灰と幻想のグリムガル ―孤独な魔戦士―   作:雨宮海人

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評価に色がつきました~平均7点ぐらいですがランキングにのれたらいいなぁ(願望)

チームレンジについて書いていきますが、原作全部読めてないので色々おかしいところもあると思いますがご了承ください。

それではゆっくりしていってね!


第7話 チームレンジ

初勝利の翌日、今日も昨日と同じ時間に俺はマナト達の宿舎前まで来ていた。

 

どうせ朝食をどこかで買うつもりもなかったので、もし余っていたらもらおうという浅はかな考えだった。

 

しかし、その期待はものすごい形で裏切られることになる。

 

「「「すいませんでした!」」」

 

宿舎に入って最初に聞こえたのはランタ以外の男性陣の謝る声だった。

 

何事かと思い声のしたところに向かうとそこでは、ランタ以外の男が土下座をしていた。

 

ランタはいつも通り、腕を組んで偉そうにしている。

 

そして、謝っている対象はユメとシホルである。ユメはそうとうご立腹の様子で、シホルはそのユメに隠れている。

 

「……おはようございます、ユメさん何かあったんですか?」

 

「あー、フミ君おはようなぁ。ちょっと待っててなぁ」

 

「は、はい」

 

なんか昨日と違いユメがすごく怖い、基本的に温厚な女の子だと思ってたので余計怖い。

 

なので隣にいるシホルの方を見たのだが、俺と目があった瞬間なぜか避けるように宿舎の中に逃げ込んでしまった。

 

何もしてないのに、その反応はさすがに傷つく……

 

「なんだよ、事故だろ?不幸な事故だっつうの」

 

まず、ランタが何かをやらかしたのがわかった。

 

「どんな事故で、壁が壊れるん?」

 

そういいながらユメの視線の先では無理やり木の板を打ち付けて直した壁があった。

 

あれをランタがぶっ壊したのだろう。でも、それでユメがここまで怒るか?

 

「……んなもん、俺が知るか」

 

「にゃに~!」

 

「やめろって!ランタお前も謝れって」

 

言葉はかわいいけど、怒りが伝わるユメの声にハルヒロがかなり焦っているようだ。

 

しかし、話が読めん。どう頑張っても読めない。

 

「大体見られてもいないのにうるせぇんだよ!」

 

ん?見られてもいない?何を?

 

「見ようとしてたやん!犯罪やん!おまわりさん呼ぶよ」

 

あ~、だんだん話が読めてきた。ランタのやつ風呂でも覗こうとしたのではないだろうか?

 

「それに、手ぬぐいなんて持って風呂入るんじゃねぇよ。あとちょっとで……くそっ!」

 

完全にギルティである。むしろよくここまで態度をでかくできるな。もう尊敬の域に達する。

 

「なんで知っとるん?」

 

ユメの声音がさらに低くなる。俺まで怒られている気分になるにのでやめてほしい。

 

ランタは今更やってしまったという顔で口を押さえるが、もう意味ないだろ。

 

「お前みたいなちっぱい見たいわけないだろ!」

 

さらに開き直るのかこのバカは!?どういう神経してやがる……

 

「ちっぱい言うな。本当のこというならユメも怒らんしな」

 

そういいながら胸を触る仕草をするユメさん。地味に目のやり場に困る。そして、怒らないと言ってるが声はそんな事を微塵も感じさせない。

 

「ほんとだな!?まぁ、あれだ。風呂の壁に上ったら壊れてな。……若かったてことだ俺も、壁も」

 

見事なまでの迷言だ。いつもなら殴るなりするところだが、すでに怒りで震えているユメさんがいるので何もする必要はないだろう。

 

「お、怒らないって言ったよな!?」

 

「もう、ランタとは口きかんからなぁ!」

 

「たああぁぁあぁぁぁ!」

 

見事なビンタが炸裂してそのままランタは倒れ、ユメは宿舎の中に行ってしまう。

 

まぁ、ランタは当然として……

 

「で、お前らもランタに協力したのか?」

 

「「「……」」」

 

まぁ、言いだしっぺはランタだろうけど、それでも多少なりとも協力でもしたのだろう。これはどうしようもない。男なら見たいという気持ちが出てくるのは必然だろう。

 

おそらくだが、これにより男性陣と女性陣の関係は最悪になっただろう。この状態で俺がついていってもまともな成長は期待できそうにない。

 

「はぁ……数日後またくる。それまでに仲直りぐらいしておけ」

 

「えっ、フミヤ手伝ってくれないの!?」

 

「連携できそうにないパーティーについていきたくない。しかも下手したら俺も無視されそうだしなシホルとかに」

 

シホルの反応を見るに、男である俺も対象に入っているのはわかってる。こういうのは数日経てばどうにかなるものだろうし、それからでもいいだろう。

 

「……わかったよ。努力する」

 

「そうしてくれ、じゃあ、行くわ。女性陣によろしくな」

 

特に長居する意味がないので俺は宿舎を後にする。

 

しかし、急に予定がなくなってしまうと、どうしようか悩んでしまう。

 

普通に考えれば一人でダムローに行くのがいい気もするが、どうもそんな気分になれない。

 

「どうするか……」

 

街を歩きながら考え込んだところでレンジの言葉を思い出した。

 

「確か……東町の方だったよな」

 

行くあてもないので、話ぐらい聞いてみようと考えた俺は、レンジが言っていた宿舎の方に向かった。

 

「ここらへんだよな」

 

まだオルタナのどこに何があるかをほとんど把握してない俺は東町まで来たが迷ってしまった。あまりここに足を踏み入れてなかったのも理由の一つだろう。

 

しかし、あてもなく歩いているところで、レンジたちが出発の準備をしているのが見えた。

 

レンジは昨日と違い、いい鎧を身につけている。武器もモグゾーのよりもよっぽど切れそうな剣だ。他にも聖騎士の格好をしているロン、アダチは魔法使いの服装で立っている。

サッサとあの女の子はまだらしい。

 

「よう、レンジ」

 

俺は躊躇うことなくレンジに声をかけた。ランタなどはレンジにかなり恐怖を覚えていたが俺はそんな事を微塵も感じていないので問題ない。

 

「フミヤか、マナト達と一緒じゃないのか」

 

「少し問題があってな。昨日の話、冗談じゃないよな?」

 

「当たり前だ。お前は使える。今日はオルタナの街を偵察しているオークが目標だ。分け前は対等で問題ないだろ」

 

「ち、ちょっと待てレンジ。俺は聞いてねぇぞ!」

 

「ロンの言うこともわかるが、実力はあるだろう。レンジが認めるなら同行するのに異存はない」

 

どうやらレンジは俺の事は一切話してなかったらしい、一度断っているのでしょうがないと言えばそうか。

 

「今日はフミヤも同行させる。文句はないだろ」

 

「……ちっ、義勇兵になってる以上実力はあるか」

 

ロンがすごい形相で俺のことを見てくるがこういうのは目を合わせないが吉であろう。

 

そうしていると、サッサと……名前がわからんチビちゃんでいいか。チビちゃんがやってくる。

 

「あれ、初日に一緒にいた子じゃない。どうしたの?」

 

「一緒に行くことになった、それよりも行くぞ」

 

「ぁぃ……」

 

サッサの言うことに説明したレンジはすぐに歩き出してしまう、チビちゃんもすぐにその隣につく。こう見ると親子に見えるな……というのはもちろん口に出さない。

 

「そうなんだ。よろしくね、確かフミヤだっけ?」

 

「あってるよ。それよりも何で俺の名前を?」

 

「レンジがわざわざ他人の名前を人から聞いて、覚えてたからね。珍しすぎて私も覚えちゃったの」

 

なるほど、確かにレンジは興味のないことはすぐに忘れそうだからな……それにしても。

 

「サッサはその感じだと盗賊なのか?」

 

「うん、そうだよ。でも索敵以外は私基本お荷物だからよろしくね」

 

そういうサッサは少し寂しそうだった。しかし、このパーティーで役に立つというのは中々に難しいことだろう。

 

「盗賊には盗賊のやれることがある。それをしてくれるなら何の問題もない。俺も俺のできることをやるだけだからな」

 

そう、考えてみれば魔戦士としては初めてのパーティー行動だ。しかも相手は戦ったことすらないオーク、普通なら不安に感じるかもしれない。しかしなぜか込み上げてくるのは高揚感だ。

 

たぶん、楽しみなのだろう。レンジがどういう戦いをするのかが。そして自分がどこまでそれにくらいつけるかがだ。

 

街を出てから、わずか数十分でレンジは一度足を止めた。

 

「ここら辺からオークは出てくる。気を抜くなよ」

 

「わかった」

 

さすが人間と戦ってる種族なだけあり、随分と街に近いところにいるらしい。俺は気合いを入れ直しながらレンジ達と一緒に森を進んでいく。

 

そして、間もなくして、それはいた。

 

ゴブリンとは比べ物にならない大きさだモグゾーと同じサイズだろうか。しかし横幅はかなり広い、普通の人間の倍以上ある。緑色の肌をしており、鼻は潰れている。そして、意外にもしっかりとした武装をしている。具体的には鎧や兜だ。剣も大きくあれをまともに受けたらひとたまりもないだろう。

 

「一体か、珍しいな」

 

「あれならすぐに終わらせれる、行こうぜ!」

 

冷静なアダチに対してロンはすぐさま行動を起こそうとするが、

 

「待て」

 

レンジの声で場が鎮まる。これだけでどれだけリーダーとしての素質があるのか良くわかる。

 

「一体だけならフミヤにやらせる。実力をこの目で見ておきたい。他のやつらは周辺警戒といざという時のカバーだ」

 

「はぁ!?レンジお前――」

 

ロンが何かを言いかけたが、レンジは今度は目だけで制す。すごいな……

 

「お前だけで倒せたら、報酬は全部お前のものだ。それでいいだろ」

 

拒否権など微塵もない。まぁ、断る気もさらさらないのだが、

 

ここまでゴブリンしか狩ってこなかったのはもしもの時に助けてくれる奴がいなかったからだ。でも今回は違う、思いっきり暴れるだけでいいなら簡単だ。

 

「構わない、行ってくる」

 

俺は集中しながらオークに近づく、鎧を着てるといっても胴体の部分だけであり、足や手は隙だらけである。あれなら何の問題もない。

 

そうだ、ただ俺は殺すだけだあいつを――

 

覚悟を決めて一気に俺は飛び出す。その速さは前衛職とは思えないほどの速さだ。もちろん音がするので、オークはすぐにこちらを向き、武器を横なぎに振るう、直撃コースではあるが咄嗟の判断なので動きが単調だ。

 

そんな攻撃には当たらない。俺は突撃する速度を緩めず、身を屈めることでそれを回避する。そして、

 

――『雷閃』――

 

オークのいる場所をそのまま駆け抜けるように刀を抜き放った。

 

刀は鎧の覆われてない右足を見事切り裂いた。初めて使った時よりも威力が上がってるので切り裂くくらいわけないと思っていたが随分とうまくいった。

 

「グギャアアア!?」

 

右足を失い、バランスを保てなくなりその場に倒れかけるが、すぐに剣を地面に突き刺しバランスを保とうとする。

 

そのまま倒れるよりは有効な手ではあるだろう。しかしそれでも先手をもらった時点で俺の勝ちである。

 

「グオオオォォォ!」

 

だが、俺の予想と違い、オークは地面に刺している剣と残っている左足をうまく使い俺に殴りかかってきたのだ。いくら体勢が悪いと言ってもこれほどの巨体から放たれる拳をまともにくらえば死ぬことすらあり得る。

 

なるほど、ゴブリンよりも強いのは納得できたが、だが、それだけだ。やはり一体なら何の問題もない。

 

殴りかかってきた拳を寸前でかわして、開いてる左手を使い、腰から小太刀を抜いてオークの脳天を貫いた。

 

今度はオークはなんの叫び声をあげることなく、仰向けに倒れた。

 

まだ反撃の可能性を考慮して、俺はすぐにその場から飛び退った。

 

しかし、オークは動くことはなかった。不意打ちができればここまで弱いのか。正直まともにやりあっても負ける気はないな。

 

「マジかよ。一瞬じゃねぇか。前衛というよりも盗賊みたいな動きだったけどな」

 

「……いくらなんでも速すぎでしょ」

 

少し遠くにいたレンジ達が、寄ってくる。ロンとサッサは驚きの声を上げている。

 

「それだけじゃない。あの反撃に対しても冷静だった上に見事な回避。戦士や聖騎士とは違うけど前衛を務められそうだ」

 

「でも、思った以上に攻撃役(アタッカー)だな。盾役(タンク)としてならどこまでできる?」

 

「完璧に後衛の守りに入るならカウンター主体で一対一、引きつけるだけなら二体までならいける」

 

レンジの問いかけに俺は先ほどのオークの動きを見て、客観的に判断する。もし一人でオークやるなら二体までなら普通にいけるだろう。

 

「わかった。次はお前に後衛の守りを任せる。チビは無理に守りに入らず回復に専念だ」

 

「ぁぃ」

 

チビちゃんが返事をするがもしかして、今まで後衛の守りのかなめはこの子だったのだろうか?だとすれば随分と危ない気がするが……いや、今までそれでやってきた以上それだけの実力があるのだろう。

 

 

 

その後は逆に俺がただただ驚かされる番となった。

 

オーク三匹を相手にした時は、まずアダチが一匹の足を魔法で止め、残りの二匹はレンジとロンがそれぞれ相手にする。俺とは違うやり方で前衛二人は完璧にオークを抑え込んでいた。いや、それどころか不意打ちですらないのにレンジに至っては数回攻防をかわした所ですでに一体を戦闘不能にしていた。

 

強すぎる、レンジはタイプは違うけど間違いなく俺より強いそれがわかった。

 

しかし、アダチが足止めしているオークに対してサッサがナイフで攻撃を仕掛ける。見事に決まるが……

 

「グワァァ!」

 

「きゃっ!」

 

決まり切らず、反撃をもらいかけるが何とか回避する。

 

「チビちゃん、アダチのこと任せるよ」

 

「ぁぃ」

 

「煌めく焔、猛追」

 

俺はすぐに飛び出して、魔法を詠唱、火の玉をぶつけ注意をこちらに向かせる、その間サッサはすでに離脱している。

 

オークは大ぶりの攻撃をしてくるが、俺は焦らず『鏡花』を使い攻撃を受け流し、カウンターでダメージを与える。大きく仰け反ったところで

 

「離れろ」

 

その声で俺はすぐさまその場を離脱する。そしてすぐにレンジが攻撃を加えオークを倒す。その間にロンはオークを倒していた。ロンの実力も確かなものである。

 

チームワークという点ではマナト達の方がいいかもしれないが、レンジという絶対的リーダーを中心に動くこのやり方は見事に機能していた。そして、いざという時のカバーに俺という存在はうってつけだった。

 

マナト達とは違う別な楽しさがこのパーティーにあった。レンジに使われるというのはこうも思いっきり戦えるものなのか……

 

絶対的安定感を持つ前衛に的確に味方をサポートできる魔法使い、後衛を守りつつ動くことのできる神官。どれをとってもすごかった。

 

サッサも普通の盗賊としては合格点であろう。しかしこのチームのレベルが高すぎるのだ。お荷物と自分自身を卑下してしまうのも無理はない。

 

マナト達何かがこのチームに入ったら全員お荷物になってもおかしくない。唯一マナトならうまく立ち回れるかといったところだ。

 

同期の義勇兵でもここまで違いがあるのか、俺はほんとに驚くことしかできなかった。

 

結果的に誰も大きな怪我をすることなく、狩りは続き、気がつけば日が暮れ始めていた。

 

さすがにこれ以上は無理なので俺たちは街に戻るために動きだす。

 

「本当にすごいねフミヤ、レンジの動きに完璧についていってる」

 

「それをいったらサッサも自信なくすのは止めた方がいい。盗賊としては全然合格点だ」

 

「そう、ありがと」

 

サッサはそれでも悲しそうな顔をする。やはり、気にしてるのだろうか?

 

「今日はもう帰るが、フミヤ」

 

指示以外はほぼ無言だったレンジが俺に話しかけてくる。

 

「なんだ」

 

「俺のパーティーに入れ、お前は使える。それが今回確信に変わった」

 

レンジの目は本気だ。俺もこのパーティーなら全力で戦えるだろう。しかし、それでも心のどこかでブレーキがかかる。得体のしれない何かが俺の足を止める。

 

「悪いな、今は特定のパーティーに所属する気はない。でも、手伝うぐらいなら誘ってくれ、気が向けば手伝う」

 

「残念だよ。レンジと対等に渡り合えるのは同期なら君ぐらいだ」

 

「さすがにそれは過大評価しすぎだ。俺はレンジほど強くない。今日それがよくわかった」

 

アダチは褒めてくれるが俺にレンジではやはり差がありすぎるだろう。

 

「わかった。もし手伝えるならまた宿舎にこい。今は誰も誘うつもりはないから一枠あいてる」

 

「……気が向いたらな」

 

俺はレンジに念を押して、そのうちに街についた。換金作業が終わり、今日の稼ぎはまさかの40シルバーだった。今までとは比べ物にならない稼ぎに俺は驚いた。

 

オークはここまで金になるのか。でも、集団行動しているやつも多い、一人でやるのは危険すぎるだろう。

 

しかし、ここまでお金を稼げるなら新しいスキルを視野に入れてもいいかもしれない。師匠にまたボコられるのは嫌だが、新しい力に俺は少しだけ胸を躍らせるのであった。

 

 

 

 

 




フミヤは覗きに参加しませんでしたというか住んでる場所違うから無理だよね……

チームレンジ+フミヤ=超強い

これからもフミヤはチームレンジとたまに仕事することになります。

というか理想が6人パーティーなのでフミヤはチームレンジにいた方が都合がいい場合がありそうですね……

感想などあったらよろしくおねがいしまーす!

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