ハクになるはずだった男の日記(打ち切り)   作:秋羅

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11話

▼月❾日

 

 兄貴と再会した翌日、今日はウルゥルとサラァナが白楼閣にやってくる。

 どうやって皆に紹介したものかと考えながら朝礼に参加していると、いきなり二人が朝礼の場に現れ、

 

 「皆さん初めまして。私たちはヒロシ様の肉奴隷であるサラァナと」

 「ウルゥル。」

 「これから主であるヒロシ様共々よろしくお願いします。」

 「よろしく。」

 

 とのたまった。

 

 人生\(^o^)/オワタ

 

 なんてやってる場合じゃない!

 

 俺は慌てて二人のもとに駆け寄ると二人の頭を下げるように押さえ、彼女達が最近再会できた兄の娘で暫く預かることになったと説明した。加えて悪戯っ子だからおかしな事を言うが本気にしないでくれと。

 

 その説明に女子衆(おなごし)さん達は納得してくれたようで、家族が見つかって良かったですねと言ってくれた。

 

 ホッ、良かった。これも日頃の行いのおかげだな、と思いながら、俺は慌てて木刀を背に隠すトウカに後でお仕置きしてやる事を決めた。

 

 その後、二人を連れて一旦部屋に戻った俺は、二人にヒロシ様だの主様だのと呼ばず叔父さんと呼べと言っておいた。それと俺がタイーホされかねない事をするのも禁止した。

 

 二人は不満そうにしていたが、兄貴のところに送り返すというと、渋々了承した。

 ただし俺の呼び方は叔父様になった。

 

 よし。これで俺の精神衛生は守られたな!

 

 そう思いながら俺は仕事場に行き仕事を始めたがそこでまた問題が発生した。

 

 トウカとウルゥル、サラァナの間で俺の世話をめぐって対立が勃発したのだ。

 

 トウカはこれは自分の仕事だと言って譲らないし、ウルゥル、サラァナも叔父様のお世話は自分達がやると言って譲らない。

 

 正直仕事の邪魔だから他所でやってほしかったんだが、このままじゃ埒が明かないのでどうするか考える。

 

 スキル的にはウルゥル、サラァナの方が明らかに上だ。兄貴が言っていたあらゆる世話スキルを習得しているというのは伊達ではないだろう。しかし、トウカの仕事を奪うのも可哀想だ。それにトウカをからかうのは本当に面白いからな。そうだ、ウルゥル達には自室の掃除でも頼むというのはどうだ?これなら両方仕事が出来て問題無いだろう。

 

 そう考えているうちにサラァナの「粗忽な人に叔父様のお世話は任せられません」という一言でトウカが撃沈していた。

 

 哀れトウカ。

 

 とはいえ、シクシクと崩れ落ちたトウカをそのままにしておくわけにはいかないので、先ほど考えたことをトウカに伝えたのだが、

 

 「どうせ某は仕事の一つもできぬ粗忽者でござる・・・」

 

 と完全に拗ねてしまった。全く面倒くさい奴だ。

 

 それとそこの二人!勝ち誇った顔をしてるんじゃない!

 

 さて、どうするか。トウカの状態を見るにウルゥルとサラァナがいる状態じゃもう手伝いはしてくれないだろう。

 それ自体は別にいいんだが仕事できない鬱憤が溜まって他の女子衆(おなごし)さん達の手伝いなんてやられた日にゃどれだけの被害が出ることか。

 ならば、トウカが得意でウルゥルとサラァナにはできない事をやらせればいいんじゃないか?

 つまりそれは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 「どうしたでござるかヒロシ殿!ドンドン打ち込んでくるでござる!!」

 

 数時間後、そこにはトウカの扱きでヘロヘロになる俺の姿がっ!!

 

 どうしてこうなった。

 

 トウカが得意でウルゥルとサラァナにはできない事ということで剣の稽古を頼んでみたが早速後悔している。

 トウカの奴、オシュトルと違って俺の体力や筋力のことをまったく考慮してくれない。

 少し休憩しようと言っても、

 

 「まだまだこれからでござる!気合でござるよヒロシ殿!!」

 

 と根性論を持ち出してくるので話にならない。

 

 誰だよこんな脳筋アホの子に剣の稽古を頼んだ馬鹿は?

 

 ・・・俺だよ馬鹿。

 

 

 

 

▼月@日

 

 朝起きると布団の中に何か温かくて柔らかいものがあったので触っていたら、なんか色っぽい声が聞こえたので恐る恐る目を開けて布団の中を見ると布団の中に全裸の姪っ子達が入っていたでござる。

 

 

 

 

 

 落ち着け俺っ、昨日のことをよく思い出すんだっ!!

 

 昨日はトウカの扱きで疲労困憊になって、飯もそこそこに風呂に入ってすぐ寝た。

 そしてウルゥルとサラァナは、間仕切りを挟んだ向こう側で寝たはずだ。

 

 よし、ここまではOK。それで現状。

 ここは俺の布団で、俺は寝巻きをちゃんと着ている。

 ウルゥルとサラァナは、全裸。服は枕元に畳んで置いてある。

 そして俺の手は二人の尻をガッチリ掴んで二人は潤んだ目でこっちを見上げて・・・

 

 ぬおぉおお!!?

 

 俺は二人を押しのけ布団から飛び出し、部屋の外に出て襖を閉めた。

 

 「叔父様のいけず」

 「もうちょっとだったのに・・・」

 

 と中から聞こえてきたが気にしない!いいからお前らさっさと服を着ろっ!!

 

 その後、服を着たことを確認して中に入り二人に説教をした。

 

 女の子なんだから慎みと恥じらいを持てっ!

 男女七歳にして席を同じゅうせずって言葉を知ってるか!?

 俺がタイーホされかねない事をするのは禁止って言っただろっ!

 

 と言ってみたが二人はどこ吹く風。

 それどころか、見られなければ問題ない。それにこれは枯れかけている叔父様の為、とまで言ってきやがった。

 

 いや、まあ。自分が枯れてることは自覚してるが、だからってあれはないだろ。

 それに元々性欲が弱い質なんだ。いきなりあんな事されても困るだけだ。

 え?でもさっきはしっかり勃ってた?

 ・・・アレは朝の生理現象です。別にお前たちに興奮したわけじゃありません!

 

 なお不満そうにしている二人にもう一度注意してから着替えを始めるが、今度は二人して着替えの手伝いをしようとしてきた。

 俺は手伝いなんてしなくていいと言ったが、途端捨てられた子犬のような目で見つめてきた。

 

 やめろ!そんな目で見るな!そんな目で見たって手伝わせないぞ!

 

 俺が焦りながらもそう言うと今度はナイフを取り出して自分達の首に突き立てようとした。

 

 オイなにやってんだ!?え?俺に必要とされないなら生きている意味はない!?おっ、重い!?重いぞお前ら!?イヤイヤ止めろっ!分かった!分かったからナイフを下ろせ!!手伝わせてやるからナイフを下ろせーー!!!

 

 結局二人に着替えを手伝ってもらった俺は朝から疲労困憊になってしまった。

 それ以降のことは面倒くさいので今日はここまでにしておこう。

 

 ホントに疲れた・・・。

 

 

 

 

▼月$日

 

 今日は仕事の後、オシュトル達に家族が見つかった事を報告するために夜の帝都に繰り出した。

 ちなみにウルゥルとサラァナは置いてきた。

 その際ものすごく不満そうにしていたが、夜の帝都をお前たちのような少女を連れ回すのはマズイ事とプライベートな時間が欲しい事を伝えてなんとか納得してもらった。

 ただ、いつの間にか今度背中を流させる事になっていた。

 何これ怖い。

 

 そして行き着けの居酒屋についたが、運悪く混み合っていて相席することに。

 オシュトル達はまだだったが、相席相手は座敷席を一人で使っているということで、店員に麻呂連れの男が来たらそこに通してくれと伝えて案内してもらった。

 

 しかしその席の先客は明らかに堅気じゃない、荒々しく圧倒的な威圧感を持つ男だった。

 

 ちょっ!店員さん!?この人と相席しろって!?

 

 なんて伝える暇もなく店員はその客から相席の了承を取るとさっさと行ってしまった。

 そして残ったのは鋭い眼光でこちらを見るヤクザと立ち尽くす俺だった。

 

 「・・・座らんのか?」

 

 そう言いながらこちらをガン見してくるヤクザに逆らえるはずもなく俺はスゴスゴと席に座った。

 

 「・・・飲まんのか?」

 

 あっ、ハイ。今頼みます。店員さん、クワサの大瓶とココロモを。

 

 「・・・」

 

  ・・・

 

 「・・・」

 

  ・・・

 

 なんだこの空間はっ!?

 なんで俺はヤクザと二者面談のような状態になってるんだ!?

 しかも相手はずっとこっちをガン見してくるし!どうしてこうなった!

 

 「・・・貴様、名前は?」

 

 えっ?あっハイ。ヒロシです。

 

 「・・・そうか。・・・俺はミカヅチだ。」ニヤァ

 

 ひっ!?こっ、殺される!?

 

 と、ヤクザ改めミカヅチの笑顔に命の危険を感じているとオシュトル達がやってきた。

 地獄に仏とはこのことだぜ!と思っていたら、ミカヅチはオシュトルの方を向き、まるで獲物を見つけたオルケのような凄まじい笑顔を浮かべた。

 

 オイオイ!兵士とヤクザで一触即発か!?なんて思っていたら、オシュトルは笑みを浮かべてミカヅチの隣に座り、朗らかに会話を始めてしまった。

 

 あまりの出来事に俺とマロロが愕然としていると、オシュトルにミカヅチが自分の同期で地位も実力も同等のライバルのような関係だと紹介された。

 

 ・・・えっと、ミカヅチさんは兵士なんですか?そうですか。え?オシュトルの友人なら敬語もさん付けも要らない?あっ、ああ、分かった。よろしくなミカヅチ・・・。

 

 てな感じの会話の後、注文したモノが届いたので乾杯することに。

 そのままミカヅチを交えて酒盛りとなったが、話してみると意外と普通な奴だった。

 まぁ、オシュトルがライバルというくらいなんだから悪い奴ではないんだろう。

 ミカヅチはあれだな。見た目と雰囲気のせいで損するタイプだな。

 

 そんな事を思いながらも酒盛りは続き、思い出したように家族が見つかったことを報告したり、それを喜ばれたり、姪っ子を預かることになって苦労しているだのなんだのいろいろな話をして盛り上がった。

 

 その後、店仕舞いの時間まで飲んでお開きに。

 

 前回同様酔い潰れたマロロをオシュトルが送っていくことになったが、何故かミカヅチが俺を送っていくことになっていた。

 ミカヅチ曰くヤマトの兵としても友としても夜道を一人で返すわけにはいかんらしい。

 どうやら俺はいつの間にかミカヅチの友達認定を受けていたらしい。

 それにしても見かけによらず気遣いのできる男である。

 これでもうちょっと愛想が良ければ・・・いや、愛想の良いミカヅチなんて逆に怖いか。

 

 なんて思いながら白楼閣に帰ったのだが、ピッタリとくっ付けられた三つの布団とその上に座る姪っ子達に頭を抱えるのだった。

 

 

 

 

 

 


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