予約投稿でやってみたけど、うまく投稿できてるかな?
次はハイスクールあたりを投稿したいが……
-追記-
ご指摘をいただき、入学の仕方を修正しました。
いやはや、何も考えずネタに走ろうとしたらいけませんね。
しっかりと猛省せねば。
一応、修正前よりかはマシになったと思いますが、まだおかしな部分があると思います。
修正すべきという部分がありましたら、ご指摘していただけると幸いです。
「さて、この時間は実戦で使用する各種装備の特性についての説明を行う」
稟と別れ、自身が担当するクラスへ戻った千冬。
彼女は教壇に立ち、授業を開始し始めた。
「と、その前に。再来週に行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めなければならん」
千冬の言葉に教室が微かにざわめく。それを眼で制し、千冬は言葉を続ける。
「クラス代表者は言葉通りの意味だ。対抗戦に出場は勿論の事、生徒会の開く会議や委員会への出席と言った雑用を担う。当然だが、一度決まると一年間変更はきかない。さて、それを踏まえた上で立候補する者はいるか?」
ざわざわと教室が色めき立ち、生徒達は互いに顔を見合わせている。教室内に異様な空気が篭るが、一人の少女の言葉を皮切りに空気が変わる。
「はい、私は織斑君を推薦します!」
「私もそれがいいと思います」
一人の少女の言葉を切っ掛けに、周りの少女達は「私も」と続けていく。
「ふむ……候補者は織斑一夏と。他にいるか?自薦他薦は問わんぞ」
「……は?織斑って俺の事か!?」
周囲の言葉に思わず立ち上がったのは、世界で唯一ISを扱える男―織斑一夏。そんな彼に周囲の視線は集まる。その視線は、「何当り前な事を」と、「彼ならきっと何とかしてくれる」という半々に分かれていた。
「織斑。急に立ち上がるな、邪魔だ。他に候補者はいないか?」
「ちょ、ま、待ってくれ!俺はやるだなんて一言も……」
「自薦他薦は問わんと言った。推薦された者に拒否権などありはしない。選ばれた事を甘んじて受け入れろ」
「い、いや、でも……」
千冬の言葉に言い返そうとするも、うまく言葉を紡げない一夏。代表者は織斑一夏に決定、と思われたその時。
「自薦致しますわ」
一人の少女が、静かに挙手をした。
周囲の視線が、その主へと集中する。
「……ほう?自薦するか、オルコット」
千冬はその少女―イギリスの代表候補生であるセシリア・オルコットに視線を送る。
「えぇ。自薦致します。確かに、ISを唯一扱える彼を推薦する気持ちも分からなくはありませんが、彼のIS稼働時間はそんなにないのではありませんか?」
「……まぁ、そうだな。織斑がISを扱えると発覚してから、ISに触れる機会などなかったからな」
「彼をクラス代表にすれば、話題性もあるでしょう。ですがそれだけで、ISを乗りこなせない彼を試合に出してしまったら?勝てるかもしれない試合も勝てないでしょう。そうなれば話題性も何もありませんわ。それに、対抗戦は授業の一環。クラス全体の評価に影響するものではないのですか?」
「そうだな。あくまで、入学時点での各クラスの実力推移を測るものだが、当然評価はされる」
セシリアの言葉に、いつの間にか教室中が静まっていた。彼女の言葉と千冬の肯定に何かを考えるかのように。
生徒達はセシリアの言葉を吟味し、二つの意見に分かれつつあった。セシリアにクラス代表になってもらうか、広告塔として織斑一夏を押すか。
「皆さんが悩むのも分かりますわ。ですのでここは一つ、私と彼で決闘を行い、その結果で代表を決めると言うのは如何でしょう?」
話し合いはもう少し続くのであった。
「さて、これで君は、明日からこの学園の生徒になるわ」
試験を終え、その採点結果を聞いた稟は、彼の試験を監督していた教師からそう言われた。
「織斑先生から説明されていると思うけど、明日から学園の寮で暮らしてもらう事になるわ。今日はまだ準備が出来ていないからそのまま帰ってもらう事になるんだけど」
「分かりました。ところで、教材や制服等はどうなっているんですか?」
「織斑先生の話では、君が泊まる事になっているホテルに届けられているそうよ。肩を震わせながら織斑先生が色々とぼやいていたわ」
眼前の教師は、物凄く疲れた溜息を吐きながらそう言った。千冬もそうだったが、彼女の眼の下には隈が出来ており、色々と無茶をやらされていたのだろう。
「その……身内が色々と、すいません」
そんな教師に対し、申し訳なさそうに謝罪をする稟。それに対して教師は、手を振って、
「別に君が謝る必要はないわ。どちらかと言えば、君も被害者側なんでしょ?」
どこか同情するような視線を向けてくる教師に、稟は乾いた笑いを浮かべるしかできなかった。
そんなこんなで。
時間は流れて翌日の朝。IS学園から泊まるべきホテルへ向かい、部屋に着いてすぐに入学の準備を済ませていた稟は、届けられた制服を着ておかしなところがないかを何度も確認していた。
再び学園に通う事に複雑な思いを抱きながら、姿見に映る自分をじっと見る。
「稟様、もう時間ですよ。いつまで確認しているんですか?」
彼の後ろから声をかけてくるアレン。
その声に我に帰った稟は彼女へと振り向く。
IS学園の、急遽作られた男子用の制服。それに身を包んだ稟を見つめ、アレンは穏やかな笑みを浮かべる。
「とてもよくお似合いですよ、稟様」
アレンの口から称賛の言葉が送られる。
稟は照れ臭そうに頬をかき、アレンから視線を逸らす。褒められる事に慣れていない稟としては、何を言って返せばいいのか分からないので視線を逸らすしかないのだ。
そんな稟を微笑ましそうに見つめ、彼の姿を画像と映像に収めているアレン。そのデータは今、束の下に送信されている。今頃は、束もクロエも稟の姿に見惚れているだろう。身内贔屓すぎるかもしれないが、彼女達にとってはそういうものだから仕方ない。
場所は移り、IS学園の職員室。
稟とアレンは担任となる織斑千冬の前で話を聞いていた。
「この学園での注意事項は以上となる。何か質問はあるか?」
千冬の説明を聞き終え、特に質問のなかった稟は首を横に振る事で答える。アレンも質問はないようだ。千冬はそれに頷き、
「お前達の事情を知る者は、わたしを含めてごく少数しかいない。全ての教員にお前達の充填を知らせるには、あまりにも荒唐無稽すぎて得策ではないからだ」
鋭い目付きをさらに鋭くし、千冬は言葉を続ける。
「奴から事情を聞いているとは言え、正直信じられん。お前のような存在がいるなど」
束からどこまで聞いているのか。
千冬の鋭い眼光は、虚言は許さんと言わんばかりに稟を見据えている。それに対しアレンも眼を細め、稟を庇うように一歩前に出て千冬を睨み付ける。いくら束の親友と言えど、稟を脅かすような存在であれば排除しなければいけない。例え相手が、
職員室に、重苦しい空気が流れる。
周囲の教師達は、あまりの重圧に稟達から距離をとる。中にはそそくさと職員室から逃げ出す者までいる。それ程までに、この空気は重い。
「……まぁ、奴がそんな嘘を吐くとは思えんのも事実。だが、その真偽を見定める為にも、お前にはISでの試験を数日後に受けてもらう。いいな?」
自身を睨み付けているアレンを内心面白そうに見つめながら、千冬は先程までの剣呑な雰囲気をあっさりと解く。重苦しい空気はなくなったが、周囲の教師達はまだ固まったままだ。
未だに千冬を睨み付けているアレンの肩を軽く叩いた稟は、千冬の言葉に了承するように頷く。それにアレンは何か言いかけるが、稟が頷いた事を想いも確認して立ち上がった千冬に遮られる。
「今から教室へ向かう。ついて来い」
千冬は周囲の教師達のフォローをする事なく、職員室を出ていくのだった。
千冬について行き、彼が入るクラスへ向かう道中。今は授業中の為か、学生や教師と擦れ違う事なく目的の教室に着いた。千冬は「私が呼んだら入って来い」と言って先に教室に入り、稟とアレンは黙ってその指示に従い、彼女の声がかかるまで廊下で待機する事になった。
「しかし、先程の織斑千冬の言葉は許しがたいですね。創造主は一体どんな説明をしたのでしょうか」
彼の隣で、IS学園の女子制服を身に纏ったアレンがそう言ってきた。
アレンの眼はまだ険しく、先程の千冬の態度に憤慨している。稟としても先程の千冬の態度は人として、教師として如何なものかと思わないでもなかったが、自分の状況や立場、彼女達教師陣の苦労を思うと何も言えなかった。束の説明内容は、確かに気になるところではあったが。
稟は苦笑するだけでアレンの言葉には答えなかった。
「では、入って来い!」
千冬のお呼びがかかった。
稟とアレンは顔を見合わせ、
「参りましょう稟様。貴方の新たな一歩は、此処からです」
「……あぁ」
教室へと入る。
稟達が入る事で、それまでざわついていた教室がピタリと静まり返る。そして、クラス中の視線が一気に稟とアレンに、否。稟に集中する。
千冬から視線で促され、先にアレンが自己紹介をする。
「私は土見アレンと申します。諸事情がありまして入学が一日ずれてしまいましたが、皆様と仲良くしていけると嬉しいです。これから宜しくお願いします」
同姓でも見惚れる美しい笑顔を一つ。何名かの少女はその笑顔に若干見惚れている。
稟は自分に集中する視線に、一度深呼吸をして早まる鼓動を静め。
「土見稟です。アレンと同じく諸事情により入学が一日遅れました。色々とご迷惑をおかけする事があるかもしれませんが、仲良くしていただければ幸いです。これから一年。宜しくお願いします」
「……男?」
「……織斑君以外にも、ISを操縦できる男性がいたの?」
「でも、そんなニュースなかったよ?」
「……あの外見で男なの?」
「いや、男装をしている麗人かも」
「なんで男装する必要があるのよ」
「姓が一緒という事は、姉弟?」
「でも、似てないわよ?」
「国籍も違うっぽいし」
「まさか、若夫婦?」
ざわざわ、ざわざわと。徐々にざわめきだすクラス。とある三人の学生を除いて、周囲と話し合う少女達。
「こんな外見をしていますが、俺は男ですよ」
稟としては聞き逃せない言葉があったので、すかさず口を挟む。半ば諦めているとは言え、これからクラスで共に過ごす事になる少女達に勘違いされては困るからだ。その際に、印象を悪くさせない為に笑顔を一つ。
その笑顔は、男のものとは思えない程に美しく、儚いもので。
『はうっ!?』
クラスの大半の生徒が、何かに撃ち抜かれたかのような擬音と共に声を漏らす。その頬は若干朱に染まっているのはお約束で、それを見たアレンが顔を顰めているのもいつも通りだったり。
稟は、そんな生徒達の反応に首を傾げるばかり。何か自己紹介の言葉を間違えたのだろうかと、内心不安になっていた。
そして、微妙な沈黙が流れつつある中。
――ガタ!
誰かが立ち上がる音がした。
その音がした方へ稟が顔を向ければ、そこにいたのは。
数年前。稟がイギリスで出逢った少女。セシリア・オルコットが驚愕の表情で立っていた。
急に立ち上がった彼女に、周囲の視線が訝しげに彼女に集中するがセシリアにとってはそれどころではない。再会を望んでいた少年が、いきなり目の前に現れたのだから。
「急に立ち上がるな、オルコット。まだ自己紹介の途中だ」
「……あ、申し訳ありませんわ。織斑先生」
千冬の言葉で我に返るセシリア。
彼女は自分が立ち上がっていた事に驚き、バツの悪そうな表情で席に座りなおす。
彼女が座ったのと同時、
「それで、もう言う事はないか?」
千冬が稟に問い掛ける。
彼は少し考える素振りを見せ、
「では、最後に一つだけ」
再び稟に視線が集中する。
稟はアレンを一瞥し、
「彼女と姓が一緒なのは、家族だからです。夫婦ではありませんから」
「これで遅れていた二人の紹介が終わったな。ならばこれから授業を行う。土見両名は一番後ろの空いている席に着け。それと、こいつらに関する質問等は休み時間に行うように」
ざわつく生徒達を一睨みで黙らせ、千冬は教壇に着く。
(まさか、こんな所で彼女と再会すりとは。もう会う事もないからあんな事を言ってしまったのに。偶然か必然か……それに彼女もいるとはね)
用意された席に向かいつつ、セシリアにそっと視線を送る稟。そして、彼女の左耳についている青いイヤーカフスにも。幸いセシリアは稟の視線に気付いていない。
(そして、あの二人が織斑一夏と束さんの妹、箒か。これからどうなるかな……)
これからの学園生活に色々な思いを抱きながら、稟は内心で呟く。
(楓、桜…………。君達は今、どうしてるんだ?)