ただ、他のコボルトに比べてデットスポットでかすぎませんかねぇ……
あと原作7巻まで一気に読みました(遅れた原因)
以前魔法の詠唱について原作と同じにしてほしいという感想をいただいたのですがその理由がよくわかりました。しかし、この作品では勝手に作っていくスタイルは変えないつもりですのでご了承ください。
それではどうぞ!
おやっさんから話を聞いた次の日、俺はハルヒロ達の宿舎にはいかず、自分の宿舎の前でメリイを待っていた。
ふつうならどんな顔をすればいいのだろう。何を話せばいいのかなんて考えたりもするだろうが、それは俺が今すべきことじゃない。おそらくだが、これほどの話を聞けばハルヒロ達全員がそう思っていると俺は思ったからだ。
だから、俺は今まで通りメリイと接する。何も変わらない、まずはハルヒロ達がどう動くかを見極める。
勝手な信頼だが俺はハルヒロ達がメリイを快く受け入れると信じてる。でも、メリイは一度オリオンを抜けてる。その理由はその場の居心地さ故である、そうなってしまっては意味がない。
「……なにしてるの?」
そこまで考えたところで俺は声をかけられた。目を開けるとそこにはメリイがいた。
「いや、一緒に行こうかなって思っただけだ。何回か同じことしてるだろ?」
「こうも露骨に待機してたのは初めてよ。最低でも偶然を装ってたりしてたのにどういうつもり?本格的にストーカーでも始めたの?」
「……いや、そんなつもりは一切なかったからできればストーカーと思ってほしくない」
そういえば俺はこんな風にメリイを待ったことがなかった。あくまで時間を予測して合わせるぐらいに宿舎を出る。あえなければそれまでが今までのスタンスだったのだが……
「別にあなたが変なことして来ればマスターに突き出すだけだから」
「それはやめてくれ、殺されてしまう」
冗談抜きであの人が強いことは昨日知ったばかりなので俺にその脅しは恐怖以外の何物でもなかった。
俺が手を上げ降伏のポーズをとっていると、メリイはそのまま俺を無視して歩き出してしまう。
待ち合わせ場所まではいつも通りだった。俺が何気ない会話を振って、メリイに一蹴される、昨日は少し心を開いたのかな?と思ったけどそんなことは微塵もなかった。
そして、ハルヒロ達と合流していたのだが、いつもと空気が違うのは一発でわかった。あのランタですらテンションが低い、予想通りといえばそうなのだが……
このまま放置で大丈夫なのかが一気に不安になる俺だった。
ゴブリン狩りはいつも通り順調に進んでいた。メリイのことを気にかけて動きが鈍れば喝でも入れてやろうかと思ったが、皆自分の仕事を果たす時にはいつも通りだった。
まぁ、俺がメリイのことを知ってるという事実がハルヒロ達にはわかってないから、動きを乱せば俺に何か言われることはわかってるので戦闘の時は集中しようという考えでもあったのだろうか?俺には予測しかできないが、
しかし、それ以外のところでは会話が少なかった。特に昨日は熱心に話しかけていたはずなのにメリイには一言も声をかけてない。
その落差はメリイに不安しか与えないだろう。昨日あんだけ話しかけてきて、今日はこれだ。それに加え自分の扱いが今までとまるで違う、他がいつもと同じなせいでそれがより顕著に表れていた。
「どうしたメリイ、怖い顔して?」
「……別に」
一応俺は話しかけてみるが、いつも以上に会話は続かない。気づいているのだろうこの空気に……今までメリイは幾度となくパーティーを追い払われたその時に似ているのかもしれない。でも、俺はそう思ってなかった。ハルヒロ達は伺っているのだ、向き合うタイミングを
そして、その時は来た。いつも通り、昼休憩を近くの廃屋でとっているとき、ハルヒロが立ちあがり、
「あのさ、メリイちょっといいかな?」
「……なに?」
そう、声をかけた。その時のメリイは寂しそうな表情をしていた。大事な話をすることが勝手に別れ話だと勘違いして怖いのだろう。そんな風に思えるのならもう少し優しくなってほしいものだが……
逆にハルヒロは覚悟を決めていた。リーダーらしい良い表情とはお世辞にも言えないが、目はきっちりメリイのことを見据えていた。
「メリイ……わかってたとは思うけど俺たちのパーティーには神官がいたんだ。マナトって名前だった。マナトは死んじゃったんだ、違うな……死なせちゃったっていうのが正しいのかも。俺たちはマナトに頼りすぎてた。フミヤも強くて頼りになるけどさ、マナトはなんていうか俺たちをまとめて、信頼できる回復役も堅牢な盾役もなんでもやってくれるすごいやつだった。おかげで俺たちは楽に活動できたよ、そりゃそうさ、マナトが一人で三人分働いてくれてから、それが当たり前になっててさ。何も疑問に思わなかった。たぶんだけどマナトは楽じゃなかったと思う。でも表情に出るような奴じゃなかったし俺たちも想像しようともしなかった。今もどうだったのかなんて俺たちにはわからない。マナトはもういないから」
俺はハルヒロの言葉を聞いて無意識に刀を握りしめていた。そして、思い浮かべるはあの上級ゴブリンだ。
あいつはまだ生きているはずだ。それもこのダムローで……
メリイはマナトの話を聞いて驚いていた。そりゃそうだろうここまで無茶をする神官はそんなに多くない、それに自分のことを知ってこの話をしてるのではと考えもあるのだろう。
「マナトがいなくなって、正直、もう駄目だと思った。マナトなしでやっていくなんて考えられなかった。でも、マナトが死んでも俺たちは生きている。だから何もしないってわけにもいかないしさ、義勇兵として食っていかなきゃならない……まだ見習いだけどさ。それで、メリイを誘ったんだ。神官がいないとどうにもならないからさ。それが理由、ただそれだけなんだ」
そりゃそうだろう。メリイに何か他の感情があって誘ったのならそれはおやっさんが話した屑のようにメリイの見た目だけを見てとかそんな下らない理由くらいしか思いつかない。
「フミヤ以外の俺ら全員、みんな余りものみたいなもんだったんだ。それをマナトがうまくまとめてパーティーになった。でも活動がうまくいかなくて、そんな俺たちを見かねてフミヤが俺たちを手伝ってくれた。今でもバカじゃないかって思うよ。フミヤならもっといいパーティーに入れるのにって、でもこんな感じで俺たちが仲間になったんだ。腹が立つことも、喧嘩することもあったけどそれでも大切な仲間なんだ。なんで仲間になったのかってよりも今仲間であることが大切なんだ。そして、メリイも仲間だと俺は思ってる」
いいことを言ってるんだが、バカ扱いされるとは思ってなかった……
「……あたしも」
「そうやなぁ、メリイちゃんめっさ可愛いしな」
「ぼ、僕も、当然仲間だと思ってるメリイさんがいると心強い」
「俺もあれだ。ちょっとした傷で騒ぐのは反省してなくもねーよ。……まぁ、仲間なんじゃねぇの?」
「俺はむしろ、自分が仲間だと思われていたことの方に驚いた。俺はメリイと違っていつかはこのパーティーを離れる。そんな俺が仲間って言われたんだ、お前が仲間になってないわけないって俺は思う」
「はっ、そうだな!フミヤは俺様にとっちゃ鬼教官マシーンだよ!まぁ、強くなっているのには感謝してるがな!」
「ランタが反省や感謝をするなんて、明日は雪かな?」
「いや、もっと悲惨になること間違いなしだな」
ハルヒロと俺はそういうと少し笑ってしまう。あのランタがこんなこと言うなんて想像もできないからだ。
「ふざけるな!俺だってな学習するんだよ!」
「それは置いといて」
「置いとくんじゃねぇ!」
そう言って笑いあっている中、メリイは面を食らった表情のまま動かない。まぁ、予想していたことと違うことが起これば人間だれしも混乱するものだ。
まだ簡単に受け入れられることではないだろう。
メリイはその後も驚いた顔のまま喋ることもできない。
「……ハルヒロ、そろそろ再開だ。長居しすぎるのはよくない」
「そうだな。行こうか」
みんなそれぞれ準備を始めるところで、俺はメリイに近づく、
「焦る必要はない。ゆっくり考えろ。そして、仕事は仕事だぞ」
「……わかってる」
小声で言ったことに対して、メリイは俺のほうを一切向かずそう答えた。メリイは性格上戦闘の動きが鈍るとは思えないが何があるかわからないから釘だけは刺しておく。
その後も活動は問題なく進んだ。さすがにメリイに話しかける奴はいなかったがメリイも神官としてしっかりと働いていた。
そしていつも解散する場所で――
「メリイ、この後モグゾーの兜を買いに行くんだけど一緒にどう?」
ハルヒロがダメもとで誘いをかけるが……メリイはこちらに目を合わせず、
「……ごめんなさい」
「そうか……じゃあ、昨日も言ったけど飯とかはどうかな?」
「ごめんなさい……まだ」
「まだ?」
「……ありがとう、また明日」
最後にこちらを見てからメリイはそう言って歩き出していった。『また明日』その言葉は確実にメリイに近づいたことの証明であった。だからこそ、不安があと一つある。
「フミヤはどうかな?この後、少しメリイについて話したいこともあるんだけど」
「悪いなハルヒロ、俺も帰るわ。あと、何を話すつもりかは知らないが人の過去をペラペラ喋るなよ?」
「なっ、フミヤ気づいて!?」
やっぱり俺にメリイの話をするつもりだったのだろう。まぁ、俺だけ知らないことになってるしな。
俺の言葉に驚いているハルヒロ達のほうに手を振りながら俺はメリイの後を追いかけた。
「なんでついてくるの?」
「何回も同じ事は言いたくない」
勝手に追い付いて、勝手に隣に並ぶ。メリイは顔を伏せたままで表情は見えない。
「いい奴らだと思わないか?俺はすげぇいい奴らだと思う。普通なら追い出されるかもしれない。そう思ってたんだろ?」
メリイは俺の言葉に答えず歩き続ける。否定しないということはやっぱりそう考えてたのだろう。
「でもメリイはこうも考えるんじゃないか?自分なんかが受け入れられていいのかって?」
メリイは驚いた表情で顔を上げてこちらを見てきた、なぜ考えてるのがわかったのか?そんな顔だ。
「どうして……そう思ったの?」
「俺ならそう思うからだ。散々冷たくしてきたのに自分を受け入れてくれるなんて普通じゃありえない。でも、受け入れてくれる。こんな自分をって、自己嫌悪に陥る」
「そこまで言うならあなたはどうなのよ、私みたいな人間をそう簡単に受け入れられる?私にはたぶんできない」
メリイの行動には矛盾しかない。ほんとは心のどこかで仲間を求めているが、今までの経験がそれでいいのかとストップをかける。だから結局うまくいかないのだろう。
「相手次第だ。俺も誰でも仲間なんていうほどのお人好しじゃない。でもさっき言った通り俺はメリイなら仲間って胸を張って言えるな」
「……あなたもあの人たちも私がどんな人間だか知らないからそういうことが言えるんだと、私は思う」
「そりゃそうだ。メリイが何も言わないんだからそんな深いところまでお前のことなんてわからないだろ?今見えている部分で判断してる。悪い言い方をすればそこしか見えてないって意味になるけど、それでもいいじゃねぇか。何もかも知りあっているいる仲間のほうが俺は願い下げだ。怖いだろそんなの」
まぁ、メリイの秘密を知ってのこのセリフなので少し罪悪感もあるけど、俺が思ってることだ。メリイだけじゃない、ハルヒロ達のことだって俺はほとんど知らないんだ。なら今はそれでいいのだ。
「確かに怖いわね……」
「ならいいんじゃないか。自分から歩み寄ってもさ。さっきは悩んで中途半端に『また明日』なんて言ってたけどさ」
俺の言葉にメリイは少し顔を赤くする。そんなに恥ずかしいことだったのだろうか?
「まぁ、ゆっくり考えろ。ただし、勝手に逃げ出したりしたらその時は本物のストーカーになって理由を聞き出しに行くから覚悟しとけ」
「堂々と犯罪宣言して脅迫するなんて、斬新にもほどがあるわね……、でもわかった。ちゃんと考えて答えを出す。すぐには無理かもしれないけど、逃げたりはしない」
「その答えが聞ければ十分だ」
そこまで会話したところで俺とメリイは人通りの少ない道を歩いていた。ここら辺は店も何もないから人がいないのは当然といえば当然だったのだが……
前から数人義勇兵が俺らの道を阻むように立っていた。こんなところに用でもあるのだろうか?
しかし、俺が気にすることではないので俺はそいつらを避けて、前に歩き出したのだが……
「きゃっ!?」
なぜか隣にいたメリイがそのうちの一人に腕をつかまれていた。反射的に俺はそいつの手をつかむ。
「何してんだ。その手を離せ」
「悪いな。俺はこの女に用があるんだ。ガキは引っ込んでな」
「……ザンザ」
「久しぶりだな。メリイ!」
「何しに来たの……」
一人の大柄な男がメリイの名前を呼ぶ、そして、そいつを見た瞬間メリイの表情は一変した。
その男を睨みつけているが、体が震えていた。おかしい、メリイはなぜこんなにも怖がってるんだ?
「何をしに来た?ふざけたことぬかすんじゃねぇよ!給料泥棒しかしねぇ女だからせめて体で支払わせてやろうとしただけなのに、わけわからんおっさんに大けがを負わされちまったんだぞこっちはなぁ!でも、お前を抱かせてくれるなら許してやろうって話だ!感謝しろよ、メリイ」
ザンザは怒鳴りつけるように言い放ったが、それ以上の言葉を俺は聞くつもりはなかった。すぐにメリイの手をつかんでいる手をひねり、メリイから離させてから拳を顔面に叩き込む。
「がっ!?――てめぇ何しやがる」
ザンザは大きくのけ反りながらも俺を睨みつけてくる。しかし、知ったことではない。
「なに勝手にベラベラ喋ってんだ。メリイは今は俺の仲間だ。お前の所有物みたいに言ってんじゃねぇよ」
「はぁ?何が仲間だ。そいつはなろくに働きもしないくそ神官なんだよ!」
「ふざけるな。メリイは立派に神官を務めてくれてるぞ。もしそう映ったのならお前の目は節穴だな」
「なんだと!?」
「それにそれでどうしてお前らなんかにメリイが襲われなきゃなんないんだ?気に食わなくて追い出しただけなら納得できるが、そんなことをする権利はお前たちにない。さっさと立ち去れ」
「……言うじゃねぇか。お前あんま見ねぇ顔だな。新人だろ?今すぐ謝っておとなしくお家に帰るなら許してやるぞ?」
明らかにザンザは怒っている。だが、それは俺も同じだ。確証はないがこいつらがおやっさんがボコった連中なんだろう。脅したとは言っていたが効果はなかったらしい。
性懲りもなくまた手を出してくるとは救いようもない屑だ。
「フミヤ!だめ、今すぐ謝って!」
相手の手から離れたことにより俺の後ろに隠れるようにしているメリイは震えながらのそういった。現状多勢に無勢だ。俺の身を案じているのだろう。だが、逆にその姿が俺の怒りを加速させた。
いつも気丈なメリイがここまで衰弱するそのギャップがどれだけメリイにとってこいつらがトラウマなのかを窺わせていたからだ。
「断る、謝る理由すらない」
「フミヤ!」
よく考えたらメリイが俺の名前を呼んでくれるのはこれが初めてかもしれない。それに少しうれしさを感じたが、俺は刀を抜いてザンザ達を睨みつける。
「……お前らみたいな屑を殺しても別に罪には問われないよな?」
「その言葉後悔しやがれガキィ!」
「――メリイ、下がってろ」
冷たくそう言い放ち、俺はメリイを後ろに下げつつ刀を構えた。ザンザも持っているそこまで大きくない両手剣を構える。
――この屑どもを殺す!
こうして突如メリイを襲おうとしたザンザとその仲間合計5人の義勇兵と俺は戦闘に突入した。
文章にしてみるとメリイさんチョロすぎたかなと思いましたが、メリイが本当の意味でハルヒロ達を信用するのはまだまだ先の話なのでこれぐらいでいいかという判断です。
あとどうでもいい話、最近グリムガルの新作が増えてるなか、ソロ活動している主人公が何人か出てきてますね。
孤独といっときながらお人よし活動をしている主人公がいるらしい、どこのどいつだろうか……(目逸らし)
感想などお待ちしております!