ハイスクールD×D 俺と愉快な神話生物達と偶に神様   作:心太マグナム

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前回後書きで数の暴力でいくと書いたな

すまない、ありゃ嘘になった。

作者の文章力の無さが露呈して中止になってしまいました。

ホントすみません


笑う男と女

舞台は一旦切り替わり場所は今回の会談を襲撃した魔術師達の作戦本部。そこには魔術師達の中でも指折りの実力者が魔術を用いて襲撃中のメンバー達に指令を出していた。

 

「と、当主様大変です!今確認が取れました!あの男はアーミテイジ!いくつもの教団を壊滅させてきた邪教潰し、悪童アーミテイジです!」

 

そんな中、一人の女の魔術師が"当主様"と呼ばれた男に慌てた様子で駆け寄り"アーミテイジ"の名を口にする。

 

「な!?アーミテイジだと!?」

 

「ハァ、ハァ……はい!ですからお気をつけ下さい!」

 

余程急いで来たのだろうか女の魔術師は蹲るような姿勢で必死に息を整えようとする。だが苦しそうな息とは違い、周囲の魔術師達に見えていない女の表情は愉快そうに笑っていた。

 

そして労をねぎらおうとした"当主様"が女に近づいた瞬間、女の手にバールのような物が握られーーー

 

「油断してると、こんな風にされてしまいますから★」

 

「ガッ……!?」

 

ーーー"当主様"が反応するよりも速く、女の握るバールのような物が"当主様"の喉を貫いた。

 

「ギ、ギザマ……!」

 

喉を貫かれ苦痛に満ちた表情の中女を睨む"当主様"。それに対し女は愉快そうに笑いバールのような物を傷口を広げるように上下に動かしていく

 

「一体いつから裏切っていた、ですか?やだなぁ、そんなの最初からに決まってるじゃないですか。ホント、貴方がバカで助かりましたよ。少し誘惑してあげただけでこんなにも愚かな行動をしてくれたんですから」

 

バールのような物を上下に動かしながら女がローブを脱ぎ捨てる。ローブを脱ぎ捨てた事で見えた女の容姿は正に絶世の美女としか言えないほどに美しく、少し微笑んだだけで見るものを魅了させてしまいかねない程。だがそんな絶世の美女の女が浮かべている表情は悍ましい程の歪んだ笑みだった。

 

「人間というのは愚かな生き物です。美しい異性に見栄を張ろうという理由だけでこんなにも愚かな行動をする。ホント、なんて無駄で、なんて面白いんでしょう」

 

女は周りにいる魔術師達を嘲笑しながら指を鳴らす。

 

フィンガースナップの音同時に"当主様"の身体が縦に二つに割れる。

 

"当主様"だったものからは血飛沫が撒き散らされ、辺りにいる魔術師が目を逸らしてしまう中、一人の魔術師は目を見開く。

 

「バ、バカな……!?お、お前はアーミテイジの後ろにいた女……!?な、何故そこに……!!いやいる!お前は今もアーミテイジの後ろにいる!ならお前は何なのだ!?」

 

魔術師は見ていた。"当主様"を殺した見目麗しき女がアーミテイジの後ろにいた筈の銀髪の少女、ニャル子になるその瞬間を。

 

魔術師は魔術越しに駒王学園を見る。そこには先程の景色と変わらずアーミテイジの後ろに目の前で笑う銀髪の少女と同じ姿の少女がいる。

 

「おやおや?何をそんなに驚いてるんです?姿形が同じ人間が二人いるくらいじゃないですか。この世界にはそういう神器もあるでしょうし、そんなに驚く程でもないでしょう?」

 

驚き戸惑う魔術師を見て首を傾げるニャル子。

 

しかし何処からか声を聞いたような仕草をとると頷いてバールのような物を魔術師たちに突きつける。

 

「さて、お喋りも楽しいですがそろそろお仕事を再開しませんと。本体(わたし)から催促も来ている事ですし」

 

「さ、させるか!」

 

「多少力を持つ程度の女風情が私達を舐めるなよ!」

 

突きつけられたバールのような物に立ち向かうように魔術師達が魔術を発動させる。だがその行動をするには余りにも遅すぎた。

 

「あー、そういうのいいですよ。もう終わってますので」

 

ニャル子の言葉と同時に魔術師達の胸部から血が噴き出す。

 

「それでは皆さん、サヨウナラ。アハハハハ!!」

 

血を撒き散らして絶命する魔術師達の姿を見ながら手から溢れ落ちる無数の心臓を踏み潰し、ニャル子は高らかに笑い声を上げた。

 

 

分霊からの連絡を受けとり、ニャル子は本部側の魔術師達を始末し終えた事を定治に伝える。

 

「定治さん、終わりましたよ。向こうの中心人物は全て消しておきました。残りはあそこの下っ端達だけです」

 

「おう、よくやった。流石はニャルって言った所だな」

 

「フフ、貴方のお役に立てた様で何よりですよ」

 

ニャル子の報告に定治が笑って褒めるとニャル子は嬉しそうにニコニコと笑う。

 

あんなにもニャル子を嫌っている定治がニャル子に笑顔を見せた、この光景を見てユキは何かに気づいたのか神妙な面持ちでショゴスに声をかける。

 

『……ショゴスくん』

 

『うん、定治舌出して』

 

『ん?ふぉい』

 

ユキの言葉にショゴスが頷き、定治に舌を出すよう頼むと、定治は躊躇うこと無くショゴスに舌を見せる。すると定治の舌を見た瞬間ショゴスは神妙な面持ちになる。

 

『……やっぱりね。通りでニャル様が協力的な訳だよ』

 

ショゴスが見たのは定治の舌に刻まれている黒色の木蓮の花のような紋章。

 

一見、それは美しく見えるがその美しさの裏にはニャルラトホテプの力が見え隠れし、普通の人間なら見つめ続けるだけでその者の正気を奪いかねないモノ。

 

その事を知っているショゴスは顔から汗を垂らし、紋章から目を晒して息を吐く。

 

そしてショゴスが汗を垂らして紋章から目を晒した一方で、定治は出した舌を戻してショゴスの身体を軽く叩く。

 

『ま、そういう事だショゴスくん。今のニャルは純粋に俺の味方をしてる。今回はこの前みたいな事はやらかさないから安心していいぜ』

 

それだけ言って定治は校庭を見渡す。そこでは薄暗い闇の中で無慈悲に魔術師達の命を奪う神話生物達の姿がぼんやりと見えていた。

 

「流石、斉藤さん達グールは仕事早くて助かるぜ」

 

門に覆われた校庭は星のない夜のように暗くさせ、余程視力が良くない限り校庭全体を見渡せない程。そんな校庭から定治の耳には音もなく魔術師達を狩る斉藤率いるグール達の殺戮の音と魔術師の悲鳴が聞こえていた。

 

「ぐっ!?ガハッ!?」

 

「ど、どこだ!?何処にいギャア!?」

 

グール達は音も無く、鋭い爪で魔術師の首を引き裂き、鋭い牙で肉を噛みちぎり魔術師達を絶命させる。

 

その様子を定治はヘラヘラ笑いながら楽しんでいた。

 

「いい調子だ。けどまぁ、良すぎるせいでこれじゃ他の奴らの出番無くなりそうだぜ……ん?」

 

無慈悲に魔術師達を狩るグール達に定治がヘラヘラ笑っていると背後に気配を感じる。振り返るとそこには爪と牙を血に濡らした本来の姿の斉藤がユキの背中に乗りながら定治に手を振っていた。

 

「よお定治。オーダーは?」

 

「もう殺ってんじゃん、今殺ってるそいつら皆殺しで」

 

「あいよ」

 

ヘラヘラ笑いながら答えた定治に斉藤はニヤリと笑って現れた時と同じように音も無くその場から消え、再び魔術師達を殺していく。

 

数分経ち、魔術師達の死体が積み重ねられていく中、統率力のある魔術師を中心にグールの殺戮の範囲からどうにか離れる事が出来た魔術師がちらほらと現れ始める。

 

「よし!距離を開けばこちらのものだ!この場で一気に殲滅するぞ!」

 

「「「ハッ!」」」

 

グールの群れから抜け出した魔術師達は一箇所に集まり仲間を殺し続けるグールに怒りと殺意を抱きながら魔術を詠唱する。

 

背後にいる獣の存在に気づかずに。

 

『なるほど、つまりは無防備に背後を晒して俺達の槍で貫かれたい訳だな?欲しがり屋さんじゃないの』

 

「なっ!?アッーーー!!」

 

「ど、どうされたのですかアッーーー!!」

 

『フ、この数……槍が足りなくなっちまいそうじゃないの』

 

どうにかグール達と距離を取り魔術を発動しようとさせる魔術師。しかしその背後には魔術師達を取り囲む様に配置されていたムーン=ビーストの群れが自前の槍で魔術師達を刺し貫いていく。

 

「汚ねぇ」

 

「汚い。謝って下さい定治さん」

 

「マジメンゴ」

 

薄暗く見えづらい校庭でもムーン=ビーストがナニをやっているのかおおよその検討のついたニャル子が定治を軽く叱ると定治は適当に謝る。

 

そんなやり取りをしている中でもムーン=ビースト達は容赦無く手に持つ槍で魔術師達を刺し貫いていく。

 

だが魔術師も唯でやられるつもりはない様子で、奇跡的にムーン=ビーストの群れから抜け出す事が出来た魔術師が息を切らしながら魔術の発動を行おうしていた。

 

「ハァッ、ハァッ!ど、どうにか抜けられた!この距離ならば!『アイ、アイ』……え?」

 

 

ムーン=ビーストの群れから抜け出した魔術師が奇妙な声につられて振り返るとそこには金属的な灰色の色をした16フィート程の木、ザイクロトランが大量に並んでいる光景だった。

 

『アイ、アイ、ザダバルアイ』

 

ザイクトロンは頭の頂にある口のようなもので何かを呟きながら身体を上下に揺らす。

 

この見慣れぬ木、ザイクトロンに魔術師はムーン=ビーストの群れから抜け出せた後の安心感からか、その奇妙な姿を見ても何もせず言葉を飲み込み呆気にとられてしまう。

 

それが最悪の結果になってしまうとも知らずに。

 

『アイ、オレダヂテギダオス、サダバルアイ』

 

魔術師が呆気に取られていると、ザイクロトランは太い枝で掴み上げて魔術師を持ち上げる。

 

「な!?や、やめろ!このぉ!」

 

ザイクロトランに持ち上げられた魔術師はここでようやくザイクトロンの危険性に気づき、掴まれた枝に魔術で攻撃する。しかしザイクトロンの枝は切れることなく、燃やそうとしても他のザイクロトランが直ぐに鎮火させ、それどころか抵抗をしてしまった事によりザイクロトランの怒りを買って魔術師は腕をへし折られてしまう。

 

「ガァァォァ!?う、腕がぁぁぁ!?」

 

『アイ、アイ』

 

『デギ、デギ』

 

『グウ、グウ、マルノミズル』

 

『デモ、ゾノマエニゴロズ』

 

『ウン、ゴロジデ、ゾノアドグウ』

 

魔術師が見たのは何本ものザイクロトラン達が顔を寄せ合い何か話し合っている姿だった。ザイクロトランは何回かのやり取りを終えた後枝を魔術師の四肢、首を掴み力の限り引っ張っていく。

 

「や、やめて……!やめてぇぇぇぇ!!」

 

『グウ、グウ、グウ!』

 

「ひぎゃ……!」

 

必死の声も虚しく、生々しい音ともに魔術師の身体は引き裂かれる。死ぬ間際の魔術師は恐怖と悲しみに満ちたもの、それをザイクロトランは丸呑みにして魔術師だったものを食らい尽くした。

 

中央ではグール達が音も無く殺し、その先を抜けるとムーン=ビーストに貫かれ、奇跡的にムーン=ビーストの群れを抜けても強靭な身体を持つザイクロトランが待ち構えている。この無慈悲に殺されていく魔術師達の姿にニャル子は愉しげにニヤニヤと笑う。

 

「いやーヒドい事しますねぇ定治さん。グールもムーン=ビーストもザイクロトランも実力としは大した事無いですがいずれも数がバカみたいに多い。あの程度の魔術師達が相手に出来る数じゃありませんよ」

 

「アイツらに勝たせない為にやってんだからそりゃそうだろ。今のコイツが作る門に制限なんてものは一切無く、門を一つ設置するだけでその種族全てを呼び出せる。……まぁ、そんな門のせいで呼んでもいないのに勝手に門を通して覘く奴らが出てきちまうのが厄介なんだけどな」

 

ルールブックの力を自慢げに語る定治だが、門の中から強大な力を持つ者達がこの光景を眺めているのを察知し、表情を険しいものへと変えていく。

 

『ハハハ!面白そうな事をやってるじゃないか定治!嫁では無く私が行きたいくらいだ!』

 

『よしなんし、今宵の宴にわっちらは招待されておらぬ』

 

『そ、そうですよシュド=メル!こ、今回、定治様はアレしか招いてません……!わ、私だってお役に立てるのに……と、とにかくズ、ズルはダメですよ!』

 

今門越しに覗いてる者達は三柱の神々。ただ覗いているだけなので力の波動は感じられないがシュド=メルやミゼーアといった今にも出てきそうなの神がいる、今出て来られるのは定治にとって非常にマズい、魔術師を殺すのが目的なのにアレらが出てきてしまっては駒王町どころか最悪世界に甚大な被害が出てしまう。そう考えた定治は耳につけたイヤホンに手を当てて、駒王学園を覗いてる神々に話しかける。

 

『クティーラちゃんの言う通り、見るだけならいいけど今回あんたらは招待してないんだ、そこから出てこようとすんなよ。シュド=メルさんもそうだけど特にミゼーアさん、あんたに言ってんだからな』

 

『ん、わっちかえ?何故かや?わっちは前からお前さんに呼ばれでもしない限りそちらには出向かんと前からいっておろうに』

 

定治にそう言われたミゼーアは何故自分がそう言われてるのか解らずにいるが一度鼻で匂いを嗅ぐと定治が何故自分にああ言ったのかを理解する。

 

『……あぁ、なるほど。先程から加齢臭のような臭いがすると思えば、お主がいたのか丸いの』

 

『口を閉じてろ雌犬。獣臭いお前の吐息がここまで来て吐き気がする』

 

『は?』

 

『あ?』

 

ミゼーアが夢桐の匂いを嗅ぎとり悪態を吐くと、すぐ様夢桐がミゼーアに悪態を返す。両者とも未だに本気になってないとはいえ、危惧した通りミゼーアと夢桐の間が険悪な物へとなっていくのを感じとり、定治は呆れ気味にため息をつく。

 

『……始まったよ、ホントに仲悪いな親父とミゼーアさん。マジめんどくせぇ、クティーラちゃん悪ぃけど親父とミゼーアさんの仲介頼むわ』

 

『え、えぇ!?わ、わたしではお二人の仲介には役不足だと思うんですけど……!?』

 

『(逆にあの二人の勢力に組みしてなくて温厚な性格してるクティーラちゃんくらいしか無理なんですよ……)……いけるいける!クティーラちゃんなら出来るって!俺カワイイクティーラちゃんならあの二人の仲介できるって信じてるから!だから任せたぜクティーラちゃん!』

 

『そ、そんなーーー!?』

 

門越しに何か騒いでる様子のクティーラを無視し定治は再び視線を校庭へと移すとそこには大量の死体が積み重ねられており、定治は頭の中からミゼーアと夢桐の事を忘れ、まるで大量に死体が出来るのを待ち望んでいたかのように愉しそうに笑う。

 

『大体三分の一くらい削れたな。そんじゃ味方を増やすとしますかね。ニャル、調整頼む。チェック』

 

『ええ、おまかせを』

 

定治がそう言ってニャル子に手の平を差し出すとニャル子もまた頷き手の平を定治の手の平に合わせ、校庭に巨大な魔法陣を生み出す。

 

『『ゾンビ創造』』

 

定治が保有する膨大な魔力を媒介に魔術を展開させ、ニャル子はその魔術が校庭全域のみに発動するよう手の平を通して調整する。二人が発動したゾンビの創造の魔法陣は校庭全体を包み、生み出された魔法陣の中にある動かなくなった魔術師の死体が突如として一人でに起き上がっていく。すると定治はリアス達が過去に見た事もない程に口角を釣り上げ、歪んだ笑みを浮かべて炎の精を呼ぶ。

 

「炎の精、らいとあーっぷ」

 

定治の呼び声に応え、上空に大量の炎の精が現れるとその身体で薄暗い校庭を明るく照らす。

 

炎の精が放つ明かりは校庭全域を明るく照らし、定治が呼び出していた神話生物達の姿が現れていく。

 

そしてついに、魔術師達は忘れようとしても決して忘れられないだろう悍ましい神話生物達の軍勢を目にしてしまう。

 

「う、嘘でしょ……!?」

 

「こ、こんな事があっていいの……!?」

 

炎の精が照らした校庭で魔術師が見たのは見渡す限りに存在する神話生物の群れと魔術師だったモノ。

 

 

地上には魔術師だったゾンビ、グール、ムーンビースト、ザイクトロン。

 

「アァ……」「アゥ……」「ぃぁ……」

 

『ひぃ、ふぅ、みぃ……いいねぇ、こりゃ当分飯には困らねぇな。今日は宴会が出来そうだ』

 

『やらないか』

 

『アイ、アイ』

 

上空には炎の精、ビヤーキ、ポリプ。

 

『燃やせ燃やせ!魔女狩りだ!火炙りにしようではないか!』

 

『ふむ、この数なら我々は取りこぼしを狩るとしましょうか』

 

『HAHAHA!!今日は魔術師のミンチをご所望かい?贅沢なモノを要求するじゃないか定治!』

 

更に地中にはクトーニアン、そして魔術を用いて逃走した際に追撃する手筈のティンダロスの猟犬が定治の呼び声を今か今かと待ち構えている。

 

『……シュド=メル様が見てる手前言いたく無いけどこれ私出番あるの?』

 

『多分無いと思うで。あ、それはウチらもやったわ』

 

この軍勢は校庭にいる魔術師の数より遥かに多く、魔術師達を囲む怪物達の軍勢を目の当たりにして魔術師達は恐怖の余り、各々違った反応を見せ始める。

 

「こ、こんな事……あ、あっていい筈が……」

 

「あ、ああ、あぁぁぁぁ!!」

 

「ハ、ハハ……ハハ……」

 

ある者は膝から崩れ落ち、ある者は自らが見る光景に耐えきれず狂ったように顔を掻き毟り、ある者は現実から逃げるように力無く笑う。

 

この魔術師達の行動を一頻り見て定治はその反応を待ち望んでいたかのように、愉しそうに、そして狂ったような五月蝿い笑い声を上げる。

 

「アッヒャッヒャッヒャッ!結構な数で来たみたいだけど悪ぃな!俺は生まれてこの方、数の戦いで負けた事がねぇんだよ!アッヒャッヒャッヒャッ!!」

 

狂ったように五月蝿い笑い声を上げながら定治は呼び出した神話生物達を見渡した後、腕を上げる。

 

「いやーお前らがあまりにも手こずるから大多数の奴らが無駄足踏んじまったじゃねぇか。ま、もうそんなのどうでもいいか、そんじゃそろそろ死んどけ。無駄死にご苦労さん、面白いもの見せてくれてありがとな。ーーーやれ」

 

定治が腕を下ろしたと同時に放った号令と共に神話生物とゾンビが魔術師達に襲いかかる。

 

襲いかかる神話生物達に大半が諦めて大人しく殺されていく中で必死に抗う魔術師達もいるがそれも長く続く事は無く

 

「よ、よせ!や、やめろぉぉぉ!!」

 

ある者は仲間だったモノに食い散らかされ

 

「ガフッ!?」

 

「ピギャ!?」

 

ある者はグールとビヤーキの爪で切り裂かれ

 

「熱い熱い!やめて!やめてぇぇぇぇ!!」

 

ある者は炎の精に生きたままその身を焼かれ

 

「アッーーー!!」

 

ある者はムーン=ビーストに貫かれ

 

「アァァァッ!!」

 

ある者はポリプに身体をグチャグチャにされ

 

魔術師達の命は瞬く間に散らされていく。

 

「いやー、地獄地獄」

 

「フフ、絶景ですねぇ」

 

その様子を定治のニャル子は目をそらす事なくただ歪んだ笑顔でニヤニヤと笑う。

 

しかし、定治の耳につけたイヤホンに二つの声が聞こえてくると定治はその歪んだ笑みを消して直ぐに臨戦態勢へと入る。

 

『定治、後ろに注意だ』『定治、後ろに注意せい』

 

『は?』『あ?』

 

「ショゴスくん、ニャル」

 

「はーい」

 

耳につけたイヤホン越しに夢桐とミゼーアの声が聞こえた少し後、背後から龍の首を象ったような魔術が襲いかかってくる。だが龍の首は定治の声に応えたショゴスが伸ばした触手で器用に龍の首を横に薙ぐ事でことごとく受け流されてしまう。

 

その様子を攻撃を仕掛けた本人であるカテレア・レヴィアタンは目を見開いて驚いてしまう。

 

「私の攻撃を防いだ!?いや受け流したのか!少しはやるようですねアーミテイジ……何っ!?いない!?」

 

脆弱に見えたスライムのような生物に受け流されたのを見たカテレアが驚いている中、先程までいた筈の定治の姿が忽然と消えている。慌てて辺りを見回すカテレアだが定治の姿は何処にも見当たらない。

 

『ユキちゃん飛行に集中して!定治がアレを使った!下手すれば僕達も巻き込まれちゃう!気を引き締めていくよ!』

 

『ええ!任せてちょうだい!』

 

次の攻撃をいつでも受け流せるよう形を変えながら触手を揺らすショゴスは焦った様子でユキにそう言うとユキもまた険しい顔つきで戦闘態勢へと入る。

 

そんな中、ショゴスの後ろではニャル子が愉快に歪んだ笑顔で笑う。

 

「ええ、我が貌の全て、存分にお使い下さい定治さん」

 

"ギフト・千の貌、No.526 吸血鬼ルラ"

 

カテレアの後ろに突如として宙を浮かぶルールブックが夢桐と同じ音声を発し、無数の蝙蝠がカテレアの辺りを舞う。

 

咲け(Bloom,)、』

 

カテレアの周囲を無数に舞う蝙蝠の中で女の声が聞こえてくると、蝙蝠の群れの中で駒王学園の制服であるスラックスが現れ、風を受けてひらめく。

 

輝け(Glow,)、』

 

足が見え隠れする次に、蝙蝠の群れの隙間から駒王学園の制服からはち切れんばかりの女性の大きな胸とスラリとした身体が見え隠れする。

 

威厳の花(Magnolia.)

 

そして蝙蝠に囲まれながら宙を舞う黒髪碧眼の美女がその姿を晒し、歪んだ笑みを浮かべて口に生える鋭い牙と黒く輝く木蓮の花のような紋章をカテレアに見せつける。

 

「こんにちは、名も知らぬ悪魔さん」

 

宙を舞うルールブックと蝙蝠と共に美しくも恐ろしい女吸血鬼が現れた。




ハイ、今回ここまで。

今回の一番の反省点は数の暴力があまり出来なかったことです。

作者自身の文章力の無さが恨めしい……

Bloom,Glow,Magnolia
これを発動する為にはルールブックに隠されている章に書かれているページのいずれかを解放し、0章に記されたとある儀式をルールブックを媒介に行う必要がある。この儀式を行った結果、定治には様々な贈り物が贈られておりそれは木蓮の花のような紋章で身体に刻まれ定治の意思次第で自由に発動できるという。定治が発動できるとされるルールブック※※※の能力の一部。……なんでこんなダセェ名前にしたのかって?そりゃ作者の遊び心です。ツッコミは無しだよ!

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