ただ、グリムガルとのギャップがやばすぎる笑
この世界でめぐみんみたいな子は絶対生き残れない気がする……
(作者はめぐみん大好きです)
前書き全く関係ないこと書いてますがゆっくり読んでいってください!
メリイとの仲は進展しないが時間は過ぎるもので俺たちはダムロー旧市街に通い続けていた。
そんな中でも他のみんなはゆっくりだが確実に成長していた。
しかし、それにも限界がある。それは装備の問題だ。俺自身、今まで師匠がくれた刀が新人にしては中々の業物だったので考えたこともなかったが、モグゾーはまともな防具を身につけていない。戦士は攻撃を受けるのが当たり前の職業なので各種防具はほしいものだが、防具は安くない。どうしたものか……
そんなことを考えながらダムロー内を歩いていると、
「モグゾーさ。俺も少し出すから安物の兜買おうよ。見てて思ったけどやっぱり兜ぐらいあった方がいいだろ?」
ハルヒロがモグゾーに提案していた。おそらくだがこの話の前の戦闘で相手のゴブリンが兜をつけていて、モグゾーが攻めあぐねていたのを見てのものだろう。
ハルヒロもリーダーとして周りが見え始めているようだ。
「でも、悪いよ。兜とても高いし」
「いいんだって、俺はダガーだけでなんとかなるし。モグゾーの装備を整える方がみんなのためになると思うんだ。それに防具高すぎてモグゾー一人じゃとても買えないだろ?」
「それなら後ろのお人好しに払ってもらえばいいんじゃないですかねぇ~」
せっかくいい話だったというのに面倒な話をランタがこちらに振ってきた。
「確かにお前らよりは稼いでる自信はあるが、スキル覚えるのとかで金を使うんだ。朝食代を払うのはいいにしてもそこまで高価なものを買ってやるほど俺は優しくないぞ」
別段払えないということはないが、そうなると俺も金欠状態になってしまうし、そこまで甘やかしては今後のこいつらのためにもならないだろう。
「なんだよ。ケチだなぁ!」
「いや、お金のことでフミヤを頼るのはよくないよ。ただでさえ色々助けてもらってるんだから」
「……それに逃がしそうなゴブリンは全部フミヤ君が倒してくれてたから、その分で十分私たちはお金をもらってると思う」
シホルの言うことはあながち間違っておらず、マナトがいなくなって数日チームワークが悪いときのハルヒロ達は俺が何もしなければ稼ぎゼロの時すらあったのだが、目の前の敵を逃がすなんてことは俺がさせなかったので結果だけみれば普段と変わらないぐらい稼いでいたりしていた。言い方は悪いがゴブリン10匹ぐらいは俺一人で倒したといっても過言じゃない。
「へっ、あんときはフミヤが出しゃばってだけだろ!」
「実際俺たちゴブリン逃がす寸前だったろうが……とにかくフミヤにお金のことは頼らないよ。俺たちだって立派に稼げるようになってるからさ」
ハルヒロのその言葉に俺はこいつらが成長していることを感じ、内心かなりうれしかった。
「そうしてくれ」
「じゃあ、ユメも協力しよっかなぁ。かわいい兜一緒に買いに行こうな」
「……私も、少しだけなら」
「みんな……ありがとう」
「俺は一カパーも払わないからな!」
「いいよランタには期待してないし」
なんでこの流れで払わないなんて言えるんだよ。お前に仲間を思う気持ちはないのか……と思ったのだがハルヒロにそのあと聞いた話だがランタは現状蓄えがほとんどないとのことだった。そりゃハルヒロも期待しないわな。あいつは本当に団章を買う気があるのだろうか?
そして、そんな話をしている中、メリイは遠くを眺めているだけだったが、その表情は少し寂しそうだった。
だからといって話しかけてもまともな返答は期待できないので俺は見なかったことにして、先に進む。
その後、普通に歩いていたところで、俺は何かがいる気配を感じた。
「全員止まれ……数はわからないけどいる」
俺の一言で全員臨戦態勢に入るが、そこにいたゴブリンは一匹だけだった。もちろん向こうもこちらに気づくなり突っ込んでくるが……
「ヒャッハー、これなら余裕だぜ!行くぞモグゾー!」
「う、うん」
すぐに前衛であるモグゾーとランタが突っ込む……だがこの人数で距離があったのにゴブリン迷わず突っ込んできた。いくら知能が低いといっても本能で先に逃走を考えるはずだ。
そこまで考えた俺は前のことは任せて周りに意識を集中する。
「ユメ、俺と一緒に隙があったら一気に仕留める!」
「了解!」
ハルヒロ達も前のゴブリンに集中しているようだが……
……足音が聞こえた!方向は――
「メリイ、シホル来るぞ!」
俺はすぐに後方に下がり、細いがれきに埋め尽くされた路地に視線を向けた瞬間二匹のゴブリンがすでにこちらに向かって襲い掛かってきていた。
すぐに俺は反応して刀を構えるが、ここでゴブリンたちは予想外の動きを見せた。それは目の前の俺を無視して通り抜けようとしてきたのだ。
なるほど、先に後衛を意地でも叩こうって算段か。悪くない手だがこれはチャンスだ!
「メリイ一匹任せるぞ!」
「言われなくても!」
小太刀を使って片方を足止めして、片方を切り捨てることも可能だったが、俺はメリイを信用して狙いを一匹に絞った。
一匹が俺の隣を通り抜けていくが、もう一匹は悪いなここでおしまいだ――雷閃!
鞘から抜き放たれた刃はゴブリンの体を斜めに深く切り裂く。さすがに真っ二つとまではいかないがかなり深く刃が入り込んでいるので即死であろう。
だが、俺はそのまま地べたに倒れたゴブリンに対して素早く心臓に刃を突き立てた。どれほど深い傷でも絶命させ切らなければ何をされるかわかったものではない。刀を使っている俺に余裕や容赦などはない。
そして、すぐにメリイの方へと視線を移すが――
「えいっ!」
メリイは見事錫杖でゴブリンを迎撃していた。その攻撃は今まで幾度となく見てきた神官のスキル
大きく吹っ飛ばされたゴブリンは廃屋の壁に激突して、俺の声で戻ってきていたランタの追撃により命を奪われた。その奥のほうではハルヒロがモグゾーと切りあっていたゴブリンの背中にダガーを突き立て勝負はついた。
多少のトラブルがあったが見事な勝利である。そして、この戦闘がメリイが初めてまともに戦ったものとなった。
いままでシホルの防衛をしていたメリイは仕事をする必要がない状況ばかりで後ろにいるだけと思われていたが、俺が思っていた通りしっかりと守ってくれることを見せられたのは行幸であった。
むしろ普通にメリイを見ていればただ後ろにいるだけじゃなくて、常に周りを見て状況判断しているのに気づけるのだが、さすがにハルヒロ達にそこまでの余裕はないか……
メリイは怪我した時にそれが治療すべきかしないべきかを常に見極めている。特にその作業をしている時のメリイは真剣そのものだった。
そこまで心配しているのになぜすぐに治療をしないのか疑問に思ったことは何度かあったが、今の俺に理解できることではないとあきらめている。
「さっきはありがとう」
「何のこと?」
ハルヒロがシホルを守ってくれた事にお礼を言ってもメリイの反応は冷たい。まぁ、メリイからしたら当然のことをしたまでなのだろう。
やはりメリイと仲良くなるよりも先にハルヒロが現状のメリイをうまく扱えるようになる方が楽なのではなかろうか?
そう思ったがメリイが何かしらを抱えてるのはわかっているのでできればこのパーティーに打ち解けた方がいいと思い俺は今のところはその可能性にかけることにした。
そんな感じでつつがなく狩りは進んで今日も一日が終わり、換金できるものを換金してみんなで報酬を分け合ったところですぐにメリイは帰ろうと足を宿舎に向けるが……
「ちょっと待ってメリイ」
「まだ何か?」
ハルヒロがメリイを呼び止めた、それに対してメリイはめんどくさそうにこちらのほうを向く、
「その、この後さ。飯でもどう?さらにそのまま酒場でも……」
「遠慮しときます」
ハルヒロの勇気ある誘いは断られてしまうが、メリイの反応は今までにないものだった。その口調はいつものトゲトゲしさはなく、おやっさんと話しているときのようだ。
「えっ、なんで敬語?」
「あ……特に意味なんてないけど」
ハルヒロ達も意外な返答に少し驚いていた。だが、当の本人であるメリイは眉をひそめて、少しだけ恥ずかしがっているように見えた。
「また……」
メリイはそういうといつもよりも早い歩きで俺たちから離れて行ってしまった。
別れ際に何か言うようになっただけ関係が良くなっているのだろうか?でも、それぐらいで喜ぶのもどうかと俺は微妙な気持ちになったが
「かわいげのねぇ女なぁ!」
「……そう、かな?」
「今日のメリイちゃんいつもよりちょびっとだけ可愛かったなぁ」
「……うん」
「そうかぁ~?」
みんなを見た感じランタ以外には好評だった。つまり、メリイに近づけているっていう意味だろう。
「あのさ……今日酒場でオリオンのシノハラさんと話そうと思ってるんだけどみんなどう?」
メリイのことで若干なごんでいる雰囲気だったところでハルヒロがまさかの提案をしてきた。シノハラさんは間違いなく過去のメリイを知っているだろう。
ハルヒロは俺たちの会話を聞いてなかったので確証はないだろうけど、メリイのことを知るなら一番の手がかりだとでも考えているのだろう。
「何!さてはお前オリオンに勝手に入るつもりだな!――そういえばフミヤ!お前もシノハラさんと話してたよなぁ!」
「ああ、でもただの世間話だよ。メリイとは面識あったみたいだけど、俺は初対面だったしな」
二人ともオリオンに誘われていたというのは断った話なのでわざわざ言わなかったというよりも言ったら面倒なことになりそうなので隠した。
メリイについても人のプライベートについて喋る気はないのでそこら辺は伏せることにした。
「なんだよつまんねぇ!あっ、ハルヒロ!俺も行くからな!抜け駆けなんて許さねぇぞ!」
「じゃ、じゃあ僕も」
「それならユメも行こうかなぁ」
「みんな行くなら私も……」
みんなはシノハラさんに会いに行くつもりらしい。確かにそうすればメリイのことをもっと知れるかもしれない。でもどうせ聞くならシノハラさんよりもおやっさんに話を聞きたくなった。おやっさんはたぶんだけどシノハラさんよりもメリイのことを知っているはずだ。
「悪い、俺は遠慮する」
「そっか、じゃあまた明日」
「ああ、また明日な」
俺はハルヒロ達に手を振って別れた後、まず宿舎に戻り、着替えてからすぐにシェリーの酒場に戻るのであった。
日が落ちてまだ間もない時間、ハルヒロ達もシノハラさんを探すために酒場に来ると思われるが俺が酒場に来たときはまだ姿は見えなかった。
「なんだい坊ちゃん。今日は随分と早いね」
おやっさんはいつものカウンター席でいそいそと仕事に励んでいた。
「すいません、おやっさん話があるんですけど。少し時間もらえますか?」
俺は席に着きながら話しかけたが、おやっさんはそれに応えるように勝手に酒を注ぎテーブルに置いた。
「いいぜ、聞くだけならタダだからな」
「今日、俺の仲間がオリオンのシノハラさんに会いに行くと思います」
その言葉を聞いて、いつもの穏やかなおやっさんの顔が少し引き締まったように見えた。
「なるほど、お前の仲間は嬢ちゃんのことを知ることにしたっていう解釈でいいんだよな?」
「はい、おそらくですが。今のハルヒロ、パーティーのリーダーがシノハラさんに用があるとすればそれ以外考えられません」
「まぁ、普通に話しかけてたわけだしな。そいつからしたら唯一の手がかりに見えただろうな。そして、シノハラ……いやハヤシがいる以上あの子らはメリイのことを知ることになるだろうな」
ハヤシ……前にシノハラさんが言っていた名前だ。おそらくメリイに深く関わり合いのある人物なんだろう。
「で、坊ちゃんは何が望みなんだ?」
「俺もメリイのことを知りたいと思って」
「じゃあ、今からシノハラに聞き行けばいいじゃねぇか」
「俺はおやっさんから聞きたいんです。そのハヤシって人よりもメリイのことをおやっさんなら理解してるんじゃないかなって、ほぼ直感ですけど」
俺の言葉におやっさんは少ししかめっ面をした後、
「確かにお前さんの予想は当たってる。ハヤシはオリオンに残っちまったからな。あれ以降のメリイをまともに知ってるのは俺だけだ」
オリオンに残った?ということはメリイはオリオンに所属していたことがあるのか……
「さて、どうしたものか。俺は客のプライベートを喋るっていうことは、俺の信用問題につながるわけだし、嬢ちゃんに嫌われるわけないはいかないからな」
「承知の上でお願いしたいんです」
俺がおやっさんのほうを見ると、真剣だったおやっさんの顔が呆れ顔に変わった。
「もし、言ったことがばれたりでもしたら一緒に土下座でもしてくれよ。そして坊ちゃんとあのパーティーの子たちが嬢ちゃんを救ってくれることを祈るとするか」
「はい」
俺が返事をすると、おやっさんはなぜかカウンターの奥に行ってしまう。少ししてから戻ってくる手にはいかにも高級そうな瓶……酒があった。
「最上級ものだ。こんな話をするんだ飲んでもないとやってられん」
「いいんですか?そろそろお客も増える時間になるのに……」
「いいんだよ。たまに休みをもらっても罰は当たらんさ。それに従業員はたくさんいるからな、おっさん一人が働かなくても十分この酒場は回るさ」
そう言いながら待っている間に空になったジョッキの中に酒を注ぎだす……ちょっと待て!?
「おやっさん。俺そんなに金ないですよ。最上級ものなんでしょ?」
「バカが、今のお前さんに払える代物じゃねぇよ。俺のおごりに決まってるんだろ。結構な長話になるからな途中で寝たり、酔いつぶれたりすんなよ?」
そういうおやっさんの表情はいつもの軽い笑みである。今から重要なことを話すとは到底思えない……
「当たり前ですよ。俺は話を聞きに来たんですから」
「じゃあ、始めるか。途中で嬢ちゃんがきたら即土下座の準備だからな」
「……はい」
かなり軽い口調で話していたが、おやっさんはさっきと違い酒を片手に真剣な表情になり語りだすのであった。
ということで次話はメリイの過去話を聞くことになりますが、原作と少し変えます。
まぁ、そこまでの改変ではないので期待せずに
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