を心がけるよう注意したためか特に問題は起こらなかった。しかしやはり貴族という立場の学生にとっては学院長の言葉であろうとなかなか納得できないでいた。

 

 とはいえ直接手を出そうものならキュルケやタバサが相手になるだろう。それに霧雨魔理沙の存在。あの時のギーシュのようにはなりたくない・・と言う考えもありそれであれば関わらない方が良いと判断していた。

 結局、巫女の周りにいるのはいつものメンバー。今は昼食の時間でありだいぶ慣れた巫女は楽しく会話をしていた。とそこでコルベールが汗を周囲に撒きながら大急ぎで食堂へ入ってくる。

 

 

 「み・・巫女さん!緊急の知らせです・・・!はぁ・・はぁ」

 

 

 コルベールのこの表情を見た巫女は、目を細め真剣な表情になる。しかし息切れが激しくしっかりと声に出せてなかったため水を手渡す。

 

 

 「す・・すみません・・巫女さん、心して聞いてください。あなたの故郷であるタルブ村の近く、ラ・ロシェール上空でレコン・キスタ率いるアルビオン艦隊とトリステイン艦隊の戦闘が発生しました。さらにアルビオンはトリテイン艦隊に対し、宣戦布告をしたようです。つまり・・戦争が始まります。」

 

 「・・なん・・だと?それは本当か?」

 

 

 巫女の気迫に驚きながらもそれを表に出さず、コルベールは話を続ける。周りにいたものも息を呑みコルベールの話を聞いている。

 

 

 「はい・・・領地の兵士は迎撃に向かっているようですがそう長くは持たないでしょう・・・。」

 

 「・・・そうか・・・ミスタ・コルベール。私は向かう、タルブ村を守るために」

 

 「いけません!戦争と言ったでしょう!?命を捨てに行くんですか!?お止めください!」

 

 「私はタルブ村を守ると誓った者だ。理由はそれだけあればいい・・ここで一番早い乗り物は?」

 

 

 この学院からタルブ村まではどうやっても馬で2日はかかるだろう。しかし戦争は今もう始まっているためどうやっても間に合わない。

 馬以外の乗り物というと、シルフィードになるのだろう。コルベールはそう思いタバサへ視線を向けようとしたが、すぐに思いとどまる。

 

 

 「馬で2日・・・それ以外・・(私は馬鹿か!学生をそういう風に使おうなど・・・これでは教師失格だ)」

 

 

 そう思ってしまったコルベールには考えが浮かばず一言謝ると、巫女は肩に手を置きそのまま外へ出て行ってしまう。

 

 

 「巫女さんどちらへ向かうのですか!?」

 

 「タルブ村だよ。時間をかけても私は行かなきゃいけない・・それと馬を借りるよ。キュルケ、シエスタに一言伝えてくれ、行ってくると・・それとタルブ村に越させないようにしてくれよ?」

 

 

 その言葉に頷きながらもキュルケはコルベールにタバサの使い魔、シルフィードをどうかと提案する。しかし  君たちは学生だ。わざわざ戦場に送り込むことはしたくない。 と言い、黙ってしまう。

 と同時に巫女の元へ走るものが一人、魔理沙の姿があった。

 

 

 「巫女さん。馬より速いのがあるんだぜ?」

 

 「?・・本当か!?頼むそれを紹介してくれ!」

 

 「あいよ!んじゃあ私の後ろに乗ってくれ!あ、心配とかはいらないんだぜ?幻想郷最速ではないけど・・かなーり速いんだぜ!」

 

 「・・・魔理沙・・・すまんよろ「こっっらぁ魔理沙ぁ!何勝手なことしてんのよ!」「げっ・・ルイズ!」」

 

 「巫女さん早く乗り込め!さぁ・・飛ばすからな?」

 

 

 ルイズの静止も無視し、魔理沙は八卦炉を後部にセットし飛び立ってしまう。ルイズは跳ねながら怒っている模様だが、すでに2人の姿は米粒ほどだった。

 ルイズも馬で追いかけようとするが、それをコルベールが阻止しいったん自室へ戻るよう指示する。さすがにキュルケも分かっているのか、ルイズに対し行かせないように一言伝える。

 

 

 「ルイズだめよ、あなた追いかけようとしてるでしょ?ゼロのあなたが言ってどうするのよ。魔理沙の邪魔したいの?」

 

 「・・・悪い!?魔理沙が戦場にいっちゃったのよ!どうして私を置いていっちゃうの・・・私の使い魔のくせに・・・これでいなくなっちゃったらまた一人に・・・うぅ・・ぅぁ」

 

 「あああもう。ほらもう泣かないの!言い過ぎたわっ」

 

 「キュルケはいつも一言多い。だから好意に思ってる相手でも「いちいち言わなくていいわよっ!」・・・ふぅ・・」

 

,,,,

 

 ルイズたちを置いてしまったが、とりあえずそれは置いといてタルブ村へ今の魔理沙が出せるスピードで向かっている。

 最初はこのスピードに慣れてない様子で、話しかけても返事が素っ気無いものばかりだったが今は会話がスムーズに行えている。

 

 「巫女さんもうへーきか?」

 

 「あぁすまんな・・。しかし速いな・・ここまでだとは。これなら結界が破壊される前にいけるはずだ」

 

 「ふーん・・あ、そうそうその結界ってどのくらい持つんだ?」

 

 「船の放つ大砲は正直わからん・・・数発は耐えられるはずだが・・・オーク鬼程度なら手を出すこともできんはずだ。触れればその部分が消滅するからな・・村長に渡したあの札で敵味方を分けることができるのさ」

 

 「・・・村に直接砲撃するとは思えないから大丈夫だと思うんだけど・・・すごく良いところだから傷はついてほしくない・・それになんとなく幻想郷を思い出すんだぜ。あそこのタルブ村は・・」

 

 

 魔理沙の言葉に巫女も同意し、一息吐き気を引き締める。

 馬で2日の距離を何倍ものスピードで移動できるとはいえ数時間はかかってしまう。普通なら休憩するのだがタルブを守りたいという魔理沙の思いもあり、ぶっ通しで飛び続けていた。

 近づくにつれ艦隊の姿も見え、雷のような音が聞こえてくる。さらには艦隊から降りる黒い何かも見えてくる。降下していくグリフォンなのだろう。

 

 

 「魔理沙着いたら村でおろしてくれ、そこからは私にまかせて学院へ帰るんだ」

 

 「へへっ嫌だね!ここまできて引き返すなんてアホみたいなことできるわけないじゃないか」

 

 「しかしこれは戦争だ。魔理沙の言う弾幕ごっこではないんだぞ!私だけで十分だ」

 

 

 あまりにも身勝手な巫女の発言に、魔理沙は我慢できなかったのかスピードを維持しながらも声を張って自分の気持ちを伝える。

 

 

 「あほかあんたはっ!村を一人で守ってたと言ってた時は素直にすごいと思ったけどさ、今はっきりしたぜ」

 

 「どうして周りを頼ろうとしないで一人で抱え込もうとするんだ!もっと人を、私を頼ってくれよ。力はそれなりにある、私はやれるっ」

 

 「けど・・・っ!」

 

 

 -あなたはいっつも一人で抱え込もうとする。博麗の巫女として正しい姿だけど、友人としては寂しいわ。この幻想郷のルール上、直接手を出すことは難しいけどもう少し頼ってほしいわ・・・話を聞くにしてもなんにしても・・そんなに信用ないかしら・・・私。-

 

 そうだ・・・あれはあいつが酒に酔った時に零れるように出た愚痴だったか・・その時はよく分からなかったが・・60数年生きてて私はまだ学ばないのか・・。

 

 ふぅと一息吐き、巫女はただ一言 空のほうは任せた。 と伝えると、魔理沙は途端に笑顔になり 任されたぜ! と元気よく言葉を発する。

 

,,,,,,

 

 

 そのころ神聖アルビオン、レコン・キスタ。

 ラ・ロシェール上空には多くの戦艦が浮いており、その中でも大型の分類であるレキシントンからグリフォンが降りていく。それを見守るのは艦長であるサー・ヘンリ・ボーウッド。だが険しい顔をしながらその様子を見ていた。

 

 

 「ボーウッド艦長。気分はどうだい?」

 

 「・・・ワルド子爵か・・・どうもしませんよ。汚いやり方をしている自分に腹が立っているだけです」

 

 「ふふっ、これは戦争だ。ずるいもなにもあるまい」

 

 「・・・そうですね。それより先ほど不可解な報告があがりましてね」

 

 

 

 ボーウッドの言葉にあまり関心を示してはいないが、とりあえず聞くだけ聞くことに。情報という物は、大切だということをワルド自身分かっている為どんなに小さなことでも聞いていた。

 ボーウッドへ視線を向け続きを催促する。

 

 

 「ここから左のほうにタルブ村というのがあるのはご存知で?」

 

 「名前だけな。偏狭の地というだけで特にこれと言ったものはないと思うが?あぁワインが名産だったかな」

 

 「・・・そのタルブ村が謎の薄い膜で覆われているらしく一切の攻撃が通用しないとのこと。大砲はまだ試していませんけど」

 

 「ほぅ・・・そうか、心当たりがないわけでもない。それに外に出てみればわかるだろう。タルブならここからすぐだしな」

 

 

 その言葉にボーウッドは頷き士官に一言伝え甲板へでる。タルブのある方向を見ると、確かに薄く何かがあるのことが分かる。それを見たワルドは獲物を見つけた様な鷹の目をし、ボーウッドへ何もいわずワルド専用のグリフォンへ乗り込む。

 そのままタルブへ降下しながら進んでいく。ボーウッドは何もいわず身を翻し中へ入っていく。

 

 

,,,,

 

 場所は変わり幻想郷の霧の湖に隣接する紅魔館。

 そこには八雲紫をはじめとする名だたる面子がそろっていた。全員魔理沙と深く関ってきた者たちである。

 転移魔法を念入りにチェックするパチュリー・ノーレッジ。そしてそれを心配するように紅魔館の主、レミリア・スカーレットが声をかける。

 

 

 「パチェ、大丈夫そう?」

 

 「えぇ問題ないわ・・・・・よし、これで行けるわよ。ふぅ・・・異世界とつなげるのは流石に時間かかったわね・・」

 

 

 完成を待っていたかのように後ろから一筋の線が現れ、それはすぐ大きくなりそこから八雲紫が姿を見せる。

 来る事を知っていたかのように驚きもせずそちらに視線を向ける2人。

 

 

 「流石ね、こればっかりはあなたにしか出来なかったし報酬は期待していいわよ。・・・さて魔理沙のいる向こうへ送る人は決まったかしら?」

 

 「無論、咲夜と美鈴を行かせるわ。私たちは動けないからな」

 

 「そう、賢明ね。こちらは私自身、そしてアリスあたりも連れて行くわ」

 

 「あなたがいってここは平気なのかしら?」

 

 

 ここ、と言うのは幻想郷を指しておりすぐに察した紫は 藍と霊夢がいるから平気。 と伝えると納得したように返事をする。

 パチュリーがすぐに起動する事を伝えると紫はスキマを使い、アリスを(無理やり)連れてきて魔方陣内へ入る。

 パチュリーが先ほどは流したが思い出したかのように疑問が湧き、紫のほうを見ながら呟く。

 

 

 「しかし霊夢も行くものだと思ってたわよ。よく納得したわね」

 

 「あの子自身がいってたのよ。あんたが行くなら私はお留守番。魔理沙をよろしく ってね。ってさ、全く・・行きたくて飛び足したいのだろうけど我慢しちゃって・・9代目みたいだわ・・」

 

 「・・・そ、じゃあ起動するわよ。位置は魔理沙が召喚された広場。このゲートはとりあえず何回かは往復できるから何かあれば戻ってくることね。アリスも気をつけていきなさい・・じゃ行ってらっしゃい」

 

 「折角の外の世界だから旅行気分で行って来るだけど。人形たちもちゃんと持ってきたし」

 

 「咲夜、美鈴。お土産よろしくね?」

 

 「はい、美鈴の暴走は私が止めますので」

 

 「ちょっ咲夜さんん!?それはなっ」

 

 

 美鈴が言葉を言い終える前に魔方陣が発動し、その中にいた者は魔力の粒子を残し、一瞬にして居なくなった。

 パチュリーもレミリアも魔方陣のあった場所を見て一息つく。

 

 

 「パチェ、ご苦労様。こあ、紅茶2つ分ね。よろしく」

 

 「は、はいぃい!おまかせあれです!咲夜さんのポジションは私がもらったぁぁっっ」

 

 「・・・無事だといいわね」

 

 「ふふ、いっつも心配してたものねパチェは。1年足らずで異世界とのゲートを完成させるんだもの。魔理沙のおかげかしら?」

 

 「レミィ!余計なことは言わなくていいの!・・」

 

 

 シーンとする図書館内でドタドタと走る音に、パチュリーもレミリアも苦笑いをしていた。

 

..............

 

 


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