光の戦士がダンジョンにいるのは間違っているだろうか   作:ウィリアム・スミス

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レフィーヤ・ウィリディスの場合 4

 無言だ……。

 無言だけがダンジョンを支配していた。

 

 レフィーヤの耳に聞こえてくるのは、一糸乱れぬ足並みでダンジョンを突き進む冒険者達の足音か、もしくは戦闘音、そして力尽きたモンスターの断末魔だけだ。

 誰も彼も、何一つ発言しない。勝利の咆哮も、安堵の声すらも上がらない。

 沈黙だ、沈黙だけがパーティーを支配していた。

 

 パーティーの先頭を行く、頭のてっぺんから足の先まで覆い尽くす金と黒の甲冑を着込んだアンナも、赤いロングコート姿のリチャードも、青いタバートを着て弓に矢を番えるエルザも、角の付いた額当てに緑色のコートを羽織って本を手に持つルララも──まあ、彼女の場合は大体いつもなのだが──無言だった。

 誰ひとりとして何も喋らない。ただただ淡々と戦闘をこなしていた。

 

 沈黙に包まれる彼等は決して仲違いをしている訳ではない。

 現に彼等はその強固なチームワークにより、驚くべき速度でダンジョンを突き進んでいた。

 

 異様な光景だ──そうレフィーヤは思った。

 

 レフィーヤの知るダンジョン攻略というものは、モンスターの咆哮が、味方への指示が、怒号が、叫びが、戦闘音が、けたたましくダンジョンに響き渡るのが通常だ。

 

 だが、このパーティーは違った。

 

 会話らしい会話があったのは最初に必要最低限あっただけだ。

 それ以降、彼等は黙々と行動している。無駄な会話は一切しない。

 己に課せられた役割(ロール)を熟知し、与えられた仕事に専念し、極限まで無駄を排除して、最大限効率を追求した動きは、最早芸術的ですらあった。

 

 ダンジョンの壁面からモンスターが生れ出でる。その数、三体だ。

 

 出現した瞬間、三体の内の真ん中のモンスターにアンナが剣を投げつけ串刺しにする。

 その勢いのままアンナは、そのモンスターに重い甲冑を着込んでいるとは思えないほど俊敏な動きで接近し、突き刺さった剣を抜き取る。

 それと同時に、アンナが一瞬、眩いばかりに発光した。

 彼女がLv.3にランクアップした際に習得した奇跡の閃光(ミラクル・フラッシュ)という魔法だ。

 煩わしい強光と、一瞬だが急激に高まった神威を放つアンナを脅威と認識したモンスター達は、一斉に彼女に襲いかかる。

 

 これがアンナの、前衛盾職(タンク)役割(ロール)だ。

 

 アンナは見事に前衛盾職(タンク)としての仕事をこなしていた。

 彼女の仕事は──()()()()()()()()()()()()──だ。

 それだけ。それだけだ。それだけが彼女に与えられた役割(ロール)だ。

 

 彼女はモンスターを()()()()()()()。倒すのは自分じゃない。モンスターを滅ぼすのは自分じゃなくていい。

 己がするべきことは敵を引き付けること、“脅威”であると主張すること、打ち倒すべき怨敵であると認識させること──それだけだ。それ以外は考えなくていい。

 彼女がモンスターを倒す必要など何処にもないのだ。

 

 だからこそ彼女は“それ”に専念できる。“それだけ”に専念できるのだ。

 

 アンナに夢中になり、気を取られたモンスター達は隙だらけだ。

 その隙だらけのモンスターの背後から、拳撃と弓撃が襲いかかる。リチャードの拳と、エルザの弓矢だ。

 

 彼等の役割(ロール)も単純だ。ひどく冒険者らしくて、分かりやすい仕事だ。

 

『敵を倒す』──それだけだ。

 

 それだけが彼等に与えられた役割(ロール)だ。

 彼等はモンスターに襲われることはない。なぜならモンスターは全てアンナが引き付けてくれているからだ。

 モンスターにアンナ以上に“脅威”であると認識されない限り、彼等に攻撃が来ることはない。

 

 がら空きになったモンスターの背面や側面から、容赦なく攻撃を叩き込んでいく。

 彼等は防御を考える必要はない。防御を考えるのは彼等じゃなくて別の人だ。

 ただ彼等は一心不乱に敵を殲滅すればいい。少しでもはやく、一秒でもはやく。全力で。

 他のことを考える必要など何処にもない。

 だからこそ彼等は“それ”に専念できる。だからこそ彼等は全身全霊で攻撃できるのだ。

 

 リチャード達はアンナが最初に剣を投げつけたモンスターから、集中的に攻撃していく。

 幾度と無く繰り返されたいつものパターンだ。

 

 三体のモンスターの内、最もアンナへの敵視が高いのは最初に攻撃を受けた真ん中のモンスターだ。

 それを優先的に攻撃することにより、アンナの敵視管理を容易にし、かつ効率を最大限に向上することが出来る。

 

 最初のうちは、敵視もクソもあるものかと、出鱈目に、適当に、好き放題、思うがままに攻撃していた彼等だが、ルララによる地獄の訓練により今ではすっかり調きょ……動きを理解している。

 

 手早く一体目を倒し切ると、二体目、三体目も同様の方法で片付けていく。

 

 それぞれの役割(ロール)を明確にし、専門化し、特化し、分担する事によって、通常では考えられないほど手際よくモンスター達を排除していく。

 その流れるような手際の良さは、感動すら覚える程だ。

 戦闘が終わるまでの間に、レフィーヤが呪文を唱える暇すらなかった。

 

「ガァアアアアア!!」

 

 そんなレフィーヤに再び壁から出現したモンスターが襲いかかる。

 

 だが、それも岩のような黄色い発光体──こう言っては何だが、大きなジャガイモの精霊みたいだ──『タイタン・エギ』が殴りつけ、一撃で魔石もろともバラバラにした。

 

 レフィーヤの身を守ってくれたこの『タイタン・エギ』は、ルララが召喚した『召喚獣』という存在だ。

 神様に似た雰囲気を放つこの不可思議な獣は、高い体力と“脅威”をもち、先程の様にアンナが引きつけられなかったモンスターを代わりに受け持ってくれている。ジャガイモみたいな見た目だが中々に頼もしいヤツだ。

 

 なんでもこの『召喚獣』よりも数倍でかい『()()』を倒したら使役出来るようになったらしい。

 またまたルララさん、ご冗談を──そう思うレフィーヤだったが、召喚獣から放たれる雰囲気が何かに似ていると思ったら、神様が放つ『神威』そっくりだったのを思い出してしまい納得がいってしまった。

 えっ!? ちょっと待って! そうなると彼女は『神殺し』ってことになっちゃうんだけど……オラリオにいて大丈夫なのかしら? ……ちょっと大丈夫じゃない気がするんですけど……。

 

 もし、この事が露見したら彼女は……喜々として神様を根こそぎ狩っているルララの姿が幻視された。うん、忘れよう。

 

 嫌な未来を想像し顔をしかめるレフィーヤ。

 だが、そんな事これっぽっちも気にしないでパーティーは再び進行を開始する。

 慌てて遅れまいと先に進むレフィーヤ。全く息をつく暇もない……。

 

 先程の戦闘でモンスターの攻撃を一身に受けていたアンナの傷は、いつの間にか完全に癒えていた。

 

 ルララの回復“魔法”のお陰だ。

 驚くべき事にルララは召喚魔法だけでなく回復魔法の使い手でもあった。それもかなり高位の使い手だ。

 

 オラリオでも希少である回復職(ヒーラー)の中でも、回復魔法の使い手は更に希少だったりする。

 回復職(ヒーラー)といっても実はその殆どは、効率良く回復薬を使用できる『スキル』や『アビリティ』などを持っているというだけの者だったりする。

 もしくは、特にやることのない低Lv.冒険者が仕方なく回復職(ヒーラー)をやる場合が殆どだ。

 専門的に回復職(ヒーラー)をしている冒険者というのはあまりいないのだ。

 

 その中でも、回復魔法を使える回復職(ヒーラー)というのは更に少ない。

 よしんば回復魔法を習得していても、総じて回復魔法というのは消費マインドが多くなりがちであるし、殆どの場合、回復量もポーション等と比べて対費用効果としてはいまいちだ。

 

 それでも回復魔法持ちは()()()に重宝される。そう()()()()だ。

 

 ダンジョン内でポーションが尽きた時などがいい例になるだろう。

 回復魔法というのは緊急時の、言ってしまえば『奥の手』として使用されるものだ。最後の手段としてとっておくべきものなのだ。

 

 また、だからこそ、回復魔法というものは上達しづらいものであった。

 回復魔法を上達させるには、当然であるが回復魔法を使う必要がある。

 そして、それは必然的に怪我した者も必要になるということだ。それも大量に。

 

 自分で自分の傷を癒やすのは無理だ。

 怪我を負っていては回復魔法に必要な集中力や、魔力の調整を正確に行うことはできない。

 回復魔法というのはとても繊細なのだ。だからこそ回復職(ヒーラー)というものはパーティーの最後尾に位置するのだが、まあ、ここでは特に関係ない。

 

 兎に角、要するに、回復魔法の練習には怪我をしている”他人”が必要不可欠という訳だ。

 

 だが、一体この世の何処に、回復魔法の修練のために大怪我を負いたいと思うものがいる? 

 いや、もしかしたら、想像や冗談で『出来る』と言える者がいるかもしれないが、じゃあ実際に本当に死ぬかもしれない大怪我させようとすると、大抵がむせび泣いて許しを請うか、怖気づいて逃げ出すかの二つだ。

 

 だって本当に治るのかどうかの保証は何処にもないのだ。

 万が一の場合、一生もののハンディを負う可能性もある。

 そんな危険な賭け、身体が資本の冒険者がするはずなかった。

 そして、そんな使い勝手が悪すぎる回復魔法を、最大たった()()しかない魔法スロットの一枠に収めるのはリスクが高過ぎるのだ。

 

 それをルララ達は完全分業制にして特化することで解決していた……と思われる。

 

 なんていったってここまで明確に役割(ロール)を分けているパーティーはこれが初めてなのだ、憶測でしか語れないのは致し方無いだろう。

 

 ルララは()()()()していればいい。

 攻撃も防御もやらなくていい。回復だけだ。

 それだけをやっていれば彼女の役割(ロール)は全うしたことになる。

 それ以外は何もやらなくていいのだ。

 攻撃も防御も他の仲間がやってくれる。

 だからこそ彼女は回復に専念できるのだ。

 だからこそ彼女はあんなに回復魔法を連発できるのであろう。

 

 だって、一回の戦闘で“三回”も回復魔法を使うなんて大盤振る舞いもいいところだ。

 戦闘はこれだけでない。こんなに乱発していては精神力(マインド)が保たないはずだ。

 それを感じさせないということは、彼女の精神力(マインド)は物凄く高いのだろう。同じ魔法職としては羨ましい限りだ。

 

 アンナが護り引きつけ、リチャードとエルザが敵を倒し、ルララが仲間を癒す。ジャガイモはそっと添えるだけ。

 

 アンナがいなければ、彼等は攻撃に、回復に、専念できないし、リチャードとエルザがいなければ、何時まで経っても敵は倒せない。

 ルララがいなければ、いずれパーティーは力尽きてしまうだろう。

 ジャガイモは……居てもいなくても良いかもしれない。よっし! 山に埋めよう! きっと来年には立派なジャガイモが収穫できるわ!

 

 この、誰ひとりとして欠かすことのできない高い連携力が、彼等のこの異常なまでの進行速度を支えていた。

 逆に言えば、誰か一人欠けただけでパーティーが崩壊するということだ。組織としては強靭だが、柔軟性が低いと言えるだろう。

 だからこそ、この方法はオラリオでは流行っていないのだろう。

 

 そんな中で、レフィーヤが出来たことは少なかった。精々が落ちていたドロップアイテムを回収する事ぐらいだ。

 なにせ魔法で攻撃しようとしても、彼女の魔法は詠唱が長すぎて唱え終わる頃には殲滅が終わっているのが殆どだったのだ。

 

 足手まとい感が半端じゃないが、これはレフィーヤが悪いのではなくてルララ達が変なのだ。

 変だ、変だ、と思っていたが、ここまで変だとは思ってもいなかった。

 そして、そんな変な集団に毒され、徐々にではあるがレフィーヤも確実に染まってきていた。

 

「グルゥァアアアア」

 

 再びモンスターが出現する。

 

 例によってアンナがそれを引き付ける。

 モンスター一体に集中攻撃を仕掛けるリチャードとエルザ。

 それに合わせレフィーヤも詠唱を開始する。

 

 ──解き放つ一条の光、聖木の弓幹──

 

 だが、今から詠唱していては()()()()()()()にはもう間に合わない。

 であるならば──。

 

 ──汝、弓の名手なり。狙撃せよ、妖精の射手──

 

 リチャードやエルザが()()()()()()()モンスター目掛けて……。

 

 ──穿て、必中の矢──

 

 撃てばいいだけだ!!

 

 ──『アルクス・レイ!!』──

 

 レフィーヤの持つ杖から、普段より数段強化された単射魔法(アルクス・レイ)が放たれる。

 放たれた単射魔法(アルクス・レイ)は寸分の狂いもなくモンスターに当たり、大ダメージを与える。

 だが、流石にこの階層クラスのモンスターになると一撃でとはいかなかったようだ。

 それどころか、モンスターはレフィーヤの攻撃を受けて、彼女を“脅威”だと認識したようだ。

 

 ああ! なんということでしょう! 憐れ、レフィーヤちゃんはこのままモンスターの毒牙にやられてしまうのか!?

 彼女は貧弱な魔法使い(キャスター)だ。彼女などモンスターの前では紙くず同然だ!

 一体、彼女はどうなってしまうのか!?

 

 レフィーヤ目掛けて襲いかかるモンスター。

 だが、それを待っていました! といわんばかりに『タイタン・エギ』が意気揚々と迎え撃つ。

 まるで大地の怒りを体現しているかのような『タイタン・エギ』の一撃で、モンスターは一瞬で消し飛んだ。

 レフィーヤちゃんだと思った? 残念! ジャガイモでした。

 

 事なきを得たレフィーヤだったが、その顔はほんのり赤く染まり恍惚の笑みを僅かに浮かべていた。

 別に彼女がMに目覚めたって訳じゃない。だが確実に彼女はある事に目覚め始めていた。

 

(ああ、気持ちいい……って、何を考えているんですか私は!!)

 

 レフィーヤにモンスターが襲い掛かってくるということは、それだけ彼女が脅威だったからだ。それだけ彼女の“攻撃”が脅威だったからだ。

 それは、つまり、彼女の魔法攻撃力の高さを物語っていた。すんげぇ威力が出ていた。今日一のダメージだった。

 

 自分の“火力”が思っていたより“高い”という事を実感できるこの行為に、レフィーヤは徐々に快感を覚え始めていた。

 極限まで高火力を追求するという行為に快感を覚え始めていた。

 

(ああ、でも……私……私)

 

 ──癖になりそう──

 

 徐々にだが確実に、ルララ達に毒されていくレフィーヤだった。

 

 だがしかし快感に溺れるレフィーヤは気づいていなかった。

 彼女の行為を目の当たりにし、静かに真っ黒な微笑みを浮かべる者と、不敵な笑みを浮かべる者がいた事を。

 

 レフィーヤは今後、その両者から嫌という程骨の髄までロールプレイの真髄を叩き込まれる事になる。ああ、レフィーヤちゃん合掌……。

 

 まあ、何にせよ目的の階層まであと少しだ。

 

 

 

 *

 

 

 

 49階層に辿り着き、その階層にある食料庫(パントリー)の石英と交感しながらレフィーヤはふと疑問を零した。

 

「そういえば、ここに来るまでにも何度か似たような事しましたけど、これって何か意味があるんですか?」

 

 わざわざモンスターが集う食料庫(パントリー)に来てまでやることなのだ、何か意味があるのだろうが、その理由をレフィーヤは聞いていなかった。

 

「あー、何でも転移魔法を使うのに必要らしくてな、それと交感すれば、この場所まで一瞬で来れるんだ」

 

 レフィーヤの疑問に、片付けたモンスターの魔石やドロップアイテムを回収しながらリチャードが答えた。

 転移“魔法”という言葉を聞いてレフィーヤは驚きの声を上げる。『魔法』という言葉が出てきたのは由々しき事態だ。

 

「ええ!? 私もう魔法スロット3つ埋まっちゃってるんですけど? 大丈夫なんですか!?」

 

 個人が使える魔法数は最大でも三種類までだ。

 レフィーヤは既にその最大数である三種類の魔法を覚えてしまっている。

 その為、レフィーヤはこれ以上魔法を覚えることは出来ないのだ。だとしたらこれまでやってきた事は無意味なものに……。

 

「ん? ああ、心配する必要はないさ。転移魔法を使うのは俺達じゃなくて嬢ちゃんだからな。俺達はそれに便乗するだけ……ってことらしい。詳しい仕組みは俺にも良く分からん!」

「あールララさんが……成る程わかりました」

 

 投げやり気味なリチャードの返答に、レフィーヤは直ぐ様納得した。

 このパーティーにおいて、『ルララだから』というのは全てを納得できる魔法の言葉だ。光の戦士だからね仕方ないね。

 

「それにしても、その転移魔法って凄く便利な魔法ですね……これなら探索に掛かる時間を大幅に削減することが出来ます」

 

『深層』クラスの探索が難しいのはモンスターの存在よりも、そこまでに辿り着く為に掛かる時間や物資などが原因になる。

 それが丸々解決出来るとなれば探索が捗るどころの話ではないだろう。

 似たような効果を持つマジックアイテムに生命を救われたレフィーヤは、それを良く痛感している。

 

「お陰で最近はひたすら49階層でレベリング三昧だよ……私まだLv.2なのに……」

「ははは、でもエルザさんもLv.2とは思えないほどですよね。動きながら正確に矢を射るなんてそうそう出来るものじゃないですよ」

 

 時折、彼女が本当にLv.2なのか怪しく思えてしまう程だ。

 

「そう!? やっぱりそう思う? 散々練習したからね。でもルララちゃんにはまだまだ敵わないんだよねーもっと頑張らないと!」

 

 なんでもルララは、縦横無尽に移動しながらも正確無比な弓矢を雨あられの如く射ることが出来るらしい。

 後ろを向きながら弓矢を射ることなんて芸当もお茶の子さいさいとの事だ。なんじゃそりゃエスパーか何かか?

 言葉だけじゃ一体どんな動きをしているのか理解できないが、取り敢えず異次元の動きであることは分かった。いずれエルザもそんな変態移動をしながら弓を射る事になるのだろうか? そんな絵面あまり見たくはないのだが……。

 

「私も頑張らないとですね! 最後の方はなんとか魔法を撃てていましたが、最初の方は駄目駄目でしたからね……このままじゃパーティーのお荷物です」

 

 ここに来るまで大した活躍ができていないレフィーヤは奮起しながら言った。現状ではLv.2であるエルザの方がパーティーの貢献度は上だ。Lv.3としては負けていられない。

 

「あー、レフィーヤちゃんはまず基本からだな……取り敢えず俺達が殴っている奴に魔法を撃ってみよう」

 

 タゲ合わせって言うらしいぜ、とリチャードは続ける。

 

「ですがそれだと詠唱が間に合わなくて不発になってしまうんです……」

 

 レフィーヤが編み出した戦法は、ある意味苦肉の策とも言えるものだ。

 決して悪気があってやっている訳ではない。レフィーヤはパーティープレイをするのはこれが初めてなのだ。動きを理解してないのは致し方ないと言える。

 

「じゃあ! 詠唱を速くする練習からだね! うん! そうした方がいいよ!!」

「そうだな、そっち方面で頑張っていったほうが良いな! そんで、不発でも良いから俺達とターゲットは合わせような、お兄さんとの約束だ! じゃないと怖いお姉サン達ガガガガ……」

「そ、そうでしょうか?」

「ああ、間違いない!」「うん、間違いないよ!」

 

 やけにレフィーヤに優しい攻撃役達。

 かつて嫌と言う程動きを理解させられた彼等は、新たに加わった仲間が意図せず地雷行為に走っている様を見ていられなかったのだ。

 このままでは彼女は地獄を見ることになる。てめえの行為は地雷行為なんだよ! このクソキャスターが、そんな杖折っちまえ! と罵られる姿を見るのは流石に忍びないのだ。

 だからこそ彼等はレフィーヤのプライドを傷つけないように、やんわりとアドバイスをしている。

 

「まあ、そうだな取り敢えず長くても3秒ぐらいで撃てるようにしたいな……」

「ちょっとそれは速すぎじゃないですかね!?」

 

 そんな彼等のアドバイスも結構高度だった。

 




 レフィーヤさんは、ロール制は初心者だからね仕方ないね! これから練習していこうね!

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