ゼロの使い魔~白黒の自称普通の魔法使い~ 完結   作:WryofuW

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前回のあらすじ

空賊を説得したワルド。途中までは良かったが仲間割れなのか空賊に襲われてしまい捕らえられた。
外ではドラゴンに威嚇された甲板兵士


第八話 空賊と空賊と魔理沙

 フーケと別れ、飛び立った後から始まる・・・。

 

 使い魔と主人は一心一体らしく、使い魔側からすると何処にいるかも分かるようで直線にタバサのいる方向へ向かっている。

 途中途中艦隊のような姿が遠くに見え、魔理沙は終始 おぉ と歓喜していた。幻想郷だと一度だけ異変と呼べるのか分からないが実際にあった。そこで浮かぶ大きな船を見たことあるがそれに劣らない姿でありそれが多数あるわけだ。興奮しないわけがない。

 

 するとシルフィードから声がかかり魔理沙はそちらを確認する。シルフィードは少しスピードを落としあせった様子でこちらに首を曲げる。

 

 

 「きゅぃ!マリサ!あのね・・、お姉さまたちが怖い人たちに捕まっちゃってるらしいの!ど・・どうしようう」

 

 「落ち着け落ち着け、捕まったってのがよくわからんけどどんな状況なんだ?」

 

 「牢屋に入れられてるのが見えるわ!なんか髭の見るからに怪しい人と話してるようだわ!」

 

 「うぅん・・・よし私が何とかしよう、シルフィは甲板あたりでちょっとでもいいから気を逸らして貰いたいけどいいか?船に傷つけたらだめだぜ?」

 

 「きゅい!まっかせなさい!このシルフィちゃんが余裕でこなしてあげるから!」

 

 

 その言葉に苦笑いしつつ、少しずつ大きくなっていく船の姿を確認した魔理沙は降りる事をシルフィードに伝え、その場から飛び降りる。すぐに箒の付け根部分に跨り、先行するシルフィードを確認しながら船の後方へ向かう。

 

 シルフィードは甲板で何をすればいいかよく分からないがとりあえず気を引けといわれた為、翼を大きく広げ咆哮する。咆哮はあまり得意としていないようで甲高い音を賊へと響き渡らせるだけだった。

 しかしいきなりの奇襲とあって、それだけでもぞろぞろと寄ってきたため、ほくそ笑みつつ攻撃されたくない為その場から退散する。

 

 一方魔理沙は、後方へ行きつつどう潜入するかを考える。1つ目はマスパで船をボコボコにする。2つ目は、ルイズたちを除いた船に搭乗する賊、一人ひとり弾幕で気絶させる。3つ目に、ルイズたちの救出を優先し隠密行動する。

 

 1はありえない、ルイズたちが危険に晒されるのはダメだ!だからこれは無し。2は時間がかかりすぎるのと、せっかくシルフィードに手伝ってもらった意味がない。3はほかに比べれば全然ありだろう、しかし・・・しかしだ。 私らしくない!この一言に尽きる。

 じゃあどうするか?・・、紅魔館にお邪魔するときの様にすればいいじゃないか!門番を倒して図書館へ突撃!やることは変わらない。・・よしやることは決まった。ならば実行あるのみ。

 

 

 「それでこそ私ってものじゃないか、まずは内部へ突撃だな」

 

 

 一人そう呟きながら船の中へズンズンと進んでいく。千切っては投げ、千切っては投げ魔理沙の前に立ちはだかる敵は新しいスペカの実験台となるのだった。

 そして牢に視点は戻る。

 

 

 「でもう一度問う。今アルビオンがどうなってるか知ってるだろう?なぜわざわざ行く必要がある。見た感じなかなか実力はありそうだ、命を捨てに行く必要ないだろう?」

 

 「馬鹿いわないで!誰が命を捨てに行くものですか。私たちはアルビオンでやることしてちゃんと帰って報告しなきゃいけないの!あんたたちこそこんな事をして生きて帰れると思わないことね!」

 

 「へぇ、それだけ大きな任務なのね。じゃ私からも一言ね、ルイズの言うとおりあんたたちこそ知らないわよ?こーんなことして燃やしてあげようかしら」

 

 「はぁどうしてこんな気の強い女ばかりなんだ・・。ん?いまルイズと言ったか、フルネームを教えてくれるとうれしいんだがな」

 

 

 賊頭からの問いにルイズとキュルケは、顔を見合わせ傾げるが名乗れと言われたのだから貴族らしく堂々と宣言する。その隣でどうして私じゃないのよ、と呟いているキュルケをタバサが撫でていた・・・。

 おほん、とワンテンポ遅らせ名乗る。

 

 

 「心して聞きなさい。私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、ヴァリエール家の三女よ!」

 

 

 その言葉に賊頭は口を開け停止している。気分を良くしたのか ふふん と腰に手を当てドヤ顔を決めていた。ワルドにいたっては顔に手を当て、どうしてそんなに素直に話してしまうのだろうか・・と悩んでしまっていた。

 賊頭は少し考えながら口を開く。

 

 

 「そうか・・・君がアンリエッタの言っていた・・・」

 

 「・・え?アンリエッタって姫殿下のこと!?ど・・どうしてあんたが」

 

 

 双方驚きの会話をしていると階段を乱暴に下りる賊が声を荒げながら賊頭へと報告する。

 

 

 「か・・かしらぁ大変です!箒を持った白と黒のへんな服を着た女が仲間を攻撃しながらこっちへ向かってきています!えらい強くて見たことない魔法を乱発してきています!」

 

 

 船の乗員が報告し終わった時間がたつにつれ、船に軽く衝撃が伝わるのがルイズたちにも嫌でも分かってしまう。先ほどまで腰に手を当てていたルイズでさえ口をつぐみ、眉間にしわを寄せどんどん顔を青くしている。牢に入る者全員が、口々に魔理沙、あの馬鹿魔理沙と共通する 魔理沙 という言葉を放つ。

 

 

 「く・・レコン・キスタが乗り込んできたのか?単身で・・??・・これが終わり次第先ほどの件について話していただいてもよろしいかな?」

 

 「え・・えぇ・・分かりました・・?」

 

 

 今更ながらどうして敬語なんて使ったのか、まるで相手が目上の立場の人間のように感じてしまったのだろうか。しかしそれに気がつかず魔理沙のこの行動で頭がいっぱいのルイズだった。

 すぐに衝撃音が聞こえ、そちらを確認すると白と黒で身を包んだ箒と丸い何かを持った女性、霧雨魔理沙が現れる。

 

 

 「おっ、ここが正解ってやつだな、ルイズお待たせなんだぜ」

 

 「ば・・このお馬鹿!馬鹿魔理沙!アホ魔理沙!もっと静かに来れなかったの!?」

 

 「お?どうしてそんな怒ってるんだ?シワ増えるぞー?」

 

 「シワができるような歳じゃないわよ!だいた「話の途中失礼するよ、さて君は何者だ?」・・・」

 

 「へへっ聞いて驚け!私が正義の味方、普通の魔法使いの霧雨魔理沙だぜ!」

 

 

 魔理沙の笑顔は素敵だが、そのセリフのせいで台無しなのは聞いた側だとすぐにわかってしまった。ルイズが握りこぶしを作りながら耐えている模様、その後ろからワルドがルイズを抑えるのに必死で、慌てている姿が確認された。

 そのまま魔理沙は、相手に有無を言わさせず八卦炉を構え戦闘体勢に入る。ルイズは止めようとするが何故かワルドに止められる。その時のワルドは頬を吊り上げ、少しだけ怖かった・・・。

 

 今いる場所の牢だが想像しているよりは狭くはない、がだからといって魔法を交わえるほどの広さではない。魔理沙も(一応)気を使ってるのか、弾幕はおろかスペカすら使っていない。この賊頭かなりの腕前のようで、それをすぐに判断した魔理沙は背中の剣を抜き構える。

 持った途端に腕の甲にある紋章、ガンダールヴが光り輝く。それを見たワルドは一層笑みを強める一方、それを鋭く見つめるタバサがそこにはいた・・・。

 

 

 「ん・・・?お・・おおぅうぉお!?嬢ちゃん!とうとう俺っちを使ってくれるのか・・・うれしい・・・長生きしてこれほど嬉しさを感じるなんて・・・涙が流せていたら流してたぜ!」

 

 「あーうん、ごめんなデルフ?お前がもっと小さければ使うんだけどな」

 

 「おまえさんはガンダールヴなんだからそういうところは気にすることねえって!ただまぁ・・嬢ちゃんにゃ剣はやっぱ駄目そうだな・・・」

 

 「・・・そういうなって、こんな狭いところでスペカ使えないし折角なら使ってやるっていってんだからな?」

 

 「へいへい、しゃあねぇちょっと手伝ってやるか」

 

 デルフがそう呟くが魔理沙には聞こえていない。剣を触ることすら初心者の魔理沙と完全に戦い慣れしている賊、勝負は一瞬だった。呆気ないかもしれないがこれがガンダールヴだ、と言わんばかりに瞬時に相手の目の前まで移動し、剣を弾き魔理沙の勝利である。

 

 

 「・・・んお?なんか勝手に体が動いたんだけど・・・え?なにこれ、気持ち悪・・おいデルフなんかしたのか?」

 

 「・・・まぁちょこっとな「この変態おばか!」・・えぇえ・・・・・」

 

 「ち・・ちょっと魔理沙あんた!こ・・この人・・・ず・・ずら・・・」

 

 

 賊頭は何もできず剣が弾かれたのが大層驚いたのか、思考停止している様子。その為、ずらが外れているのに気がついていない模様。キュルケは笑いを堪えられない様子で ぶふっ と口から漏れたのを切欠に魔理沙たちが笑ってしまう。ギーシュはずっと端のほうで怯えて震えていたが、これのお陰かいつもの調子でバラ型杖を口にくわえ鼻で笑っていた。、それに気がついた相手は髪を押さえ沈黙している。その後、逃げるように部下に指示を出し、ルイズたちを牢から出させ客室へと案内させるだった。

 そこでワルドは、先ほどの一瞬で終わった戦闘の感想を誰に聞かせるわけでもなく、ぼそりと呟く。

 

 「はやいな・・・しかし目で終えない分けではなかった・・ふふ、腕が未熟だったからかな?もしもの事があってもこれなら・・いける・・!」

 

 

 客室へ到着した後本当の姿をルイズたちに曝け出した。なんとこの賊頭こそ、私たちの任務で会わなくてはならない人、ウェールズ皇太子その人だった。完全に失礼なことをしてしまった私たちは、目線を合わせらず困ってしまっていた。

 ルイズやギーシュに至っては土下座しそうな勢いだ。いやギーシュはもう床に擦り付けている。その行動にウェールズも気にしていない様子で、 照れながら今の状況を説明している。

 

 

 なんでも空賊の真似事をして、敵・・レコンキスタ所属の空賊から荷物を奪っているらしい。何に使うのかというと最後の足掻きらしい・・・。その先にある意味は、 死。 

 それはウェールズのみならずアルビオンにいる抗うもの全員が覚悟しているらしく、その足掻き決行日が明日なのだと。と言う事は、私たちは本当にぎりぎり間に合った・・と言う事だ。

 

 

 それからと言うもの、魔理沙は弾幕を当ててしまった兵士一人ひとりに謝っていた。自主的には絶対にやらないが、これはルイズやタバサに言いくるめられた為である。まさかデルフにまで言われるとは、と嘆いていた。

 と、もう数十分で到着と言う所で兵士から報告があがる。

 

 

 「報告いたします!雲の間から旗を掲げていない艦あり!なおその周囲には他の艦はいない模様。おそらく空賊あたりかと予想します!」

 

 「ふうむ・・・このルートにいられるとアルビオンに入るところを見られる可能性があるな・・・なんとか撃退しないといけない、しかしこんなところで火薬を使うことはできない・・・」

 

 

 ウェールズが困っている姿をルイズたちが目撃していると魔理沙が手を上げてウェールズに提案する。無礼な態度にも関わらずあまり気にしておらず、首を傾げながら発言を許可する。

 

 

 「あんたの国に入るためにその邪魔者がいるって話だったよな?遠距離攻撃ならドンと来いだぜ?たぶんだがこの中で一番遠距離に強いぜ?」

 

 「いや・・しかしだな?大砲もないのにどうやって?残念だがこの船のはあまり使わないでもらいたいが・・」

 

 「うんにゃ?私の魔法、マスタースパークで船なんて一撃さ!私にまかせろって!な?(これ以上かっこ悪いところ見せられないしな・・)」

 

 

 ウェールズは別の意味で困った顔をし、ルイズたちに視線を向けるが信用しているのか賛成の意見が飛んでくる。

 他の手段が無い訳ではないが一応相手はアンリエッタの信頼する者たちの言葉と思い、やらせてみよう・・と考える。が失敗した時の為の別の手段も兵士に準備させる。

 

 

 「準備はいいか?マリサ」

 

 「おう!まっかしとけ!あ、そうそうこれ成功したらさっきの迷惑かけたこと許してくれよ?これでちゃらだと思ってさ!な?」

 

 「別に良いって言ったじゃないか、だがそう言うのであれば良いだろう。無理だと思ったらすぐに言ってくれ、こちらで仕留める事にするから」

 

 「ははっ、あんなに分かり易くてデカイ的だぞ?失敗するほうが難しいって!んでどこ狙えばいいんだ?」

 

 「基本的に船に前後に風石機関が存在するんだ、どちらが故障でもしたらその船は低速でなら移動はできるが戦闘での運用は不可能だ。無論前後機能停止でもすればそれは落下、すなわち相手を殺すことだ。・・・君の仲間は近くに居ないから聞こえない・・だからもう一度聞くよ、分かっているかい?君のような可憐な女の子が人を殺すことになるんだぞ?私たちがなんとかすることだってできる。これでも何年何十年船を運用してきたんだよ?」

 

 「・・・でも、だ!私が元々住んでいる所じゃあ異変はたっくさんあったけど、殺し合いなんてないところだった、でも今はそこじゃないしな・・・正直私の力がどれくらい通用するかは分からないけどな。私だって強くならないといけないんだ・・・心も体も、あいつに追いつく為に・・!それにルイズたちの為に私が今できることをするまでだぜ!」

 

 「・・・意気込みはあるようだね。分かった、じゃあよろしく頼んでもいいかい?」

 

 「おう!わたしのマスパをなめんなよ!さぁ!一撃でしとめてやるぜ!」

 

 「ああ 微速前進、1メイルごとに左へ!敵の背後につけ!!」

 

 

 ウェールズが乗る船がある程度敵艦に近づくと無音走行に入る。空賊は周囲の確認も怠り、何も気がつかないまま数十リーグ後方へ寄せられてしまう。ウェールズが魔理沙へ視線を移し頷く、魔理沙はニヤけ顔で八卦炉に魔力をかき集める。周囲にいる兵士もこの異変に気がつき、ウェールズもごくりと息を呑む。

 

 

 「今日二回目のマスパだぜ!・・・ふっ・・!符の参 マスタースパークッッ!」

 

 

 カッ、と光ったと思ったときには極太の虹色に光るビームが一直線に敵艦後部へ。それと同時にマスパの射撃のせいで強い風が吹き荒れ、船がガタガタと揺れるが魔理沙は容赦なく出力を上げていく。それに連なり風圧も強まり甲板にいる兵士がうずくまり、必死に風に吹き飛ばされないように兵士同士で支えあう姿が見て取れる。

 光が強すぎるのかウェールズも目を細めつつもその姿を最後まで見ている。無論その姿をワルドも見ている。驚いた顔をしつつ、どんどん判明する魔理沙の実力を知れて嬉しいのかにやけている。

 バキバキバキッ・・という木がめちゃくちゃに折れる嫌な音が、遠く離れていても聞こえてくる。出力が落ちてきたのか、光も収まって行き魔力を飛ばす時に発する高音も同時に収まっていく。

 

 すぐにウェールズは兵士から双眼鏡を奪い取り、敵艦を視認する。その目に写ったのは、ぽっかりと端から端まで穴の開いた船の姿・・・すぐに煙を上げ、原型を留めてない船は、落下しつつ空中分解していく。

 

 ボケッとその凄まじい出来事を見ていたウェールズは周囲に敵はいないとはいえ、これほどまでに予想を超えてしまった出来事に、いずれはここに敵が来るだろうと予想した。すぐにも機関を動かすよう指示し素早く雲をかいくぐり、底面あたりからからアルビオンへ進入していく。

 

....

 




マスパ+ガンダールヴ=チート

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