少し原作とは違う部分もありますがあれはあれでいいものだと思います。
これでようやくアニメのほうは原作一巻が終了しました、しかし残りの話でどこまでやるのか……
そして、俺の作品もどこまで行けるのか?
というわけで今回はハルヒロ視点でのお話となります。
それではどうぞ!
「はぁ……やってらんねぇよ!あの女よぉ」
すでに三杯も酒を飲んでいるランタはテーブルにだらしなくのけ反っていた。
ここはシェリーの酒場というところで、夜の時間になると義勇兵のたまり場になっている。
俺たちはきたことがなかったのだが、マナトがいなくなってからというのも俺、ランタ、モグゾーは毎日ここに通っている。
最初はマナトがここにきてたからとかいうことで飲みに来たのだが今は違う。
「自分で言えよメリイに」
俺はあまりのだるさにその場にうつぶせになる。
「ハルヒロ?お前は自分のやりたくないことを人に押し付けるんですかぁ?」
「後にしてくれ、疲れてるんだよ」
「つまんねぇんだよ。ハルヒロ~」
今はランタにかまっている気力などないので、俺は適当に流す。
横目で見るがモグゾーも口には出さないが疲れた表情をしている。
俺たちがなぜこんなことになっているのかというのはメリイとフミヤのせいだ。
メリイはキッカワに紹介してもらったマナトに代わる新しい神官なのだが、とにかく協調性がない。なさすぎるのだ。
こちらから話しかけても会話は続かないし、もちろん向こうから話しかけてくることもない。
そして、マナトと違い戦闘で一切前に出ようとしない。それだけならまだしも浅い傷を負ったときなんかは治療をお願いしても拒否してくる有り様だ。
こんな俺たちのパーティーを手伝ってくれる神官という時点でまともではないとわかっていたがまさかここまでとは……
さらにメリイの加入は俺とランタ、モグゾーで勝手に決めたことだったことで、ユメとシホルには何の相談もしなかった。
そのせいで二人には『どうしてマナトがいなくなってすぐに新しい神官を入れるの、それがこんな人ってどういうこと』みたいな目で見られて、確実に怒っていた。
「そりゃ、俺もそう思うよ……」
俺だってマナトがいればと毎回思ってしまう。普段なら簡単に対処できたゴブリン三匹でも苦戦を強いられるどころか逃げられそうになったこともある。
メリイじゃなくてマナトだったらあんな奴ら余裕だったんだ。マナトはモグゾーに匹敵する
「どうすればいいんだよ、俺たち……」
「モグゾーもよ!腹立たねぇのか?」
「……それは、でもフミヤ君の変わりようのほうが驚いたかな」
そう、俺たち抱えている問題はメリイだけじゃない。
マナトがいなくなってからというもの、フミヤも大きく変わってしまった。
フミヤはいつも俺たちを魔法使いとしてサポートしてくれるいい奴だった。動きも的確で、頼りになった。
でも、今のフミヤはその面影すらない。
まず、フミヤは俺たちに本当の職業を隠していた。本当は魔法使いでなく、魔戦士という特別な職業らしい。
俺の盗賊ギルドでの指導者である。バルバラ先生に話を聞いてみたが、新人義勇兵が入ることのできるギルドではないらしい。
よく考えればおかしかったのだ。初めて会ったあの日、フミヤは俺から見ればレンジに次ぐ実力者だった。実際、レンジのお眼鏡にもかなう人物だったし、
そんなフミヤが俺たちと同レベルなわけ最初からなかったのだ。おそらく、マナトはそのことに気づいてた。だから、フミヤが一人で足止めしに行った時も焦らず、フミヤに任せられたのだろう。
そして、今フミヤは魔戦士として俺たちのパーティーを手伝っている。だが、実力差がありすぎてついていけてない。
だってありえないだろ。ゴブリンを瞬殺って、しかも三匹も。次元が違う。
なのにフミヤは俺たちのパーティーに居続け、俺たちを怒鳴りつけてくるようになった。
『動きが遅い』『判断が悪い』『周りが見えてない』……
正直怒られすぎて何が何だか分からなくなってきている。
「あの野郎!俺に俺と同じくらいの回避をできるようにしろとか言ってくんだぞ!あいつゴブリンの攻撃を紙一重でよけるくせによ、あんなのできねぇっつうの」
「それじゃあ、俺も色々言われすぎて頭が壊れそうだよ」
そう、フミヤが豹変したことにより、被害を多く受けているのがランタ、俺、ユメである。
ランタは前衛として強くなるために、俺にはリーダーとして動けるようにするために、ユメは……弓が当たらないせいでとにかく怒られている。
というか、まずなんで俺がリーダーなんかをやらないとならないのだろうか?
確かに、他のみんなにリーダーの適正があるとは言わない、でも、マナトも最期に俺に『頼む』って言ってたし俺がやることは自然の流れなのだろうか?
でも無理だよ……リーダーなんてマナトみたいにはできない。フミヤの期待にも応えるなんて無理だ……
「というかよ。あいつがもっとしっかりしてればあいつも死なずに済んだんじゃねぇか?」
ランタの言葉で一瞬空気が止まったようになる。
確かにそれは俺も一度思ったことだ。フミヤはあれだけ強かったんだ、それならマナトだって……
「それは違うと思う。だってあの時のフミヤ君はみんなを必死に守ろうとしていたし……」
だが、モグゾーのいうことが最もだった。フミヤがいなければシホルとユメはホブゴブリンに殺されてたかもしれない。そして、逃げる時もフミヤが時間を稼いでくれなければもっと危険な状況になってたかもしれない。このことでフミヤに当たるのはいくらなんでも筋違いだ。
「モグゾーのいう通りだよ。それじゃあフミヤのせいでマナトが死んだみたいじゃないか」
「……ちっ。まぁ、そうだけどよ。でも、あいつが実力を隠してたって事実は変わらねぇだろ。舐めプして俺たちを見て、憐れんでたかもしんねぇぞ」
「そんな言い方はないだろ。それにそんなことをする奴だとは俺は思わない」
「はぁ、甘ちゃんですね。ハルヒロ君は、じゃあ今のフミヤ君もそんな感じで受け入れちゃうんですかぁ?」
「そうはいってないだろ!」
あまりのランタのうざさに声を荒げてしまうが、それだけで無駄に疲れた俺は再びテーブルにうつぶせになる。
ランタの言う通り、今のフミヤは俺たちを助けるというよりも、俺たちを無理やりにでも強くしようとしている。それが悪いこととは断言できないが、それによりパーティーの空気はより一層重いものになり、こうして疲れがたまるのである。
俺たちがこうして飲みに来てるのはこうでもしてストレスを発散しないととても寝付けないからである。
前の時はこんなことになってなかったというのに、どうしてこうなってしまったのだろうか……
なんでこんなにも日々が苦悩ばかりで進んでいくのか
「……義勇兵ね」
なんとなく俺はあたりを見回すが、そこにはたくさんの義勇兵たちがいる。盗まれないために高い防具を着込んでたり、外出用の服装に高そうな武器だけを持っていたりと見れば見る程さを感じざる負えない。
「わかってるよ。ハルヒロ、お前はこう言いたいんだろ?俺たちの目標はまず団章を買うことだ。でもなんつうかよ、燃えねぇというかよ」
「お前に思ってること言い当てられるとものすごく複雑な気分になるんだけど」
「失礼な奴だな!叩きのめすぞ!」
「すいませんでした」
「さくっと謝ってんじゃねぇぞ。調子くるうだろ」
めんどくせえ奴……相手にするだけ無駄なので俺はそのまま酒を少しずつ飲む。
「でも、確かに目標を見失ってる感はあるよね。前と違って」
言われてみれば前はダムローに行くことだけでも楽しかった。地図を埋めながら冒険するあの感じ……
「こうもなぁ、変わるもんかな。あいつがいねぇだけで」
ランタのその言葉に俺は少しいや、かなり腹が立ったが怒る気力もわかず、
「……だけとか言うなよ」
つぶやくようにそういった。正直ランタに聞こえてるかすら怪しい。
「悪ぃ」
しかし、その予想とは違いランタには聞こえており、さらにすぐに謝ってきた。あのランタがだ……
「……さくっと謝るなよ。気持ち悪い」
「めんどくせぇやつ」
ランタのその返しに今度こそ、立ちあがって殴ろうとまで考えたが、ランタごときに振るう拳がもったいないと思いやめた。
「目標……ねぇ」
俺はつぶやきながら周りを見たとき、酒場の空気が変わった。それに伴い視線を入口のほうに向けるとそこにはレンジ達がいた。
「レンジだ……」
レンジは新人のはずなのに周りの義勇兵たちが騒ぎ立てる。
「レンジの奴ド派手だなぁ!」
「……うん、すごいね」
ランタとモグゾーもレンジを見つけるやいなやそれぞれ反応する。
そういうのも無理はない。ただでさえ銀髪で目を引くのにレンジは鎧の上から織物のようなものを羽織っている。それにテーブルについて置いた剣は大きくとても高そうだ。
しかもレンジだけじゃない。丸刈りのロンも立派な鎧をつけており、メガネのアダチも着ているものが高価なものだ。バルバラ先生のようなセクシーで露出の多い服を着ているサッサは盗賊なのだろうか?もともと美人なのでとても似合っており、色っぽい。そして、レンジの近くにいるチビちゃんが来ているものはマナトやメリイの神官服よりも明らかに生地がよさそうで飾りまでいろいろついている。
「あいつら、俺たちと同じ義勇兵歴だよな」
ランタはチームレンジを呆然と眺めていた、たぶん俺も同じ顔をしているのだろう。
「どこでこんな差がついちまったんだろうなぁ」
どんなにすごい力を持っていようと、義勇兵歴の浅いものは
だけどレンジ達を見て新人というやつらは一人もいないだろう。
本当にすごい差だ。そしてこれは開くことがあっても縮まることはない。
マナトはいいパーティーになってきたといっていたがあのままいけば俺たちはどうなっていたのだろうか?そう思わざる負えない。
でも、マナトはよく酒場に来ていた。ならレンジ達のことも知ってたはずだ。ここまでの差があってマナトは悔しくなかったのだろうか?
そんな今更考えても意味にないことを考えていると、
「お、おい!」
「なんだよ……」
ランタが急に話しかけてきたので俺は顔をゆっくりと上げるとそこには……
「レ、レンジ……」
さっきまで離れた席にいたはずのレンジがそこに立っていた。なぜ俺たちの前に?
「おい」
「は、はい!」
レンジの低くハスキーなボイスに俺はビビってしまい、少し声が裏返ってしまう。
しかし、レンジは俺の様子を気にすることなくポケットから何かを取り出して、そこに置いた。
金色に光る物体……金貨だ。
それを見た瞬間ランタとモグゾーは驚いた声を上げるが、俺はレンジのほうを見続けた。
「マナトがくたばったらしいな。見舞いだ」
レンジは俺の顔を見てそれだけ言うと、その場を去ろうとする。
「レ、レンジ待てよ!」
何を言っていいのかわからなくなったが、俺は金貨を手に取りとにかくレンジの後を追った。
「なんだ?」
振り向いたレンジの威圧感につぶされそうになる。というか怖い、最近のフミヤと同じくらい怖い!
「これはもらえない。なんか違う気がするし……」
このまま一悶着あったらどうしようかと俺の動悸が激しくなるが……
「そうか」
そういってレンジは普通に金貨を受け取ってくれた。内心そのことにホッとしたところで――
「フミヤは今もお前たちのところにいるのか?」
俺はそのまま会話が終わらなかったことよりもいきなりフミヤの名前が出ていたことに驚いていしまう。
「えっ、フミヤならそうだけど……」
その言葉を聞いた瞬間、レンジは少し悲しそうな表情を浮かべた、レンジがこんな顔をするなんて意外だ。
「伝えとけ、俺はどんどん先に行く、お前もこいとな」
そういって今度こそレンジは先に行ってしまった。どういうことなのだろうか?そして、金貨……100シルバーか。もったいなかったかな
そう考えながらテーブルに戻ると
「――バカ!何してるんだよ!金貨一枚って言ったら100シルバーじゃねぇか!俺たちで分けて一人33シルバー!何してくれちゃってるの!」
「残りの1シルバーはどこに行くんだよ」
「そりゃ俺のに決まってんだろ!ああ、あれさえあれば団章だって買えたってのによ……」
ランタはどんな時でもランタだった。この状況でよくそんなことが言えたもんだ。
「そ、それはだめだと思う。そんなんで団章買っても、マナト君は喜ばないと思う……」
「けっ、知るかよ!」
モグゾーの言葉にランタは文句を言いつつもそこで会話は途切れてしまう。
俺も黙って少しの間、考えるだが何も浮かばない――でも、
「でも、このままじゃダメな気がする。確かに前は良かったけどマナトはもういないんだ」
「わかってるよそんなことぐらいよ!俺様だってどうにかしようって思ってるんだ」
「お、思ってるだけじゃダメだと思う、何かしら行動しないと」
「バラバラなんだよ。メリイだけじゃない。フミヤからもちゃんと話を聞かなきゃ分かり合えないし、それどころか俺たちユメやシホルとだってまともな会話をしてないじゃないか前はこうじゃなかった」
「それじゃあ、なんだ?みんなで仲良くしましょうってか?ハルヒロ、お前にそれができんのか?」
ランタのその言葉に俺は何も言えなかった。どうしたらいいのかなんてわからない。できるかなんてわからない。でも……やるしかないんだ。
飲み干したジョッキを眺めつつ、俺は決意するのだった。
こんな感じでハルヒロ達もフミヤに不満を持っています。
今後どうなるのでしょうか!
そして、ほんとにタイトル変えないと孤独詐欺になりそう……
データぶっ飛んだおかげで書いてすぐ投稿みたいな形になってるので誤字などありましたら優しく教えてくれると幸いです。(誤字報告機能でもいいので)
それ含めて感想など待ってます!