光の戦士がダンジョンにいるのは間違っているだろうか 作:ウィリアム・スミス
ひたすら攻撃を受けていればその分だけVITが上がるし、ひたすら攻撃を繰り出していればいるだけそれに対応したステイタスが上昇する。
逆に魔法使いなのに杖でぶん殴ってSTRを伸ばす事も出来るし、鍛冶師なのに戦って戦闘能力を高める事も出来る。果たしてそれに意味があるのかは全くもって不明だが、出来る事は出来るのだ。
もちろん、魔法使いなら魔法で攻撃して成長するのが一番で、鍛冶師ならインゴットでも作っていた方が良いに決まっているが、そもそもクラスやジョブの概念が無いオラリオでは、それに特化したレベリングをするという概念もまた存在していない。
剣の道一本だけで立派な冒険者として成長するのは非常に難しい。時には槍を、時には短剣を、時には製作を、時には採集を──と、そんな感じであっちこっち回り道をしていると、アーマリーシステムやクラスチェンジが無いオラリオでは、どうしても器用貧乏的な冒険者が生まれてしまう。
「たまにはメインじゃなくてサブの練習を」なんて事ばかりしていると、最終的には微妙なステイタスになり取り返しのつかない結果になってしまうのだ。
想像してみて欲しい、レベルキャップは60でレベルアップは一度きり、クラスチェンジは可能だがチェンジしてもレベルは据え置きで、覚えられるスキルや魔法は現在のクラスまたはジョブのもののみ、やり直しは一切出来ず、チャンスは一回しかない。そんな中でレベリングするのだ。
下手をすれば回復魔法が使えない格闘スキル持ちの斧で闘う白魔道士と言う謎の存在が誕生してしまうだろう。
特に魔法に関しては覚えられる個数の上限が決まっている関係上、尚性質が悪い。レフィーヤがメリュジーヌ戦で苦戦しているのはそこら辺も関係している。それに関しては彼女に秘策があるらしいが……。
だからこそ特化させるのであればLv.が低い時期にした方が良い。
バハムート大迷宮を攻略するのであれば、既にある程度成長仕切った第一級冒険者とか言う高Lv.冒険者よりも、まだ駆け出しで寄り道をする余裕も無い新米冒険者の方がディ・モールト良い。
「お願いです! 僕に特訓をつけてください!!」
そして、そんな条件を満たす冒険者がやる気満々で頼んできたら断る理由は無いだろう。
*
ぽかぽか陽気の昼下がり、登山と言う名の探検中に偶然見つけた市壁内部へと侵入する方法を利用し市壁上部に移動する。
本来では絶対に行けない筈のその場所は、まるでグリダニアの裏世界に迷い込んだかの様に誰もいない。特訓にはうってつけの場所である。早速、特訓を開始する。
「しかし、いくら特訓とは言え“ソレ”はどうにかならないのかい?」
ちゃっかり一緒に着いてきたヘスティアがルララの姿を見て文句を言う。
今、ルララは双剣以外の装備は全て外しているいわゆる全裸状態になっている。
別に某彫金師の様に全裸状態がデフォルトと言うわけではない。エオルゼアの冒険者は何かしらにつけて脱ぎたがる者が多く、実はルララもその内の一人だが、だからと言って所構わず脱ぎ出すような露出狂と言うわけでもない。ちゃんと節度を持って脱いでるし、理由があって脱いでいるのである。
特訓の内容は同クラス同士の一体一の決闘方式を採用している。対人戦や
そんな感じで意気込んで始めた記念すべき第一回目の特訓の時に、あまりの実力差の為か初撃の無双旋で一発ご臨終させてしまったのは本当に申し訳ないと思っている。威力自体はそこまで高くないスキルの筈なのだけど、とんだ誤算である。
噴水の様に噴き出る血飛沫。顔面蒼白で泣き叫ぶリリカル小人族。ドン引きするパーティーメンバー。白目を剥いてぶっ倒れるヘスティア。あまりにも阿鼻叫喚な光景に流石のルララもこれは猛省し、ベル・クラネルの装備を手持ちの素材で作れる最高品質の物に変えて、自らは全裸になり、武器はしょぼい某盗賊も苦笑いのNQダガーに変えた。こんなダガーじゃダガーはダガーって名乗らないぐらいにしょぼいダガーだダガー。
そしてそこまでして、やっとこさ何とか特訓になるレベルまで落とすことが出来た。だからこれは絶対に必要な事なのだ。決して趣味で脱いでいる訳では断じて無い。
だが、確かに穿った見方をすれば「大事な眷属を誰もいない場所に連れ込んで誘惑しようとしている痴女」に見えるのも致し方無いのかもしれんな。
ベル・クラネルがララフェル族に欲情する、筋肉モリモリマッチョマンの変態だったら問題であろうが、彼の股間をさり気なく見る限りではその心配は無いだろう。成る程、大平原の巨乳の名は伊達では無い様だ。どうやら彼の好みはおっぱいが大きい女の子みたいだ。なので、ヘスティア君も脱ごう、きっと喜ぶぞ!!
「ほ、本当かいベル君!? も、もし君が望むなら僕は……ゴニョゴニョ」
「……そんな事よりルララさん。今日も、よろしくお願いします」
妖しく腰をくねくねさせて悶える主神を華麗にスルーしてベル・クラネルが冷静に言う。確かに挨拶は大事だが、君の主神は放っておいて良いのだろうか? 「ベ、ベル君が僕を無視するだとッ!? ああ、でもなんだか新しい世界が開けそう」……成る程、これなら放置しておいても問題は無さそうだ。
それにしても、ベル・クラネルの成長は眼を見張るものがある。これくらいの事ではもう動揺しなくなってしまったみたいだ。初めて彼等の前でおもむろに全裸になった時に、主従共々真っ赤になって抗議して来た頃が懐かしく思える。どうやら彼の方は着実に特訓の成果が出てきているみたいだ。主神の方は相変わらずだが。
さて、挨拶をされたら挨拶を返さなくてならないだろう。それが忍者のシキタリだ。ドマ古事記にもそう書かれているらしい。
【よろしくお願いします。】
その言葉と共に今日も特訓が始まった。ヘスティアさん家のベル・クラネル君の特訓は順調である。
*
オラリオの冒険者は皆ヤク中である。ベル・クラネルを瀕死に追い込む度に、未だに余っているハイエリクサーをぶっ掛けて特訓を継続している内にそれに気付いた。
回復魔法が発展しなかったからヤク中になるまで薬品を飲まなくてはいけなかったのか、はたまたヤク中になってしまったから回復魔法が発展しなかったのかはさっぱり分からないが、そんな卵が先か鶏が先かなんて事はあまり重要で無いので深く考えない事にする。
要するにオラリオでは薬品はかなり重宝されていると言う事だ。だからハイエリクサーなんてかばんの肥やしになるしか無い物でも高値で売れたのだ。
オラリオの薬品需要はかなりのものである。なので、オラリオの薬品事情は物凄く進んでいる……と言う訳でもなく、むしろ極めて適当な感じであった。
どれくらい適当かと言うと、例えば、ルララが知っているポーションは決まった素材と、決まったクリスタルを元に、決まった個数と効果が得られるのが普通だが、それに対しオラリオのポーションは「そんなの関係ねぇ! 俺のポーションを飲め!!」と言わんばかりに独自路線を明後日の方向に突っ走っている感じだ。
「なんだか良く分からないけど、取り敢えず身体に良さそうな物を手当たり次第にぶち込んでみました」精神で出来上がるのがオラリオのポーションだ。「所変われば品変わる」というがここまで変わるともはや別物である。正直そんな怪しいお薬を常用するのはご遠慮願いたいと思う今日このごろだ。
そんな適当な製作方法なので、品質も、効果もてんでバラバラ。店ごとに違うなんて当たり前で、製作者によって違う程度ならまだ可愛い方、最悪、同製作者でも品質が安定しないなんて事はざらにあるそうだ。
そういった事を、毎日通い詰めていた『青の薬鋪』の店員が教えてくれた。成る程、だから貴方も要求する素材が何時も適当だったのね。
「あぁ、今日は調子が良かったから良い物が出来た!」とか、「今日はなんだか気が乗らなかったからいまいちな結果でした」なんて事が日常茶飯事に起こるのがオラリオの薬品事情みたいだ。それで良いのか? オラリオ・ポーション。
そんな訳で、オラリオの薬品事情はあまり信頼におけず、宜しくない。
だが、それを補うかのように進んでいるものがあった。全くもって残念な事であるが、オラリオで進化したのは“物”ではなく、“人”の方であったのだ。ちょっと進化の方向性を間違えている感が否めないが、きっとそれは気のせいだと思う。そう、気のせいなのだッ! そうだ、きっと
そんなこんなで、オラリオの冒険者は兎に角薬品を良く飲む。何かある度に「ポーションだー、エリクサーだー」とやって命を繋いできたので当然と言えば当然だろう。
だから、オラリオの冒険者は薬品に対しての相性が物凄く良い。
ポーションであれば「HPを最大値の32%回復する(上限160) Recast Time 25秒」というのが本来の効用だが、それがオラリオの冒険者になると「HPを160回復する」となってしまう様だ。
回復薬系最大のネックである「最大値の何%」と「Recast Time」の部分が綺麗さっぱり無くなっている。凄い。
要するにHP最大値に関係無く決まった分だけ回復することが出来るのだ。
これがポーション等の回復上限が低い薬品であると恩恵は低いが、エクス系や、エリクサー系等の薬品になると効果は絶大になってくる。
「HPを1040回復する」とか「HPを1440 MPを430回復する」なんて薬品をノータイムで濫用していたら、ヒーラーからの猛抗議が発生し、即、ご禁制の危ないお薬として取り締まられる事間違いないだろう。
薬品は用法用量を守って正しく使用しないといけない、なんて思想は残念ながらオラリオには無い。
エオルゼアで
ここまで自由だと、喩えモンスター相手であっても、錬金術ギルドが厳正に定めた
何でも大量に入る不思議かばんを持たないオラリオの冒険者では薬品類はどうしてもかさばり、戦闘時には邪魔になってしまう。だから個々で所持しているよりも、誰かがまとめて持っていた方が色々と都合が良い。そんな訳でオラリオでは
そしてそういった役割は大抵の場合、戦闘力の低い者に充てられる。なにせ薬品の回復量は持ち主のMNDに依存しない。その為、どんなに低Lv.の冒険者が使っても確実に一定量の回復が見込めるからだ。
要するに
さて、突然ではあるが、現在パーティーでは
何処かにアイテムいっぱい持てて、戦闘力が低くて、Lv.が低くて、ついでにファミリアからハブにされがちで勧誘し易そうな小人族の少女は何処かにいないものだろうか……。
*
ソーマ・ファミリア所属の小人族リリルカ・アーデは中二……Lv.1である!
所属するファミリアのあまりにもゲスいブラックぶりに嫌気が差し、遂に闇系女子に目覚めようとしていた時に、なんやかんや色々あってベル・クラネルと言う冒険者に救われ何とか暗黒面に堕ちる事を免れた、ヘスティア様なんか目じゃないくらいにボンキュッボン(ララフェル比)なロリ巨乳で、そしてLv.1である!
色々あってソーマ・ファミリアからは半離脱状態のハブられ状態で、ここ最近はステイタスの更新すら出来ていない敬語系ハブられ女子で、そしてLv.1である!
持っているスキルは
リリルカ・アーデはLv.1である! それも、彼女はただのLv.1ではない。何か中二的な秘めたる力を持っているとか、実は隠された実力がどうのこうのでピンチの時に覚醒するとか、そう言う意味で「ただの」という事ではない。全く逆だ。
リリルカ・アーデは物凄く弱い。一人じゃダンジョンで生きていけない位には貧弱だ。
だからこそ身の丈を弁えて、サポーターという冒険者を支援する仕事を生業としていたりする、冒険しない系女子の冒険者だ。
自分の実力に見合った上層付近が主な活動領域な新米冒険者を相手にして、「安くて、早くて、安心ね!」なサポーターを売りにして、希望に溢れる冒険者達をちょろまかしながらこれまで生きてきた。
サポーターは色々と不遇で理不尽で本当にやんなっちゃう仕事だが、そんな境遇を除けばサポーター業と言うものは彼女の天職であるとさえ思えた。そんな境遇が致命的だろうって事はこの際目を瞑って欲しい。
兎にも角にもリリルカ・アーデはLv.1である! 一人でダンジョンも行けないか弱いか弱い女の子なのだ!
何度でも言おう! リリルカ・アーデはLv.1である!!
だから……。
「ねぇ~ヴァンパイアプラント見つかった?」
こんな……。
「いえ、こっちには無いみたいですね」
高Lv.冒険者でも滅多に来ないような……。
「おかしいな……ルララさんの地図ではここらへんにあるらしいんですけど……」
下層も下層の深層に……。
「どれどれちょっと見せて……あっ、これ時間指定されてるヤツじゃん! 1300時になるまで見つからないよ!」
リリルカ・アーデがいるのは……
「……では、時間まで狩りでもしてますか」
「賛成です!! ぱぱっと焼き尽くしましょう! そうしましょう!」
「そうと決まれば……リリちゃん! 回復よろしくね!」
「……アッ、ハイ」
絶対に間違っているだろう。
*
前略、天国にいるかも分からないお父様、お母様へ。
ソーマ様の神酒が飲みたいがために死地へと向かい、呆気なく死んでしまって以降元気にお過ごしでしょうか? リリはなんとか元気にやっております。
突然ですが、最近気になる男の子が出来ました。その子は凄く純粋で何だか放っとけない兎みたいな男の子で、リリの恩人でもあります。
そんな恩人がこのところとっても困っているようでして、何とか力になってあげられないかと思い、何やら特訓のし過ぎでポーションが尽きそうとの事でしたので、これ幸いにと微力ながらサポーターとして協力する事となったのですが……どうしてこうなったのでしょうか?
確かに打算があった事は疑いようもありません。このチャンスにベル様(気になる男の子はベル・クラネルという冒険者です)にアピールをしようと思う邪な思いがあったのは否定しようがありません。
ですが、気になる男の子にちょっと良いところを見せようとするのはそんなにいけないことでしょうか? リリが思う限り、そこまで酷い事をしたとは思えません。なのにこの仕打ちはあんまりです。
リリは今、ダンジョンにいます。1階層とか2階層とかの上層クラスじゃありません。
リリが今いるのは45階層です。そこでポーションの材料を採集しています。何を言っているのか分からないと思いますのでもう一度言いますが、45階層でポーションの材料を採集しています。
お父様とお母様が亡くなって以降劇的にLv.が上がったとかそういう事ではありません。リリは相変わらず駄目な娘で、Lv.1のままです。恐らくLv.1としては初の快挙だと思います。
今、リリは45階層で、頭のおかしい冒険者達と楽しくピクニックをしています。
アンナ様と、エルザ様と、レフィーヤ様という方達です。全員女性でちょっと安心かな? と思ったのがそもそもの間違いでした。
にこやかに微笑む彼女達はダンジョンに入るなり豹変しました。正に修羅と言うやつです。
アンナ様は頼れる前衛盾役です。上層から深層までの最短ルートを熟知し、出現するモンスターも覚えているみたいです。彼女曰く、何度も通っている内に覚えたそうです。
ピカピカ光る彼女はやたらハイテンションで、どうやら新調した装備がロボじゃなかったのが凄く嬉しいのだそうです。頭おかしいです。
エルザ様はとても優しい気の回る方です。ですが気が回り過ぎで戦闘中でも縦横無尽に移動しまくって話しかけてきます。戦闘中なので大人しくしていて欲しいのですが、それでも攻撃はきちんと当てるので頭おかしいです。
レフィーヤ様は魔法使いのエルフで可愛らしい人です。ですが、ここ最近悩みがあるそうで、一つ目巨人に追われる夢を見たり、時折ファミリアの仲間が経験値に見えたりしてしまうそうです。なにそれ、頭おかしいです。
ただ、アンナ様はどんなモンスターが来ても恐れず立ち向かって行ってリリ達を守ってくれますし、エルザ様とレフィーヤ様はそんなモンスター達を一瞬で蹴散らしてくれてとても頼もしいです。
リリのお仕事はそんな彼女達にポーションをぶん投げるお仕事です。簡単に思えるかもしれませんが中々にコツが必要で、狙った場所目掛けて的確に投げるのは結構な技術が必要です。奥が深いです。頭おかしくなりそうです。
レフィーヤ様はあの有名なロキ・ファミリアの冒険者で、アンナ様とエルザ様はそれと同じぐらい有名なフレイヤ・ファミリアの冒険者です。どちらも超巨大ファミリアです。数だけ多いリリのソーマ・ファミリアとは大違いです。
因みにロキ・ファミリアとフレイヤ・ファミリアは仲が悪いです。
きっとロキ・ファミリアの皆様は、フレイヤ・ファミリアの皆様に親兄弟恋人を殺されて、フレイヤ・ファミリアの皆様も、ロキ・ファミリアの皆様に親兄弟恋人を殺されたのでしょうね。不毛です。
そんな犬猿の仲とも言える冒険者同士が、何故一糸乱れぬ連携で戦えるのか不思議ですが、彼女達に聞いても「なんか気付いたらそうなっていた」みたいな事を言っていたので気にするだけ無駄なのでしょうね。
そんな事をしているからでしょうか、彼女達は最近ファミリアでもハブられ気味みたいです。きっと頭おかしいからでしょうね。不覚にもちょっと軽くシンパシーを感じてしまいました。
他にも
このお二人は彼女達ほど頭のおかしい人では無い事を祈るばかりです。
因みに、ここに来るまでにあった事は筆舌に尽くし難く、どうしても思い出したく無いので割愛します。ただ気付いたら深層に辿り着いていたと言えば、どれだけヤバいか分かって貰えると思います。
ダンジョンに向かう際、ルララ様から大量にポーションとフェニックスの尾とか言う訳の分からない物(なんでも緊急時に使って欲しいらしいです)を持たされて、護身用の機械仕掛けの武器(銃と言うらしいです)と良く分からない謎の貝殻(リンクシェルとか言うみたいです)を渡された時点で嫌な予感はぷんぷんとしていました。
そもそも、ポーションの素材を取りに行くのに、ポーションを持たされるってどういうことでしょうか? お陰でポーションを投げるのが上手くなってしまいました。心外です。
それでも人間というのは不思議なもので、こんな状況に立たされても慣れるものは慣れる様です。
休憩中に、こんな宛先人不在の文章を書くぐらいにはリリにも余裕が出てきました。これがリリの現実逃避で無い事を祈って下さい。
そろそろ休憩も終わりそうです。名残惜しいですが、この手紙もそろそろ終わりたいと思います。
願わくば、これが最後の手紙にならないことを祈るばかりです。
追伸
次の目的は47階層(9.1 ,14.8)で獲れるオラリオミスルトゥでした。帰りはレフィーヤ様がなんとか己を騙して習得した転移魔法ですぐ帰れるそうなので楽ちんです。
なんでも「ルララさんって耳がエルフみたいじゃないですか?」との事です。意味が分からなかったので取り敢えず笑って誤魔化しておきました 。
*
「──という訳でリリ達はダンジョンに行ってポーションの材料の採集をしてきました」
「良い予感はしてたよ!」
「最初はなかなか上手く目的の物が見つからなかったのですが……だけど、とにかく頑張って探すことによって……その結果、見事に目的の物を見つけることが出来ました! 採取した素材は沢山あったのですが……特に目を引いたのは、一つの大きなミスルトゥでした。エルザ様がその勇気で採集すると……見たこともない高品質なミスルトゥが採集できたのです! よって今回の冒険は大成功だったと言えます!」
「次もこの調子で頑張ろー!」
「今回の冒険の報告は以上です。お疲れ様でした」
【お疲れ様でした。】
*
「何かリリにも手伝える事はありませんか?」とやや緊張した面持ちでおずおずと言ってきた魔乳小人族のリリルカ・アーデに、採集の手伝いを依頼したのは大正解であった。
色々と無理難題を吹っかけたのは自覚しているが、なかなかどうして上手い事いってくれたみたいだ。
エクスポーションの素材なんて自分で採集しに行ったほうが遥かに速いし、そっちの方が大量に取って来れるが、この冒険にはそれ以上の価値があった。
リリルカ・アーデは見事に
最悪、なにかあったら直ぐ様駆けつける気でいたが、何事も無く終わったようで何よりである。
リリルカ・アーデは勿論の事であるが、アンナ達も随分と逞しく成長したものである。右も左も分からない新米ヒーラーを最後まで介護しきったのだから、初めて会った時のミノタウロスにボコボコにやられていた頃とは大違いだ。その頃の面影はもはや微塵も無い。
彼女達の頑張りを無碍にしない為にもさくっとエクスポーションを製作し、ついでにドーピング……眼力の秘薬を製作する。
そして、出来上がった薬品を疲れきって床を舐めているベル・クラネルに渡す。一度の製作で薬品は三つ作れるが、戦闘に邪魔にならない様にするため一つずつだ。
薬品は揃った。
依頼していたアスフィのアイテムも明日出来上がるそうだ。
今は転がっているベル・クラネルも順調な仕上がりを見せている。
新たに加入したメンバーにリンクシェルも配り終えた。
風脈は本番前日には会場に移動できるのでその時に開放する予定だ。
これで準備万端である。
新生祭のバハムートくらい可愛いヤツがオラリオの地下に眠っている可能性が微レ存!?