ハクになるはずだった男の日記(打ち切り)   作:秋羅

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18話

△月⊿日

 

 今日は宮廷地下へと引越しを行った。

 俺の新たな城となる部屋は半分が畳張りで扉で仕切られたもう半分が情報端末なんかが置かれた部屋になっている。

 どうやらこの端末を使って仕事しろってことらしい。

 兄貴が俺にやって欲しいのは世界各地の生きている施設へのハッキングだろうか?それとも人間を元に戻すための研究?

 前者は兎も角後者は専門外だからできる気がしないんだが・・・。というか、例え頼まれてもやるつもりはない。俺には人間を元に戻す気がないのだ。

 まぁ、兄貴がいるうちは研究するフリくらいはするつもりだが、その後は研究を破棄するつもりだ。

 何故なら例え人間が元に戻ったところでまた自分達の欲望の赴くまま行動するに違いないからだ。

 そして地上を支配するために亞人(デコイ)達を攻撃し、隷属させ、まるで玩具のように扱うことだろう。

 俺にはそれが許せない。俺にとって最早人とは今を生きる亞人(デコイ)達なのだ。

 今を懸命に生きるを亞人達(彼ら)人間(過去の遺物)なんかの好きにさせるわけにはいかない。

 

 とはいえ、タタリを人間に戻したとしてもまともな精神状態だとは思えないけどな。

 タタリと化した人間は長い間ドロドロのスライムの体で光の届かない暗い世界を彷徨い、時折出会う生物を無差別に喰らって生きてきたのだ。

 そんな彼らを元の人間に戻したとしても、良くて廃人、悪くてタタリであった時のような状態のままだろう。

 だから俺は彼らを元に戻すのではなく、死なせてやる研究をするつもりだ。

 現状タタリを殺す術はない。だが、仮面(アクルカ)なんて超常の力があるくらいなんだ。きっとタタリを殺す方法もあるに違いない。

 

 差し当たってアイスマン計画の本拠地、現在のトゥスクルを調べたいところだな。

 兄貴は仮面(アクルカ)はアイスマンの仮面の複製だと言っていた。

 つまりアイスマンにも何らかの強い力が備わっていたはずだ。

 よってアイスマンのより詳しいデータがあれば現行より強い力を持った仮面(アクルカ)を生み出すことも可能だろう。それこそタタリを殺すことができる程の。

 それにタタリが最初に発生したのもこの場所だ。ここを調べれば人類のタタリ化の原因が分かるかもしれない。

 とはいえ、タタリ化の混乱時に日本にはアマテラスのサテライトレーザーが放たれたようだから施設が破壊されている可能性もあるんだがな。

 

 そんなことを考えているとサラァナが兄貴の来訪を知らせてきたので俺は弄っていた端末から離れ、兄貴が居る隣の部屋に移動した。

 

 俺が部屋に入るとウルゥルが入れた緑茶を飲んでいた兄貴が部屋はどうだと聞いてきたので、まぁまぁと答えておく。ただ、ウルゥル、サラァナの部屋は別にしてくれと頼んでみたがにべもなく断られた。

 

 さっさと孫を見せろだと?このクソジジイ、人の気も知らないで!

 

 思わずぶん殴りたくなったがそんなことしたらポックリ逝きそうなのでなんとか堪えて兄貴の話を聞くことにした。

 

 どうやら俺の仕事についての話のようだ。さて、一体何をやらせようってんだ?

 

 「うむ。最近ウズールッシャが騒がしいからサクッと征伐してきてくれ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 は?

 

 

 

 

 

 

 

 

△月∬日

 

 ウズールッシャ・・・ヤマトの北方に位置する國で國民のほとんどが遊牧民である。

 この地は百以上もの部族が住まう土地であり、暑く乾燥した気候のため、土地をめぐる部族間での争いが絶えない。

 そして彼らは隣國で肥沃な土地を持つヤマトにも略奪を行うため、ヤマトの民からは蛮族と呼ばれている。

 だが近年とある部族の長であるグンドゥルアという男により部族の併合が進められているそうだ。

 現在すでに6割程度の部族を併合し、ウズールッシャ統一の暁にはヤマトへの大侵略を行うと見られている。

 

 そんなヤバそうな奴と戦いに行けとか、兄貴は俺に死ねと言ってるんだろうか?

 いやまぁ理由は何となく分かる。

 これから俺は皇弟という立場になるが、ヤマトに仕える者達にとってはぽっと出の存在である。

 兄貴が弟だといえば表面上は認めるだろうが、真に彼らに俺の存在を認めさせるには確かな実績が必要だ。

 恐らくそのためのウズールッシャ征伐。

 だが、殺し合いをしたことのない俺にはかなり難易度の高いことだ。

 

 ・・・ああ、その為の仮面と人間の技術か。

 

 仮面の力で表面上を繕い、人間の技術を使って力を示す。

 これならば確かに俺でも戦争をすることができるかもしれん。

 しかし、人間の技術を使うからといって重火器や光学兵器を使うのはなんか違う気がする。

 どうせなら直接的な力を振るう物がいいな。

 

 カタカタカタカタ・・・・・・

 

 なんかパワードスーツ的な物はないかね?・・・・・・こいつはどうだ?仮面ライダーG3・・・見た目が今に合わないか・・・・・・アイアンマン?・・・なんか違うな・・・・・・IS?・・・女専用かよ。つーかきわどいな・・・・・・LFO?・・・なんかカットバック・ドロップターンが無性にしたくなるな・・・・・・うん?これは・・・・・・ふむふむ・・・・・・おお!結構いいな!だが、アイスマン計画の連中が作ったやつか・・・いや、内容を見る限りそこまでヤバそうなもんでもないし大丈夫か?

 問題はこれを造れるかどうかだ。

 たぶん聖廟地下の施設を使えば造れると思うが、その辺は兄貴に確認だな。 

 しかし、このままの状態じゃ少し耐久面に問題があるな。

 素体部の露出を完全に無くして、装甲ももっと厚くしよう。

 あと、俺が乗るの以外にも何体か作って・・・ああ、それだと誰か乗せないといけないのか・・・いや、生体CPUを載せて半自動で動くようにすればいいか。

 だが、それだと戦闘用の動作をプログラミングしないといけないな。

  別に強い奴の動きじゃなくてもいいが、何らかの形でデータを収集する必要がある。これも兄貴に相談するか。

 クククククッ!なんだか面白くなってきたぞ!

 戦争は嫌だが、こういうのに乗るのは男のロマンだからな!

 そして造るからには全力で取り組む!

 

 待ってろよグンドゥルア!

 

 俺が造り出す「アベル・カムル改」でテメェなんて瞬殺だぜ!!

 

 

 

 

 

 

□月□日

 

 アベル・カムルについて兄貴に相談したところ問題無く造れるようなので現在改修機の設計中である。

 

 アベル・カムルは無骨な鎧を身に纏った全長5m程にもなる人型兵器で、身体の約8割を鎧が覆っており、圧倒的な防御力を持つが腕などの関節部は素体が露出している。

 この素体の部分は比較的柔らかく、通常の兵器も通用する為、ここが唯一の弱点だ。

 現在俺はこの弱点を克服し、更に防御力を向上させるために耐荷重や強度の計算をしながら鎧の設計中である。

 そしてそれと同時に外観も考え中だがどうしようかね?

 

 色を赤くしてモノアイにするか?・・・いや、それだと仮面も相まって某赤い彗星になってしまう。そして褐色肌の少女を母と言い出すんだ。いや、サラァナ、お前のことじゃないから。だからそんな慈愛の表情を浮かべながら抱きしめようとするんじゃない。

 

 気を取り直して

 

 象牙色で丸みを帯びたボディ、腕と足はオレンジで耳にリモコン、両腕にロケットパンチ・・・なんか尻から燃料注入されそうで嫌だな。

 

 赤と白を基調としてリフボードを採用するか?・・・ダメだ、カットバック・ドロップターンが無性にやりたくなる。

 

 銀のボディにギョロ目とギザ歯・・・アカン、焼け野原ひろしになっていまう。

 

 

 ・・・やっぱり基本ベースで装甲を追加するだけにしよう。

 あんまりネタに走りすぎると後で後悔するだろうし。

 それで色は青を基調として白を所々に配色して、肩と腰には鎧の袖や草摺を取り付けて、武装は刀。あとは顔の部分に仮面っぽい意匠を施そう。それとできれば出力もアップさせたいな。

 うん。俺の専用機はこんなもんか。

 量産機の方は袖や草摺を付けないでカラーリングは黒。武器は大剣にしよう。

 よし。あとはこれを3Dモデリングして強度を再計算。

 問題がなければこのデータを聖廟地下の製造プラントに送って製造開始だな。

 おっと、その前に素体の強化について兄貴に相談しよう。こっちは兄貴の方が詳しいからな。

 

 鎧の方はそんなにかからんだろうが素体の方ができるまで一ヶ月ぐらいか。

 それまでは戦闘用動作のデータ収集だな。

 とりあえず、適当な兵にトレース装置付けさせてデータを集めるとしよう。

 

 

 

 

 

 


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