ハクになるはずだった男の日記(打ち切り)   作:秋羅

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今回、皇弟伝説に新たな1ページが。


31話

〓月□日

 

 季節は移れど変わらず燦々と照りつける赤き太陽の下、俺率いるヤマト軍とグンドゥルア率いるウズールッシャ軍は、無辺なる荒野にて向かい合った。

 ヤマトの先陣を務めるのはゼグニ率いる反グンドゥルア派のウズールッシャ人と虚人兵(アシル・アベル)30体。

 対してウズールッシャ側は士気も練度も低い烏合の衆。

 ウズールッシャ征伐における決戦は、戦う前から決しかけていた。

 

 

 

 砦での会議の後、ゼグニの裏切りはノスリの手によってウズールッシャ方に知らされた。

 これに予想通り激怒したグンドゥルアは、直ぐ様全軍にゼグニとそれに与する者を殲滅せよと号令を出した。

 しかし、ゼグニの造反を知った反グンドゥルア派の者達――グンドゥルアの支配をよしとしなかった者達やグンドゥルアの政策に内心反発していた者達がこれを機に一斉蜂起。ある者は物資を略奪し自身の拠点に籠り、またある者はゼグニを通してヤマトに臣従を申し入れてきた。

 これにグンドゥルアは怒り狂い、その報を聞いた際に天幕内にいた全ての者を斬り殺すだけでは飽き足らず、天幕の外にいた数十人を惨殺するという暴挙に出た。そこでようやく癇癪は納まったようだが、それにより人心は更に離れ離反者が相次いだ。

 それでもグンドゥルアを信奉する者達やグンドゥルアを恐れて従う者達は多くいたようだが、グンドゥルア直属の部下を除く有力武将達の大半が造反した為、グンドゥルアの軍は決戦前にガタガタになってしまったのだ。

 

 対してヤマト側は、別れていたオシュトルとミカヅチが合流し、それにグンドゥルアから造反した有力武将達が加わった事で、打倒グンドゥルアに向けて兵達の士気が大いに高まった。

 とはいえ、決戦の準備で忙しい中、反グンドゥルア派の武将達が次々と恭順の意を示してくるので個々の人となりを把握する事が出来ず、どこまで信用できるかが分からなかったのだが、そんな俺の悩みを解決してくれたのがゼグニだった。

 ゼグニは恭順したウズールッシャ人達をまとめ上げると、自分達ウズールッシャ人が先陣を務めると申し出てくれたのだ。

 これは本当に渡りに船だった。先陣というのは、一番槍を預かる名誉ある部隊であると同時に新参者の忠誠を試す場でもある。しかし、最も危険で被害が出る役割である為、俺から任命した場合、恭順したばかりのウズールッシャ人達に使い捨てにされるのではないかという疑念を抱かれてしまう恐れがあった。だが、ゼグニが恭順したウズールッシャ人をまとめ上げ、その危険な任を自ら申し出てくれた事でそういった疑念を抱かせずに先陣を彼らの力と忠誠心を示す場にすることができたのである。

 

 

 

 こうしてグンドゥルアの自爆により今回の戦で唯一の懸念事項であった戦力差が大分縮まった。しかも、敵軍の大半はグンドゥルアへの恐怖で従っているだけの雑兵の群れだ。最早余程の奇策でも使わない限りウズールッシャ側の勝利はありえないだろう。

 

 だが、それでもグンドゥルアは決して降伏しない。

 それは、自身の圧倒的な武力への絶対的な自信ゆえか、それともあまりに激しい怒りにより冷静な判断が出来なくなっているのか・・・恐らく前者だろうな。

 きっと奴は自分が負けるとは思ってもいないのだろう。

 己こそが最強であり最も優れた存在であると。この地を統べるべく産まれた選ばれた存在であると本気で思っているのだろう。

 

 故二我ハ、ソノ傲リ高ブッタ愚カナ存在ニ絶望ヲ与エナクテハナラナイ・・・。

 

 っと危ない危ない。決戦前で精神が高ぶっているからか危ない思考に走っちまったぜ。

 戦闘中は常に冷静さを保たないと足を掬われかねんからな。深呼吸深呼吸。

 

 

 

 

 そんな事を考えていると敵陣から雄叫びが上がった。

 それに目線をウズールッシャ方に向けてみると人の群れが押し寄せてくるのが見えた。

 どうやら敵は名乗りも上げずに攻撃を始めたようだ。 

 

 俺としては、戦前にかっこよく名乗りを上げようといろいろ考えていたので台無しされた気分になったが、始まってしまったものはしょうがないと気分を入れ替え、手にした軍配を掲げた。

 そして、先陣のウズールッシャ人と虚人兵(アシル・アベル)に攻撃命令を下したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦闘が始まって既に1時間以上経っているが、予想に反して敵軍はなかなか崩れない。

 打倒グンドゥルアに燃えるウズールッシャ人と虚人兵(アシル・アベル)を相手にしているにも関わらず、敵軍はまったく怯む様子を見せずに愚直に攻めてくる。

 その自らの身を顧みない彼らの姿は、士気が皆無であった戦闘前の姿とはあまりに違う。それはヤケクソになったとか、恐怖に駆られてとかそんな生易しいものでは決してない。腕がもげようが半身が潰れようが前に進み続けるその姿はいっそ狂気すら感じるものであり、圧倒的な力を持つ虚人兵(アシル・アベル)でさえ、餌に群がる蟻のように纏わりつかれて思うように戦えないでいた。

 

 俺はそんな彼らの姿に強い恐怖を感じたが、仮面の力でそれを押し込め、エントゥアに彼らの様子に心当たりは無いかと聞いてみると、マオウで作った興奮剤を使っているのでしょうと言われた。

 

 このマオウというのは、ウズールッシャに自生する鱗片状の葉を持つ植物で、古くから痛み止めとして使われてきたそうだが、特殊な方法で調合する事で強力な興奮剤となる為、かつては戦闘でよく使われるそうだ。だが、依存性が強く、使い続けると錯乱したり、発作的に暴れるようになったりする為、今では暗黙の了解で使用を禁止している物らしい。

 

 そんな物を使ってきたという事はそれだけグンドゥルアが追いつめられている証拠だが、これでは味方はもちろん相手の被害も大きくなってしまう。

 グンドゥルアシンパの連中がいくら死のうと関係ないが、今戦っている連中は徴兵された者達だ。そういった者達は必要以上に殺したくない。

 幸い、マオウの効果は数時間で切れるそうなので、それまで少しでも被害を抑えられるように先陣の者達には防御に徹してもらう事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 それから1時間後、マオウの効果が切れた敵軍の勢いは目に見えて衰えた。

 それを機に疲弊した先陣を下がらせ、温存してあった兵力を以って敵本陣へ向けて攻撃を命じた。

 そして、オシュトルとミカヅチ率いる部隊は、まるで熱したナイフでバターを切るが如き勢いで敵軍を切り裂くとその勢いのまま敵本陣に突撃。しかし、そこにいたのは殿を務める少数の兵のみでグンドゥアの姿は影も形も無かった。

 ウズールッシャの覇王は自らは戦わずして逃げ帰ったのだ。

 

 

 

 

 

 それからほどなくして殿軍は殲滅され、マオウの副作用で虚脱状態に陥ったウズールッシャ人達も捕縛された。

 だが、あまりに捕虜の数が多かった為、その日は軍をそれ以上動かす事が出来ず、グンドゥルアを追撃する事が出来なかった。

 幸いなのが、グンドゥルアの行方がはっきりしている事だが、ここで決めたかっただけに非常に悔やまれる結果となった。

 とはいえ、最早グンドゥルアに後は無い。次こそ奴を倒してこの征伐戦争に終止符を打ちたいところだ。

 

 

 

 

〓月¥日

 

 

 「私自ら一騎打ちを申し込み、奴を打ち取る。」

 

 俺のこの発言にヤマトの諸将から反対意見が相次いだ。

 当然だ。グンドゥルア率いるウズールッシャ軍は最早崩壊し、残るはグンドゥルアとその直属の配下のみ。あとは奴らが籠るフレペケレチュプを攻め落とすだけでいい。ここで俺自ら危険を冒す理由は無い。

 だが、奴だけは・・・奴だけはこの手で葬り去らなければ気がすまない。

 

 俺は、ウズールッシャに入ってから常に黒い感情が腹の底に溜まり続けているのを感じていた。

 それは、ウズールッシャの民の凄惨な姿を――グンドゥルアの手によって苦しんでいる弱き者達を見るたびに俺の心に重く圧し掛かった。そして、この感情は先の戦いでマオウが使われた事で爆発し、俺の中で激しく渦巻いている。

 

 これは、怒りだ。

 

 己が欲望の為に自分以外の全てのモノを使い捨ての道具の様に扱うグンドゥルアに対する激しい怒り。

 そして、そのグンドゥルアの姿が嘗て欲望の果てに地球を滅ぼした人間達の姿と重なり、怒りは憎しみへと変化していた。

 

 兄貴もこんな気持ちだったのだろうか。純粋無垢であった亞人(デコイ)達が人間の様に奪い争うような存在になってしまった事を知った時。今の俺の様に、ともすれば目に付くモノ全てを破壊してしまいそうな激情に駆られたのだろうか。

 今なら分かる。兄貴が抱いたであろう怒り。そして、亞人(デコイ)達を屈服させ、ヤマトという一大国家を創り上げるに至ったその思い。

 無垢で善良なる者達に平穏を。そして、愚カデ奢リ高ブッタ者ニ終焉ヲ!!

 

 ベキリッ

 

 気付けば、俺は軍配を握り潰していた。

 その軍配は黒檀で作られた硬く強靭な一品で本来ならば握り潰せるようなものではない。だが、仮面が俺の強い感情に反応しているのか、俺の身体には嘗てないほどの力が溢れている。

 

 そして、そんな俺から溢れ出した覇気は、歴戦の勇士であるヴライやゼグニすらたじろぐほどで、会議に集まった者達は、俺の放つ雰囲気に呑まれてしまっていた。

 

 「直ぐ様一騎打ちを申し込む旨を伝える使者を送れ。これで全てを終わらせる。異論は認めん。」

 

 こうして、ウズールッシャにおける戦いは最終局面を迎えたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから半刻後、俺とグンドゥルアは布陣したヤマト軍とフレペケレチュプの間にて向かい合った。

 

 「クカカカカカッ! このワシに一騎打ちを挑む者がどれ程の者かと思ったら、その様な玩具を使わねばまともに戦えぬとはな! 所詮ヤマトなど老いて醜く肥え太った(ブルタンタ)も同じ! そのような國を治めるくたばりぞこないのジジイも! そして、そのジジイの弟だという貴様も! 新たに世界を統べる選ばれし存在であるこのワシに勝てるはずなどない! 我が覇道の第一歩として、まずは貴様の首級をあげるとしよう!」

 

 ・・・随分と饒舌ダナ。ソれ程私が恐ろシイのカ? ソれトも力の差モ理解でキヌ程愚かなノカ? 最早言葉ナド不要。大人シク地獄(デネボクシリ)二落チルガイイ!!

 

 そう言って虚人兵(アシル・アベル)に乗った俺は刀を抜き放った。

 虚人兵(アシル・アベル)に乗っての実戦はこれが初めてであったが、不思議と恐れも不安も無かった。ただ目の前の愚者(グンドゥルア)を殺す事だけを考えていた。

 

 「クカっ! どちらが愚かか直ぐに思い知らせてやろう! 常世(コトゥアハムル)で後から老いぼれが来るのを待っているがいい! クカ―――――ッ!!!!」

 

 そうグンドゥルアが叫ぶや否や、奴の全身から大量の火の粉が舞いあがり、周囲の温度が上昇した。

 「属性活性」――通常、戦闘と共に気力を高める事で身の内に宿る神の力を活性化させ、身体能力を大幅に上昇させるこの状態にグンドゥルアは一瞬で至った。

 これこそが、グンドゥルアがウズールッシャの覇王と成れた最大の理由。産まれ持った天賦の才。火神(ヒムカミ)に愛されているかの如きその圧倒的な力。

 これにより強化されたグンドゥルアは、仮面(アクルカ)を装備したヴライに迫る程で、虚人兵(アシル・アベル)でさえ両断しかねない程だった―――――――――――――――――それが一般機であったならの話だが。

 

 ガキンッ!

 

 「なにっ!?」

 

 活性状態で俺が乗る専用機(アシル・アベル)に斬りかかったグンドゥルアの顔に驚愕の色が浮かぶ。

 それは必殺である自身最大の一撃が事も無げに防がれてしまった事だけではない。活性状態で自身を強化していた火神(ヒムカミ)の力が今の一撃で失われてしまったからであった。

 

 これが俺の専用機(アシル・アベル)に施された「耐呪術コーティング」の本当の力。

 このコーティング、「耐呪術」と銘打ってはいるが本来の効果は「神の力を減衰させる」事である。

 これにより、呪術を構成する火神(ヒムカミ)風神(フブカミ)といった神々の力を減衰させる事で呪術を無効化するのだ。

 そして、そんなコーティングを施している俺の専用機(アシル・アベル)に活性状態で触ったりなんかしたら、自身を強化している神の力が急激に失われてしまうのである。つまりどういう事かというと、活性状態を解除され無防備になったグンドゥルアに攻撃できるというわけだ。

 

 ゴキッ!!

 

 「グヌゥッ!?」

 

 専用機(アシル・アベル)の左腕が奴の腹に突き刺さり、まるでゴム毬のように飛んでいく。しかし、思ったより手応えがなかった。恐らく咄嗟に下がる事で衝撃を少なくしたのだろう。

 事実グンドゥルアは直ぐに体勢を立て直すと再び活性状態に入り、今度は翻弄するように駆け回り、ヒットアンドアウェイで攻撃してきた。

 当然攻撃の度に活性状態は解除されるが、その都度属性活性を発動させて攻撃してくる。

 その猛攻は凄まじく、奴の発する火の粉と相まって、俺の周りはさながら炎の渦に包まれているかのようになっていた。

 だが、その猛攻を俺の目はしっかりと捉えていた。普段の俺ならばそんな事は不可能なのだが、この時ばかりは違った。俺の強い感情に反応した仮面の力により俺の五感は強化され、奴の動き、剣筋、息遣いにいたるまでの全てを把握する事ができた。

 そして、奴が右斜め前から攻撃を仕掛けてきた時、その動きに合わせて刀を振るった。

 刀は寸分の狂いもなく奴の右腕を捉え、切断。更に足を突出し、蹴りあげた。

 

 グシャッ!!

 

 グンドゥルアはそれを残った左腕で咄嗟に防ごうとするが、専用機(アシル・アベル)の一撃がそんなもので防げるはずもなく、血を吐きながら吹き飛ばされ、ウズールッシャの赤き大地に身を沈めた。

 そのグンドゥルアの姿は酷いもので、切断された右腕からは止めど無く血が流れ、左腕は原型が分からないほど潰れて、胸は大きく陥没していた。だが、そんな有様でも確かに生きていた。

 そして、有ろう事か奴は起き上がり、雄叫びをあげると満身創痍の身に紅蓮の炎を纏わせた。

 それは活性を通り越して暴走。まるで残る命の全てを燃やしているかの如きその炎を纏ったグンドゥルアの姿は、仮面の者(アクルトゥルカ)を彷彿とさせるものであった。

 その凄まじい姿にコーティングで無効化する事が不可能だと判断した俺は、奴を迎え撃つべく刀を正眼に構えた。

 

 「クカッ! クカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカッ! クケーーーーーーーーーーーッ!!!」

 

 そして、最早まともな思考が残っていないグンドゥルアは、奇声を上げると真正面から突撃してきた。

 それはまるで炎の弾丸。触れるもの全てを燃やしつくす圧倒的な熱量を持ったそれは、音速を超える速度でこちらに迫ってきた。

 だが俺は、それを一刀を以って切り捨てた。この時の俺にとって真っ直ぐ飛んでくるものなど動かぬ案山子と変わらぬものであった。

 

 グシャッ

 

 真っ二つに切り裂かれたグンドゥルアが俺の背後で音を立てて崩れる。振り返って見てみれば、二つに別れたグンドゥルアの身体が異臭を放ちながら燃えていた。

 

 ペキンッ

 

 音のする方を見てみる。グンドゥルアを斬った刀があまりの熱量に劣化して折れていた。

 

 オォーーーー!!

 

 ヤマトの陣営から歓声が聞こえる。

 

 ガラッ

 

 炭となったグンドゥルアの亡骸が崩れる。

 

 

 そこで俺は自分が人を殺した事に気が付いた(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

 ドクンッ

 

 

 全身に鳥肌が立ち、汗が噴き出す。クラクラと眩暈がして世界が回る。ドクンドクンと心臓が高鳴り、息が切れる。

 

 恐らくそれは、グンドゥルアを倒した事で奴に対する激しい怒りが消失し、それまで仮面の力によって完全に抑え込まれていた恐怖やストレスが一気に噴出したからなのだろう。

 そして、俺は今まで戦った事はあっても、グンドゥルアが放つ様な本気の殺気を受けた事などなかったし、人を殺した事もなかった。

 そんな俺が、一度にそれらの事を経験したら? しかもそれに対する恐怖を無理やり抑え込まれて、溜まり溜まったストレスが一気に解放されたとしたら?

 

 俺はその場に跪いてまったく動けなくなった。体調は最悪。まともな思考をする事も出来ない。

 

 しかし、そんな俺に追い打ちをかける事態が発生する。

 

 ギギィィィーーっと木が軋む音と共に敵本拠地の門が開き、そこから完全武装した敵兵が現れ、こちらに向かってきたのである。

 

 自らの主君を殺した憎き仇を討たんと気炎を上げる敵兵の足音と雄叫びが荒野に響く。

 

 そんな敵兵の姿に唯でさえ疲弊していた俺の精神は限界を迎えた。

 

 

 

 あぁ・・・ああぁ!! あアあああああアああああああああああアアああああああああああああああああああああああああああああああああアあああああああああああああああああアああああああああああああああああああああ阿あああああアああああ亜ああああああアあああああああああああああああああああアああああああああああアアあああアああああアアああああああああああああああ亜ああああああああああああああああああ嗚呼アアああああああぁっ!!!!! ブチッ!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ウルゥル、サラァナ。アシル・アベルに陣の前で防御態勢を取らせ、最大級の防御結界を展開しろ。

 オシュトルとミカヅチは兵に待機を指示、アシル・アベルより一歩も前に出すな。

 ヤクトワルト。ヴライに最悪の場合仮面(アクルカ)の解放を許可すると伝えておけ。

 

 『『かしこまりました。』』

 

 『アシル・アベルの移動を開始。』

 

 『続いて、防御術式【真界(ベルムンドゥーマ)】を発動します。』

 

 『殿下!? 一体何を!?』

 

 『クソッ! 全軍待機だっ! 殿下のご命令だ! アシル・アベルより前に出るな!』

 

 『大将!? ああもうっ! ヴライの旦那ぁ! 大将がもしもの場合に・・・』

 

 

 

 

 ――――アシル・アベルをネットワークに接続

 

 ――――続いてアマテラスにアクセス

 

 ――――アクセスコード [********************]

 

 ――――ID No [4996802150974]

 

 ――――パスワード [**********]

 

 ――――入力完了

 

 ――――照合中

 

 ――――認証完了

 

 ――――光学兵器使用を選択

 

 ――――光学兵器の使用にはS級管理者権限が必要です

 

 ――――訂正 S級管理者権限を確認

 

 ――――光学兵器起動準備

 

 ――――システム起動 オールグリーン

 

 ――――出力30%に設定

 

 ――――座標登録 経度○○○.○○○○○○  緯度○○.○○○○○○

 

 ――――エネルギーチャージ開始

 

 ――――チャージ完了まで後○○秒・・・

 

 ――――エネルギーチャージ完了

 

 ――――サテライトレーザーを照射できます 照射しますか?    YES/NO(↓  )

 

 ――――YESを選択

 

 ――――サテライトレーザー照射

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日、ウズールッシャの大地に空から光の柱が降りてきた。

 その光は突撃をかけるウズールッシャ軍とその本拠地を呑み込み、凄まじい光と音と共に爆発。

 光の柱が消えた後には、底が赤く溶けた大穴が残るのみであった。

 そして、この光の柱はウズールッシャから遠く離れた帝都でも確認され、現場にいた兵士の証言もあって、『神の雷』と呼ばれ恐れられることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから、なんとか自陣に戻った俺は、後の事をヴライに任せると自身の馬車に乗り込んだ。

 馬車に入ったとたん俺は崩れ落ちるが、ウルゥルとサラァナが咄嗟に支えてくれて、そのままベッドまで連れて行ってくれた。

 そして、ベッドに腰かけるとウルゥルに仮面を外してもらい、サラァナには飲み物を頼んだ。

 仮面が外されると目から涙が溢れ出て、身体がガクガクと震えだした。仮面によって抑制されていた身体の機能が働き出したのだ。

 そこにサラァナが杯を持って近づいて来たので、奪うように手に取り中身を一気に流し込んだ。喉が焼けるように熱い。どうやら度数の高い酒だったようだ。だが、普段なら快感に感じるその感覚も今の俺にとっては煩わしいものにしか感じない。 

 

 だめだ。気分がどんどん沈んでいき、鬱屈した思いが溜まっていく。

 

 いっそ死んでしまおうか等という考えまで浮かんだ時、ウルゥルとサラァナに左右から抱き締められた。

 とても、暖かかった。服越しに伝わってくる二人の体温が心地よく、冷えきった俺の心に温もりを与えてくれた。

 その温もりを更に欲した俺は、二人を強く抱き締めた。二人はくぐもった声を出すがそれに構わず更に力を籠める。

 

 だが、足りない。この程度では全く足りない。もっと、もっとこの温もりを!

 

 気づけば俺は二人を押し倒していた。

 二人は頬を赤らめ、潤んだ瞳で俺を見上げている。

 その二人の姿にドクンと心臓が高鳴った。

 そして俺は・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 




・マオウ(麻黄)
 興奮剤の原料となる鱗片状の葉を持つ植物。
 現代においては覚せい剤の原料となる植物で、地球環境崩壊後もしぶとく生き残った為か麻薬成分がかなり強くなっている。

真界(ベルムンドゥーマ)
 ウルゥルとサラァナが張る事の出来る結界の中で最高の強度と規模を誇る最上級結界。
 ベルムンドゥーマは、「真界」をラテン語で直訳したもの。

・神の雷
 ウズールッシャ征伐の最後に使われたアマテラスのサテライトレーザーを目撃したヤマト兵達が呼び始めた名称。
 天から落ちてきた事と落ちた後に雨が降り出した事からそう呼ばれるようになった。
 ちなみにトゥスクルでは「浄化の炎」と呼ばれている。




**********************

というわけで征伐戦争終結!

いや~本当に大変だった。よく知らないのに戦の話なんて書くもんじゃないですね。
ですが、ウズールッシャ編でやりたかった事は全部書けたので満足です。
グンドゥルアとの戦いとアマテラスブッパは小説?を書き始めた時からやりたかったのでようやく念願が叶いました。
ただ、その所為でヒロシの皇弟としての評価がトンデモナイ事になってしまいますが、まぁ、なんとかなるでしょう。
ともあれ、「2人の白皇」が発売する前に投稿で来てよかったです。

最後に

ヒロシは3クリック程度では終わらなかったようです。







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