ゼロの使い魔~白黒の自称普通の魔法使い~ 完結   作:WryofuW

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第九話 アルビオン滅亡前日の夜

 魔理沙のマスパを見終わったワルドは、唖然としているルイズを連れて少し前に振り分けられた個室へ入っていく。

 先にルイズを座らせワルドは手早くワインを準備し、ルイズと乾杯をするためグラスに注ぐ。

 

 

 「ミス・マリサのあの魔法はすごいな・・・東方の魔法だっけかな?」

 

 「ええ、よく知ってるわね」

 

 「フーケの尋問を私が引き受けてね。そこで聞いたんだよ、・・実際見ると恐ろしい反面頼もしいって思うね」

 

 

 そうね、と弱く呟くと、ワルドはクスッと笑いとりあえずルイズとグラス同士を軽く当て乾杯する。

 一口流し込むとワルドは本題に入る為、グラスをその場に置きルイズ、と名前を呼ぶ。少しだけ雰囲気が変わった事に気がついたのか、首をかしげどうしたのか問う。

 

 

 「まだルイズが小さい頃に親同士が決めた事を覚えているだろうか?私は今でも覚えているしその通りになれたらいいな、と思っている。」

 

 「それって・・・」

 

 「ふふ、気がついたようだね?あのときのは本気だと思っているさ。だから必死に頑張って子爵という立場、魔法衛士隊隊長という立場、どちらもルイズや双方の親に認めて貰う為だ」

 

 「あ・・あう、その・・何ていえば良いのか・・・でもこれだけは分かるわ、嬉しいっていう感情があるのは」

 

 「私も同じ気持ちさ、・・今言う言葉じゃないのかもしれないけどずっと言いたかった、・・私は君と結婚したい。どんな困難があっても守ってみせるよ。絶対に幸せにしてみせる」

 

 

 結婚 という言葉に脳の処理が追いつかなくなってしまったのか、金魚のように口をパクパクさせるだけで言葉がでてこなかった。

 数秒はたっただろうか、ハッと気がついたのか深呼吸し声を出す。

 

 

 「ワ・・ワルド、あのね、私あなたのようにすごい人の隣にいれる人じゃないのよ?魔法もいまだにコモン・マジックさえ使えないの・・・笑えるでしょ?・・・」

 

 「いいやそれは違う、ルイズ、君は偉大なメイジと成れる素質を持っているんだ!そこらのメイジとは違う、圧倒的な力をね。ルイズ自身が気がついていないだけさ」

 

 「うそよ!ありえないわ!今までに何度試したと思ってるのよ・・・何百回やってすべて失敗するんだもん・・・ありえないもん・・・」

 

 「大丈夫、大丈夫だよ愛しのルイズ。苦しいのは今だけだよ、僕がずっとそばにいてあげる、どんな危険な目にも合わせない。約束しよう。 ・・・さっきの・・返事を聞かせて貰って良いかな・・」

 

 

 うぅ とルイズは悩むが、自分の心を理解してくれるのはちいねえさまは勿論、小さい頃から良く面倒を見て貰ったワルドだ。ここまで思ってくれてるなら・・・と考えていたがふと何かが思考中に過ぎった気がした。いや気がしたじゃない過ぎったのだ。それを追いかけるように思考をワルドからそれに向けた。 

 

 そうだ、面倒を見て貰ったのはワルドだけじゃない。むしろワルドより私のことを理解してくれているのかもしれない。そうあの召喚の儀式で現れた人間、霧雨魔理沙だ。

 

 召喚したときは色々あったけど、それからはなにかと励ましてくれたり、魔法の練習にも付き合ってくれた。あの錬金のときは本当にびっくりしたな・・・ と思考に耽ってしまう。

 どちらも努力家で、弱みをあまり見させない見せたくない。だから魔理沙はルイズの気持ちを非常に理解していた。女性同士でもあり年齢が近いっていうのもあるのだろう。コントロールがうまくいったときは自分のことのように喜んでくれた。

 

 ワルドがルイズ、と肩をゆすり気がつかせる。あっ、と思考の海から現実に戻され冷静になっていく。すぐにワルドに謝罪したが苦笑いされてしまい、さらには やっぱり今は答えを出さなくて良いよ。あの使い魔、魔理沙が君の中で僕より大きな存在になってるようだからね、ちょっと寂しいかな。 と呟かれそのまま 少し外に出てくるよ と言い、外へでていってしまった。

  何てことを私は・・・と頭を抱えその場で塞ぎ込んでしまう。

 

 

 視点は戻り甲板にいる魔理沙、マスパを撃ち空賊を倒した事で歓声を浴びていた。がウェールズの指示により元の位置へ戻される兵士たち、それを困った顔で見る魔理沙。

 そこでウェールズから声がかかりそちらに振り向く。

 

 

 「ミス・マリサ・・・ご苦労であった。あの魔法はいったい・・・」

 

 「私の十八番、マスタースパークだぜ」

 

 「・・?あぁそういえば東方のメイジだったな、私たちが知るわけがない・・・か、いや今はそれどころじゃない。今はゆっくり休むんだ。間接的とはいえ相手を殺したんだ。あとは到着まではゆっくりして気持ちを落ち着かせるといい。無理をしてはいけないぞ?」

 

 「はは、まあそのお言葉に甘えますか。・・・んじゃあな」

 

 

 その背中を見たウェールズはなんとなくだが、重そうな足取りで戻るようにも見えた。

 魔理沙は自室へ戻る途中に背負っている剣、デルフリンガーがいきなり話しかけられビクッとしながらも普通に返答する。

 

 

 「おう嬢ちゃん!あんなすげぇもん見たことねえぜ!いやあ面白いもの見させてもらったぜ!おれ自身、使ってもらったしいいもん見たしなんだか今日は気分がスカッとして最高だぜ!」

 

 「そかそか、じゃあもう使わなくていいなっ?」

 

 「え?・・はぁ!?いやいやいやそれとこれとは別だろうが! ああ、こんな話じゃなくてな!いい忘れてたんだがよ、俺の能力を思い出したんだぜ!なあ聞きたいか?なぁなぁ!」

 

 「うわ、めんどくさい」

 

 「なぁ頼むよぉ!聞いてくれよ!「分かったよ!もう・・」・・・よし!」

 

 「おほん!まずガンダールヴってのはな、心理状況によって変わってくるんだ。感情が高ぶれば効力も増す。怒りがまさにそれだな。んでだ竜にのってこの船に来る前に学院長だったか?その爺さんに対して怒ってたろ」

 

 

 魔理沙は あぁあれか と思い出す。手癖の悪い変態学院長と使い魔の変態ねずみのことだ。また怒りが高ぶりそうだったが、とりあえずデルフの話を聞くため冷静になる。それを汲み取ったのか、デルフは言葉を続けていく。

 

 

 「その時のおかげで思い出したぜ!いやぁまさかそんなんで思い出せるなんてなー」

 

 「そんなんでしか思い出せないお前って・・・」

 

 「あっいやそれはだな。・・・いやそれよりその思い出した内容だが、なんとな!この俺様、デルフリンガー様は魔法を吸収する能力があるんだぜ!な?すごいだろ!」

 

 「へーすごいな、んじゃあさ!私のマスパいけるのか!?そしたら認めてやるぜ」

 

 「あ・・いえ、マスパって先ほどのですよね・・・ば・・ばっきゃろ!無理に決まってんだろ!」

 

 

 その言葉を聞いた魔理沙は、その場にデルフを投げつけ見下すような目つきで見る。 あとにデルフはこう言う。

 

 悪くなかった

 

 と。

 

 

 そして時は進みアルビオン内部。

 私たちの目的である、アンリエッタがウェールズへ送った恋文の回収を今ちょうど行うところである。

 思ったよりスムーズに行えたが、私自身それが成功するしないなんて二の次なのだ。ワルドの件さえなければ、そういうこともなかったものを・・。

 

 ワルドの真意はわからない。けどレコン・キスタ側の人間なのは分かっている為、とりあえず信用できる人に話すべきだと思う。信用してくれるしてくれないは別として話さないといけない・・・私だけでどうにかできる相手じゃないのは確かだ。慢心は良くない、今まであった異変でよく勉強したことだ。

 

 そのためにまずは目の前にいるこの国の皇太子、ウェールズに話そうと思う。 ワルドに感ずかれると厄介なのでとりあえずできれば一対一のほうがいい。魔理沙が先に話そうとするが、ワルドが発言し自分たちは退出する。

 すぐに話が終わると言うことで魔理沙はその廊下に立ち待っていた。

 

 

 「魔理沙、いかないの?」

 

 「ウェールズにちょっとなー、あとで三人にも話す内容だからまたあとでな?・・おっとこんなことを言ってたなんてワルドにだけは言うなよ?絶対だからな?」

 

 「ま、魔理沙?どうしたのそんなに強張って・・」

 

 「あとで話すからな?だから他言無用だ」

 

 

 納得いかないという表情をルイズとキュルケはしていたが、タバサは何かを察したのかこちらに目線を合わせ頷いている。

 数分もしないうちにワルドがドアから出てきて声をかけてくる。

 

 

 「殿下に何か用なのかい?」

 

 「あぁどうせ滅ぶんなら何かもえらえるかなーってね!貰える物は貰っておくべきなんだぜ」

 

 「君は・・いや何も言うまい。頼んでみるといい、ただ失礼のないようにな。まぁむりだろうが」

 

 「へいへい、やるだけやるだけなんだぜ じゃな」

 

 

 大きなため息を吐きつつワルドはそう言うと、背中を向け去っていく。それを最後まで見続けた魔理沙はノックもせず一言言うと同時にドアを開け、入っていく。

 もう慣れたのか、困った顔をするだけで特に怒ることもなく用件を問う。

 

 

 「ミス・マリサ船の件では助かったよ。ただあれはやりすぎかな?」

 

 「そんなこといってもなー・・・船にマスパ撃つなんて初めてだから勘弁してくれよな」

 

 「そうだね、もう終わったことだし・・。さてワルド子爵と話していた内容が少し聞こえたけど、何かほしいんだったかな?どうせ滅ぶのだからあげることは可能だよ。使わないのに持っていても仕方ないからな」

 

 

 さぁ何がほしい? と問われるがそれを否定して魔理沙は本題にはいる。その前にウェールズにサイレントの魔法を掛けてもらい、密談状況をつくる。

 

 

 「さて、ここまでしたのは何か大きなことを話すんだね。協力できることがあればできるだけしようと思う」

 

 「すまんね、今から話すことは信じられない、と思っても信じてほしいんだ。これは手紙を渡して返してもらってはいお終い・・・で終わる任務じゃなかったんだよ、もしかしたらルイズやあんたの命に関わることだろうし・・」

 

 「ふむ、まあとりあえず話すといい。判断はこちらで決めるだけだ」

 

 「あぁ・・まず前提として私は東方の魔法使い・・メイジだ。それは知ってるよな?そして人それぞれの魔力を感知することができる。たとえばタバサって子がいただろ?あいつは風だ、あんたも風だ。同じ系統だけど質が違うんだ。タバサは鋭利なものだと例えると、あんたのは柔らかく包み込むような風だ。」

 

 「・・・・ふうむ・・・ディテクト・マジックとは違うのか。向こうには便利な魔法があるものだな・・・してそれがどうしたのだ」

 

 「うん、それでここに来る前にラ・ロシェールで土くれのフーケと対峙したんだよ。そこでもう一人仮面を被ったやつが隣にいてな・・・それがもしかすると私たちと一緒に来た一行の一人かもしれないって話なんだ・・・」

 

 「・・・まさかね、土くれのフーケか・・あの大盗賊のが向こう側にいてさらになぞの人物が近くにいると」

 

 

 あぁ と声には出さないが頷き、ウェールズを見る。険しい顔をしつつ魔理沙に続きを催促する。

 魔理沙は一呼吸起き、口を開く。

 

 

 「その人物ってのがだな・・今さっき話していたワルドだよ」

 

 「・・!・・・まさかそんな、あの名だたる魔法衛士隊の隊長ともあろう人が・・・」

 

 「私一人じゃあどうしようもないんだ!私のようなガキがこんなこと言って信用できないなんて分かってるんだ。けど・・けどルイズたちを守りたくて」

 

 「君の熱意は感じてるよ。・・・けどね半信半疑なんだよ僕も、難しい内容だけにね。さっきワルド子爵からミス・ヴァルリエールと結婚するから僕に立ち会ってくれ、と頼まれたよ。はてさて・・・どうしたものか」

 

 「っ・・・あいつ・・・ルイズたちからは私が言っておく。だから・・」

 

 「大丈夫だよ、警戒して損はないだろう。協会に兵を忍ばせておこう。私自身も備えくらいはしておくとするよ」

 

 「あぁ・・信じてくれてありがとうなんだぜ・・・あとこれを渡しておくよ」

 

 

 

 一切れの紙のようなものをウェールズは受け取るが、なんて書いてあるか分からない文字であり、しわばかりで綺麗な紙とはいえない。

 こんなものを渡してどうしろと、と考えるがその前に魔理沙からこれについて説明がある。

 

 

 「話だけは聞いたことがあると思うんだ。私たちのいる魔法学院にあって頑丈に管理されている宝物の一つ。守護の札ってのをね 今渡したのがそれだよ」

 

 「なにっ!?本当に言ってるのか?どうして君が!?」

 

 「オスマンのじじぃに譲ってもらったんだよ。効果は私のお墨付きだぜ!フーケのゴーレムも一撃なら耐えられるぐらいにはね」

 

 「・・・でこれを渡して見返りとかを求めるってとこかい?」

 

 「いんや?別に私自身まだ2枚もってるし何か合った時のためのお守りってね」

 

 「・・・そうか、私からはあげられる物なんて宝石ばかりだけど・・いるかい?」

 

 

 いらんよ、欲しくてあげたわけじゃないしな。貰えるならもっと私に役立つものの方がいい と断りこの後に控えるアルビオン王国最後の晩餐へ出席するため、魔理沙は退出する。

 

 ふう、と一息つきウェールズは、先ほどの会話の内容を思い出しながら晩餐への準備のため鍵を掛けその場へ向かう・・・。

 

 

 滅びる直前だからなのか、難しく考える必要が無い為なのか分からないがルイズ一行以外全員笑顔で威勢が良いようだ。

 キュルケやギーシュには何となくアルビオンの人たちの気持ちが分かっていたが、ルイズにいたっては何も分からず泣きそうな悲しい顔をして呟いていた。それをあやす魔理沙もやはりなぜ諦めるのか、と・・・。一言でも二言でも言ってやりたがったが、さすがにこれ以上ルイズに迷惑をかける気にはなれない。

 ため息を吐くと同時でルイズが目元を適当に拭き、魔理沙へ顔を向ける。

 

 

 「・・・魔理沙、あのね・・ちょっとバルコニーにいきましょ?話したいことあるの」

 

 「?、あぁ」

 

・・・・

 

 

 「んでどうした?もしかしてあいつらのことか?死にたがりのやつらな。命があればいくらでも挽回できるとおもうんだけどな。とはいえ私にゃ政治のことまで分からんしな」

 

 「あ、いやそれじゃなくてね。船に乗ってるときにワルドにいわれたの・・け・・結婚しようって。あなたは偉大なメイジに成れるとかなんとか。それでね、魔理沙の意見も聞いておきたいかなーなんて・・」

 

 「・・・それは先にウェールズから聞いたぜ。私が何がどうとか言うべきじゃないんだろうけどな、ただ今回は口を出させてもらうんだぜ?私は反対だ。レコンキスタ側の奴なんかにルイズは渡せんさ」

 

 「え?いやワルドはトリステインの魔法衛士隊の隊長よ?何を言って・・」

 

 「フーケの隣にいた仮面の奴な。ワルドと同じ質の魔力だった。私の実力をあそこまで知りたかったのも多分敵対したときのためなんじゃないかなって・・」

 

 「う・・嘘よ!い、いやそんな事聞きたくないわ!魔理沙といえどそんな冗談はやめて頂戴!」

 

 「本当なんだって!なぁわかってくれよ!」

 

 

 ルイズは 嘘だ と言いそのまま飛び出してしまい魔理沙は しくった・・ と一人呟いていた。それからすぐにキュルケ、タバサが心配したようにバルコニーへ出てくる。

 先ほどあった事情を話すと同時に、ワルドの正体を話していく。

 

 

 「ふーん、ルイズは魔理沙のこと信用してなかったのかしらねえ・・それにしてもイケてる顔してそんな裏側があったなんてねえ、あら?タバサそんな驚いてなさそうね?」

 

 「何となく分かっていた。怪しいと思った部分が数回あったから、ただ魔理沙のおかげで確信が持てた。それとルイズの拒絶は多分、逆に魔理沙のこと信用しているのとあれのことも信用しているからこそじゃないかと」

 

 「さすがタバサだな・・・いつだって冷静に物事を見てるんだな!まあルイズのことはみんなで守るしかない」

 

 

 魔理沙は笑いながら褒めると、少し恥ずかしそうにするがそれを隠すように無表情を突き通す。だがキュルケには分かってしまったようでニヤニヤしていた。

 それから自室に戻り、作戦を考え次の日に備え就寝するのだった。

 

 

 

 

 




UAが5万超えていましたね
うれしい気持ちでいっぱいです。最後までがんばりたいと思います。

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