完全で瀟洒な従者の兄+紅魔館の(非)日常   作:新幹線刈り上げ

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*フランドール・スカーレットのプロフィール*

Talent ありとあらゆるものを破壊する程度の能力

Hobby 何かを壊す事、美鈴と遊ぶ事、妖精を紅魔館に招く事など

Like ノエル、壊れるもの、強い者、なんやかんやで紅魔館に住む者達など

Size 特定不能(色んな意味で)

 ノエルの事がとても気に入っており、腕を組んでカップルのようにくっついている事もしばしば。ほかの者からはそれがとても微笑ましく見えている。しかし、レミリアはその光景に対して嫉妬をしており、フランもレミリアの心境に薄々気づいていたりする。後、魔理沙には感謝という意味でも好いている。天真爛漫な性格が氷妖精のチルノやその友達とも意気投合をしている。まぁ、色んな人に愛されているキャラ。

作者の一(人)言

 今回は結構長いです。約7400文字という異例の長さですので(しかし、代わりに後書き恒例のアレが無い)、時間のあるときに読むことをおススメします。後、和菓子ぃ様。コラボの件なのですが、もう少しお待ちいただけませんか?今、別に(番外編として)考えて模索中です。
 後、評価ありがとうございます!今回は一でしたが、付けて貰えるだけで部屋を暴れまわっています(嬉)。もっと良くして欲しいと、受け取って(独自解釈の応用)これからも、もっといい作品にしていきたいと思います!。


異変『幻想郷大戦篇』
第06日 完全で殊勝な従者/人として守るべき法        


 ノエルは昼飯の片付けと一通り終わり、一段落が付いたので今はレミリアが待つ執務室へと移動していた。その最中、どういう話を切り出されるのかを予想していた。例えば、家出の事とか、もしくは唯月の事であろうか…。そんな事を考えているうちにドアの前まで到着していたので取りあえず二回ノックをする。

 

「レミリア様、ノエルです。」

 

「・・・入っていいわよ。」

 

 失礼します。と呟いてからドアを開けて、中へと入る。そこには社長席に座ってドアの方、つまりノエルを見つめるレミリアが居た。何の話かと期待と緊張が混ざった気持ちで待っているとレミリアが静かに話しを切り出した。

 

「唯月が幻想郷に帰ってきたって事、知っているわよね?」

 

 ノエルが予想していた通り的中していた。しかし、ノエルはすぐには答えられない。何故ならもし、ここでYesと答えた場合次の質問は「どこで?」というのが妥当だろう。勿論、ノエルはミスティアから教えて貰ったため言えない。一ミリの危険さえも避けたいため、やはりここはNoと言うべきだ。

 

「いいえ…。もし、それが本当ならばとても嬉しい事です。」

 

「嘘よ。貴方が喜ぶ訳が無いわ。」

 

「ッ!?」

 

 驚いた。ノエルの今の心境を一言で言うならそれに尽きる。事実、そんな風の表情が表に出ている。レミリアはそんな動揺を無視して話しを続ける。

 

「確かに、貴方達は三位一体っていう感じだったわ…三人で酒を呑んでいるのを見ていると羨ましいと思うぐらいに…」

 

「・・・」

 

「けど、貴方と唯月は好敵手でもあった。互いを蹴落とすどころか蹴り上げあうように。」

 

 レミリアがどこか遠くを見る様に言う。しかし、ノエルは頭を下げる。

 

「…すみません、レミリア様。僕は言うとおり嘘をついていました。酒友であり、好敵手という事には変わりはありませんし嫌いでもありません。」

 

 ノエルが正直に暴くとレミリアがくすくすと笑い始めた。不思議に思うノエルは不意に首を傾げる。

 

「いや、ごめんなさい。思い出し笑いしてたのよ、懐かしくてね。唯月が何も言わずに紅魔館から出て行ってしまった時は本当に悲しかったの。」

 

 ノエルは今の言葉で理解できた。そして、自分が馬鹿だと思った。どこが完全なのかと。ノエルが一晩帰ってこなかっただけで、レミリアが泣き崩れた理由が・・・。

 

 たまに自分が情けなく思う。こういうところで気を使ってどうにかできなかったのか、と。唯月なら容易くできただろう。何故ならアイツは僕より完全で瀟洒な従者・・・いや・・・

 

 

 

 

 

 

 

完全で殊勝な従者なのだから・・・。

 

 

「どうしたのよ。ノエル…そんな思いつめた顔をして…。」

 

 レミリアの言うとおりノエルはしかめっ面で虚空を見つめていた。ノエルはレミリアの声で我に返り「いえ…何も…」と返した。

 

「そう…。また、三人で馬鹿やっていた時に戻りたいわね。」

 

「はい。また、次は四人で…いや、皆で呑みましょう。」

 

「えぇ、そうね…。あぁ後、話変わるけど今日の夜に人里で夏祭りがあるのよ。浴衣って残っているわよね。」

 

「その事は咲夜が知っていると思いますのでまた聞いておきます。」

 

「そう、なら用事はもう無いから下がっていいわよ。」

 

 レミリアはそう言って椅子を回してノエルに背中を向ける。ノエルも失礼しました、と言って一礼して部屋から出て行く。

 

「唯月…私の“唯一の月”…」

 

 その声は一人言のつもりがノエルにも聴こえていた・・・

 

******

 

 今は夜の夏祭りに紅魔組のレミリア、フラン、咲夜、ノエル、パチュリー、美鈴、このメンバーで参加している。皆個性的な浴衣を着ているが、咲夜と僕は同じものだ。人里の人口は、幻想郷の面積にそぐわない数にまで増えてきているのが祭りの賑やかさが物語っている。やはり、数年前にできたスペルカードルールのお蔭だろうか。というか、レミリア様が異変を起こさなかったらあんなルールはできなかっただろう。

 さすがに祭りには色々な催しがあり、射的にヨーヨー釣り、型割りや、くじ引きなどもある。勿論、食べ物の催しもあってそこを通り過ぎるたびに匂いがして、ついつい寄りたくなってしまう。匂いだけのメシテロというのも意外と恐ろしいものだ。しかし、僕と咲夜には使命がある。それは・・・

 

 

「エル。あそこに輪投げがあるわよ!やってみましょう!」

 

 レミリアが目を輝かせて、いかにもTHE・輪投げというような雰囲気の催しの場所に指をさしてこっちを見てくる。そして、美鈴も便乗して「私もやりたい」と、手を上げる。

 

「それじゃあ!美鈴も私と一緒に行きましょう!ほら、エルも!」

 

 美鈴がレミリアの左手に繋ぎ、残った手でレミリアがノエルの腕を引いて誘導する。ぐいぐいと引っ張られた先には、遠くから見えた通り輪投げ屋のおじさんが椅子に座って輪投げをする客を凝視していた。

 

「あっちゃ~、もう少しだったのに~。親父さんもう一回!」

 

 そこには、白髪に黒色が少し混ざっており、服装は真っ黒だが縫い目に沿って白色が見えている。至って簡素な浴衣だ。その男は『もう一回』というところ、何回目かの挑戦だったのだろう。

 

「旦那、もうそこら辺にしときな!彼女さんも居るんだろう?こっちが儲かるにしても、これ以上は見ていられねぇぜ」

 

 優しい屋主なのだろうか、客に情けをかけている。しかし、その男は頭をガシガシ掻きながら「でもな~」と悩んでいる。

 いつの間にかノエル達もすぐ後ろでその男の奮闘に魅入られていた。そして、我に返ったノエルはあることに気づきその男の肩に手をかける。

 

「ん?やっと来たか霊m・・・」

 

「やっぱり…お前か…」

 

「な、何でこんなところに居るの…お前も…」

 

 お互い顔を見合わせたと同時にこめかみをピクピクさせている。レミリアも男に気づき「あ~っ!」と声を上げる。

 

「こっちのセリフだよ愛優。霊夢さんはどうしたんだ?」

 

「霊夢か。あいつは神社の階段で座っているよ。」

 

 愛優はノエルに見向きもせずに輪投げをまたはじめていた。

 

「じゃあ、戻れよ。何でアンタは戻らないんだ?」

 

「・・・俺は戻らんよ、一人ではな。アイツがここまで来れたら合格だ。来なかったらそれまでってことよ。」

 

 理解できない。ノエルは愛優の言葉を一ミリも理解できなかった。それはそうだろう。彼女が待っているというのにも関わらず暢気に輪投げを繰り返しているのだから。

 

「合格?それまで?何を言っているんだ?お前…」

 

「やっぱり、お前も子どもだな。アイツはここにいる人間になんて言われていると思う?」

 

「それは・・・っ」

 

 ノエルは答えることができなかった。それは知っているからだ。博麗の巫女は代々人里の人間を守るため、この幻想郷の均衡を守るため、そして『博麗の巫女』を守るために強くなることを強いられていることに。始めは沢山の人間が助けられ、人々は博麗の巫女に感謝をしていた。

 しかし、いつの間にかその余りの強さを人間は逆に恐怖を覚え始めた。しかも、先代の巫女が数百を越える人間を殺した妖怪を助けた、などという迷信まで流れて一気に信頼が失落してしまった。

 正に今の霊夢もそうだろう。現博麗の巫女の霊夢も人間から恐れを抱かれている。愛優もそれを承知しているはずだ。

 

「アイツはお前が言うとおり、俺には勿体無いぐらいの女だよ。美人だし強い、そして倫理に背いていない。」

 

「りんり?」

 

 ノエルにとって聞いたことの無い言葉が出てきてつい疑問で返してしまった。しかし、愛優は悩んだように「う~ん」と考えてくれている。

 

「そうだな、一言で言うと『人として守らなければないない法』だな。」

 

「“人として”?」

 

「そうだ、アイツは妖怪退治を頼まれればスロースターターだが最後にはちゃんとこなすんだ。だけど、退治するのは少なくとも罪がある妖怪だけだ。いたずらしたり、邪魔するだけのチンケな妖怪には一切手を出さない。罪の無いと感じた妖怪にあげるのはお茶と茶菓子だけだ。ほれっ!」

 

 愛優は、そう話しながら輪を投げる。すると一つの商品のところに輪がかかる。

 

「よっしゃぁぁあ!!親父さん。本当にいいのか!これ!」

 

 相当大きな声で喜ぶのだからそれ相応の物だろうと輪がかかったところを覗いて見るとそこには、紙切れがあった。輪が邪魔で内容までは見えなかったが屋主が椅子から立ち上がり、『ア○ゾン』と書かれたダンボールを探り始めた。するとそこから出てきたのは、いかにも豪華で華やかな浴衣だった。屋主は「もってけどろぼー…」と何か諦めたかのようにその浴衣を愛優に渡す。

愛優は『満足』を顔で表したかのような幸せそうな顔をしていた。

 

「おかしな話だろう?妖怪退治を生業としている巫女が妖怪を許すなんてよ。俺はそんな綺麗な心に惚れちゃったんだ。それじゃ!お前らも頑張れよ!」

 

 愛優はそう言って、上機嫌なまま人ごみへと消えていった。ノエルは「結局霊夢さんに何がしたかったんだアイツ…」と愛優が消えていった方に向かって呟いた。するとレミリアも欲しい!と駄々をこねだす。それは仕方がないはずだ。あんなに綺麗な浴衣を見ればどんな女性でも色欲が沸いてしまう。

 

「屋主さん、さっきの人が持っていった浴衣ってまだありますか?」

 

 すると、屋主は愛優が投げた輪と掛かった紙切れを取って次の客用に片付ける。

 

「すまねぇな、あれは特注品でよ。愛優の旦那が、祭りの前から頼んでいた奴なんだよ」

 

 また分からない事を言われ、次はレミリアも深く顔をしかめる。

 

「どういうことですか?あの人用の商品ってことですか?」

 

「まぁ、詳しい事は旦那にも止められているから言う事はできねぇが、一つ言えるのは彼女さんの為だってよ」

 

 愛優はさっきまで、霊夢を試すような事を言っていたがそれと関係するのだろうか。ますます分からなくなってきた。つくづく分からない男。ノエルはそう思った。

 

「それじゃあ。レミリア様、諦めて他のを狙いましょう。屋主さん輪投げの輪を」

 

「え~。他っていっても…」

 

 屋主が「はいよ」と二枚の輪をレミリアに渡す。しかし、レミリアは未だ狙いが決まらない。まぁ、よくある事だ。催しのとこに行くと決まってどれを選ぶか悩むという。

 

「じゃあ~アレにする~それっ!」

 

 レミリアが狙ったのは可愛らしいクリっとした目の熊に赤い蝶ネクタイを締めているよく見るぬいぐるみだった。しかし、投げた輪は狙った熊の真横だった。

 

「惜しいです。次は、もう少し右に…」

 

「わかっているわよ…」

 

 レミリアは獲物を捕らえる獣のように集中し、狙いを定める。

 ノエルにはこういう必要があった。それは、レミリアは人の前で失敗すると決まって拗ねるのだ。それをどんなこともしてでも阻止する必要が我々十六夜兄妹にはある。

 

「……ほいっ!!」

 

 レミリアが投げて、熊のぬいぐるみに輪が掛からないことがわかった瞬間、ノエルは非道にも時間を止めてその輪の軌道をずらして綺麗に熊に掛かるようにした。すると、輪は当たり前のように熊のぬいぐるみに引っかかる。

 

「やったぁ!!やったわよエル!」

 

 余程、嬉しかったのかレミリアはその場で飛び跳ねて喜ぶ。しかし、レミリアは悲嘆な悲鳴を上げて転ぶ。ノエルは急いで、裾捲くり足の状態を見る。すると、足首が真っ青になっており、捻ったことが容易に分かった。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「いててててて…大丈夫よこれくらい…それより、景品は!?」

 

 ノエルは心配をして言ったのだが、レミリアには怪我よりも景品のほうが大事だったらしく、ノエルは少し心配したことが恥ずかしく感じた。

 

「立てますか?」

 

 ノエルはレミリアに手を差し伸べると、レミリアはすぐさまをそれを取るが立とうとしない。というより立てなかった。それを察した、ノエルはレミリアに背を向けてしゃがむ。つまり、背中に乗れという合図。

 

「いいの?」

 

 レミリアは景品の熊のぬいぐるみを抱きかかえながらノエルに躊躇して聞く。

 

「良いのです。例え、傷がすぐ治るとはいえ傷は傷です。治るまでは大人しくしていてください。」

 

「せっかく、浴衣を着れたのに…」

 

 そう言って大人しくレミリアはノエルの背中に乗る。そして、二人はいつの間にかどこかへ行った美鈴と咲夜とパチュリーとフランを探しに出かけた。

 

*後に、この夏祭りで二人の男が××××を殴り飛ばすという大事件が起きたという事を二人は知りもしなかった*

 

******

 

おまけ(短いとは言ってない)

 

愛優&霊夢

 

******

 

 博麗霊夢は悩んでいた。神社の階段の頂上に一人で座って、次々上がっていく花火を眺めて悩んでいた。それは、十五分程前のこと

 

***

 

「霊夢、今日は人里でお祭りがあるんだ。」

 

 霊夢と愛優は付き合っており、博麗神社の下で暮らしている。そして、二人は小さなちゃぶ台で茶を呑んでいた。

 

「へぇ~それがどうしたのよ」

 

 しかし、霊夢にとったら余り良い思い出が無い。そのために、余り興味を持つことできずに適当に返す。

 

「この話しをするってことは一緒に行こうってことだよ。」

 

「やだ。」

 

 やはりそっけなく返す霊夢。愛優もこれには困ったようで少し頭を抱える。

 

「やっぱり、浴衣が無いもんなぁ~」

 

「そうじゃないわよ。ただ、嫌なのよ。行きたくない訳じゃないけど…」

 

「…ま~だ、引きずってんのか霊夢。お前、俺に告白したときなんていったよ」

 

 すると、霊夢は口に運んでいく湯のみをドンとちゃぶ台に置いて顔を真っ赤に染めながら言う。

 

「ちょっ、それは恥ずかしいから言わないでよ!」

 

「関係ない。霊夢は俺に『私は妖怪の愛優でも人妖の愛優でもない、人間の愛優が好きだ』って言ってくれた。だから俺も『博麗の巫女』の博麗霊夢じゃなくて『一人の女』として俺は博麗霊夢が大好きだよ」

 

 霊夢の顔は先程よりも沸騰するかの如く真っ赤に染まっていく。さすがの愛優も恥ずかしかったのか、照れて顔を背ける。

 

「まぁ、なんていうか。気にするな。俺は周りの奴らにどれだけ吹聴を言われても気にしない。けど、好きな女が馬鹿にされたときはブチ切れるからよ。」

 

 愛優は頭をガシガシと掻きながら言う。

 

「別にいいわよ。一人で行ってきなさいよ。私はそこで待っているから」

 

 愛優はう~んと悩んでから、何か決心が付いたのか霊夢と同じようにドンと机を叩いて立ち上がり、霊夢を見下ろして言う。

 

「分かった、そこまでお前が周りの目を気にするとはな。いいか?俺が、輪投げ屋で待っておく。俺が景品を取ってくるまでに、来なかったら許すマジだからな」

 

 愛優は霊夢が理解できないまま祭りへと出かけていってしまった。霊夢は愚痴りながら階段で座る。

 

***

 

「この祭り毎回輪投げ屋って奥にあるからどうしよう…」

 

 そう、毎回この8月9日に開催される祭りの輪投げ屋は奥で催されている。愛優はわざとその輪投げ屋を選んだのだろう。霊夢は、すぐにそれが分かった。けど、行きたくない。歩けば歩くほど、視線が集まる。それは、決していい気分ではない。陰口だって聴こえるし、同情だってされることもある。それが差別だって気づけば気づくほど悩めば悩むほど馬鹿見たく思ってしまう。情けなく思う。愛優がそこまで私にする理由は「好き」という理由で収まるとは到底思えない。

 

「行こう」

 

 そう、呟いてみたら行く気が起きるかと思ったがそんなに甘くは無かった。愛優にまだ弟子として試練を与えられているのか、そう思うと何故か少し納得が行く。

 

「・・・私も馬鹿ね…」

 

 すると、霊夢は階段から消えていた。

 

***

 

 愛優は上機嫌で博麗神社へと帰っていた。最高にハイって奴だった。それは、夏祭り前までに遡る。

 

また回想?ごめんなさい

 

***

 

 人里では、夏にも関わらず師走のように騒いでいた。そう祭りの準備でとても皆が急かされていたのだ。そして、愛優はその光景を見て関心をしていた。今日は八月()九月()ということで恋人である、霊夢にプレゼントを考えていた。それは『浴衣』である。この古風な幻想郷で人里を歩く浴衣姿の霊夢。想像するだけで涙が出てきそうになるぐらい感動する。そして、愛優はある人に頼み事をしていた。それは、

 

「親父さん。アレは出せそうか?今日。」

 

 

 愛優が言うその親父さんというのはとても明るく活気のある叔父さんみたいな人で毎年端っこで輪投げ屋をしている人だ。その屋主は右手でグッドを作って自身気に言う。

 

「あぁ!某ア○ゾンで安く売っていたからな!でも早くこねぇと取られるかもしれないぜ?」

 

「そりゃ、大丈夫だ。輪に掛けるのは浴衣の代わりとしてこれにしてくれ。」

 

 愛優に渡されたのは一枚の紙切れだった。そこには「浴衣 (ただし新品とは言っていない)」という詐欺臭のする紙切れだった。

 

「おいおい、こんなもん置いてたらしょっぴかれちまうだろうよ。ほかにゃあねぇのかよ?」

 

 屋主はその紙切れをヒラヒラと振りながら言う。

 

「そうだろうと思って、すまねぇがこれは特別として売ってくれないか?。例えば、これを狙って取った場合、12000円とるとか?」

 

 愛優はケラケラと笑いながら、話すが屋主は冗談じゃないという。

 

「まぁ、確かに。それなりに金出すから適当に考えといてくれや。」

 

「仕方ねぇなぁ。仮は返すもんだからな」

 

 屋主も納得したようで、準備に戻り、取り掛かり始める。

 

「あぁ、そういや。この浴衣はどう見ても女用なんだがやっぱ彼女かい?」

 

「ちげぇよ、ただの恋人だよ」

 

「けっ、対してかわらねぇじゃねぇか」

 

 屋主はそういって、大きく笑う。

 

***

 

 愛優は、階段の下まで着いたのだがいくら見上げて探しても階段には霊夢の姿が見当たらなかった。神社へ上っても、見つからなく、すれ違ったのかと思った愛優はいそいで輪投げ屋へと戻る。

 

数秒で、輪投げ屋まで着き近くを見ると木の陰で蹲っている巫女服の人を見つけ、そこに駆け寄る。

 

「霊夢か…。来てたんじゃねぇか…。」

 

 愛優は笑いながら、霊夢の頭を撫でるがそんな空気ではないことが分かった。

 

「立ちな…霊夢。」

 

 すると、無言で頷いてゆっくりと立ち上がる。しかしずっと俯いたままで顔を見せようとはしない。

 

「何かあったのか…?」

 

「…私ね、×××とか言う人とその仲間と会ったの」

 

 愛優には、色々とそいつについて知っていることがあった。

 

「それがどうした…っ!?」

 

「そのときに言われたの。」

 

 愛優は聴こえていた。今までで一番自分の心臓の音が聴こえていた。どれだけ、黙れ、と、静かにしろ、と、いっても止まない。ドンドンと心臓の音が速く、そして大きくなっていくのが分かる。

 

「私に・・・――――って」

 

 愛優は最高に殺意の篭った声で「時間を操る程度の能力…」と呟いた瞬間、愛優はその場から消えていた・・・

 

 次回へ続く・・・




 次回予告!!

次回、新章開幕!!
 
「てめぇ、その言葉の意味を知ってて…その傷の痛みを知ってて言ったのか…?」


「我々は、大昔からこの東ノ国の山に住み着いていた大妖怪だ。」


「よう…久しぶりだな…エル…」


「「なぁ唯月(エル)。お前も僕(俺)の事…嫌いなんだろう…?」」


「「いつか…」」







「「ぶっ殺してやるよ…!!」」

 ミスティアが「恐怖」を覚えたという唯月…。しかも、紅魔館の元『完全で殊勝な従者』。
 唯月はノエル達の見方か・・・それとも敵か・・・!?

作者のフォロー

 愛優はただ、霊夢の『周りの目』への克服と、その褒美として霊夢に綺麗な浴衣を着せてまま祭りで一緒に歩きたかっただけなんです。(要するに不器用です)

蛇足

殊勝(しゅしょう)・・・とりわけすぐれているさま。神々しい、けなげ、など。

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