完全で瀟洒な従者の兄+紅魔館の(非)日常   作:新幹線刈り上げ

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 今日は特別長いですが、最後までお付き合いお願い致します…。


コラボ:和菓子ぃ様の『幻想と夢想と空想と』(2/2)

 昼食を終え、パチュリーと子悪魔とノエルと魔理沙、そしてレミリアの仕業によって強制転送されてしまった凱凛は大図書館へと足を運び、昼食前と同じ様な風景に戻った。

 しかし、少し違うところがあると言うならばそれは、パチュリーが本を読みながら変な事をしているところだろうか。パチュリーは小悪魔達と再転送のために、魔力を溜めている(はず)のだ。ノエルは凱凛の読んでいた本を手に取り、懐かしく思ったのか少し顔を緩ませた。

 

 「お父さん。」

 

 「?」

 

 ノエルがボソッとつぶやいた言葉に凱凛は首を傾げながらノエルを見つめる。しかし、ノエルは凱凛の顔を見ずに言葉を続ける。

 

 「僕のお父さんはヴァンパイアハンターだったんだ。僕も咲夜もお嬢様に拾って貰い、今の僕達が居るんだ。だけど…」

 

 「だけど…?」

 

 「お父さんは研究者でもあった。それは吸血鬼をより簡単に仕留める為に人間の潜在能力を改造する為の実験。僕も咲夜もいずれは立派なハンターになれると思っていた。けど、いつの間にかヴァンパイアハンターの子である僕たちはいつの間にか吸血鬼の従者になっていた。」

 

 「聖なる夜と書いて聖夜。これは12月25日の聖キリストの産まれた日を指している。つまり神の子が産まれた日だ、そして僕の誕生日も…」

 

 「ゴホッゴホッ、ねぇエル君。ちょっと埃っぽいから掃除してくれない?」

 

 パチュリーは“わざとらしい”咳をしてノエルの言葉を無理やり遮ろうとする。ノエルは、二つ返事で承諾して道具を取りに能力で消えてしまった。パチュリーが気にせず子悪魔と魔力を溜め続けているのを凱凛は見習い近くあった本をまた読み漁り始めた。

 

 「では、掃除を始めますね」

 

 「うん、よろしくね」

 

 どこからともなく現れたノエルはパチュリーの後ろで一礼してから掃除に取り掛かった。パチュリーも呟くだけで視線は先ほど凱凛が召還された魔方陣に向けたままだった。

 

 掃除を始めて数十分後、いつの間にかどっかへ行っていた魔理沙が大きな音を立てて扉を開けて入ってきたのだ。魔理沙はお邪魔するぜ、と言って魔導書をそそくさと数冊取り出して、帰ろうとするが背を向けている魔理沙の肩に手を置くと思いっきり肩を竦める。

 

 「魔~理沙? その“パチュリー様の”本を抱えてどこへ行く気なんだ?」

 

 魔理沙からは見えないだろうが恐らく不敵な笑みを浮かべて優しく問いかけるノエルに魔理沙はゆっくりとロボットの様にぎこちない動き方で振り向く。

 

 「ちょ、ちょっと本をよ、読むだけなんだぜ」

 

 「なら、ここから出て行く必要は無いだろうが。もしかして、そのまま盗って行くつもりじゃあないだろうな」

 

 ノエルの手にかける握力を強くして、魔理沙の肩骨が軋む様な音が静かで広い図書館に響き始め、魔理沙の微妙な悲鳴も聞こえてくる。しかし、パチュリーも凱凛もその状況があたかも当たり前の様に感じて二人に見向きもしない。

 

 「痛い痛い痛い痛い痛い!! 大体持って帰って読んでも良いじゃないか!!」

 

 「お前の場合帰って来ないだろう? 一度でも返した事があったのか?」

 

 「いやいやいやいや!! さっきばかり返したところなんだぜ!」

 

 「知らないな、少なくとも僕が見てないから駄目だ。」

 

 「そんな理不尽なんだぜ…」

 

 魔理沙は明らかに声のトーンを落として悲しそうな表情を作る。しかし、無情にもノエルは一切の罪悪感を抱かなかった。

 

 その瞬間、凱凛がノエルの肩を呼びながら叩いたためにノエルは凱凛の方へと振り向いた。そして魔理沙はその一瞬を見逃さず、箒に跨りながら懐からカードを取り出す。

 

 「って今のうちに!! 彗星『ブレイジングスター』!!」

 

 さっきまでの悲しさの原型を一切残さずに元気な声と表情を見せながら魔理沙は不意をついて扉を抜けていこうと箒へ跨ってスペルカードを発する。しかし、その箒に乗っていたのは一人では無かった。

 

 「何でお前“たち”まで乗っているんだぜ!!」

 

 自分だけじゃなく“たち”という言葉に引っかかったノエルは後ろを振り向くと凱凛がノエルの背中に掴まっていた。すると、凱凛もつられて後ろを振り向くが当然誰もいない。

 

 「いや、彼方の事ですけどっ!?」

 

 「何か乗った方が良いかなって思って」

 

 「ネタですか!? それともこの箒にですか!?」

 

 そう言っている間に箒は危ない運転を繰り返していた。能力で広くなっているとはいえ、箒に乗った三人組が廊下を全速力で走っていると仕事をしている妖精たちにぶつかりそうになる。

 

 「ちょっと! 喋っている暇は無いんだぜ!!」

 

 魔理沙は運転をしながら箒を弄っていた。すると、苦い顔をしたまま振り向く魔理沙にノエルと凱凛もつられて苦い顔になる。

 

 「あの~本当に言い難いんだけど…」

 

 ノエルと凱凛は嫌な予感を感じる。そして、その嫌な予感は無残にも・・・――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「止まらなくなっちゃったぜ☆」

 

 ――――・・・当たってしまった…

 

 「「冗談じゃねェェェぞォォォッ!!!!」」

 

 ムカつく程に清々しい顔しながら言う魔理沙にノエルと凱凛は悲鳴にも似た大声を紅魔館に轟かせた。 

 

 

 

 

 

 

 紅魔館のテラスにて、レミリアと(無理矢理)パチュリーが一つのテーブルを囲んで座っていた。いつもの規定の時間のティータイムで、いくら何をいようと無理矢理咲夜に連れられて来るのだ。

 魔力を溜める作業は余り難しく無く、小悪魔たちに任せても大丈夫、らしい。

 

 「騒がしいわね。何かあったのかしら?」

 

 レミリアの唐突の疑問にパチュリーと従者の咲夜も同じような疑問を口にはしなかったが少なからず抱いていた。

 

 「さぁ…少し見てきましょうか。破損していると修復をしなければいけませんし」

 

 「頼むわ。」

 

 「はい」

 

 咲夜はそういって一礼してからその場から消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「「「止まれェェェ!!!!」」」

 

 三人の暴走する箒を止められるものは無く、気のせいか始めより少しスピードが上がっているようだった。幸い曲がり角はまだ無くて紅魔館で一番長い直線の廊下で、一応大丈夫だが、しばらく止まらずに暴走するとそのまま魔理沙を筆頭に壁へと激突するだろう。

 それは、止めたいと三人は必死に箒に力を入れるが無残にもその願いは叶わない。

 

 すると、咲夜が急に目の前に現れた。咲夜はすぐに三人の存在に気づき、驚いた表情へと変化する。

 

 「えっ!? ちょっ! どういうことっ!?」

 

そう言いながら咲夜は壁の端へと避けて通り過ぎて行く三人を見届ける。

 

 

 

 「おい、どうするんだよコレッ!!」

 

 凱凛の言葉で二人は冷静さを取り戻す。

 

 「取り合えず、箒を止めましょう! 僕と凱凛さんは大丈夫ですが魔理沙は人間なので、このまま壁にぶつかると怪我をするでしょう!!」

 

 ノエルは速い箒の中、声を張って叫んだ。

 

 「何で俺まで大丈夫だって言えるんだ!?」

 

 「惚けても無駄ですよ!! 彼方は転生の中で最高級の転生で出てきたんですから!大物には間違いないはずです!!!」

 

 「っていうか! 何で俺は転生されてきたんだ!?」

 

 「それは・・・お嬢様の気分です」

 

 「ひでぇ・・・」

 

 凱凛は明らかに落胆している表情を見せた。

 

 そして、壁が見え始めた瞬間、またも目の前に人が現れた。

 

 背中をこちらに向けていて顔は見えないが、黒と白の混ざった色合いの髪。

 そしてそれをポニーテールのように括り、頭のてっぺんには見事なアホ毛が一本立っていた。

 身長はそれなりに高く、衣装は浴衣姿で背中には『克己』と書かれていた。

 

 その男は振り向くと同時に、片手で箒の先端を握り止めた。

 

 「おいおい…本を返しに来たというのに何だこの有様は。接待もまともにできねェのか?」

 

 その男は残った右手で頭をガシガシと搔き始めた。

 

 「お前は…」

 

 空気だった魔理沙が掠れた声で男を凝視しながら言う。

 

 「あん? あぁ魔理沙にノエルじゃねェか…それと…あ~見かねェ顔だな。俺は愛優だ。お前は?」

 

 「俺は凱凛。お嬢様に転送されてこの世界に来た。」

 

 そういい、三人が箒から降りた。愛優は頭を掻くのを止めて、凱凛の事を舐め回すように見続ける。

 凱凛もそれに気づき、無意識に右足を後ろへと一歩だけ退ける。

 

「へぇー、そりゃ災難だったな。そんでクラスは何なの?」

 

 「クラス?」

 

 凱凛は間髪入れず鸚鵡返しをする。

 

 「転送魔法には『クラス』というのがありまして、その者の強さによってクラスが違ってくるのです。『ステージ』や『レベル』と呼ぶ人もいますけどね。

 ちなみに、凱凛さんは最高の転送魔法のクラスで転送されました。」

 

 「マジか…最高クラスの奴は初めて見たわ。」

 

 「僕は一人だけ知ってますけどね」

 

 「じゃあ俺は強さでいうと『最高』ということ何だな」

 

 凱凛は少し嬉しいのか胸を張った。しかし、 

 

 「いいやそれは少し違う。」

 

 と、愛優はすぐさま否定した。

 

 「これは俺の独断の解釈だが、魔法では努力で積み上げられた『強さ』を測ることは不可能なのだ。

 かといって、才能“だけ”で測られて転送されるわけでも無い。」

 

 「話についていけないのだが結果どういうことなんだ?」

 

 「まぁ、つまりは転送される時に測られる『強さ』はその人が成長できる伸びしろと才能なんだよ。

 だから全然強くなくとも成長の伸びしろと才能さえあればあるほど『クラス』は高くなるということだ。」

 

 「それは、分かった。それで話を変えるけど魔理沙は?」

 

 凱凛のふとした言葉に、その場の空気が少し冷たくなった気がした。

 

 「あ、あぁ…魔、魔理沙ね。魔理沙は…いないな」

 

 魔理沙はいつのまにか、その場から消えていた。ノエルも知らないとでも言いたそうな顔をしている。

 

 「そういや、見てなかったですね。愛優が箒の暴走を止めた時に魔理沙は居たんですけどね。凱凛さんは見ましたか?」

 

 「いいや、見てないな。ミスディレクションでも使ってどっか行ったんじゃないか?」

 

 「いや、アイツミスディレクション使えたっけな~。まぁそれはいいとして、お前らは何で箒に乗ってたんだ?」

 

 愛優はそういってまた頭を掻き始めた。

 

 「ええと、それは色々と事情があって…。とりあえず魔理沙が本を返さなかったのが原因です。」

 

 すると、愛優は何か思い出した様な顔になった。

 

 「そーいや、魔理沙に貸した本未だに返して貰ってなかったな。あ。」

 

 「あ、逃げた理由察しますた。」

 

 と、凱凛。

 

 「次会ったら、魔理沙には衝撃のファーストブリットを喰らわせてやろう。」

 

 そういいがら愛優は指の音を鳴らす。

 

 「お前はカズマか!まずシェルブリットを装着してないだろ」

 

 「うるせぇ、そーゆうお前には抹殺のラストブリットを喰らわせてやろうか!」 

 

 「二人とも、懐かしいネタは置いといて。愛優はさっき本を返しに来たって行ってたよな?」

  

 「あ、あぁそーいやそーだったな。ほれ、この返すわ」

 

 愛優は懐から本を取り出してそれをノエルに渡した。

 

 「確かに受け取った。それで、これからどうする? 今は・・・三時前だけど。」

 

 「そーだな。ノエルは、レミリアと紅茶するんだろ?」

 

 「いや、別に僕が飲むわけじゃないんだけどね」

 

 ノエルは苦笑する。

 

 「それじゃあ、愛優と俺で玄関前の広間に行こう。」

 

 「ん? 何かするのか?」

 

 愛優は首を傾げる。

 

 「さっきまで本読んでばっかだったし、できれば軽く手合わせしたいと思ってな。」

 

 「そっか。分かった。んじゃ体が鈍ったままだと面白くないから、ストレッチする時間として10分。それと…あ~ノエル。ナイフを二本貸してくれないか?」

 

 そういって愛優はノエルに向けて掌を上向けて差し出す。

 ノエルは『分かった』と言ってナイフを二本を愛優の掌に乗せる。

 ナイフは至って普通の物でどちらも同じ大きさのナイフだった。 

 

 「防御魔法を紅魔館の壁に張っているとはいえ、あまり暴れすぎて壊さないでくれよ。治すのは美鈴なんだから」

 

 「お前じゃねェのかよ」

 

 と、愛優が突っ込む。

 

 「それじゃあ10分後に玄関前の広間で。」

 

 「OK」

 

 

 

 

 

 

 

 

 10分後。

 

 玄関前の広間にて…

 

 「んじゃ、始めよっか。」

 

 愛優と凱凛は腕を伸ばしたり背中を反らしたりとストレッチを一通り終えて、ノエルから借りたナイフを二人は片手に握りながら大きな広間で相対して立っていた。

 

 「あぁ、よろしく」

 

 「こちらこそよろしく。流石に本気を出す訳には行かないからさっき言ってたとおり軽く、な。」

 

 「それで、ルールはどうする? ナイフを体のどこかにぶっさしたら駄目だろうし。」

 

 愛優は『う~ん』と頭を抱えて数秒後。

 

 「そんじゃ、降参をしたら負けという事で。首や頭、致命傷になりかねないところを狙ってもいいが寸止め。それ以外の怪我はありで。」

 

 「OK、それじゃ始めようか」

 

 愛優と凱凛は距離と取ってナイフを構え、カウントを始める。

 

 「「3、2、1…始めっ!!」

 

 二人は互いにナイフを構えたままに突進をしていく。

 

 凱凛は愛優の顔へと真っ直ぐに突き、それを愛優は擦れ擦れに顔を横へと避ける。

 すかさず凱凛はナイフを横へ、首元を目掛けてなぎ払おうとするが、愛優はまたもしゃがみこんで避ける。

 

 「はぁぁっ!!」

 

 「ぐっ!?」

 

 愛優はしゃがんだ瞬間に腹に右の拳を腹へと叩き込む。そして凱凛も負けじとナイフを握り直して肩へとナイフをぶっ刺した。

 

 「っ!?」

 

 愛優の肩から血が吹き出し、愛優はとっさに真横へと逃げ込む。

 

 「いたたたた…」

 

 愛優はそういって肩からナイフを引き抜く。肩から血が出るが気にしない。そして、抜いたナイフを愛優は凱凛へと投げた。

 凱凛は難なくそれを掴み取る。

 

 二人はまたも突進をする。今度は二人とも胸を狙って切り込もうとして、ナイフの刃がぶつかり合って金属音が広間に響き渡った。

 

 凱凛は残った左手で拳を握って顔を目掛けて殴ろうとするがまたも愛優はしゃがみ、伸びきった凱凛の左腕を掴んで投げ飛ばす。

 

 「っ!!」

 

 凱凛は飛んでいきながら体勢を整えて愛優目掛けてナイフを投げるが愛優は右手の掌でそれを受け止めて掌から血が噴き出す。

 そして愛優も飛んでいく凱凛にナイフを投げ飛ばす。

 凱凛はそれを顔を守るように両腕をクロスに組み、ナイフが腕に突き刺さり同じように血が吹き出る。

 

 愛優は追撃をしようと凱凛の真上へと飛躍してから両手を組んで鈍器で殴るように両手を振り落とす。

 それは見事に凱凛の体へと当たり、凱凛は地面へとぶち当たる。

 

 「がはっ!!」

 

 凱凛は肺の空気を血と共に吐き出して、真上にいる愛優を凝視する。

 愛優も、大きく目を見開いて不適な笑みを浮かべながらナイフを右手の掌から抜いてすぐさま凱凛目掛けて投げる。

 それを凱凛は避けて、ナイフは地面へと突き刺さる。そして、凱凛も腕からナイフを抜いてすぐさま投げつける。

 

 「っ!?」

 

 愛優は急の攻撃を避けきれないと察して、とっさに時間を止めてナイフを避けた。

 

 「そして時は動き出す!」

 

 凱凛は真上に浮いているはずの愛優がいつの間にか目の前に居ることに驚きを隠せなかった。

 

 「うわっ! びっくりしたぁ…」

 

 「そんでどうする? まだ続けるか?」

 

 愛優は凱凛が投げたナイフを左手で弄びながら言う。

 そして、凱凛は大きくため息をすると同時に力を抜いて大の字の体勢になって諦めの表情を見せる。

 

 「いや…俺の負けだ。結構頑張ったんだけどなぁ~」

 

 力の無い声でカラカラと笑いながら言った。愛優もつられて笑い声を上げる。

 

 「しかし、俺は時間を止めて能力を使った。つまり俺の反則負けだ。」

 

 「別に能力を使っちゃいけないなんてルールは無かっただろ?」

 

 「逆に使って良いというルールも無い。実際凱凛は能力を使ってなかっただろ?」

 

 「は、はぁ…」

 

 凱凛は諦めたのか愛優の言葉に半ば納得がいかないのかまたもため息を零す。

 

 「んで、まだノエルが帰ってくるまでたっぷりと時間があるけどどうする?」

 

 愛優は、凱凛の手を取って引っ張った。

 

 「それなら一つ気になることがあるから聞いてもいいか?」

 

 「いいぞ、答えられる範囲ならな」

 

 「それじゃあ、お前のその『愛優』っていう名前の由来を教えてくれないか? 聞きなれない名前だったからずっと気になっていたんだが」

 

 「あ~そうか~」

 

 愛優は頭をガシガシと掻きながら、少し不機嫌な顔になって凱凛は地雷を踏んだかと一瞬焦って愛優の顔を凝視しているとすぐにいつもの表情へと戻り、安心を取り戻した。

 

 「話長くなるから覚悟しろよ? これは、まだ霊夢が…って『霊夢』の事は知らないか。」

 

 「いいや、『博麗霊夢』の事なら知っている。」

 

 「そっか、なら話は早い。ずっと立ちながら長話も疲れるだろうから壁際にでも座って話そうじゃないか。」

 

 「そーだな」

 

 二人はそういって広間の隅っこの壁際に腰を下ろした。

 

 「これは、まだ霊夢がこんなにも小せぇ時の話にまで遡るんだ」

 

 愛優はそういって約1m30cmぐらいの高さに手を差し出して身長を示した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 話も終わり、時刻は夜へ。

 

 「もうこんな時間か」

 

 凱凛と愛優の戦闘も終わり、ノエルの仕事、晩飯など日常の出来事をある程度終えて後は寝るだけ…。愛優や凱凛たちは図書館で、本を読みふけっていた。

 しかし、凱凛をふくんだ皆は少し心残りになっている事が少なからずあった。

 

 図書館で、愛優のそんなふとした言葉が皆の心境を一言で表した。

 

 凱凛の再転送のための魔力が溜まるまで後、十時間を切っていた。

 

 「今日は一夜漬けですね。」

 

 紅魔館の小悪魔の一人である『こあ』は魔方陣に目を向けながらため息交じりの声で言った。

 

 「そうね。普段仕事と呼べるような仕事をあまりしていなかったのだから今日ぐらいは漬けても文句は言えないでしょ。」

 

 と、パチュリーは本に視線を落としたままつぶやく。

 

 「そうですよ。再転送が終わったら、休憩の時間を設けるのでそれまでは頑張ってください。」

 

 「あぁ~、早朝から最高級転送魔法なんてワクワクするよね~」

 

 フランが、空中に寝そべりながらクスクスと笑う。

 

 「まぁ、再転送で凱凛さんを送り返すだけですけどね」

 

 「えーつまんなぁ~い。」

 

 そういってフランはむすっと頬を膨らませた。

 

 「今思い返すとこの前も毛むくじゃらで目が死んでる変な人が転送されてきましたよね」

 

 「え? それって、モジ○公?」

 

 凱凛は条件反射の如くノエルの方へと視線を向けた。

 

 「少し違いますね」

 

 「少しどころか人間ですら無ぇじゃねぇかッ!」

 

 と、またも愛優の突っ込むが炸裂する。

 

 「俺はただ…本物の宝を探すだけだ…的な?」

 

 「どこの高○!? ていうかこれ以上モジ○公で話広げると作者の年代がばれてしまうだろーが!」

 

 「大丈夫でしょう、作者は小学生の時に『ジャ○グル○王者○ーちゃん』を見たときに自分も漏らしたら強くなるんじゃね? と真面目に勘違いしていた程度だから」

 

 「それのどこが大丈夫なの!?」

 

 「いつもより、愛優さんの突っ込みが激しいですね。うるさくて何よりです♪」

 

 こあが笑みを浮かべているが、目が笑っていなかった。

 

 「褒めてるのか貶しているのかはっきりしてくんない?」

 

 「いや今のどこに褒め言葉があった?」

 

 「俺にとってうるさいは褒め言葉なんだよ。」

 

 「あっそ」

 

 ノエルがそっけなく返す。

 

 するとまたも暫く沈黙が図書館内で続いていった。

 

 

 もう20分後…

 

 

 時刻は短針が『12』という数字に重なり、日付が変わっていた。

 

 「皆さんもうそろそろ寝ましょう。こあたちは終わったら寝ていいですよ。」

 

 「それは今晩は寝るなということですよね」

 

 こあは視線を魔方陣に向けながら苦笑いして言った。

 魔方陣の光は、昼の時よりも一光に眩しく光っていてもうすぐという感じだった。

 

 

 

 

 

 

 凱凛とノエルとフランとレミリアと仕事を終えて帰ってきた咲夜、そしてついでに愛優たちが玄関前の大広間にて集まっていた。

 愛優を除いた皆はもう寝巻きに着替えており、欠伸を繰り返して如何にも「眠たい」と言いたげな顔をしていた。

 

「それじゃあ、凱凛はどこで寝るかを決めましょう。」

 

 そういってノエルが手を「パンッ」と鳴らすと、凱凛が右腕をこの上なく挙げた。

 

 「はいっ! 俺は、フラン様と寝たいです!」

 

 と、紅魔館中に届きそうな大声で叫ぶが、

 

 「ボツです」

 

 と、ノエルが間髪要れずに返した。

 

 「え~、私は凱凛と寝たーい」

 

 フランが欠伸をしながら空にプカプカと浮いて眠たげに言う。しかし、

 

 「駄目です。もしもフラン様に何かあったらどう責任取るんです!?」

 

 ノエルも怒声混じりの大声を揚げる。フランと凱凛は勿論、他の皆もびっくりしたように体を震わせた。

 

 「そうよ! もしもフランが○○○○○どうするのよ!」

 

 「お嬢様、私はフラン様より一ヶ月ぶりの投稿の所為か、この小説の行く末が心配であります。」

 

 と、咲夜が関係の無い一言を言う。…作者もそう思う。

 

 「レミリア様と咲夜の言うとおりです。フラン様に何かあったら…白装束を用意しなければ…」

 

 ノエルは「はわわ…」と少し慌てたように言う。

 

 「いや、そこまでしなくても良いだろーが。つーかこうやって意見が違えた時にする“遊び”があるだろーが」

 

 そういって愛優は腕を組んで何度も頷く。しかし…

 

 「「デュエルっ!?」」

 

 凱凛とノエルは声を合わせて完璧な素面で愛優を凝視する。

 

 「ちげーよっ! 馬鹿野朗!!」

 

 愛優は予想に反した答えに対し、声を荒げる。

 

 「でも、俺デッキ持ってねぇけど!?」

 

 凱凛は未だにネタを演じ続けて本当に困った顔をした。

 

 「大丈夫です。僕のデッキを貸してあげましょう」

 

 ノエルはそういって、凱凛の肩に手を乗せて満面の笑みを浮かべてグッジョブをする。

 

 「そうね、これぞ男同士の戦いよね」

 

 レミリアも便乗してうんうんと頷く。

 

 「腐に堕ちたお嬢様もまた素敵です。」

 

 咲夜は放送コードギリギリ…アウトの発言を一瞬も顔を崩さずに発した。

 

 「はぁ!? 何いってんの? お前!?」

 

 理解し難い発言に愛優は咲夜を軽蔑の眼差しで見つめる。しかし、咲夜は未だに顔を崩さずに、

 

 「吸血鬼とは日本でいう『夜の暴れん坊将軍(意味深)』です。お嬢様がどのような下ね…はしたない言葉を失言しようと私の中のイメージが崩れません。」

 

 咲夜は素面で堂々と、そしてドヤ顔にも見えなくも無い顔で言い切った。

 すると、愛優は呆れすぎて物も言えずに大きな…いや、今世紀最大のため息を吐いた。

 

 「はぁ………。ツッコミどころ多すぎだろ馬鹿野朗……」

 

 愛優の深いため息も束の間、レミリアがまたも横槍(ネタ)を入れてくる。

 

 「はっはっはっ! いつから私が腐に堕ちたと錯覚していた? 残念闇堕ちでした~まさに外道!!」

 

 「まさに外道! …じゃねーよっ! 愛○ネタは…いや、もう結婚できない先生のネタになっているし…もう何か頭痛くなってきたわ…帰る…」

 

 愛優は軽く手を振って、皆に背を向けてふらふらと蛇行するように歩き始めた。

 

 「あっ、お休み…というかもう遅いしここで泊まっていかないかしら?」

 

 レミリアのその言葉に愛優はピクリと動き、引きつった笑顔で振り向いて「遠慮します…」と言って消えていった。

 

 結局、ノエル&レミリアVS凱凛&フランの勝負により凱凛は…

 

 

 

 

 

 

 

 フランと寝る事になった。

 

 

*作者の謝罪と反省注意報*

 

 はい! 作者の人妖さんです! ここまで読んでいただいた通り、一ヶ月も置き去りしていたこともあり、内容が酷かったと思います。

 勿論、もっと良い状態で投稿したかったのも山々でしたが、私はこれでも精一杯書いたつもりです。

 文章力は筋肉と同じようで、日が経つと鈍るようですね。今回の失態により、多くのことを学びました。

 ターちゃんが面白かったこと。先生のことを誰か貰ってやって欲しいこと。マギのシンドバットの冒険とジョジョの放送時間帯がよく変わり、取り忘れが続出すること(ちなみに私はシンドバットが1話と2話、ジョジョの2話目をとり忘れちゃいました)。

 そして、理由はどうあれ、失踪疑惑によりお気に入り登録者が増えたり減ったりしてしまったこと。

 

 たくさんのことを学ぶことができました(ほぼ小説に関係無いが)。そして、コラボ相手である和菓子ぃ様には大変迷惑をかけてしまいましたこと、この場を借りてお詫びします(謝罪ばっかりでどーゆうことだ? 作者よ! 反省の意があるなら結果を出せよ結果を!)。

 最近、ネットの回線がぶっこわれたりなどなどのせいでハーメルンで書く時間が減った(メモ帳には書いたが…)こともあり、このような長い時間待たせることになってしまいました。

 和菓子ぃ様の作品の評価等を見てみると、お気に入りの数でも評価の数でもコメントの数でも…全てにおいて凌駕していることに大変驚きました。

 しかし、作者は柄にもなく諦めるどころか対抗心が(私が一方的に)沸きました。

 

 改めてコラボの難しさがわかりました。相手のキャラをどのように喋らせるか、そのようなクセ、しぐさ、反応などさまざまに困る部分がありました。

 なのに、和菓子ぃ様は3話もかけてすらすらと投稿なされました。私はとっても尊敬の意で心がいっぱいになり、いざ書こうと思うと指が止まってしまいます。

 決定的な案が思いつかない中、新しいアニメが始まり、ネットの不具合が度々発生などさまざまのトラブルが起きている間にこく一刻と日が経っていました。

 

 ええと、ものすごくながったらしくなってきて、もうすぐ1万文字も超えようとしています。

 

 まぁ何が言いたいか、と言うと「投稿遅れてしまい本当に申し訳ございませんでした!。そして、不定期更新となりますがこうしていつの間にか投稿していきますので、作者の成長、そして幻想に生きとし生ける全ての馬鹿どもの成長と生き様を最後の幕末までとくと御覧あれ!!!」です。

 

 さぁ、シークバーがまだ少し残っています。続きをお楽しみください。

 

 

*注意報終了のお知らせ*

 

 

 

 

 朝、凱凛はノエルに借りた一室の部屋のベッドで起きるとフランがお腹の上で転寝をしていた。

 凱凛はフランとの睡眠によるアロマセラピーによって長い間眠ってしまっていた。

 その規則正しいリズムの寝息とフランの寝顔は凱凛に最高の癒しを与えた。

 そして暫く、その状態でいるとこの部屋に近づく足音が聞こえてきた。それは部屋の前で止まると同時に、ドアが大きな音をたてて開けられた。

 そこに立っていたのは咲夜で、凱凛はとても「デジャブ」を感じていた。そう、前にもあったような光景だった。

 咲夜は、凱凛とフランを見るなり、

 

 「お嬢様がお呼びです。どうやら、等々転送用の魔力が溜まったようです。」

 

 「そ、そっか。え、えーと他にレミリア様は言ってなかったか?」

 

 凱凛はこの状態に恥じらいを感じて、咲夜と目を合わせて会話できなかった。

 しかし、咲夜は首を縦に振らずに数秒間開けてから言葉を始めた。

 

 「いいえ、特には。では、私はここで失礼します…それと、このことは私と凱凛様の秘密ということで」

 

 「それは嬉しいけど、俺の“知っている”咲夜さんは様をつけて無かったぞ」

 

 「これは礼儀の一環で、従者として当たり前のことです。」

 

 「あぁ~ええと、その仕付けはレミリア様に? それともノエルに?」

 

 咲夜は首を左右に振った。

 

 「いいえ、どちらでも。従者としての心得は先代の従者に仕付けて貰いました。」

 

 「先代? 咲夜さんとノエルが初代じゃないの?」

 

 またも咲夜は首を振った。

  

 「少なくとも、私たちは初代ではありません。蛇足ですが、先代のことについては唯月さん…いえ、エル兄様のほうが詳しいかと。」

 

 「そうか、まぁ深く詮索をする気も無いけどな。それじゃあ、フラン様。起きてください。」

 

 凱凛は優しく、フランの羽に触れないように背中を揺すり起こす。揺する度に、髪のにおいが仄かに香った。

 

 「・・・うにゅ…」

 

 その瞬間、凱凛は過敏に反応した。

 

 「え、何で知っているの!?」

 

 と。

 

 フランは目を擦りながら、凱凛と咲夜を交互にみながら目覚めた。

 

 「あっ、おはよー。」

 

 凱凛はその満面の笑顔に昨日疲れが吹き飛んだ気がした。気がしただけ…。

 

 「おはよー・・・?。」

 

 「おはようございます、妹様。では、妹様も起きたので一緒に行きましょう。ショートカット…というよりも瞬間移動をいたしますのでご了承ください。」

 

 咲夜は深く一礼をした瞬間、三人は“いつの間にか”図書館に居た。

 そこには、凱凛のことを待っているだろうレミリアやノエル、そして魔方陣のほうをずっと見ているパチュリーとこあが居た。

 

 「え?」

 

 魔方陣は、凱凛が転送される前のように輝きが強まっていた。

 

 「お待たせしました。今、起きたところです。」

 

 凱凛は悪気を少しだけ見せて、謝るとレミリアが両手を腰に当てて「遅~い」とむっとした顔で言った。

 

 「すいません、お嬢様。私が無駄な話をしていたために遅れてしまいました。」

 

 咲夜はまたもレミリアのほうへと向いて腰を深く折った。

 

 「それで、そこにいる凱凛君、速く魔方陣に入ってくれないかしら。少し、疲れてきたのよ。それに作者も…」

 

 パチュリーは魔方陣に顔を向けたまま、メタ発言混じりに言った。(パっチェ、お前もかっ!!)。

 

 凱凛はパチュリーに言われたとおりに、魔方陣の真ん中へと立った。

 

 「一つ気になったことがあるんですけど…」

 

 「何故、こんなに速く溜まったかって?」

 

 パチュリーは凱凛の疑問を先読みして答えた。

 

 「まぁ…はい。」

 

 「…実は魔力自体はすぐに夜中に溜まったのよ。後は場所を、と思っていたら思い出したのよ。あなたも“幻想郷”で生きていることに。だからよ。」

 

 「なるほど…」

 

 凱凛もパチュリーの話を聞いて納得がいった。

 

 「それじゃあ、パチェ今すぐ転送魔法を開始するわよ。」

 

 ノエルと、レミリアがパチュリーの元へと歩いた。

 

 「何か寂しいですね。一期一会とはまさにこのことですね」

 

 「ですね~。それで、愛優さんは? 凱凛と戦ったんですよね?」

 

 こあがノエルの顔を覗き込んで言った。

 

 「すみません。アイツは「別れ」ということに弱くて…しかし、早朝ここへ来て伝言を残して行きました。ごほん『あっちの霊夢たちにもよろしく。それと、次もし戦う機会があったらお互い“本気”で戦おう』ということです。」

 

 「伝言、確かに聞いた。それじゃあ、さよならだな」

 

 「はい、それとあっちの僕にもよろしくです」

 

 「え?」

 

 「え?」

 

 「あ、あぁその、…とても言いにくいが、俺の居た世界にはノエルは居ないんだ…」

 

 その言葉を聞いてパチュリー以外の皆が少なからず驚いた。

 

 「そ、そうですか…まぁいない世界線だっただけですね。」

 

 「ん~まぁそうかもしれないな…」

 

 「・・・それじゃあ、今度こそ。次また送られてきたら…ってもう転送魔法は永久に禁止にしますか。」

 

 その言葉を聞いて、レミリアが「えーっ」と大きく口を開ける。

 

 「そんじゃ、さよなら。お前に会えて良かった。」

 

 凱凛はノエルたちへ手を振り、ノエルたちも同じように手を振った。

 

 「はい、愛優にもそう伝えておきます」

 

 「ああ、よろしく。それじゃあな!」

 

 「はい! さようならです!」

 

 凱凛は、そういって背を向けると同時に魔方陣の光が強くなり、消えて行った…

 

 

 終わり…?

 




 







 「『“人”の数だけ幻想郷はある』か、“俺たち”は後、何回出会うんだろうな…」

 愛優は真っ青な大空に向かって、誰に言うわけでもなく一人で呟いた。

 
 終わり

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