まぁ、まだあと少しありますけど、もし追いついたら更新は止めようかと考えてます。
(ネタバレになりますからね)
といっても一巻の話が終わるの30話ぐらいになりそうなのですが……(震え声)
こんな無駄に長いだけの作品に付き合ってくださる方はぜひ読んでいってください!
メリイと仲良くしようという努力はその後も見られたが、現実はそううまくことが運ぶこともなく、メリイとの関係は深まることなく終了、今日の分け前を受け取るとすぐに帰ってしまった。
そして、その後ハルヒロ達は酒場に行くらしく、一緒にどうと聞かれたのだが、俺はおやっさんと話をしたいと思っていたのでその意を伝え断った。
一度帰ってから普段着に着替え、俺はシェリーの酒場を訪れていいた。
入ったところで奥の席にハルヒロ達が見えたので少し手を振って俺はいつもの席に座る。
「いい顔になったじゃねぇか。あれが例の子たちか?」
いつも飲んでる酒を勝手に注いで俺の目の前に置いたおやっさんの表情はうれしそうである。
「そうですよ。今からしてみれば恥ずかしいですよ」
「そうそう、そういうもんだ若いってのは。お前さんがそんなに頑張る必要もないのに勝手に背負い込む様は中々におもしろかったぞ」
「叩き切りますよ」
「やれるもんならやってみな。おっさんなめてかかると怪我するぞ?」
なんかこの人と話してるとペースを持ってかれるというかなんというか。
「よかったじゃねぇか。それでこれからどうするんだ?変わらずあの子らに付き合うのか?」
「どうしてそんな質問を?」
「一応な。お前さんは悪いけどダムローに通うような素材じゃねぇからな」
まぁ、レンジにまで心配される様だからな。確かに俺はあそこで力を振るのは不釣り合いかもしれない。でも――
「ずっとではないですけど、俺が納得いくまでは付き合いますよ。それが俺にとってのけじめなので」
「まぁ、坊ちゃんならそういうだろうと思ったよ。気がすむまでやりな」
「言われずとも」
そう言いながらそれは酒をあおった。うん、うまい。気分がいい分余計そう感じるな。
そんな感じで俺は飲み続けていると……
「マスター一杯ください」
隣に座りながら酒を頼んだ客の声に聞き覚えがすごくあり隣を見るとそこにはメリイがいた。
こうして酒場で会うのは初めて会ったとき以来だ。
「久しぶりだなお嬢。どうだい新しいパーティーは?」
「……」
おやっさんの言葉にメリイは無言になってしまう。そりゃそうだろ。関係者が今隣にいるのだから……
「珍しいな。でも、その様子じゃまだ持ってはいるようだな。ひどいときは一日でやめてきた時もあるったぐらいだしマシなもんか」
「……そうですね。あんな奴らよりはマシです」
その声には今まで以上の怖さがあった。一体そいつらは何をしたのやら……
それ以降は会話は多くないがメリイとおやっさんの会話を聞きながら酒を飲んでいた。あんまりへんなことを口走ったら何言われるかわかったもんじゃない。
だが、そこに想定外の客がやってきた。
「少しいいかな。メリイ」
俺もそいつに視線を向けるがかなりいい鎧を装備している。それに×の字に七つ星の紋章のマントをつけている。あまりクランのことは覚えてないがそのシンボルはクラン『オリオン』のものだ。
クランというのはパーティーの集合体だ。神官の補助魔法の最大人数が6人なので基本パーティーは6人が碇石となるが、6人でできることは限られる。そこで同じ目標をもったパーティー同士が手を組むそれがクランということだ。
俺自身フリーの義勇兵を考えているので、パーティー単体で物事が進むクランに誘われることはないと思っていたのでそこまで調べてないが、
「おう、オリオンのマスターシノハラじゃねぇか。なんだまたお嬢を誘いにでも来たか?」
「はい、一応そのつもりで」
さすがに構成メンバーを把握してなかった俺は少し驚いてしまう。まさか、マスターとは思わなかった。それにメリイを誘いに来たって……
「メリイさん、やっぱり気は変わらないでしょうか?ハヤシもあなたの話を聞いて心配しています」
「すいません。私には……」
メリイがここまで申し訳なさそうにするのは初めて見た。さすがオリオンのマスターというわけだ。
「いや、いいんだ。こちらも無理に誘うつもりはないからね。……君は、フミヤ君でいいのかな?」
「えっ!?は、はいそうですけど……どうして俺の名前を」
メリイと話しているので俺には関係ないと目をそらしていたのだがまさか名指しで呼ばれるとは予想外だ。
しかし、シノハラさんは優しい笑みを浮かべながら
「君は自分の存在を謙遜しすぎだよ。君はほかのクランにも目をつけられてる。新人なのに一人でオークを相手取る、期待の新人だってね」
……一体どこからそんな情報が?一人で活動してるんだからばれることはないはずなのに
「うちのクランにも魔戦士がいてね。魔戦士ギルドの人たちには君のことが伝わってるんだよ」
「マ、マジですか……」
「ただでさえ人数が少ないギルドだからね。ギルド内での交流もそれだけ深いらしいよ。だから普通の人には伝わってないけど有名なクランになればなるほど魔戦士は多い、新人なのに魔戦士になった君は期待の新人として扱われるわけだ」
師匠にうかつに活動報告できないということがよくわかった。先輩魔戦士の人に全部俺の活動が筒抜けになってそうだ……
あまりのことに肩を落とす俺だがシノハラさんは気にすることないといった表情だ。
「君もどうだい?パーティーに所属してないらしいけど、クランに入ってみるというのは?」
そして、まさかの誘いである。こんな有名なクランに誘いを受けるとは思いもしなかった……でも――
「今の俺はフリーの義勇兵です。利害関係が一致したなら雇われますがクランに入るっていうのは少し……」
「はははっ、大手クラン『オリオン』のマスターが二人にもフラれちまうなんて普通じゃありえねぇな。こりゃ珍しいものを見してもらったぞ」
俺やメリイはよそにおやっさんは楽しそうだ。俺は内心驚きと戸惑いが多すぎて疲れているというのに。
「からかわないで下さいよ。でも、二人ともオリオンに来ることは大歓迎だから気が変わったら声をかけてね」
「はい、すいません」
「……すいません、何度も気を使ってもらってしまって」
俺とメリイがそれぞれ謝るが、やはりメリイはオリオンと何かしらの関係があるらしい。
しかし、シノハラさんは優しい笑顔で手を上げながら『気にしなくていいよ』と一言言って行ってしまった。
そのことで一気に緊張感が抜けていき、俺は椅子に大きく腰掛ける。だが、そんな俺に安息はこなかった。
「どういうこと?一人でオークと戦うって」
中々の威圧感を放ちながらメリイは俺のことを睨みつけていた。そういえばメリイにはソロ活動していることすら言ってないもんな。
「いや、何というか。基本は一人で活動してるからな……それで」
「なんだい。随分と心配そうじゃないかお嬢」
「べ、別にそういうのじゃ――」
メリイの焦る顔というのも見たことなかったので見てて新鮮だ。
「一応自分の力量を把握して動いてるつもりだから大丈夫だ。そこまで無理したこともないしな」
実際オークを狩りに行くときは相手をしっかり見据えてからやるなど安全対策は徹底している。
今まで一番やばかったのはマナトの時だけでそれ以外は重傷を負ったことはない。
「それならいいけど」
「随分と仲がいいじゃないか。二人はあの日から知り合いにでもなったのかい?」
おやっさん、事情を知ってるくせになんて白々しいんだ。まぁ、正直に言われたら困るのは俺だから文句は言えないんだけど。
「今俺が手伝ってるパーティーにメリイが入ったんですよ」
「ほう、そりゃ意外な接点だな」
おやっさんに話を合わせている時点で俺も白々しいな……
そして当たり前というべきかメリイは俺のことを睨んでくるわけで……
俺もそれ以上は余計なことを言えず、酒に口をつけて誤魔化す。
だが、次の瞬間酒場が急に騒がしくなった。
「ソウマだ……」 「ソウマさん」 「ソウマじゃねぇか」
周りの義勇兵が一つの名前を口にし続ける。そして、俺もその名前に聞き覚えがあった。
視線をそちらにずらすと、男女六人の組がそこにいた。
先頭に立ってる男はソウマという男だ。義勇兵の中でトップの男。実物を見るのは初めてだが俺の最初の印象は異様だった。
理由はソウマの着ている鎧だ。全身を包むような鎧、というよりもボディースーツのようなものを着ている。あんな鎧は見たことないそれに呼吸に合わせて鎧の一部がまるで生きてるかのようにオレンジ色に点滅している。そして背負っている刀は禍々しい気配を放ちながらも美しいものだ。師匠が持ってる刀もかなりの上物だと聞いてたがそれと同レベルのものを感じた。小太刀も刀ほどじゃないが見事な業物だ。俺の小太刀なんて比にもならない。そのせいで俺はソウマが同じ義勇兵とは思えなかった。
そしてその周りにいる人物も普通の奴は一人もいない。浅黒い肌の男は銀色に輝く鎧を着ており、とにかくでかい、モグゾーよりもでかい。体もがっしりとしており前衛を務めているのが一目でわかる。その隣にいる背の低い男は見た目は少年だがその目は普通じゃない目があったらそのまま引き込まれてしまいそうなぐらい暗い瞳だ。それでいて雰囲気もそれに合わせるように不気味だ。そして隣にいる腕が明らかに人間の長さではない物だ。人間ではないことは確かだが全身が鎧などで隠れていて顔も仮面をしているためそれがなんなのかまではわからない。そして背中には刃がギザギザの大きな両手剣あんな武器は普通じゃ見たこともない。
怖い意味で普通じゃない奴らの後に入ってきた女性達はとにかく美しかった。
一人は足などを大胆に見せる煌びやかなドレスに無数の装飾品をつけて普通の女性ならそっちにしか目がいかなくなるが、その女性の美しさはそれに一切負けてなかった。ゴージャスという言葉がここまで似合う人もいないだろう。だがそれだけならチャラく見えるがそれでいて年上の風格が残っておりかっこよさまで感じられる。
もう一人の女性も美しかった。この美しさは隣に座っているメリイに似ている。髪はきれいな銀髪、目は宝石のように青く、肌は以上に白い。まさに人間離れした美しさだが、彼女の耳は尖っておりエルフだということが理解できた。そして剣を持っているが装備はかなり軽装で胸当てぐらいしかまともな防具はつけてない。おそらく俺と似たような戦闘スタイルで戦っているのだろう。
俺がそう思ったのはそのエルフを見た瞬間その姿が、俺に技を見せる時の師匠の姿に見えたからだ。見た目とかの問題じゃない雰囲気がだ。
そんな感じで普通ではないソウマのパーティーを眺めていた俺だったのだが。ふとエルフの女性と目が合った。透き通るような青い瞳に俺は引き込まれそうになった直後に――
「――っ!?」
急に彼女から尋常ではない殺気が放たれ、俺は冷静ではいられなくなり、気が付けば腰にある刀に手をかけていた。
「店で刀なんかかまえんじゃねぇ」
「あいたっ!」
ここで騒ぎを大きくしないためか、声を荒げることはなく諭すようにおやっさんに注意を受けつつ、頭を叩かれた。
しかし、俺は殺気を向けていた張本人から目を離せなかった。しかし、その表情はなぜか笑っている。そして、ソウマもなぜかこちらを見ていた。
だが、一瞥したところで進行方向に向き直り、こっちとは遠く離れたカウンターのほうに行ってしまう。
「全く、うちの店で問題起こさないでもらいたいな」
「す、すいません」
おやっさんの呆れた声に、俺はようやく視線を戻して謝罪した。
「いや、今のは坊ちゃんのせいじゃねぇ。気にするな」
俺たちの会話にメリイはついていけないようで首を傾げていた。というかあれほどの殺気に気づいたのが俺だけというのが驚愕だった。なぜ俺だけが気づけたのか?いや、おやっさんもわかっていたということは考えすぎなのか……?しかし、そんな考えも一瞬で終わりおやっさんがもとのテンションに戻ると、メリイもさっきと同じように酒を飲み始めた。
今の視線は一体何だったのだろうか?その疑問は尽きないが、ソウマ達の周りにはすでに人だかりができておりとても話せる状況ではないことを察した俺はあきらめてメリイとともに酒を飲み始めるのであった。
その後、ソウマ達に人だかりは絶えないまま時間が過ぎ、メリイが帰ると言い出したので俺も帰ることにした。
「……なんでついてくるの?」
「住んでるとこ近いんだし当たり前だろ」
「質問が悪かったわ。なんで私と同じタイミングで店を出たの?」
一緒に帰るのはいいのだがメリイの目線が怖い。さっきのエルフの人のとは全然違うけど普通に怖い。
「俺もそろそろ帰ろうかなって思っただけだ」
俺は事実だけを述べる。もちろん少しはメリイと話したいというのもあるが……
「そう、ストーカーじゃないならいいわ」
「そんなことするかよ。それでさ、メリイ一つ聞きたいんだけど……」
「なに?」
「……いや、今日のハルヒロ達の動きの感想が聞きたくてさ」
なんで話しかけるの?みたいな目線に耐えながらも俺は聞いた。メリイはパーティーのことをどう思ってるかを知りたかったのだ。
「今までのグダグダな動きに比べたら格段にマシだった。これで満足?」
「ああ、満足だ。メリイ、あいつらは変わったよ。いや、元に戻ったっていう方が正しいかもしれない」
「ならあなたももとに戻ったのね。今日は随分と動きも控えめだったし」
「あいつらが倒せるんだから俺が出しゃばる必要もないだろ?あとはお前次第だメリイ」
「……」
俺の言葉に答えは返ってこない。シェリーの酒場から宿舎までそこまで距離もないのですぐに宿舎前につくと、メリイは足早に俺の元から去っていった。
ここで『あっそう』みたいな軽い言葉で流されたらショックだなと思っていた俺からすれば無言というのはまだ可能性があるなと感じられた。
「よし、明日も頑張るか」
今日はもう遅い、俺もさっさ帰って寝ることにしよう。
ソウマに目を付けられましたがあくまでそれだけです。
実力差がありますからね笑
あと先輩魔戦士は出すかどうか未定です。オリジナルキャラになるので笑
感想などお待ちしております!