灰と幻想のグリムガル ―孤独な魔戦士―   作:雨宮海人

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アニメの最新話をみたところ2巻の話やるみたいですね。まぁ、話数少ないのでいろいろ省いて必要なとこだけって感じになるのかな?
そして、メリイかわいい。こんなにヒロインしてるとは……

今回は少し短いですがよろしくお願いします!


第18話 簡単にはいかない

こうしてメリイと仲を深めよう企画がスタートしたわけなのだが……これがやはりというかかなり難航していた。

 

まず、朝いつもの街を出る場所の待ち合わせ場所で、メリイと会い、ハルヒロが普通に――

 

「おはよう」

 

と声をかけたのはいいのだが返ってきたのはいつもの冷たい目線である。これにハルヒロは少し後ずさりしてしまうので、

 

「メリイ、おはよう。悪いな今日は用事があって先にハルヒロ達のとこに行ってたんだ」

 

別にメリイは気にしてないが最近行く時間を合わせていたので言い訳を含め、挨拶をしてみるのだが……

 

「別に、あなたが勝手に合わせてるだけでしょ。頼んだ覚えもないわ」

 

と見事に一蹴されるわけで、まぁわかってたけどさ……言われると傷つくな。しかし、このまま突っ立てるわけにはいかないので前を向き歩き出すが

 

「……あと、おはよう」

 

半ばあきらめたところで小さな声で挨拶を返してもらい、俺やハルヒロは後ろを向くのだが、

 

「はやくいって。私はついていくから」

 

やはりいつものメリイだった。それでも挨拶を返してくれるだけいいのか?

 

そして、道中は女性陣が会話を試みて、朝は何食べたの?とか、義勇兵になってどれくらいという質問を繰り返すのだが、俺の時と特に変わらず『適当に』とか最低限の言葉で片づけてしまう。それでもめげずに質問していたが『どうだっていいでしょ』の一言でユメとシホルもあえなく撃沈、やはりコミュニケーションをとるのはなかなかに難しい。

 

そして、いつも通りダムロー旧市街に向かった俺たちは間もなくしてゴブリン四匹の集団を発見。作戦を立てることになる。

 

「ハルヒロ、俺は一体は片づけるが、全部はやらないぞ」

 

いくら和解したといっても俺に頼られ続けては困るので一応念を押す。

 

「うん。わかってる。だからフミヤ、モグゾー、ランタで一体ずつお願い、残りの一匹は俺とユメで相手して、シホルとメリイはモグゾーとランタのフォローって感じで行こう」

 

このときハルヒロはさりげなく、メリイをモグゾーとランタの援護に加わるように言った。まぁ、あんまり前に出るのはよくないが援護ぐらいなら問題はないだろう。チームレンジのチビちゃんももっと危険な相手にそういう立ち回りをしているわけだし、

 

みんなもその作戦に異議はなく、ゴブリンたちを強襲する。

 

もちろん、俺はゴブリンに遅れをとるわけもなく、スキルは使わないで相手の攻撃をいなしての攻撃で難なく倒す。

 

すぐに周りに視線を向けるが、メリイは案の定というべきか、シホルの隣にいるだけだ。ハルヒロからすればもう少し前に出てほしかったのだろうけどその目論見は失敗のようだ。

 

そして、モグゾーは側頭部に傷を負い血が流れ、ランタは左腕を浅く切られてしまい、怪我を負ったことで二人とも少しだけ後ろに下がってしまう。

 

「戦士なんだからそのくらいで下がらないで!」

 

「っち!お前は何もしてねぇだろうが!」

 

そして、昨日までの俺のようにメリイが檄をとばす。そうだ、俺もそう。思うでもモグゾーは不安といっていたなら……

 

「モグゾー!多少の無茶でもやれ、安心しろ全部俺がカバーしてやる!」

 

俺はモグゾーとランタのほうに走りながら言った。マナトは俺が背中を押してくれる存在といってくれたならそうしてやればいいのだ。ランタはまだしもモグゾーに実力がある。不可能ではないはずだ!

 

「――っ!どぅもー!」

 

モグゾーは思いっきってバスターソードを振るった。それは見事にゴブリンの脳天をとらえた。あの入り方は間違いなく即死だ。

 

「くそっ!この!」

 

それに対してランタはまだゴブリンと切りあっており、決めきれてない。それにあれだけ避けろといったのだが基本剣で防御して状況を悪くしている。ランタにゴブリンと切り結んで圧倒するだけの技術がない以上距離をとり攻撃する方がいいのだが……

 

「ランタ、大丈夫なのか!?」

 

一応怪我をしているのでハルヒロが心配そうな声を上げるが、血もそこまで出てない。動きも制限されてるようにはみえない。これなら問題ないはずだ。

 

「いってぇに決まってんだろうが!――憤慨突(アンガ―)っ!」

 

ランタは半ばやけくそに少し距離をとってから、剣を突き刺すように攻撃してそれはゴブリンの喉を完璧に捉えた。

 

さすがに即死とまではいかないが致命傷だ。距離を無理やりあけたのは正解である。

 

そして、最後の一体はユメとハルヒロで相手をしていた。

 

「マリク・エム・パルク!」

 

そこに、余裕ができたシホルの魔法の光弾がゴブリンに直撃し、大きく体勢を崩す――

 

「――刈り払い!」

 

そこにユメが詰め寄り、剣鉈を横なぎに振るう。スキルだったこともあり動きがよく、ゴブリンをとらえるが浅い、でもその背後にはすでにハルヒロが待ち構えていた。

 

背面打突(バックスタブ)による背面の奇襲攻撃にもちろんゴブリンは反応できず、ナイフが深々と刺さる。悪くない動きでそれでいて急所を貫いたことにより、ゴブリンはすぐに動かなくなった。

 

「よっしゃー!連係はくそだったがこの俺様の一撃によって大勝利!まぁ、俺なら当然の結果だな!つうか腕いてぇ!メリイ治せ!」

 

久しぶりのまともな勝利にランタが死体をあさりつつも大声を上げる。

 

「よく下がらなかったなモグゾー、ナイスファイトだ。やればできるものだろ?」

 

「うん、やっぱり形は変わったけどフミヤ君がいるから安心して攻撃できたよ」

 

「無理しすぎるのもよくないが、今の感じ忘れるなよ」

 

怪我が浅すぎて心配する必要など微塵もないランタのことは一切無視して俺はモグゾーをほめた。頭に攻撃を受け未だに血が流れ続けている。いつもなら後ろに下がってしまうところだったはずだ。

 

元通りとは言わないがみんなの動きはここ最近で一番よいものだった。そのことが俺はうれしくてしょうがなかった。

 

「メリイ、先にモグゾーのほうを頼む」

 

「言われなくても、座って」

 

メリイもランタのほうを無視しつつ、モグゾーの治療にあたる。後ろでランタが騒いでるがそれぐらいの傷でぎゃあぎゃあ騒ぐなよ……

 

座ったモグゾーに対して怪我をしている場所を把握するために額や側頭部に触れるが――

 

「――ぃっ!」

 

どうやら傷に触れてしまったようでモグゾーは痛みで顔をしかめる。その声にメリイは申し訳なさそうに手を離し何か小言で言っていた。その声はあまりにも小さすぎて俺には聞こえなかった。モグゾーはそれに反応するように顔を上げていたが、

 

「――光よ、ルミアリスの加護のもとに……癒し手(キュア)

 

それにかまわずメリイは回復魔法を使い、傷をふさぎ。流れてしまっている血を服の袖でふき取ってやる。

 

「おい、モグゾーはもういいだろ!俺のも治せ」

 

「あなたのはかすり傷でしょ?」

 

「そんなことねぇだろ!血が出てるんだぞ……止まりつつあるが」

 

「唾でもつけとけば、あと呼び捨てで呼ばないで腸が煮えくり返るから」

 

「なっ!フミヤは呼び捨てで呼んでるじゃねぇか」

 

「言わなきゃわからないの?あなたに呼び捨てで呼ばれるのが嫌なの」

 

「キィーー!」

 

そしてわかったことだがメリイは小さな傷でも戦闘が終わった後なら治療してくれるがそれにランタは含まれないらしい。

 

まぁ、自業自得であるので特にフォローする気もない。それぐらいの傷は日常茶飯事だろうし少しは耐えることを覚えろランタ。

 

こんな感じでメリイ以外の連係がもとに戻ったことにより、全体的に動きが格段に良くなった。

 

特にユメはまるで人が変わったようだった。ユメは弓の命中率が良くなって、剣鉈での戦いもさらに動きがよくなっていた。

 

技術は一朝一夕でよくなるものではない。となるとやはり心持の問題が大きかったのであろう。

 

それとも俺という存在がプレッシャーとなっていたのかもしれない。

 

そんな感じで絶好調の形で狩りは進み、俺も基本ゴブリンを一体引き受けるだけの仕事でも十分に戦えた。そして俺たちは廃屋のなかで昼休憩をとることになった。

 

「ユメ、いい感じで弓が当たるようになったな」

 

「そうやねぇ、最近外してばっかでフミ君に怒られっぱなしやったからなぁ」

 

「それについては悪かった」

 

「ううん。ユメもちゃんとしてなかったんが悪いからなぁ。そのかわりうまくいったときに褒めてくれればええよ」

 

「……そっか、じゃあ、ユメよくやった」

 

「うん、ありがとな」

 

こんな感じで俺は周りを警戒しつつも他愛もない時間を過ごしていたのだが、やはりその輪にメリイはいない。

 

少し離れたところで昼食をとっている。

 

そんな中、決意したようにハルヒロは立ちあがりメリイに近づいていく。

 

「あのさ、メリイ。少し聞きたいんだけど、やり方の問題っていうかさ。メリイは回復役としてこんなふうにする、みたいなのがあるのかな?」

 

「は?」

 

勇気を出したハルヒロに対して返ってきた答えは今までの中で一番何というか覇気が込められていた。

 

当たり前のようにハルヒロはそれに委縮してしまうが……

 

「……いや、神官にも色々なタイプがあるのかなって、俺はそういうのわからないからさ」

 

「さぁ」

 

なんとか耐えて返したハルヒロだがこれもまた一蹴される。ここまでくるとハルヒロも少しムキになる。

 

「……お、教えてほしんだ。俺は盗賊だからさ、神官のことよくわからないし、わからないままにしとくのはよくないと――」

 

「それはそっちの意見でしょ?私はこれでいいと思ってるから」

 

「全然よくな――」

 

「ハルヒロ」

 

さすがに今の返しはキレても文句は言えないが、ここで関係を悪化させるのも困るので俺は止めに入る。

 

「メリイ、別にプライベートのこととかに立ち入るつもりはない。でも、戦闘の役割分担とかそこら辺はせめて話し合いたいって思ってるんだが?」

 

あんまりメリイを刺激しないように話を進めようとしてみるが……

 

「私の仕事が気に入らないなら、はっきり言えば?抜けるから」

 

さすがにそれを言われると何も言えんぞ……

 

「そうじゃないって俺はただ――」

 

「だったら問題ないでしょ」

 

「……はい」

 

代わりに反撃したハルヒロは即座に撃沈された。どうしたらまともなコミュニケーションが取れるのやら。

 

おやっさんはメリイにやりたいようにやっていつかうまくいくさと言っていたがこれではうまくいくものもうまくいかないのではないか?

 

「メリイ、お前はそれでいいのか?」

 

「……いいって言ってるでしょ」

 

俺の言葉に一瞬ためらいを見せたが小さな声でそういうとそっぽ向かれてしまい。会話は途切れてしまう。

 

しかし、ずっとこうして会話し続ければ何か変化あるのだろうか?一応俺はそんなことに望みをかけるのであった。

 




さて、ハルヒロ達とフミヤは本格的に前に向かって歩き出したのでここからはメリイに話が主になります。
メリイに対しても主人公のお人好しが発動しそうですね(予想するまでもない)

そして気が付けばお気に入りも400を超えました。評価も増えていい感じですね。

感想などあったらよろしくお願いします!

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