灰と幻想のグリムガル ―孤独な魔戦士―   作:雨宮海人

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睡眠の重要性ではありません笑
まぁ、休みって重要ですよね。(今私は春休みで常に休日ですけど)
そんなこんなで日常回、俺は我慢できずに書いたが後悔はしてない。

心臓が止まりかけたことが二つあったので報告を、
まず、急に評価がつき始めました。正直見るのがすごい怖かったですが、ありがとうございます!
そして、感想で物語の矛盾を指摘されました!これには本当にびっくりしました。なので一部手直しを加えてあります。詳細知りたい方は感想をご覧ください。

こんな感じですがゆっくり見ていってください。


第6話 休日の重要性

俺たちは街に帰ってすぐに今回の戦利品を換金へ向かった。といっても今回のゴブリンはゴブリン袋を持っておらず、あったのは首に下げてあった動物の牙と穴のあいた銀貨一枚のみだった。

 

「たぶん、その銀貨だけど、それじゃあ30カパーがいいところだな」

 

「えっ、銀貨だよ?」

 

俺の言葉に換金のために一緒に来ていたマナトは驚きの声をあげる。

 

「本当だ。俺も最初は嘘かと思って何軒か店を梯子したが、穴があいたりすると途端に値が落ちるんだ」

 

「へぇ、そうなのか……」

 

さらにもう一人一緒に来ていたハルヒロも期待していたのか、少し残念そうだ。

 

「でも、その牙は見たことないから何ともいえん。何かに使えるやつならある程度の値がつくかもしれないな」

 

「これに価値がなかったら稼ぎがほぼなくなっちまうよ……」

 

ハルヒロは肩を落とすような仕草を見せるが――

 

「その牙なら1シルバーで買い取ろう」

 

意外にも値がついた。どうやら魔除けの素材に使われるらしい。

 

これにはマナトも安堵するように笑顔を浮かべていた。

 

「えーと、全部で130カパーになるから、一人18カパーぐらいか?」

 

ハルヒロが計算をするが、さすがにパーティーで分散してしまうとかなり少なくなるな。それなら……

 

「せっかくの初報酬だ。俺はいらない」

 

「「えっ?」」

 

「そこまでの額じゃないし、今回そこまで活躍してないからな気にするな」

 

「いやいやいや、フミヤのおかげでゴブリン見つけられて、俺のピンチにも助けてくれたし、フミヤがいなかったらそれ以前に逃がすところだったんだぜ?」

 

「それでも、今回頑張ったのはお前らだ。マナトそういうことで頼むな」

 

「……うん、わかったよ」

 

ハルヒロは納得いかないようだが、マナトは俺の意図を汲んでくれたらしい。稼ぎゼロは悲しいが、10カパーをせびるほど俺の財政事情は荒んでいない。それなら余裕のないみんなに分けるべきであろう。

 

そんなこんなで他のやつらが待っている場所につく。

 

みた感じ少し疲れが見える。特にランタは珍しく下を向いたまま何も喋らない。今回の戦闘がそうとうきいたようだ。いい薬になればよいのだが。

 

「まだ、近場ならいけるけど、どうする?」

 

「今日はもう一旦休まない?」

 

「そやねぇ、確かにくたびれたもんなぁ」

 

「……賛成」

 

「うん」

 

マナトが聞くと、ハルヒロが疲労の籠った声で提案するとランタ以外のみんなも同意した。今日はこれまでだろう。

 

「そうだね、じゃあまた明日。フミヤは?」

 

「俺も買い物でもして帰る。気が向いたらまた手伝ってやるよ」

 

「じゃあ、解散」

 

マナトの声とともにみんな各々動きだした、俺もこれ以上長居することはないのでその場を離れる、その時にランタが動かないのが目に残ったが俺は動きを止めることはなかった。

 

さて、まだ時間も早いだからといって今から森まで行くには遅すぎるか……

 

「しょうがない、酒場でも行くか」

 

 

 

俺は特に行くところもなかったので、よく行っているシェリーの酒場に向かった。

 

このシェリーの酒場は夜になると義勇兵の溜まり場となるが、この時間はそんなに人がいない。俺は特に時間は意識せず飲みたい時にここにきて、酒を飲んでいる。もちろん一緒に飲む相手などいないので、いつもカウンター席の端っこであるが……

 

俺がいつも通り酒を注文して飲んでいると、酒場の空気が少し変わる。

 

しかし、俺は気にすることなく酒を飲んでいると、

 

「まだ日も落ちてないのに飲んでいるのか?意外だな」

 

俺は自分が話しかけられたことに少し驚いたが、その声には覚えがあった。

 

「レンジか、久しぶりだな。ついでに今日は休みみたいなもんだ。たまにはそういう日があってもいいだろ?」

 

軽い言い訳をしながらもレンジの方を見ることなく、俺は酒を飲む。

 

「俺にも一杯くれ」

 

レンジはそういいながら俺の隣に座る。一体どういうつもりなのだろうか?

 

特に時間がかかることなく、酒が運ばれてきてレンジも飲む。

 

「俺もアダチに言われて今日は休みにしたんだ。俺はまだしもチビやサッサはそうはいかないからな」

 

チビというのはあの小さい女の子のことだろう。さすがにあの女の子を毎日酷使することはしていないようで少し安心した。

 

「お前、一人で団章を買ったらしいな」

 

「……誰から聞いた」

 

「変態所長以外に誰がいる?」

 

「だろうな」

 

別に口止めした覚えもないのでブリト二ーを恨むのは筋違いか。

 

「ゴブリンを一人で狩り続けただけだ。お前みたいにすごいことは何もしてない」

 

「……なぜパーティーを作らない?ずっと一人で活動してるんだろ」

 

レンジの言葉にため息が出る、なぜそんなことまで知っているのか。わざわざ調べたというならストーカーもいいところだ。

 

「お前らしくない。さっさと用件を言ったらどうだ」

 

「それもそうだ、明日俺のパーティーで仕事をしろ。オークを狩りに行くが数が多い場合俺とロンはまだしも他の連中を守るのに手が回らなくなる。前衛ができるやつを探してる、魔戦士なんだろう?」

 

オークとは現在人間の仇敵として存在しているモンスターのことだ。ゴブリンとは比べられないぐらい大きく横幅もひろい、義勇兵の中ではオークを倒せて一人前という言葉があるくらいだ。というか、ギルドまでばれてるのかよ……

 

「ゴブリンしかかったことのない初心者にかける誘いとは思えないな」

 

「俺はそんなやつに声はかけない。使えるからこそ声をかけたんだ」

 

相も変わらずその自信は一体どこからくるのだか、しかし明日もマナト達を手助けする気があるので、ここは断っておくか。

 

「悪いな、今日からマナト達の手伝いをしてるんだ」

 

その言葉にレンジは少し驚いた顔をするが、すぐに何かを納得した顔をして、

 

「先約がいるなら無理強いはしない、東町の大きな宿舎、そこが俺たちの活動拠点だ。気が向いたら来い」

 

そう言って酒を飲みきって、店を出ていってしまった。

 

「本当に強引なやつだな。リーダーには向いてそうだが」

 

そういいつつ、俺も酒を飲み干すのであった。

 

 

 

酒場でだいぶ時間を潰して、街に出ると日が落ち始める時間になっていた。

 

ずっとあそこにいてもよかったのだが、あの時間から人はどんどん増えてどんちゃん騒ぎが始まることが多いので、俺は退散することにした。

 

しかし、外に出たといってもこの時間はどこも賑わっている。嫌いというわけではないが騒がしいのは苦手なので俺はそのまま宿舎に帰ろうと足を動かした。

 

「あれは……ユメか?」

 

帰宅途中で買い物中のユメを見かけた、一人なのだろうか?

 

「ユメ、どうしたんだこんなところで」

 

「わっ!ビックリしたなぁ。フミ君。ちょっと静かにしててな」

 

ユメに話しかけたところで、俺はさらに奥の方で買い物をしているマナトとシホルを見つける。どうやらマナトがシホルに髪留めを買ってあげたようでそれをつけてあげている。

 

なんというか、いい雰囲気だ。

 

というかフミ君てなんだ?俺のことか……

 

「邪魔するのもなんやし、離れようか」

 

「……まぁ、そうだな。代わりに俺がユメの相手をしてやるよ」

 

「じゃあ、お願いしよかな」

 

さすがにあの場でマナト達に喋りかける勇気はないので俺はユメと一緒にその場を離れた。その時のユメの表情は何というか寂しそうだった。

 

「もしかして三人で買い物してたわけじゃないのか?」

 

「ちゃうよ、シホルと一緒に買い物してたんだけどなぁ。少し離れた時にマナト君がやってきてな」

 

あの空気になっていたというわけかそれは何というか、居づらいな。

 

「ふむ、では俺もマナトに見習ってユメになんか買ってやるか。何かほしいものとかあるか?」

 

「ええっ!?別にええよ気にしなくても」

 

「気にするな、今日の稼ぎはゼロだったが金ならまだ余裕あるしな」

 

ユメはそういうが、女の子にプレゼントしている男を見て、その後女の子と歩いている以上何かしなければ、男が廃る気がした……なので地味に俺も必死だったりする。

 

「うーん、でもなぁいきなりほしいもの聞かれても、簡単に出て来んのよなぁ」

 

確かにそれはわからんでもない、俺も同じことを言われたら悩むだろうし。そんな事を考えていると手頃なアクセサリーの店があったのでそこに視線を向ける。

 

「なんだい、あんちゃん彼女にプレゼントでも買いたいのかい?それならうちの店で買っていきな」

 

「えっ、いや、その……」

 

視線を向けただけで、こんなことを言われるとは思わず俺は動揺してしまう。

 

「ふふっ、フミ君の反応かわええなぁ。初めてみた」

 

おかげさまでユメにまでからかわれる始末である。どうやらこういうのに俺はあまり耐性がないようだ……

 

「じゃあ、彼女にプレゼント買ってほしいなぁ」

 

「そんな意地悪なことしかしないなら、買ってやらんぞ」

 

「冗談やって、ふふっ」

 

さっきまでと違いユメはとっても楽しそうだ。それにここまで話が進んでしまった以上ここで買わないわけにはいかない。

 

しかし、残念なことに俺にはこういうのを選ぶセンスがない、何を選んでいいかわからない……

 

「ダメだなあんちゃん!こういうのは男が選んでやらねぇと」

 

……それを言われると痛いんだが、こうなればヤケだ。

 

「これなんかどうだ。赤いネックレス、ユメにピッタリだと思う」

 

目についたのは赤い石が埋め込まれたネックレスである。ユメは基本的に赤い髪にあっている、赤を基調にしたファッションだ。あっていると言えるだろう……たぶん

 

「わぁ、めっちゃ綺麗なネックレスやなぁ」

 

どうやら喜んでくれそうだ。俺はほっと胸を撫で下ろす――

 

「いいねぇ、いい目してるよあんちゃん。それは2シルバーするよ」

 

ことができなかった。何だその値段。ネックレスがしていい値段じゃねぇだろ。

 

……いや、思いだした。市場でゴブリンが持っている宝石を売った時に似たような石があった気がする。しかも値段は1シルバー以上したはずだ、加工費用を入れればぼったくりとはいえない。

 

「ははは、さすがに高すぎるなぁ。フミ君別のに――」

 

「これ下さい」

 

俺は心を無にして、2シルバーをおっちゃんに渡した。ここで女の子に気を使わせたらダメだ。本当に男としてダメになる!

 

「まいど」

 

「ちょっ、フミ君。大金やよ!?」

 

「大丈夫、稼ぎはあるって言ったろ?」

 

そういいながら俺はネックレスを受け取り、今だに慌てているユメに対してそれを首にかけてやる。ふむ、センスのない俺にしてはマシなものを選んだんじゃないだろうか、

 

「似合ってる似合ってる」

 

「……ありがと」

 

ユメにしては珍しく、シホルのように俺の顔を一切見ず、下を向いたまま喋っていた。

 

素直に言われるとなんか照れくさくなる、しかしその理由が自分のプライドのためだったと考えると罪悪感が生まれる……

 

「いざとなれば売ればいいよ、中々の値段するだろうからな」

 

「もう、せっかくもらったもん売るほど、ひどい女じゃないよユメは!」

 

軽い冗談をいうと、いつものユメに戻る。この方が話しやすくて助かる。

 

「はん!青春してるな、お二人さん!」

 

「もうそれはいいよ、じゃあ行くか。もうそろそろ帰るんだろ?」

 

「そうやなぁ、もうみんなも戻ってくると思うし」

 

俺はそのままユメと一緒にアクセサリー店を離れた。

 

その後も成り行きで俺はユメと行動をともにして、なんやかんやでユメ達の宿舎の前まで来ていた。そこから見える景色は絶景だった。

 

山と山に挟まれるように海が見え、その海の水平線の向こうに夕陽が輝いている。

 

「きれいやなぁ……」

 

「確かにそうだな」

 

良く考えたらグリムガルに来てから景色を楽しむなんてことはしてなかった。いや、俺一人ならまずその思考に至ることができないだろう。

 

俺はそれぐらい日々を懸命に生きてきたのだから、こんなに平和と思える日は初めてかもしれない。

 

意外にパーティープレイもいいものかもしれない。しかし、直接言うのもなんか照れくさいな。

 

「たまには稼ぎゼロってのも悪くないな」

 

「なんや~、ユメ達に対するいやみか~?」

 

「そういうわけじゃない……かな?」

 

「なんやそれ~」

 

こんな感じでユメと楽しく話していると、今俺たちがいる場所の上にある橋の方で、ハルヒロとランタの声が聞こえる。

 

 

声を聞く感じ、まだランタはいつものような感じではないが、ハルヒロとの喋り方は相変わらずである。

 

「ハル君たち上におったんやな」

 

「そうだ――なっ!」

 

そのことで上に意識を向けると、上から何かが降ってくる。しかし、日々戦闘で鍛えられているので特に問題なく、それを掴む。それは何かの骨のようだ。

 

そしてそれとは別にユメの手元に吸い込まれるように何かが降ってきた。

 

「ほい!なんやこれ?上からかわいこちゃんが降ってきたわぁ」

 

何かの動物のようだが、ユメの腕に抱えられているそれは中々に可愛かった。

 

こんな動物も住んでいたのか。本当に戦うことだけで何も見えてなかったのかもしれないな。

 

そんな間にも上の方で会話は続いており、途中からマナトの声も聞こえた。マナトがいるということはシホルも戻ってきたのだろう。

 

「じゃあ、俺も帰るとするかな。一応明日も手伝うつもりだから。マナト辺りに言っといてくれ」

 

「えっ?みんなに会っていかんの?」

 

「わざわざ会うほどじゃない。それに俺は――」

 

お前らのパーティーのメンバーになったわけじゃない。その通りなのだが何かそれを言う気になれなかった。

 

「ん?どうかしたん?」

 

ユメが動物を抱えたまま、可愛らしく首を傾げる。

 

「いや、なんでもない。もう行くわ」

 

これ以上はなんか居づらく感じてしまい、俺はすぐにその場を去ろうとする。

 

「ほな、また明日な~」

 

「ああ、また明日」

 

俺は上のやつらに悟られることなく、その場を離れた。

 

何はどうであれ、マナト達はようやく初勝利を飾ったわけだ。後何回か手伝うつもりではあるがそれが終わればあいつらも見習い義勇兵として活動していくことはできるだろう。

 

そうなれば俺はお役御免だろう。

 

そのことを胸に刻み込み俺は自分の宿舎に戻るのであった。




はい、ユメと軽いデート回でした。
アニメのシホルとマナトをみて一人その場を去るユメの顔を見たら放置できなかった。

そして、感想で未来予知をされましたがレンジが関わってきました。というか言っちゃいますが次話はレンジ達に関わる話になります!

感想などお待ちしております!

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