灰と幻想のグリムガル ―孤独な魔戦士―   作:雨宮海人

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遅くなりました!といってもずっと書き続けてはいたのでサボっていたわけではないんですけどね。

この話がどうしても納得のできる形にならなくて試行錯誤しているうちに時間が過ぎていきました笑

しかも結局作者は途中で考えるのをあきらめてたり……

今回は今までの中でも最もツッコミどころしかない駄文になりそうですが読んでいただけたらと思います!


第17話 和解

シホルに怒られ、ようやく自分のしていることを自覚した俺は、次の日の朝ハルヒロ達の宿舎の前に来ていた。

 

よく考えればこんな朝早くの時間にくるのも久しぶりな気がする。最近はメリイと一緒に行くことを考えていたのでわざわざこんな早い時間に来たりしてなかったのだ。

 

「さて、行きますか!」

 

自分に喝を入れて、俺は宿舎に乗り込んだ。のだが――

 

「お前関係ってどういうことだよ!?」

 

「いやだからそんなんじゃないんだって……」

 

「だから!ユメはハルくんにギュッて抱きしめてもらっただけでなぁ!」

 

「うもぉ!?」

 

「あ……あの」

 

ランタがハルヒロに掴みかかったり、ユメがすごいことを言ってモグゾーが混乱してたり、それはもう盛大なぐらいにカオスな状態が作り出されていた。

 

会話を少し聞いたところ、ハルヒロとユメは俺やシホルの思っていたような関係ではなかったらしい、しかし、抱き合っていたことは変わらずそれだけを聞いたランタが暴走している。

 

と簡潔にまとめるとこんな感じである。

 

さすがにこの空気の中で話しかける気力がわかず、俺はその光景をただただ眺めていた。

 

はたから見ればただのバカな光景だがこうして目にするのはマナトがいなくなってから一度もなかったはずだ。シホルが少し変わったのは昨日わかっていたがハルヒロとユメも昨日何かあったのだろう。今までで一番元気に見える。だからこそ、俺も変わらなくてはいけないのだ。

 

「あっ、フミヤ君!これどうにかできないかな?」

 

俺に唯一気づいたシホルが俺のほうに助けを求めにやってきたが、この状況を収めるのは正直面倒すぎる。

 

「悪い、俺にも無理だ。話があるから下で待ってるって一応あいつらに伝えといてくれ」

 

「……うん、わかった」

 

シホルにそれだけを伝えて俺はバカ騒ぎの空間からさっさと離脱するのであった。

 

 

 

そして、時は少し経ち朝食の時間。

 

俺は前のようにハルヒロ達と朝食を囲んでいた。空気はいいとは言えないが重くもない。

 

「ハルヒロ、お前にはがっかりだ!やっぱだめだな、お前は!」

 

ハルヒロとユメの関係が特に何もなかったことに対してランタは文句をいっていた。

 

なぜ、ランタが文句を言うのかは理解できない。ランタはハルヒロとユメが恋人関係になった方がよかったのだろうか?

 

いや、絶対そんなわけがない。どちらにしろ文句を言っていただろう。

 

「はいはい、それでフミヤ、話って何?」

 

ランタをてきとうに流しながらもハルヒロは俺に話を振ってくれる。正直どう言い出したらいいかわからなかったので、ありがたかった。

 

俺は朝食のパンを置いて、立ちあがり頭を下げた。

 

「今まで悪かった。お前らのことを考えず言いたいことだけ言って、無茶な要求ばかりして……」

 

俺の謝罪に誰も答えてくれず、どうなってるのか気になり顔を上げると、皆驚いた表情をしていた。

 

「なんでフミ君が謝るん?フミ君の言うことは間違ってなかったやないか。実際ユメの弓外れてばっかやったもの」

 

「それでもだ。もっと言い方もあっただろうし……」

 

「そうだな。どっかの誰かさんは俺に無茶なことばっか言ってきて、いい迷惑だったぜ」

 

ユメは申し訳なさそうだが、ランタは遠慮が一切ない。でも、俺はそれに笑いながら

 

「でも、ランタお前には本当に俺のようになってもらうつもりだ。回避に特化した前衛。これは変わらない」

 

「なっ!?お前、今謝ったんだからそういうことはもう言わないってもんが筋だろうが!」

 

「勘違いするな。何も口出すのをやめるだなんて一言も言ってないだろ」

 

「はぁ!?」

 

ランタは喧嘩腰に俺のほうを見てくるが、俺はそれを睨みつけて制する。

 

「俺は今でもマナトが死んだときもっと自分がしっかりしてればと……そう思ってる。言いたいこともマナトがうまくまとめてたからあえて口に出したりしなかった。俺はまたそんな後悔をするつもりなんて毛頭ない。だからお前らが強くなるために言いたいことは言わせてもらう、でもお前らも俺に言いたいことを言ってくれ。気に食わなければ反論してくれ。真正面から話し合ってそれで色々決めていけたらって俺はそう思う」

 

「ふざけるなよ!大体なんでお前は俺たちのことなんか手伝ってるんだよ!それだけの実力があるくせに俺らのことを見下したいだけなんじゃねぇの?」

 

「おい、ランタ!いくらなんでも――」

 

「いいんだ、ハルヒロ。言いたいことは言ってほしい、そういったばっかりだろ?俺がお前らを手伝う理由だけどな、最初はまともに生活資金すら稼げないそんなお前たちを心配してのことだ。お前たちからしていれば見下してるといわれてもしょうがないかもな」

 

「で、でも、フミヤ君は僕たちのために頑張ってくれてたよ。……魔法使いとしてだけど」

 

モグゾーの言葉には俺をカバーしつつも、言いたいことが含まれていた。そうだ、それでいい。

 

「そうだな。俺はお前らに魔戦士ということを隠してた。理由は単純だ。俺はずっとお前たちと一緒にいるつもりはない。だから俺が魔戦士としてゴブリンを殺しまくったところでお前らが成長できなければ意味がない。そう思って嘘をついた。そのことについては申し訳ないと思ってる。すまん……」

 

「だけどフミヤ君は私たちを助けてくれてた。その事実は変わらない。私はそう思います」

 

すでにこのことについて話していたシホルは俺のことを支持してくれる。でも、そう簡単に許されることではないだろう。

 

「……フミヤが俺たちのことを思ってくれたのはわかったけど、じゃあなんで今更魔戦士って打ち明けたんだよ。今まで通り魔法使いとしてでもよかったんじゃないか?」

 

ハルヒロの質問がもっともだ。でも、これに本当の意味で答えるにはマナトですらたどり着けなかった話をしなければならない。それに俺は少し抵抗を感じたが、隠し事はしないと決めたのでいうことにする。

 

「嘘ばっかついてて申し訳ないんだが、俺はフリーの義勇兵じゃない。活動はほとんど一人で行ってきた」

 

「「はぁ!?」」

 

いきなりの告白にランタとハルヒロは驚いた声をあげ、他のみんなも驚いている。だが、俺は構うことなく話を続ける。

 

「一人の時の俺は魔戦士として常に敵に襲われてもいい覚悟をしてた。でも、お前らと一緒にいて魔法使いというサポートの仕事をしているときはその注意力が散漫になってた。たぶん甘えてたんだと思う。ハルヒロ達がいるから自分は出しゃばらなくていいと、でも、それじゃあダメなことは思い知らされてる。だから魔戦士として戦うことにしたんだ。ほんとに身勝手すまないと思ってる」

 

「いやいやいや!冗談だろ。じゃあ今までほとんど一人で義勇兵やってたっていうのかよ!」

 

ランタはあまりのことに信じようとしない。無理もない、ソロ活動している命知らずな義勇兵なんていないだろうからな。

 

「たまにレンジ達について行ったりしたが、基本は一人だ。これに嘘はない」

 

「レ、レンジィ!?」

 

ランタがさらに驚きの声を上げる。もううるさいな……そろそろ馴れろよ。

 

「……だから、レンジはあんなこと言ったのか」

 

「ん?どういう意味だ?」

 

そんな中ハルヒロの言葉に俺は首を傾げる。レンジとは最近会ってないはずだが……

 

「いや、レンジがさ。昨日、酒場で一回話した時に、フミヤに『俺は先に行くお前もついてこい』って伝言を頼まれたんだ」

 

……レンジの奴そんなこと言ってたのか。ハルヒロ達と一緒にいることで俺が成長しないとでも思っているのだろうか?だとしたら心外もいいところだ。新しいスキルの取得に鍛錬最近はハルヒロ達に付き添ってばかりだが、一人の時はオークだって相手にしてる。いくらなんでも俺を舐めすぎだなレンジ。

 

「その伝言は気にするな、レンジの戯言でしかない。というか話が逸れすぎじゃないか?」

 

確かに俺がハルヒロ達との活動以外で色々やってて驚くのはわかるがそこは今重要といは言えないだろう。

 

「そ、そうだな。で、結局お前は今でも俺たちのことを手伝うっていうのはなんでだよ。俺たちはもう立派に稼げる義勇兵になったぜ!」

 

「……俺も本当はマナトが死んだ日、もし無事に帰れたらもう手伝うのはやめるつもりだった。実際お前たちは強くなってたからな。でもそれはマナトがうまく動いての話だ。そのマナトがいなくなり、俺にもう少し手伝ってくれって頼んでいったんだ。俺はマナトとの約束をなかったことにする気はない」

 

「じゃあ、お前はいつまで俺たちといる気だよ?」

 

「……それはわからん。でも、お前たちが団章を買うときぐらいが潮時になるんじゃないかって俺は思ってる」

 

「でもそれじゃあ、フミ君はそのときユメ達から離れてしまうん?」

 

「……俺自身今はまだやってないけどフリーの義勇兵はになろうって思ってるんだ。だから、今まで通り手伝うときは手伝うさ。でも、俺にとって一人で活動するのは当たり前みたいに感じてたからな。ずっと一緒にいるということはたぶんないな」

 

俺もハルヒロ達やレンジ達と冒険するのは楽しいと感じれるようになった。それでも俺は一人で活動することを心のどこかで望んでいるのだ。それなら他人に迷惑がかからない今のような中途半端な立ち位置が俺にあってるのだろうと俺は思った。

 

言い訳にしていたことを本当に実行することになるとは思ってもいなかったがな……

 

そっかぁとユメは少し悲しそうにするが、こればかりはしょうがない。

 

そこまで言ったところでようやく話が止まった。俺もいろいろ言えてだいぶすっきりした。

 

「他に言いたいことはないのか?」

 

みんなに視線を送るが特にないようだ。となると俺の話はもう終わりだろう。

 

「じゃあ、俺の話題はここまでだな。で、もう一つ話すことがあるんだろ。お前らの中で」

 

そういって俺はハルヒロを見つめる。これ以上は俺が仕切るのはお門違いというものだ。ここからはリーダーの仕事だろう。

 

「そうだな。もう一つはメリイについてだ。俺はメリイも仲間だと思ってる。だから今の状態をどうにかしたい」

 

やっぱりハルヒロはメリイのことを見捨てる気はないことに俺は少し安堵する。

 

「うちもメリイちゃんと仲良くできたらなと思っとるよ。昨日話し合ってシホルも協力してくれるってなぁ」

 

「……うん、うまくできる自信はないけどできることはやろうかなって」

 

ユメとシホルもメリイに対してはかなり前向きのようだ。だが、こういう時のランタは――

 

「はぁ?メリイと仲良くだぁ?あいつにそのつもりがさらさらないんだから無理に決まってんだろ!」

 

絶対に反対するだろう。しかし、メリイをパーティーに入れようと決めたのはハルヒロ、ランタ、モグゾーである。シホルやユメならわかるが決めた張本人なのだからもう少し考えて発言してほしいものだ。

 

「……でも、せめて普通に治療してくれたらなって思う」

 

モグゾーも全否定はしないがやはり回復役としての仕事に不満を持っているようだ。確かにメリイのスタイルで一番負担がかかるのは前衛を務めるランタとモグゾーだ。一番怪我をしやすい以上そう思うのは自然か。

 

「モグゾー、やっぱり浅い傷でも治してもらわなきゃ戦闘続行はできないか?」

 

「……うん。やっぱり万全じゃないと、怖くて」

 

やはり俺のようにはいかないか……モグゾーももう少し自分に自信が持てれば解決するかもしれないが無理にやらせて致命傷を受けたら目も当てられない。地道に自信をつけさせる方が賢明か?

 

「そういえばフミヤ。お前は怪我してメリイが治さなくても何も言わねぇよな?あいつの味方ってことかあ?」

 

「そういうわけじゃない。あれぐらいの傷なら俺はまだ戦えるんだよ。常に一人でやってるときは回復できるのは戦闘後だけだったからな」

 

環境の違いからここまでの意見が違うのだろう。もう少し様子を見るべきだが

 

「一応いうが。モグゾーただのゴブリンに対してはそれでいいが、ほかの奴らは簡単にいかなくなる。そのことだけは覚えといてくれ」

 

モグゾーに下がり癖がついたら間違いなくパーティーが崩壊してしまうので一応忠告ぐらいはしておく。

 

モグゾーも一応わかっているようでうなづく。

 

「モグゾーの言う通りメリイが回復役として信頼しきれてないから、動きも悪くなると思うんだ。だから、もっとメリイを知っていくことが大事なのだと思うんだ。もしかしたら理由があるのかもしれない」

 

ハルヒロの意見に俺もうなづいた。確かにメリイは保守的なやり方に文句はないが、あそこまで保守的になるには何か理由があるかもしない、酒場での話を聞いた俺にはそう思えた。本当ならこのこともハルヒロ達に言うべきことかもしれないが俺も詳しくはわからない上、勝手に人のことを喋る気はない。

 

「あれは単に性格が悪ぃだけだろ。あれは病気レベルだな。うん」

 

「一応聞くが、ランタお前はメリイのことをどう思ってるんだ?ハルヒロ達と話し合ってパーティーに引き入れたのだから仲間じゃないのか?」

 

「そりゃ、まぁ、そうだけどよ……」

 

ランタはバツが悪そうに目線をそらす。どうやらメリイを本気で追い出したいとかは考えてないようだ。

 

「確かに簡単に仲良くなれるとは思ってないけどさ。いつまでも俺たちが固まってメリイを遠ざけたままじゃ馴染めるものも馴染めないだろ?」

 

「そうやなぁ、ユメ達もゴタゴタしてメリイちゃんに冷たくしとったかもしれんしなぁ」

 

「…も、もしかしたら、いい人かも?」

 

シホルはそういうがメリイが性格いいところはさすがに想像できない。俺にも常にトゲトゲしい態度だし、そうじゃなかったのは俺が酔いつぶれてる間のおやっさんと話しているときだけだったしな……

 

「あるわけねぇだろ!あれは根っからの性格の悪さだっつうの!……でも、待てよ。あれがもし本当にツンデレだったらいつかは俺にデレるってことになるよな。それは悪くねぇな……」

 

「と、当然ランタ君にはデレないと思う」

 

ランタの意味わからない妄想にツッコミを入れたのはまさかのモグゾーだった。これは少し意外だな。言いたいこと言うようしたらこうなるのか……

 

「うるせぇぞモグゾー!……モグゾー!?今俺モグゾーにツッコまれたの?信じらねぇ!?」

 

ランタも盛大に驚いていたが、ほかのみんなはいつものことのようにスルーして朝食を食べ進めた。

 

「そういえば、フミ君は何回かメリイちゃんと話してたよなぁ?どんな感じだったん?」

 

「どうって言われても、会話がそこまで続かない。こっちが質問して仮に答えてくれても必要最低限の言葉しか使わないからな……もしかしたら女の子同士のほうが話しやすいってこともあるかもしれない。たぶん、きっと……」

 

言ってて色々と自信がなくなってくる。よく考えるとメリイと仲良くなるのってすごい難しいそうだ。オーク殺す方が断然楽だろうな……

 

しかし、何はともあれパーティーの方針は決まった。俺もみんなとの確執がなくなったことにひとまず肩の荷が下りた気分だった。

 

これからも俺は言いたいことを言い続ける、そしてそこから話し合ってより良いものにしていくんだ。マナト、俺はこんな感じでいいのだろうか?お前の期待に応えられてるかな?

 

そう思い俺は昨日とは打って変わった青空を眺めるのであった。

 

 




この物語を書き始める時にフミヤは孤独でありながらも仲間との繋がりも嫌いじゃない文字通り矛盾を抱えた人物にしようと書き始めたのですが、その中途半端な設定のせいで作者自身が大混乱に陥るとは思ってもいませんでした。
(行き当たりばったりここに極まる……)

一応、この話でハルヒロ達とは和解できたということでご理解いただけたらなと

いろいろ言いたいことはあるかもしれませんがあたたかい感想をお待ちしております!

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