完全で瀟洒な従者の兄+紅魔館の(非)日常   作:新幹線刈り上げ

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*射命丸文のぷろふぃ~る*

Talent 風を操る程度の能力

Hobby 写真を撮る(許可無し)、物事の変遷を新聞にすることなど

Like 時代の変遷、妖怪の山、居酒屋で呑む酒、椛の尻尾など

Size し~くれっと

 皆が知っているとおり、『清く正しく堂々と、許可無く隠し撮り』をモットーとしてパパラッチ活動をしている鴉天狗の一人。昔は「姫海堂はたて」と仲慎ましく、新聞の売り上げで競っていたが今は二人とも落ち着いている模様。
 文はノエルたちと一緒に居酒屋で呑む仲だが、余り他の人とつるんでいる気配が無い。そのせいか、詳しく文のことを知っているものは限りなく少ない…。
 しかし、文はあのメンバーと居ることにより「面白いネタ」を拾えるということで結構なペースで居酒屋に居る。皆も、居酒屋で文さんと会えるといいですね! 
「面白いネタ」に定義は定かでは無いが一つ言えるのは笑えるようなネタは少ないということ。
 


第10日 天に轟くは魂の剣戟(Ⅰ)

 

 レミリアside 

 

 私は天狗の言うとおり檻から抜けて、まず考えてみた。そう…ここはどこか、ということだ。まぁ、まず能力を使ってみたら茶色のドアを開けると炎上している山に出る、というビジョンが見えてしまった。

 そしてここは小屋、炎上の理由は愛優かフランの仕業だというのが予測できた。

 

 「その能力便利ですよね~。体力持ちますか~?」

 

 天狗は、一点凝視していた私の顔の前に手を振り続けた。私は無視して、この小屋から出ることを目指した。

 

 

 

 

 とりあえず、天狗と私はビジョンどおりに茶色のドアを開けて小屋を出てみた。すると、予想どおりフランが奇怪な叫び声を叫びながら、レーヴァテインを投げまくっている姿がふもと付近でチラチラと見えていた。フランのことだから、運動不足で妖力をすぐに使い果たしてしまうだろう。

 

 天狗も山のふもとを見ながら「おお~」と感嘆の声を漏らしていた。

 

 「あなたはどうするの。私は目的どおり、後ろから敵の殲滅を隠密かつ大胆にはかるけど。」

 

 「う~ん、さっきも言ったとおり“敵でも味方でもない”ので何も“関与は”しませんので、お気になさらず。」

 

 「そう、ならいいわ。それじゃあ私は、もう行くわね。それであなたはどうするの?」

 

 「あれ~、私の話は聞かない癖に私のことを詮索するんですか~?」

 

 結構ムカつく喋り方だ。それに私はコイツのことを“知らない”からだ。だから、聞く。しかし、コイツは私のことをそれなりに知っているようだし…。

 そう考えると、私は余計にムカムカしてきた。

 

 「もういいわ。あなたへの微レ存でもあった興味も失せたわ。」

 

 「そーですか。んじゃ、私はここでっ。また会いましょう! 会えたらですけど。」

 

 その天狗は苦笑混じりにそういって、黒い羽を広げて天頂のほうへと羽ばたいていった。いや、羽ばたくという速さを越えていただろう。

 しかし、たかが天狗。吸血鬼である私は天狗の速さをも凌駕できるのだ。

 

 そして私は、それを少し見送りつつふもとへと足を運んだ。

 

 

 レミリアfadeout…

 

 

 

 

 

 

 

 

 ????side

 

 

 「レ~ミリアさん」

 

 「私は、“関与”しないとは言いましたけど・・・――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――・・・“監視”はしちゃいますからね。」

 

 私は椛の能力を借りて山の天頂から、紅魔の吸血鬼ことレミリアを監視を始めた。

 

 「それでレミリアさんなんて見てどうするんですか?・・・――――

 

 

 

 

 

 

 ・・・――――文さん?」

 

 「あややや…楽しみですね~?」

 

 「…話を聞いてください…」

 

 

 射命丸文fadeout…

 

 

 

 

 

 

 

 

 愛優side

 

 

 フラン・スカーレット。見た目に限らず、とんでもない力を秘めている。いや、吸血鬼ということもあるがもう一つある。

 それは、今日の満月のことだ。妖怪というのは本来妖力を使うものだが、月から発せられる『狂気』も妖力を増幅させてしまうのだ。フランは、ただでさえ精神が不安定になりやすい体質というのにも関わらずに満月の狂気をここまで浴び続けると危険にもなりかねないだろう。

 現にフランはもう殺戮兵器と見間違うほどに怒り狂っていた。敵も、充分に怯えていて天頂に逃げる天狗もちらほら居たがフランは残さず殺していった。

 危険、この言葉に尽きるのだが一番危険なのは実はフランの体の方だ。いくら吸血鬼の体が頑丈とはいえ、何度も我を忘れて狂うと体もその強さに慣れてしまい、気が元に戻らなくなってしまう。

 いざとなれば、簡単に止めれるとは思うがそういう問題では無いとも思う。

 

 俺は、少し気になることがありノエルの元へと飛んでいった。

 

 「おい…ノエル。フランのこと何だが…」

 

 「ん? 何かあったのか?」

 

 「フランは、何回ぐらいあの姿に?」

 

 「ん~、最低10回は越えていると思うが。それがどうかしたのか?」

 

 正直信じることができなかった。そしてこうも思った…フランの体は…いつか破綻すると…。

 

 俺はノエルの胸倉を掴んで、怒声を上げた。

 

 「てめぇ、そんなにも危険な状態になっているのに何でそんな平気な顔をしていられるんだ!? てめぇの主の妹じゃねぇのかよ!」

 

 ノエルは俯いたまま何も言わなかった。気になり顔を覗くと…

 

 「この…どこが平気なんだよ…っ」

 

 泣いていた…。ノエルはきっと理解はしていたのだろう。それは従者だから、レミリアのこともフランのことも、そして他の住人のことも全部理解しているからこんな顔になるんだろう。

 

 「おい、だったら・・・――――」

 

 ・・・――――止めてやれよ。と、言おうと思ったが声にならなかった。こんなことをしている間にも刻一刻と破綻へと近づいているというのに、止めろ。と声に出せない。

 それは、今まで我慢してきたノエルに対して無駄だったと言っているのと同じだから…

 

 妖怪は人間とは違い自分が理解している、つまり制御できる力を越えて暴れる度に体が治り難い傷が刻まれていくものだ。

 さっきも言ったがフランは体が吸血鬼だとしても幼いことには変わりはない。

 

 「分かった、だったら今回だけだ。今後一切フランがあぁならないように紫と話し合って、対策を練ってやる。」

 

 レミリアは紅霧異変の時はフランを監禁していたと言っていたがそれはフランの月の狂気によって影響される力に怯やかされていたいたのではなく、自分の実の妹が自我を忘れて“本当の殺戮兵器”になってしまうことに怯えていたのかしれない。

 

 しかし、結果として監禁をすることによりフランに計り知れないストレスを与えてしまい、発散できないストレスさえも狂気に変えてしまったのだろう。

 

 俺は、何も言わず頷くノエルと一緒にさきへと行っているフランを追いかけた。

 

 見たとおり、山は約3割も焼け野原になっていて天狗の死体が山のように転がっていた。

 

 こんな数の天狗が幻想郷に居たのかと思うほどで、少し戦力の差に驚いた。

 

 「あぁぁぁぁぁあっぁぁっ!!!!!!!」

 

 下を見て飛んでいた俺とノエルは不意に聞こえたそんな声に反応して天頂のほうへと目を配った。

 

 するとレーヴァテインを右手に握っているフランが背をこちらに向けたまま俺たちのほうへと飛んできた。

 俺はフランを受け止めて、状態を確認するとボロボロで胸には斜めに大きな切り傷ができていた。

 

 それを見るなりノエルは、その仕業をした犯人を捜し始めた。

 

 俺はノエルを呼びとめようとするがノエルはそれを無視して、山の天頂を目指していった。

 

 誰がこんなことを…。

 

 「待ってろフラン! 今すぐ、永遠亭に連れて行ってやる!」

 

 俺は自慢じゃないが魔法“だけ”は使えないから、治癒魔法で傷を癒すことはできない。妖怪はある程度、自己再生能力があるが、それは妖によって個人差がある。意識があるかわからないフランを背中に乗せて迷いの竹林のほうを向いた。

 すると、そこには長い日本刀を構えた天狗らしき者が居た。

 

 「誰だてめぇ…そこらの奴とは桁違いの力を感じるが…」

 

 天狗の刀には血がびっしりと付いていて、すぐさま俺は気づいた。こいつがフランを攻撃した、と。

 

 「俺は天魔(てんま)、そしてその子娘を殺ったのもこの俺だ。さて…あやつが言っておった子がお前か?」

 

 「何のことだ…?」

 

 あやつとは誰だ…? 相手に俺のこと知っている奴は・・・あぁ、唯月か。そういや、あの後唯月は行方不明のままだったが生きていたのか。あれ…でもアイツが倒れていたのは大広間。そしてそこにいくには厨房の窓から入っていくか、玄関から堂々と行くしかないはずだ。

 勿論、厨房にもそれ以外のところに妖精を見張っていたはずだから殺されたとしても後で被害が分かるだろう。しかし、見張りの妖精が大量に死んだということは知らされていなかった。

 つまり、あの時あの場所に行くには誰にも気づかずに行って助けるか、唯月が自ら隠れて出て行くしかない。もし、唯月が瞬間移動系の能力で逃げたとしたら…いや、それだと俺の戦闘で大いに奮っていたはずだ。

 

 「おや? 私が先に『君は誰だ?』、と聞いているのだから俺の質問を質問で返すのは可笑しいだろう」

 

 「俺は愛優だ。次は俺の質問だ。あやつというのは唯月のことか? アイツは生きているのか?」

 

 「複数の質問か、まぁいい。そうだな、唯月は“もう”ピンピンしているよ。しかし、前の質問は違うな。唯月のことではない。」

 

 “もう”?…それは、可笑しい。アイツの傷は相当重かったはずだ。まだ二日も経ってないというのに、こんな短期間で人間の体が完璧に治るはずがない。だが、もしも相手側に医療関係の発展した技術を持っているか、治癒魔法を得意とした魔法使いがいたとしたら…合点がいく。

 

 「それじゃあ、誰のことだ?」

 

 「おやおやぁ、一方的な質問ですね。そろそろ俺の順番でも良いでしょうに。」

 

 腹立つな、こいつ。俺のことをある程度知っている顔して、自分のことは晒さない。何か始めて会った時の文を思い出すな。そん時もこんな感じでイライラしてた気がする。

 あぁ、フランの傷も決して浅くないからな。さっさと戦うなりなんなりして永遠亭に行きたい。

 しかし、本当にコイツが天魔なのか? 何というか…威厳? 妖力の波が乱れつつも強いことに代わりが無いが王たる風格みたいなものを感じさせない。

 

 「そうだね…ならば、質問ではなく頼みを一つ。愛優は、その子娘を助けたい。俺はお前を殺しに来た。だから子娘を助けるために俺と戦いなさい。」

 

 「へぇ…“殺したい”ではなくて、“殺しに来た”と。まるで妖怪(オレ)を狩りに来たみたいじゃねェか。」

 

 「うむ、それは(あなが)ち間違っていないだろう。何故なら負ける気がしないからだ。そして、その理由もある」

 

 「ほぅ…自称幻想郷最強の俺に勝つと…?」

 

 「はははははっ!!! 最強!? それはそれは何という自画自賛。そうだね、理由は一つ。俺が、この山の…幻想郷最速かつ最強の天狗だからだ」

 

 「お前もじゃねェか。」

 

 「しかし、殺すとは言い過ぎたな。殺せないものに殺すというのは無理だからな。別の言葉で言うなれば…そうだな……息の根を止める、だな」

 

 何を言っているんだこいつは。息の根を止めることも殺すことも全く同じ意味じゃねェか…。

 

 「うん、違うんだよ。俺の友曰く、君の命は・・・――――

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・――――繰り返されているんだ。」

 

 

 「………何…だと…?」

 

 俺は…天魔の言葉を理解するのに時間がかかった……

 

 

 愛優fadeout…

 

 

 

 

 

 

 

 

 ノエルside

 

 僕は激昂していた。理由は一つ、何者かの攻撃によってフラン様が重症を負ったからだ。

 そのために、僕はフラン様が飛んできた方向である山の天頂を目指していた。しかし、中々見当たらず、道中死体ばかり。

 

 しかし僕がふと前を向いた瞬間、ナイフが僕の顔目掛けて飛んできているのが見えた。勿論それを難なく避けるがあのナイフには見覚えがあった。

 そう、僕が毎日見ている紅魔館にしかないナイフだった。その瞬間、ナイフの持ち主が唯月ということを理解した。

 

 「よぉ、エル。祭りの時ぶりだなぁ。」

 

 唯月は二カっと満面の笑みを浮かべて手を振っている。どういうことが分からないが一見、敵意を剥き出しにしているようには見えなかった。

 

 「そうだな。さっきのナイフはどういう意味か分からないけどな」

 

 「ただの挨拶代わりさ。まぁ、さっきのさっきまで体中傷だらけで動けないほどの傷だったからな。」

 

 「!?」

 

 いや、可笑しい、唯月は人間。外の世界の技術はそこまで発展してないはず。なのに、どうして…? 幻想郷の医療技術は…? そうだ、何でも治せる永琳が居たじゃないか…。でも唯月は何で…何でそんな悲しそうな顔をしているんだ…?

 

 「あぁ…そっか…まぁいつかは言うつもりだったんだよな…」

 

 何のことだ…そうか、紅魔館に戻ってくるってことか? 多分そうだ、そういうことだな。唯月は戻ってくるんだ…紅魔館に…また、あの日常が。

 でも何だこの胸の鼓動の速さは…やっぱり何やかんやで嬉しいからか…唯月が戻ってくるのは嬉しいことだ。咲夜だってとことん喜ぶ。だけど、それなら祭りの時にもこんな気分になっているはずだし、唯月も言っていたはずだ…じゃあ何のことを言うんだ…?

 

 「…唯月…かえってくるんだろ…? 僕たちの紅魔館に…な?」

 

 「いや、俺はもう・・・」

 

 聞きたくない。その先は。僕の何かが、壊れてしまう気がする。お願いだ、かえってくるって言ってくれ…

 

 

 

 

 「帰る気は無いよ。」

 

 「あ、あぁ…そうか、何か忙しいからか…何か大事な用事があるからだよな…? だから一時だけ、紅魔館から出ているんだよな…? それが終わったら…」

 

 「帰らない。俺はもう、帰れない。だって俺はもう・・・――――」

 

 

 だから嫌だったんだ…唯月の居ない世界なんて、僕にとってはもう・・・――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・――――吸血鬼なんだよ…」

 

 

 

 

 

 

 ・・・――――全てが非日常なんだ…

 

 

 次回へと続く…




 
 

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