なので誤字脱字が多くなっている気もするので気付いたら報告もらえると嬉しいです。
というわけで不穏なタイトルですがどうぞ!
俺が最後と決めたマナト達の手伝いは特に問題もなく進んでいた。
三匹以下なら安定して倒せるようになっていた。午前中も何回が戦闘したが問題はなかった。しかし、気になったことといえば今回はみんな軽い怪我が多く、マナトがそのたびに回復魔法を使っていたことぐらいだ。
マナトは意外と完璧主義でみんなが万全でないと納得いかないことがある。もちろんそのことを悪いとは思っていないので何も言わないが。
「お祈りしないとなぁ」
みんながそれぞれ昼食を摂り始めたところで、ユメが食べ物を少しだけ地面に置き、手を合わせた。
「白神のエルリヒちゃん、いっつもありがとなぁ。食べ物あげるからこれからもよろしくなぁ~」
「それってさ。狩人ギルドの掟なんだっけ、食べ物食べるたびに少しだけ神様に捧げないといけないってやつ」
「そやなぁ」
ユメはハルヒロの言葉に同意する。説明してなかったが各ギルドに掟が存在する。それを破れば下手すれば命すら狙われることになるらしい。
ついでに俺の魔戦士ギルドに目立った掟はない。あるとすればうちのギルドは人が少ないのでその分少数精鋭をうたっており、俺みたいな見習いからなった半人前のやつはギルドの誇りを汚すなとよく言われる。
「白神のエルリヒちゃんはなぁ。黒神のライギルっていうのとものっそい仲が悪いねん。狩人はエルリヒちゃんが守ってくれるから、狩りがつつがなくできるんやって」
「一応信仰してるんだろ?なのにちゃん付けとかでよんでもいいの?」
ハルヒロの言う通りかもしれない。ランタも曲がりなりにも自分のギルドで神として崇められている、スカルヘルの事をちゃんとスカルヘル様と呼んでいるぐらいだ。
「いいねんて、エルリヒちゃんは懐が広いからな。こんくらいで怒ったりせえへんてユメ思うな~」
「……ユメの気持ちは、ちゃんと神様に伝わっていると思う。私が思うだけだけど」
「まぁ、こういうのは気持ちの問題だからな。上っ面の言葉なんかよりもユメの言葉の方が神様に届いてるだろうな」
神様に都合のいいことだけを押し付けるようなやつなんかよりもユメのような女の子に信仰される方が神様も嬉しいだろう。
「そういえば、最近なぁ、エルリヒちゃんの夢見るんよ。エルリヒちゃんは大きな真っ白い狼でなぁ……」
「おい、その話には立派なオチがあるんだろうな?」
ユメが楽しそうに話しているところで、持っているパンを食べながらだるそうに聞きだした。しかし、ユメは意味が理解できてないようで首を傾げながら、
「オチ?そんなもんあらへんよ?」
「アホか、お前!オチの無い長話はすんじゃんぇよ!」
「なぜオチがいるんだ。別にいいだろ楽しい話だったんだから」
「……ほんと、邪魔しないでほしい」
俺とシホルに文句を言われても一際悪びれず、立ち上がりながら、
「お前らわかってねぇな!ただ長話聞かされて何もなかった時の虚無感ってもんが一切わかってねぇ!」
心底どうでもいいと思うことを力説していた。くだらない、そう思っていると――
「はははっ」
マナトが笑っていた。どうしたのだろう、ランタの話がそんなにおかしかったのか?ランタの頭はおかしいと思うが……
そういう珍しさがあったのでみんなの視線がマナトに向くが。
「いや、いいパーティーだなって思ってさ」
確かに空気が元に戻ったことにより、このパーティーはいいものになっただろう。
「フミヤがいなくても、ゴブリン三匹までは普通にいけるようになったね。やり方を変えれば四匹いけるかも」
……もし、俺抜きで四匹を相手するなら、不意打ち前提でシホルの魔法をぶつけランタ・ユメ・ハルヒロですぐに仕留めて、その三人でもう一匹を受けもつ、そして、マナトとモグゾーが一匹ずつ足止めといったところか。今までの動きから考えれば不可能ではないだろう。
「いけると思う。というか今はフミヤがいるんだ。余裕でいけそうだよ」
ハルヒロは嬉しそうだ。当然だろう、ちょっと前まで稼ぐことすら困難だったのに今では生活にわずかだが余裕が生まれ始めているぐらいだ。
「モグゾーはうちの盾役として良くやってくれてるよ。そして器用だから決めるとこで決める。うちで一人でゴブリンを仕留めているの大体モグゾーだしね」
確かに一対一でゴブリンを処理できるのはモグゾーぐらいだ。間違いなくこのパーティーでは最大の攻撃力と防御力を持ってる。
「……そ、そうかな。わ、わからないけど、細かい作業とかは得意かな」
「似合わねぇんだよ!」
照れてるモグゾーにランタがやつあたりをするように叩く。ランタ、そんなことするぐらいなら一人でゴブリンを倒せるようになってくれ。
「ご、ごめん」
「いいことだろ」
「そうやなぁ。どっかのランタみたいに雑じゃなくていいやないか」
「なんだとぉ?」
ハルヒロとユメの避難にランタは声を荒げるが――
「ランタだってすごい、特に常に攻めていく姿勢がね。俺らはみんな慎重だからね。スキルは使えば使うほど強くなるんだ。ランタはすぐにスキルが強くなると思うよ」
マナトの言うとおりランタの攻撃性はこのパーティーにはプラスである。モンスターを前に怖気づかれるよりも口車に乗って突貫してくれるやつの方がよっぽどいい。
「ま、まぁな」
しかし、褒められた当の本人はあまりに意外過ぎたのか。全然いつもみたいに声に覇気がなかった。
「ランタの方が似合わないやん」
「うるせぇ!」
ユメは楽しそうにランタを茶化すと、ランタはいつも通りになってしまう。もう少し大人しくしてればいい奴なのだが、
「ユメも物怖じしないよね。ひょっとしたら一番勇気があるかもね。神官としては怪我をして欲しくないから注意してほしいけど、何かあったらユメが助けてくれると思ってるよ」
「ユメが?そう言ってくれるのは嬉しいけど、狩人なのに弓が苦手なのはかんにんしてなぁ……」
というかユメは色んな意味ですごいと思う。狩人として弓が使えないのは大問題だ。それだけでお荷物確定になってもおかしくないのに、ユメは前線にでて剣鉈で仕事を果たしている。女の子が積極的に前に出るのに少し抵抗もあるがユメはそれをなにも思わずこなしてる。これで弓が使えるようになれば本当に優秀なのだが……
「苦手なことはみんなそれぞれあるよ。それを補ってこそのパーティーだろ?」
「そうやなぁ、ふふっ」
マナトの言葉にユメも嬉しそうだ。そうだ、苦手なことも誰かが補ってくれれば問題ない。そんなの当たり前のことだ。
でも、俺は簡単にそう思えない。一人である程度できなければだめだと思ってしまう。俺が魔戦士になった理由もそれなのだ。今更変えられはしないだろう……
そして、少し間を置いてから、マナトはシホルのことを見た。シホルはそれに対して少し息を飲んでいた。
シホルは性格上、何を言われるのか怖がっているのだろうか?いや、それだけじゃないマナトが自分をなんていうのかが気になっているのかもしれない。
「……シホルは周りがよく見えている。影魔法は相手を足止めしたり、惑わしたりするものだ。いざって時に仲間を助けられる。助けたいと思ったから影魔法を覚えたんじゃないかな?」
マナトの言葉を聞くと、シホルの性格にあっているとか考えていた自分が少し恥ずかしくなる。
しかし、シホルの魔法は本当に拘束力が高い。俺と同じで仕留めるような魔法ではないが、俺は仕留めれる魔法なのに時間稼ぎにしか使えない。これでは同じ時間稼ぎでもレベルが違う。味方のサポートに適していると言える。
「……うん」
シホルはマナトの言葉に嬉しそうに頷いていた。こういうシホルはやはりマナトだから見れるものかもしれない。
そして、マナトは俺の方を見る。
「フミヤには本当に感謝しているよ。全体に気を配ってピンチになればすぐに助けてくれる。フミヤがいるだけでみんなが安心して戦える。多少の無茶もフミヤのカバーがあればって背中を押してくれてるからね」
マナトにはすでに俺が手を抜いて戦っていることがばれているのにこう言われるとなんか恥ずかしかったり、罪悪感もあったり色んな感情が沸いてくる。
「褒めてもどうにもならんぞ」
なので特に言葉も思いつかず、一言で返してしまう。
「しっかし、お前本当にその刀抜かないよな。ほんとに飾りじゃねぇか」
「あくまで護身用っていったろ」
ランタの言うとおり、俺はまだこのパーティーで一度も刀を使って戦っていない。まさにお飾り状態である。
ちなみに小太刀の方は何度か投擲して使っている。どうしても魔法よりも出がはやいのでそっちの方が都合のいい場合は使うことにしているのだ。
「いいことだよ。魔法使いであるフミヤは後ろでのカバーが仕事なのに前に出てくるようなことがあったらダメだと思う」
マナト、それは神官であるお前にだって言えることだ。そう言おうと思ったが、やはり口に出すことはできなかった。せめて、ランタやハルヒロがもう少し前線で戦う力がつけば……いずれ――
そこまで考えたところで、辺りが少し暗くなる。反射的に上を見ると日が高く昇っていてその太陽に雲がかかっていた。昼食を摂り始めてからだいぶ時間が経っている。
「結構長い間ここにいたね」
「行くか、午後の部!」
マナトも時間が経ってることに気付き、準備を始めると、ランタも立ち上がり荷物をまとめる。
みんなもそれに頷き、移動するための準備を手早くすませて。
「行こう!」
マナトの一声で動きだす。マナトが先頭を歩きだし、それに続いていこうと俺はマナトの方に視線を動かした。その時、
「っ!?」
急にハルヒロが焦るようにマナトに向かって走り出していた。突然走り出したことに、みんな驚きその場で動きを止めてしまう。
そこまでいって、俺もようやくハルヒロの動きだした理由がわかった。少し遠くの建物に光るものが見える――何かわからないが間違いなくマナトを狙っている!
しかし、そう認識した時にはすでに矢が放たれていた。さすがに距離があり、刀を抜いても間に合わない――
「ぐっ!」
だが、先に気付いていたハルヒロがマナトを突き飛ばし、代わりに右肩に矢を受けてしまう。
ハルヒロはそのまま転がって、その場に仰向けに倒れる。しかし、その場所はまずい!
「ハルヒロ!?」
「ハルヒロ、動け!その場所だと狙い撃ちにされる!」
マナトが声をかけながら、ハルヒロに近づき、俺はその場で声を荒げるが、ハルヒロは動かない。
「いっ、痛い、息ができない……痛い痛い痛い!」
痛みによってその場から動けなくなってしまったハルヒロとそれに近寄っているマナトに対して目もくれず。俺は今さっき遠距離で攻撃してきた方を見据える。よく見るとそこにはゴブリンがいて、ボウガンを持っている。
「ハル君!」
俺の視界内でユメがハルヒロの方に向けて走り出そうとしている。
しかし、ゴブリンのボウガンの再装填を行い狙いをすませる。狙いはその走り出したユメである――
「止まれ!ユメ!」
俺は今までに出したことのない大声を出しながら、前に出る。
ユメはその言葉でその場に止まって矢がユメがそのまま走っていたらいた場所に突きささる。
「ひっ!」
「ユメ、シホルそのまま建物の陰に隠れ――マナト!」
それに伴い、近くにいたシホルも驚きの声を上げる。しかし、そんなことは気にせず俺は刀を抜き、ユメ達を守るように立って指示を飛ばすが、ゴブリンはすぐさま狙いをかえて、ボウガンを再装填して、ハルヒロ達を狙っていた。
俺が声を上げるが、ハルヒロに夢中になっていたマナトは気付けず、矢が放たれマナトには当たらなかったものも、矢はハルヒロの右足を貫いた。
「うわあああぁぁぁ!」
あまりの痛みにハルヒロは声を上げるが、モグゾーがすでに動いており、動けないハルヒロを連れて、その場を離脱する。そして、マナトもそっちの方に行ったことでようやく全員矢の範囲から身を隠す。
しかし、ここで追いうちをかけるように、俺の視界には鎧を身にまとったゴブリンが目についた。間違いない、あれは普通のゴブリンじゃない、上級ゴブリンだ。
上級ゴブリンはまともな武装をしており、強さも他のゴブリンとは段違いである。こんな状態であんなやつの相手なんてしてられない。
「ちっ!」
一瞬迷ったが俺は刀を鞘に戻して、突撃の体勢に入る。
今の俺の雷閃はオークすら仕留められる。上級ゴブリンでも切り捨てられるだろう。
最後の最後でまさか使うはめになるとは思わなかったがあいつを倒せればこの場を切り抜けられる。
覚悟を決めて俺は上級ゴブリンに向かって走り出す。
だが、俺はすでにこの時正常な判断力を失っていた。無理もない、今までになかった程の味方のピンチ、そして今までにない上級ゴブリンという強敵、俺がやらなければみんなが危ない、それしか考えてなかった。だからこそ忘れていたのだ。
上級ゴブリンは知能がとても低いが巨大で力の強いホブゴブリンを自分の奴隷としてよく手元置いているということを――
「「きゃああ!」」
ユメとシホルの突然の悲鳴に俺は突撃の速度を緩め、後ろを振り向いた。そこには廃墟の壁を突き破った巨大なホブゴブリンが二人に向かって手に持っている巨大なこん棒を横なぎに振るおうとしているところだった。
「しまった――」
俺は言葉を発しつつも、足を止め二人のいるところに走った。しかし――
どんなに頑張っても俺が攻撃するよりも先にユメ達がやられる。モグゾーですらあんなものの直撃を受けたらまずいのに、ユメやシホルがもしあの攻撃を受けたら――殺される!
「うおおおぉぉぉ!」
全てを振り絞りながら俺は二人の元まで戻り、首根っこを引っ張って無理やりその場からどかした。
「きゃっ」
シホルの小さい悲鳴とともに、俺にホブゴブリンのこん棒が迫る。
両腕はさっき二人を引っ張るのに使ってしまい何もできない。俺は敵の攻撃を前にして無防備な状態を晒してしまう。
俺はホブゴブリンのこん棒を体に受け、そのまま右にあった廃墟の壁に打ちつけられた。さらに壁が脆すぎて壁を突き破り俺の体は廃墟の中に叩き込まれた。
「がっ――ぁ!?」
今までモンスターの攻撃など一度もまともに受けたことがない。というよりも受けたら死ぬと師匠に言われていたのにも関わらず攻撃を受けてしまった俺は全身がバラバラになったような錯覚に陥る。
おもいっきり脳を揺さぶられたので、視界は定まらない。おかげで今何を見ているのかさえ理解できない。それどころかどんな体勢なっているのかさえわからなかった。
痛みのせないなのか、なんなのかわからないが体も動かない。
それどころか、どんどん意識が遠のいていく……
「いやぁあああああ!」
女の子の悲鳴が聞こえるのはわかったが、もうそれがシホルなのかユメなのかそれすら判断することができない。
「や……ばい……」
このまま意識を手放したら本当にまずい。それだけは本能でわかっていた俺は何とか意識を繋ぎとめようとするが……
その思いとは裏腹に視界は歪むどころかどんどん暗くなっていき、
「ちくしょぉ……」
俺はそこで意識を手放した……
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