ゼロの使い魔~白黒の自称普通の魔法使い~ 完結   作:WryofuW

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第十話 ワルドの目論見と魔理沙の苦難

 そしてその時はやってきた。おいつめられたアルビオン王国は、抗う者を集わせ最後の抵抗が始まろうとしていた。。兵士はすでに船に乗り込み号令を待つだけ。

 

 そんな時だが、今ルイズ一行とウェールズは協会にいるのだった。理由はワルドとルイズが結婚する為だが、何故だかいまこのタイミングで結婚式をやろうとしている。正直誰に聞いても馬鹿馬鹿しい、と思うだろう。しかしルイズとワルドはウェールズの指揮の元順調に進めていく。

 

 

 「新郎、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。愛を誓い、いつまでも妻を幸せにすることを誓いますか?」

 

 「はい 誓います。」

 

 「では新婦、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。愛を誓い夫と共に人生を歩んでいくことを誓いますか?」

 

 「・・そのワルド・・・あ・の・・ごめんなさい・・私結婚はできないわ・・・少なくとも今は」

 

 

 ウェールズの声に完全な拒否の反応しか示さないルイズに、ワルドは少し焦りながらも誓う言葉を言うよう催促する。

 

 

 「な・・・なにをいっているんだ!僕のことは嫌いなのかい?なぁ嘘だといってくれよ!世界だ!私とルイズで世界を手に入れよう!な?だから・・」

 

 「・・・?なるほど。ええ、今ので迷いは無くなったわ。ごめんなさい、こんなに無理やりな結婚式。親もいなければこの雰囲気といい状況も切羽詰ってる。こんな状況で結婚式するなんて、あなたどうかしてるわよ?」

 

 

 ここでようやくウェールズもワルドの無理やりな姿勢に違和感を覚え、ワルドが聖地だとか虚無だとか何かいっているがそれを後回しにして魔理沙たちに目線を送りつつ回りにも目線を向ける。

 

 がその時、ワルドが振り向き様に閃光のような速さでレイピア型杖でウェールズの胸を一突きしてしまう。

 やったか!? とワルドは、にやつく顔を隠さなかったがすぐにその表情は崩れる。その間ルイズは、いったい何がどうなっているのか理解できず放心状態である。

 

 

 「(結婚を迫られたかと思ったらワルドがウェールズ皇太子殿下を刺してる・・・?う・・そ。そんな魔理沙の言うとおり、なの?私は・・わたしは敵に好意を寄せていたの?今まで私に近づいていたのは・・)」

 

 「なっ・・・刺さらないだと!?なんだこの膜みたいなのは・・!?なにがどうなって・・っ!?」

 

 「・・!?こ・・これは守護の札・・・これは・・・きっさまレコン・キスタの者か!」

 

 

 胸に入れておいた魔理沙から渡された紙、守護の札が発動したのか小さな結界が現れる。ワルドが驚いている隙に体当たりで突き飛ばし、ウェールズはルイズを守るように後退していく。

 

 ワルドの考えていた流れとしては、アンリエッタの手紙を奪いルイズにどういう返事とか関係なく連れ去り、さらにはウェールズの命を奪いつつあの使い魔も止めを刺す予定だったが、最初から躓いてしまった。このスムーズな流れをみると自分の正体がばれていた、と予想できる。

 

 そこからのワルドの行動は早かった。突き飛ばされ起きるまでに詠唱を済ませ、ユビキタスによりワルドの分身である偏在を複数出現させる。それと同時に、ウェールズの指示により周囲からメイジであろう兵士が現れると同時に魔法を唱えている。

 しかしワルドや偏在に一切あたることもなく、むしろ逆に隙を狙われてしまい一掃されていく。

 

 ワルド自身はウェールズと戦闘をし、ほかの偏在はアルビオン兵士たちに一人、キュルケとタバサそして放心から多少開放されたルイズに一人、デルフを抜いた魔理沙に対し2人の偏在が相手となっている。

 

 

 2人も偏在を相手にしている魔理沙は一人愚痴っていた。

 

 

 「っ、どーして私に2人も相手なんだよ!一人づつこいよな!」

 

 「「そんな甘ったれた考えは捨てるんだな、これが戦場ということだ!女だろうとも関係ない」」

 

 言われなくとも、と歯を食い縛りながらも猛攻に耐えているが、いつどのタイミングでスペカを使うか悩んでいると詠唱の声が聞こえてくる。

 詠唱を止めるため弾幕を放つが、一人が盾となり弾きその間に後ろで詠唱をしている。閃光と言われたワルドの詠唱は、ほかのメイジの詠唱時間が遥かに早くすぐに魔法が放たれる。

 

 

 「・・・ライトニング・クラウド!」

 

 

 詠唱が完了したと同時に盾役の偏在は横に避け、すさまじい速さで飛ぶ魔法に魔理沙は、これは駄目だ。と諦めそうになったが体が勝手に動きライトニング・クラウドに対し剣先を向けていた。

 そして同時にデルフが叫んでいた。

 

 

 「おい!小娘!そのまま構えて俺を直接あれに当てろ!吸収してやる!だからそのまま走りこんで一人倒せ!ガンダールヴなら行ける!やれ!」

 

 「名前統一してくれよな・・まあいいや任せろ!お前を信じるぜ!デルフ!」

 

 「・・?!、血迷ったかばかめ!その程度の剣でライトニング・クラウドを防げるか!そのまま黒焦げになるんだな!」

 

 

 カッ・・と剣に魔法があたったためか光が弾けるが、それは剣自体が発光しているようでデルフに付着していた錆が落ち、きれいな姿が魔理沙の目に入る。おぉ、と声を漏らすがとりあえず先に偏在の一人を叩き切る為走りこむ。

 

 ザクッ と偏在の胸に剣が突き刺さり、かき消されるかのように風となり消えていく。もう一人の偏在は険しい顔をしながら素早く魔法を完成させる。

 

 

 「あの剣は厄介だが使い魔のほうが戦場に慣れていない!剣の扱い方も雑!所詮なったばかりのガンダールヴ、くらえエア・ハンマーっ!」

 

 「あぶねぇ!魔法がくるぞ、よけろ!」 「無理だ!避けられない!」

 

 

 正面から空気の塊が襲いかかり、こふっ と肺から無理やり空気が押し出され、一瞬息ができなくなると共に視界が暗くなる。胸の他に頭も強打したのだろう。魔理沙の正面からのエア・ハンマー、つまりワルドに向かって吹き飛ばされたことになる。

 そこからの連続技とするためあえてこちらに吹き飛ばしていた。ワルドは目を光らせ、詠唱を唱える。

 

 

 「くらえ!ウィンド・ブレイクっ」

 

 

 ワルドの杖先が光ると同時に強風が塊となり魔理沙の背中を叩きつける。あ、はっ・・と魔理沙これでもかというくらい空気が口から漏れる。

 

 

 「おい!小娘!生きてるな?絶対に俺を離すな!武器を持っていれば痛みや怪我はかなり抑えられる!離したらすぐに意識が吹っ飛ぶぞ!おいきいてんのか!?・・なんだそりゃ!?」

 

 

 デルフが叫ぶ中、魔理沙は吹き飛ばされることに抵抗できず、そのまま窓を突き破り外へ投げ出されてしまう。がしかし無意識だが剣だけは離さなかった。・・・そしてその場には魔理沙の帽子と箒だけが残る。

 

 

 「ふふはは。この箒がなければあの使い魔は飛べんだろう!・・さて、邪魔者は消えた。数分数十分であの使い魔は地面と衝突しているだろう。あとは私の事を知ってしまった連中の始末、だな・・・!?、なんだこれは・・まさか、まだ抵抗するか!?」

 

 

 しかし魔理沙は、吹き飛ばされながらもスペカを一枚使っていた。

 ワルドがしめに入るため、ルイズたちのほうへ向かおうとするが回りに複数の魔方陣が出現する。

 

 ワルドの周りを回るその魔方陣は、やがて赤、青、黄、紫と一つ一つの色の光る球体となっていく。余った魔法陣も球体と交わると、まるで分身するかのように同じ球体となり現れる。

 ワルドはいやな予感がし残りわずかの魔力を消費し、球体に向け魔法を放つ。がしかし唱え終わるのと同時に、球体から細くも力強い光線が放たれる。

 

 

 「へ・・・恋符 ノンディレクショナルレーザーだぜ。まあ普通なら逆側に光線はでるけど今回のは特別製だぜ。お前が実験台だ!」

 

 「なにっ?なぜ生きている?あの箒はマジックアイテムじゃないのか!?まだ未知数か・・・ガンダールヴとやらは!・・」

 

 

 

 

、、、、

 

 

  一方ルイズたちはというと、一人の偏在との戦闘は終盤に向かっていた。

 だがしかしダメージは与えることができず、むしろキュルケたちは魔力の使いすぎか疲労状態である。ワルドはルイズにだけは傷をつけず、避けている様子。いまだにそんな事をされた所でルイズの心が変わるわけも無く、むしろそれが苛立たせる要因でもある。

 

 

 「学生にしてはやるようだが、所詮偏在の俺にも勝てないほどの実力。(だがしかし魔力を消費してしまったのも事実。遊びすぎたというわけか、ならば短期決戦・・接近戦で終わらす!)」

 

 

 肩で息をしているキュルケ、タバサはなんとか頭を回転させ考えるがまず遠距離中距離で戦うワルドに手も足も出ない様子。横目でキュルケとタバサは視線を交わすが、首を左右に振って対策なし という事を伝える。

 そのやり取りをしている間もワルドは悪意を持った笑みを隠さず、煽るようにレイピア杖をゆらゆらと動かし話しかけてくる。止めを刺し、ルイズを連れ去るのだろう。ルイズは動けずまだ本調子ではない模様。その様子にキュルケは舌打ちし、顔をゆがめる。

 

 そこでタバサは、相手の身体状況、心理状況を考える。

 まず魔力はかなり消費しているはずである。何故ならば、偏在を使う時点でかなり分配する必要がある。しかもそれを4体分なのだから1人1人の偏在の魔法量はそこまで多くないのではないか。その為、嫌でも接近戦に持ち込まざるを得ない・・と。

 

 ワルドの挑発も無視し続けた結果、ワルドが時間がかかりすぎたのか焦り始め接近戦に持ち込む。もし冷静だったら接近戦を持ち込むにしても警戒しながら進んでいただろう。未だにアルビオンの雑兵だけしか始末できておらず、主要人物であるウェールズやルイズの一行の始末は未だにできていないでいる。

 

 タバサの予想は的中し、ワルドは回りも見ずキュルケとタバサに向かっていく。

 

 

 「(私は・・いかねばならないのだ、聖地へ・・そのために虚無を・・ルイズを手に入れるまでは・・どんな犠牲を払ってでも!)」

 

 

 そんな思いを消し去るかのように錬金、という言葉が正面から聞こえてきた。ハッと思考を戻すが、すでに足元から違和感を感じ下を見ると先ほどまで石だった床が泥となり、重力に従い徐々に足が沈んで行く。すぐさま脱出しようと試みるが、その前にさらに錬金の魔法を使われてしまい泥から戻すように石へと変化する。

 

 

 「その焦りが致命傷になる。身にもって知った?」

 

 「タバサも言うわねえ。でもまあそんな初歩の初歩のマジックでしかも単純な罠に引っかかるなんて本当アホねぇ」

 

 

 

 ギリッと歯を食いしばるワルドの偏在に対し、キュルケがフレイム・ボールを唱えると、大きな火の玉が現れ吸い込まれるように偏在へ直撃する。数秒燃えていたがジュワっと言う音とともに消えてなくなる。

 2人安堵しながら正面から近づいてくる魔理沙に手を振り答える。

 

 3人から見えていないがただ一人今、この状況がまずい というのに気がついたのが一人。キュルケとは少し離れていたルイズである。

 何がまずいかというと魔理沙の後ろに静かに近づいているワルドの偏在がいるというところだろう。全体が(一応)見えていたルイズにはあの偏在がどこにいたやつなのかも知っている。

 兵士には荷が重かったのか、偏在1体に全滅でありそれが今レイピアを片手に魔理沙の後ろに静かに近づいている。

 

 偏在の目が鋭くなると同時に、レイピアまっすぐ向け突く動作に入る。無意識にルイズは杖を片手に呪文を唱えていた。

 

 

 「・・!魔理沙!ファイアー・ボール!」

 

 「わっ!ルイズ私に杖をむけ・・!?」 「いきなりどうしちゃったの・・!」 「・・・魔理沙うしろっ!・・・」

 

 

 偏在のレイピアもろとも腕が爆発に巻き込まれ、驚愕に満ち溢れた顔をしている。偏在がルイズに顔を向け口を開く。

 

 

 「ルイズ・・・君は、私に杖を向け「うるさいぜ、裏切り者は寝てろよ」」

 

 「・・・ルイズ、助かったよ いいコントロールだったぜ。とっさの判断と言い、あのときの練習は無駄じゃなかったんだなってしみじみ思うぜ?」

 

 「あ・・あう・・でもとっさのことで無意識で・・」

 

 

 と魔理沙はふとウェールズのいた方向へ顔を向ける。そこには壮絶な状況が出来上がっていた。魔理沙につられ、そちらに顔を向けるが全員言葉を失ってしまう。

 ウェールズの背中から剣が生えているのを目撃する。口からは血を吐き体は震えているのがわかる。

 

 目的のひとつ、ウェールズの排除を完了したワルドは、勝った!と確信しレイピアを引き抜くため力を入れる。がしかし、ウェールズの両手がワルドの腕をつかんで離さないでいた。

 

 

 「っ・・・この・・離せ!」

 

 「・・っぐふぅ、聞き入れられないな・・私ではお前には勝てん。・・はぁ・・っ、ならばこのままお前を道連れにしようと思う。いい提案だろう?」

 

 

 馬鹿げた真似をっ と無理やりでも引き抜こうとするが、さらに拘束が強まりワルドの腕に赤く痕ができるほどである。火事場の馬鹿力というものだろう。

 ウェールズは声を張り上げ、私たちに対し、魔理沙に最大出力でマスタースパークを使うよう指示する。魔理沙は意味がわからず聞き返している。

 そんなやり取りを何度もしているとキュルケやタバサからも催促されてしまう。その視線に耐えられなくなった魔理沙は、ルイズへ視線を向けるが首を左右に振り否定する。

 魔理沙は諦め、ワルドを睨みつつ自身で作った魔法薬、魔力増強薬を一気に飲み、ルイズたちを後方に下がらせつつ八卦炉の設定を変え構える。

 

 

 「う・・ウェールズ、うらまないでくれよ・・」

 

 「感謝こそすれ恨むわけないじゃないか、父上・・あの世での先陣はこのウェールズにお任せを・・「うああああああああ!マスタースパーク最大出力!魔砲 ファイナルスパークウウウウ!」・・・ありが・・」

 

 「私の・・夢が・・!聖地が・・!私の虚無がああああルイズウウウウウウ」

 

 

 今まで使ったマスタースパークの比ではない太さと魔力量の光線が、ウェールズとワルドへ直撃する。俗に言うオーバーキルである。

 後方へ下がったルイズたちは目を開けていられなく、手で目元を覆うように隠す。そのため低くも甲高い射撃音だけが聞こえてくる。

 

 数十秒の出来事だったのだろうが、それが何分何十分にも感じられたルイズたちは恐る恐る目を開ける。

 ウェールズたちの場所はもちろん、その後方数メイル数十メイル縦横共にえぐられたような穴が存在した。

 

....




そういえば偏在はいくつ出せたっけかな・・

誤字報告ありがとうございます!

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