ゼロの使い魔~白黒の自称普通の魔法使い~ 完結 作:WryofuW
第一話 シエスタの故郷 タルブ村
アンリエッタの私情が詰まった任務を終わらせたルイズと魔理沙は、その日はすぐに寝て次の日となったがちょうど休日だったためいつもより長く寝ていた。
ルイズが起きたのは太陽が昇りきりそうな高さであり、すでに魔理沙は起きて髪を梳かしていた。
「ん・・・ふぁ、魔理沙おはよぅ・・」
「んー?起きたか。私もついさっき起きたばかりだぜ」
あそ、と寝ぼけながら答え、着替えるためクローゼットを開けいつもどおり服を選ぶがそこで違和感を感じる。
「ねぇ魔理沙、こんなドアあったかしら?」
「げっ・・あっ、いやそれはだな」
「・・・?」
そこを問答無用で開けると、ずらっと複数の似たり寄ったりの魔理沙の服がハンガーに吊るされていた。魔理沙へ目線を移すが、サッと別の方向を見たり下手糞な口笛を吹いていた。
「・・んあ・・?・・!あ・・あんた!なぁにかってに私の部屋いじくってんのよ!つかこれ買うのにドンだけお金つかったのよ!!」
「ん?いあ?私が作ったんだぜ?なかなかうまくいってるだろ?」
はぁ?とルイズは何いってんだという目つきで魔理沙を見つつ、改めて服を見るが職人が作ったものと比べても違いがわからないほどであった。質感はトリステインとは違う気がし、そこも含め質問をする。
「まぁこれに関してはまあいいわ。けど自分で作ったってどういう意味よ?」
「そのまんまなんだぜ。魔法で普通にちょちょいのちょいなんだぜ。・・っとあのじじぃに報告しにいこうぜ」
「じじい?だ・・はっ、もしかしてオールド・オスマンのこと!?魔理沙あんたあほなの!?そんな呼び名は駄目よ!あっちょっとまって・・服のこと教えなさいよ!!」
,,,
「ふうん、魔理沙が使う魔法ってそんな事までできるのねえ・・・うらやましいわ」
「そうかぁ?こっちの魔法もすごいと思うけどな、お、ついたぜ!おいじじぃはいるぜー!」
「ん?むぅその声はミス・魔理沙か。わしをそんな名前で呼ぶんじゃないぞ、まあ入りなさい・・」
魔理沙は入るなりすぐに八卦炉を取りだし、オスマンに向け口を開く。オスマンもルイズも何をしているのかが分からず、首をかしげている。
「フーケから聞いたぜ!そのねずみ使って覗きしてるんだってな!?」
「ぶふぉっ・・ごほっ、ミス・魔理沙!とりあえずそれを下げなさい!話はそれからじゃ!」
「いやだね!ルイズお前だって被害にあってるかもしれないんだぜ?」
一応ルイズは、オスマンの盗撮疑惑話は知っていたが、それは噂で嘘だろうと思っていた。だがこの動揺を見るからに・・察してしまった。
「魔理沙、とりあえず報告だけしましょ?」
「え?あぁ・・分かったぜ(あちゃ、この雰囲気のルイズは怖い。無表情で冷たい目線だもん・・ま、私は大人だからな!ここは譲ってやるんだぜ)」
詳細は省き、どんな事があっただけを説明し今回の任務を完了したことを報告する。オスマンは一つ一つに頷きただ一言、ご苦労様じゃった。 と、それだけで今は十分身に沁みるのを実際に感じていた。
先ほどの怒りも四散してしまいこの後の予定をどうするか考えていると、オスマンから再度呼び止められる。
「おーおそうじゃった。姫殿下からの贈り物、ではないがミス・ヴァリエールに結婚式の時の巫女役を任せたいそうじゃ。とても名誉なことなのだぞ?それを断るなんてことはせんでくれよ?しないだろうがの ふぉふぉ」
そういうと始祖の祈祷書を渡しすぐに下がらせる。
「ふぅ・・・あのマジック・アイテムは危険じゃよ・・ほんとうに・・のう?モートソグニルや・・(ちょろくて助かったのぅ・・)」
ちゅうちゅうと鳴いているが、もう勘弁してくれ!あの金髪娘には近づきたくない!・・と言っている様だ。
,,,
自室に戻った2人だが、その内容を見るがどのページも白くルイズはため息を吐く。
「なによこれ、姫様から送られてきたってことは本物じゃないかと思ったのに・・これも偽物ね・・」
「・・・なぁちょっと私にも見せてくれよ・・・さんきゅ・・ふむふむ」
渡した途端、中身を見る前から首をかしげたり裏にしてみたりと試行錯誤してる。
「ねぇ何してんのよ」
「んー偽物とかよくわからんけどこれ自体が魔力を持ってるっぽいな。なんかきっかけがないとだめなのかなあー。あーこんなときにパチュリーがいればなあ・・」
「だれ?ぱちゅりーって。魔理沙が頼るってことは凄いのかしら?」
「んーまぁ世話にゃなってるよ、魔法使いが読むような本を借りてるのさ。そのパチュリーがどれくらいすごいかっていうと・・そうだなルイズにわかりやすく言うと・・・あのオスマンのじぃさんが霞むくらいには(多分な)」
それを聞いたルイズは、何言ってんだこいつ と目線で訴えかけてくる。私もあのじいさんの実力を知らないからこの例えは良くなかったな。
「まあ深くは考えんなって!そのくらい知識と力はあるってことよ。一応100何歳とからしいしよ?・・・話題を戻すぜ?・・私に分かる事は、魔力が秘められた本ってことくらいかな。なんとなくだけどルイズの魔力に似てるな、うん」
「ふーん・・・え?わたしの?どういう意味よそれ・・そういえば色で判別もできるんだったわね。私の色ってどんなんよ?」
「んー一色だけじゃないっぽいんだよな。灰色の時もあれば赤い時も。今は灰色だけど魔法使うときは赤い・・かなぁ。まぁ何かのきっかけで見れるようになるじゃないかと思うんだぜ。とりあえず肌身離さず持っておけよな」
「はっきりしなさいよ。あんたらしくないわ」
たはは、と魔理沙は、後頭部に手を置きながら恥ずかしそうにしている。その後、時間も時間のため食堂へ向かうのだった。
・・・いつも通り魔理沙はマルトーのとこへ。一度ルイズから貴族テーブルで食べたら?、と言われたが断っていた。単純な話、豪華すぎて気が滅入ると言う物だ。そこで普通にご飯を食べていると、シエスタも食事に加わる。
「あ、そうそう。魔理沙さん!私少しお休みして地元へ帰ることにしたんです!もしですが遊びに来ませんか?ヨシェナヴェもご馳走したいです!」
「んぐ・・・?タルブだっけ?んールイズしだいだな。勝手に離れるとうるさいだろうしな、ははっ。許可もらったらついていくぜ」
「えへへ。許可でるといいですね!魔理沙さんの箒に私も乗ってみたいんですよね!私の親にも紹介したいですし、もう一人親のような方がいるのですがその方にも魔理沙さんを会わせたいです!」
目をきらきら光らせ期待しているシエスタに苦笑いの魔理沙だが、満更でもない様子。
「はは・・会わせたい人ってだれ?」
「私の名前をつけてくれた人でもあるんですよ!村を守る人でものすごく強いんです!祖父とも会ったことがあるらしくて良くお話をしてくれるんですよ」
「ふうん・・・ま、見てからのお楽しみだな!」
はい! と元気よく返事をするシエスタともう少しだけ食事を楽しむことに・・。
そして食事も終わりルイズと合流後、休みの日だがとりあえず自室へ戻ることに。
・・・そして視点は変わり、学院長室。
先ほどからため息を吐いたりめんどくさい、といいつつある手紙を見ながら思っているのだった。
「かぁーっ・・王都のガキんちょどもめ・・わしを扱き使いおって・・・自分で調べればよかろうに・・ワシも暇じゃないんじゃぞ・・・!ぐぬぬ」
とその時ノックと共にコルベールが訪問してくる。オスマンはこの王都からの任務をコルベールに押し付けようと考えていた。
「んんっ来たの。ミスタ・コルベールにお願い・・いややってもらいたい事があるのじゃよ」
「はぁ・・それはいったい・・?」
オスマンが持っていた手紙をコルベールに渡し、その内容を読ませるとコルベールも察する。
その内容とは。
つい最近話題があがった内容で、タルブ村で人間とは思えない者が村で生活しているとのこと。
その者を調査、できれば連行し王都へつれてきてほしい。なお、もしかしたら亜人や吸血鬼の可能性がある為、もっとも信頼できるオールド・オスマンにお任せしたい、とのこと。
なお王都から実力のある人を派遣するつもりだったが、まったく時間がとれずやむ終えずオスマンへこれが回ってきた。
「・・・なるほどそれで私に」
「うむ、実力はこの学院でミスタ・コルベールは上から数えるほうが早いからの。それにもし行ってくれれば研究の費用をまわしてやってもよ「オールド・オスマンからの頼みとあれば断るはずがありません。行かせていただきましょう」・・・うむ・・(はぁ・・扱いやすくていいのぅ)」
「それでは明日にでも出発いたします!それでは準備するので失礼いたします!(これは何というめぐり合わせ・・竜の血の件もある。ふほほ・・・やる気がでてきましたぞ!)」
そう言うと素早く翻し、研究室へと向かっていってしまう。
オスマンも まぁ良いか などと思っておりお茶を一口飲みながら一息つくのだった。
ルイズにシエスタの件を話すと、快諾してもらい数日後に出発することに。ルイズ曰く、魔理沙は私のために良く働いてくれたから少しは休め・・と。ルイズもかなり丸くなったもんだな。
どうせなら一緒に行こうと誘ったのだが、授業もあるし内容も考えないといけない との事。
そして出発前日の夜。
ルイズが言わなくてはいけない祝詞を考えたため、聞いてほしいとの事。
「んっん!じゃあ言うわね。なにか気がついたら遠慮なく言ってね?」
魔理沙は頷き、続きを催促する。
ルイズは一呼吸起き、口を開く。
「水の加護 森の魂 無き旅幾歳 己の神祀り想いの灯 西照らしー・・っ」
「あー・・・うんなんつうか他のにしとけって、な?(どっからそんな祝詞でてくるんだよ、つかそれぱくり・・)」
「え?そう?けっこう良さそうなんだけどなー・・」
「(他は知らんけどこの国じゃあ神様、なんて存在居ないと思うんだけどな。)そんな凝ったものじゃなくて普通のでいいじゃないか?火に感謝ー水に感謝ー土に感謝-みたいな」
「・・・そうね。もう一度考えてみるわ!とりあえず横になりながら考えるとするわね。寝るわよ」
そういうと始祖の祈祷書と指から外した水のルビーをテーブルの上に置きパチン、と指を鳴らしランプを消す。2人は気がついていないが、始祖の祈祷書と水のルビーが共鳴するかのように少しずつ光を放つようになっていくが、今はまだ微妙に発光するだけで暗いところでしか分からなかった・・。
そして当日、シエスタと合流も完了しマルトーにも声をかけ出発することに。
シエスタの故郷、タルブ村はラ・ロシェールの近くにある村でここから2日はかかる場所らしい。魔理沙もさすがにぶっ続けで飛ぶことはできない為最低1夜は野宿となるだろう。
「じゃ、シエスタいくぞ?」
「はい!あの魔理沙さん。乗っても大丈夫ですか・・?私重くないかな」
「なーに心配してんだよ。そら早く乗りなって・・・よしいくぞ?安全運転でいくからな」
「は・・はい・・」
ぎゅっ、と魔理沙に抱きつくシエスタに苦しそうな表情をしつつも、時機に慣れてくるだろうと思い何も言わず徐々にスピードを上げていく。
初めて空を飛ぶのだから怖いのは仕方ないだろう。と思っていたのだが思った以上に慣れるのが早く、左右を何度もみたり元気よく話しかけてきていた。順応性の高い女性だなと新しい一面を見ることができた。
その後ろ姿を見守るように見るルイズと隣に住むキュルケであった・・。
「・・・あーーーーやっぱ一緒にいけばよかったわー!」
「・・・ルイズ、こっちまで聞こえてるわよ・・「うげっキュルケぇ!?ななな何であんたが!?」」
「そりゃたまたま見かけたかと思ったら大声で叫ぶ隣人がいるんだもん」
あうあう、と頭から煙を出すルイズにキュルケは、そんなに気になるなら追いかける? と提案する。
「どうせあんた自身でどうにかできる問題じゃないでしょうに・・・タバサまかせじゃない」
「・・なかなか言うわね。正論だけど・・・ま、いきたくないならいかなくていいわよ?」
「いくに決まってるじゃないの!暇で仕方ないわ!」
よし決まり! とキュルケはルイズと合流後タバサに頼むのだが、やはり押しに弱いタバサであったのは言うまでもない。
そしてシエスタたちはと言うと、魔理沙のおかげで2日かかるところを1日で到着できそうなほどであった。
今では鼻歌まじりのご機嫌な様子のシエスタについ嬉しくなる魔理沙だった。ふとシエスタが疑問を口にする。
「魔理沙さんは故郷に帰ったりしないんですか?」
「ん。遠いんだよ 私一人じゃ帰れないくらいにはな。」
「・・・帰りたいとは思わないんですか?」
「帰りたいさ。思い出せば思い出すほどな・・・あーあ今も割りと楽しいけど向こうでもたのしかったな。弾幕ごっこがこっちじゃできないし・・あーお酒のみたいなあ・・霊夢に会いたいなあー・・」
「あっ・・なんかすいません。ま、魔理沙さん戻ってきてください!安全運転でおねがいしますぅう!」
若干憂鬱になった魔理沙の不安定な運転に、意識を取り戻そうと必死になるシエスタの悲痛な努力が垣間見えた・・・。
・・・夜食の心配はするだけ無駄らしく、野草や木の実などに詳しいシエスタ、そしてキノコなら任せろ!とでも言わんばかりの魔理沙。
シエスタはもしもの場合のために回りに罠を仕掛けており、もし何者かが近づいたら音が鳴るよう線で囲ってあるようだ。まあ、もしもの時は私がなんとかするけどな。
こうして安心かは分からないが就寝することに・・・
.........
水の加護 森の魂~ の元ネタは 謳う丘~EXEC_HARVESTASYA.~ の歌詞です。よかったら聞いてみてくださいな