ゼロの使い魔~白黒の自称普通の魔法使い~ 完結 作:WryofuW
森を抜け、道があまり整備されていない空間まででてきた。ここまで特に異常もなく、フーケ捕獲の時のように、適当な話題をネタに、喋りながら進んでいる魔理沙一行。
ふとここで魔理沙は崖の上で何かが動いたような気がした。その為ギーシュやワルドに、面白い動物が居るかも知れないからちょっと見てくる、と一言伝え移動する。一瞬だが、ワルドの表情が硬くなった気がしたが気のせいだろう。この行動にルイズは、いつものことね とため息吐きあきれている様子だった。
あの学院から何かしら用事がないと出れない為、やはり見知らぬ土地へくるとテンションが上がるのは仕方がないだろう。
魔理沙は、心躍るのを抑えず笑顔のまま見たことない動物やキノコを求め、少しだけ別行動を取る。目の届く範囲だが。しかしそこに居たのは動物は動物だが・・・人間だ。無精ひげを生やした男性・・・さすがにこれにはイラっときてしまった。
なにやら武器を片手にすぐに立ち上がれそうな体勢をしている。必死に怒りを抑え話しかける。
「おいあんたら、なにしてるんだ?獣狩りでもしてるのか?」
「あ?・・!?なんだてめぇ!さてはお前も強襲対象の一人か・・!おいお前ら獲物がきたぞ!狙え!」
「獲物?わたし?獣狙うんじゃないの?・・・」
唖然としている魔理沙に無精ひげを生やした男たちは、弓を構え、矢を引き魔理沙に向け一斉に矢を放つが長年やってきた遊び、弾幕ごっこのお陰でこの程度ではまず当たる訳もない。
魔理沙は自由自在に空を舞い、あざ笑うかのように1人1つの弾幕を放つ。
先行した魔理沙の異変を先に察知したワルドは、ルイズと共にグリフォンに指示を出し急行する。ギーシュは、忘れられたのか一人ぼっちのまま馬を走らせる・・。
・・
「おいっ相棒いつになったら俺をつかってくれるんだよぉっ!」
「うぉお!?びっくりした!ははっそういえばいたな!忘れてたぜ」
「たのむよなぁ・・・これじゃあ心まで錆びちまうよ」
「とはいってもなー、私デルフで立ち回ろうとしても重くて振れないし」
だよなぁ・・ と呟くデルフはしょぼくれた様子だが、魔理沙は気にした様子もなく笑いながら矢を避けている。
がしかし、後ろからも矢が飛んできていたようで箒の先の部分に刺さっている。気がついたときは二の腕付近の服に掠っていた。魔理沙は 卑怯な!、と言ったが、すぐに自分で書いた言葉を思いだす。
-ルールの無い世界で弾幕はナンセンスだ。-
この世界は幻想郷ではない。忘れていたわけじゃない、と思う・・・。私の弾幕は、当たっても基本死なない。けどこの矢が刺さったら最悪・・・いや今はとにかく終わらせよう。
「私の服代は・・・こいつの実験台になることで許してやるぜ!そいっ」
背中から少し、大きめの試験管のような物を男たちへ放り投げる。それに対し魔理沙は、試験管へ弾幕を放ちつつ後ろの敵・・つまり、投げた方とは逆の敵に振り向きつつ弾幕を放つ。
その瞬間カッ・・と眩い光を一瞬だけ放つと、前後から来ていた矢は止まった。光をもろに受けた男たちは目をやられ、もだえ苦しんでおり、地べたに這いつくばっている。
そこに風を切る音、ワルドとルイズが現れ状況を説明すると加勢してくれるようだ。しかし無力化に成功しているから今更な訳で、意味がないと感じてしまう。
とりあえず、片側より被害がましな方の男たちの元へ。事情聴取ってやつだ。
「で、あいつらはなんなんだよ、いきなり襲い掛かってきてよ。当たったらどうすんだよなー」
「・・・ミス・魔理沙、ずいぶん冷静なんだな。まるで慣れているかのような・・それに先ほどの閃光弾らしきもの。いったいどこで・・」
「それはな、乙女の内緒ってやつだぜ」
「ワルド様、いつものことだから、気にしたら負けよ」
「なんだよルイズはー!ひどい言い方だぜー」
そんな様子を見ていたワルドは、諦めたらしく矢を放ってきた敵へ尋問すると、ルイズを置いて移動してしまった。助かったな。正直、私にその役目はあわないからな、私は勝負して勝ったり負けたり、そしてもやもやを無くしつつ仲良くお酒を飲むことだ。だけど、この外の世界じゃあそれも叶わないな・・。そう考えていたらお酒が飲みたくなってきた。
そんなことを考えていたら尋問が終わったようで、ここら辺の物取りらしい。治安が悪いことをすっかり忘れていたワルドは、ルイズと魔理沙に対し謝っている。ギーシュ?あっ・・ワスレテイタワケデハナイ。
今更ながらギーシュが追いついた様で、夜が来る前に町へ入り宿を取るらしく、馬やグリフォンの負担が大きくならない程度に一向は強行する。
・・・あれ以来、襲われることもなく思ったより早く無事に町へと到着した。宿も問題なく取れた為魔理沙だけ町で買い物をすることに。
何故魔理沙だけなのかというと、ルイズとワルドは宿で休憩だそうだ。恋する者の味方、霧雨魔理沙は空気を読むぜ。そして、ギーシュはまぁ疲労なのだろう。馬を使ってるのに疲れるのか?股が痛くなるのだろうか、私にはわからない。飼うなら小さいのがいいな、ツチノコとかそこらへんがいいな。あれ雑食だし楽でいい。
・・・余計なことばかり考えてしまうが、これもまた旅をしながらの楽しみだろう。調合用に色々買い込んで宿で作るとしよう。
・・・・・
それから、魔力増強用かつ魔力回復用に必要な材料を買い込んだ。この国では、そういった物はあんまり普及していないらしく、完成状態で売っているわけではないようだ。それはそれで召喚されてから今まで調べてきた甲斐があるってものだ。
今更ながら、魔力増強に関しては必要ない気もするがまああったほうが良いだろう。頭のいい人は二手、三手先を見るものだと本で読んだからな。
時間後で夜が来るだろうか、夕食が来る前に作り終わろう。明日は船に乗ってアルビオンに行くらしいが・・船ってどんなものだろう。聖のお仲間一行が使ってた、あのでかいのかな?それは楽しみだ。
そして宿に到着した魔理沙は、一階にいたギーシュに挨拶しそのまま借りた一室で調合を開始する。八卦炉でちょろ火を出しつつ、適当な鍋に水や買っていたキノコ、葉などを入れよく煮込む。そこに私の魔力も入れよく混ぜ合わせ色が変わったとこで少しずつ温度を下げるため放置。何故私の魔力を入れるのかというと、服用した時に吸収を良くさせる為、なお且つ甘くなるからな。私の魔力の塊は甘いよ、最初に月のやつが食べたときは吃驚した。あれのおかげで何かと視野が幅広くなったぜ。糖分は乙女の燃料だからな!
・・・とそこにドアのノックされる音が響く。一声かけ中へ入れさせるとそこにはルイズがいた。嫌そうな顔をしてこちらを見ている。首をかしげると、ルイズが口を開く。
「ねぇ何してんのよ、こっちまでその甘苦い臭いがきてるんだけど・・」
「魔力の薬の調合中だよ、飲んでみる?」
「いや結構よ・・・というかあなたできたの!?」
「できたってこれをか?そりゃあ魔法使いだもん、知識は蓄えてるさ」
今は疲労回復に効果があるかもしれない魔法薬を作っている。それを見てルイズは、何故か頭を抱え悩んでいるようだ。何に悩んでいるかは分からない、相談してくれれば乗ってあげるのにな。そんなやり取りを行っていると、さらにギーシュがこの部屋に入ってきた。なんでもご飯の時間だそうだ。丁度調合も終わったためそれに従う。
・・・
食事をしているときにワルドから話しかけられ一旦手を止めそちらを向く。
「使い魔くんはそこにいるギーシュくんと決闘したそうじゃないか」
「ぶっ・・げほっげほっ」
不意を付かれたのか、ギーシュは口に含んでいた食べ物を飛ばしながらあせっている。非常に汚いぞ。
これにはワルドも、しわを寄せているようだ。
「うわっギーシュきたねえ!うへぇ・・・でそれがどうしたんだ?」
「いやなに君の実力が気になってね。よかったら手合わせしてほしい」
「はぁ?私剣なんて振れないぞ?」
「魔法込みでもいいだろう、どうだい?」
「うーん手合わせできる場所がないし剣扱ったことないって言ってるじゃないか」
そこまでしたいのか、ワルドの意図が読めないでいるとルイズが止めに入る。どうしてそこまでしたいのか、と。その通りだ、私もルイズに続きワルドへ視線を向ける。観念したのか口を開く。
「何故実力を測りたかったのか、だね。もちろん愛しきルイズの為さ、使い魔は主人を守るために存在するものだ。こんなこと言うのは失礼かもしれないがこの際言っておこう。見た目も貧弱そうだ、それに剣も扱えない素人でどうやってルイズを守るのかね?魔法だけでか?枯渇したらどうなる?」
さすがにこれ怒って良いよな?町のことを考えて手合わせを断っていたが・・・自分が持っていたグラスが、余計に漏れた魔力によって割れてしまった。握りつぶしたわけではないため、手が傷つく事はなかった。しかしそんなことを気にせずワルドを睨む。ワルドの視線も鋭くなり一触触発状態となり、ギーシュも息を呑むも何も言えず固まっている。ルイズもこれ以上は何もいえないのか、手を握り締め2人を交互に見ている。
とここでワルドが一息はき、表情が柔らかくなり謝罪してくる。何故挑発じみたことをするのかと聞くと、手合わせ出来ないのであればせめて戦う、守ると言った気持ちだけでも、と言う事らしい。なんとも馬鹿馬鹿しい・・・怒る気も失せてしまった。流石に話す気も起きない、それなら魔法薬を調合したほうが数倍数十倍有意義だ。ここらで失礼させてもらおう。
「あそ、なら話は終わりだな。魔法薬の調合がまだあるんでね、先に戻らせてもらうから」
「あっ魔理沙・・・ワルド様!言いすぎですわ!どうして・・」
「・・確かに私も言い過ぎたと思っている。あそこまで理由も言わずうじうじ拒否られてしまって止まらなくなってたよ」
「(どうみてもワルド様が・・・ここは私が行くしかないわ)・・・ちょっと様子見てきます」
・・・部屋に戻ってきたが非常に気分が悪い。一応言っておくが、ご飯はなかなか美味しかった。あれがなければ良い気持ちのまま眠れたのかもしれない。確か気持ちを安らぐ為の魔法薬も本に書いたはずだ。それを調合しながらまた部屋の中にある星成分を集める。これだけでも集中できるし気持ちが治まる気がする。そこにルイズの声とともにノックが聞こえた為、許可を出す。申し訳なさそうにしていた為、ルイズが悪いわけじゃないからそんな気にするな と言いつつ近くに座らせる。
「どーしてルイズがそんな顔すんだよ、もう私は気にしてないぜ?元気が取り柄のルイズがそんな雰囲気出すなんて勿体無いぜ。」
「ワルドに悪気は無いの、許してとは言わないけど・・・」
「いいよもう終わったことだしな、それよりもう少しで気持ちの安らぐ(であろう)薬ができるから飲むか?味は問題ない(はず)ぜ」
「えぇ・・・私を実験台にしようって魂胆じゃないでしょうね」
「そ・・ソンナコトアルワケナイジャナイカ」
「やっ「それよりこれ食べてみないか?おいしいぜ?」・・・なによそのキラキラした星は」
魔理沙はふふん、と声に出しルイズの手に乗せる。ほんのり暖かくそこらへんの宝石以上に綺麗なものだ。まるで魔理沙が出す星の成分とやらみたい・・・まさか?
「これもしかしてだけど・・魔理沙の出す星?」
「おお!よーくわかったな、珍しく鋭いな」
「珍しいは余計よ。それで食べれるものじゃないでしょ、何を言ってるのかしら」
「一度な弾幕ごっこで戦った相手がこれ食べたんだぜ?そのときは吃驚したよ、カリッ・・甘・・とか言っちゃってよーアホかと思ったぜ」
笑いながら言う魔理沙の言葉を聞き、ルイズは渡された星を見つめ、そしてつばを飲み込む。それを見た魔理沙はニヤリと笑み安心させる為、さらに星成分を生成し固め、少しかじる。ルイズは目を見開きその様子を見ている。
口に含み食べてみたが、魔力が戻る訳じゃないしお腹が膨れるわけじゃない。甘いと感じるだけだと思う。その行動を見たルイズは、少しだけ恐る恐るかじる。
「・・!?甘いわ、どういうことなの?口の中で溶けちゃったけど」
「面白いだろ?」
「ええ・・ええ、ほんと不思議・・・」
ルイズと話したことでもやもやも無くなり薬が無駄になってしまったが、まぁいつか使うことになるだろう、その時の為に持っておこう。明日出向だったな、早めに寝よう。ルイズを部屋に返し魔理沙は寝る為、ベッドに潜り込むのだった・・。
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