ぐだぐだあーと・オンライン 作:おき太引けなかった負け組
ノッブ「ネカマと思われるとかワロタw」
おき太「実際にネナベやるとかワロタw」
以下殴り合い
「まーだ、凹んでるんですか?信長さん」
そう、沖田は傍らで座り込んでいる信長を慰めるように言う。
「……凹んでなぞ、おらんわ」
それに反論するように信長は返すが、その表情は暗く、いじけている。
まあ無理も無い。
頑張って苦労して作ったものを壊されればそんな気分にもなるだろう。
彼女がこうなったのはこの『ソードアート・オンライン』のゲームマスター、茅場晶彦の最後のプレゼントが理由だった。
このゲームが命をかけたデスゲームと化し、外部からの救助もありえなく、閉じ込められる事になったそのあと。
彼はこの世界が現実であるということを強く認識させるために一つのアイテムを渡したのだ。
それは手鏡。
特に何の変哲もないただの鏡であるが、それを受け取ったプレイヤーたちは一体なんでこんなものを、と疑問に思う。
しかし、その数瞬後それを理解した。
自らのアバターが
つまり何がいいたいかというと。
信長が苦労して作った、『りそうのおだのぶなが』が一瞬で、水泡に帰してしまったのである。
故にそこにいる信長の姿はヒゲを生やした渋い男ではなく、可憐で小柄な少女の姿だった。
ちなみに、例によって沖田はそのままの姿を使っているのでまったく変化はない。
身体がいきなり光って姿が変わるという現象を体験できなかったのはちょっと残念かなと、思うがそれだけだ。
しかし信長は違う。
このゲームを体験する時間を削ってまでアバターづくりに費やしたのだ。
それこそ、サービス開始直後からデスゲームが始まる一時間前まで費やした努力の結晶だ。
それを一瞬で不意にされればこうなってしまうのも仕方ないだろう。
まあ、それだけが理由ではないのだが。
「……そなたは、わしを恨んでおらぬのか?」
そもそもの話、沖田をこのゲームに誘ったのは彼女である。
そのため、誘わなければ彼女は無事でいられたのではないかと罪悪感を抱くのは当然の理だ。
だから、茅場からこのゲームがデスゲームになったと聞いた時、誘わなければよかったと、後悔の気持ちが浮かんだ。
しかし、沖田はその言葉にあっけらかんと答える。
「んー、デスゲームになっちゃったのは仕方ない事ですよ。信長さんが悪いわけではありません。全部、茅場?って人のせいです」
そう、優しく諭すように言った。
その言葉を聞き、信長は「沖田……」と感激を露わにするが、その次の言葉で凍りつく。
「それに……この世界では命がけで戦えるんでしょう?死ぬまで戦うなんて、現実じゃ出来ませんし。誘われていなければ、私の方が凹んでましたよ!」
と、胸を張って彼女はそう言った。
更に彼女は続ける。
「あと私、人斬ったことないんですよね。この世界なら、もしいるとするならば、少なくとも一人は斬れるじゃないですか?茅場晶彦を。ご先祖様の戦友の言葉を借りるなら『悪・即・斬』です」
花も恥じらう笑顔を浮かべながら沖田は言った。
その姿を見れば万人が万人可愛らしいと言うだろうが、言っていることがとてつもなく物騒なので逆に、万人が万人恐ろしいと言うだろう。
それを聞き信長は何かを思い出したように心のなかで驚く。
(そ、そうじゃった!コイツ、わしの影に隠れて普段はおとなしいが結構、否、かなりの人斬り思考なんじゃった!)
そして、そんな信長の様子を意に介すことなく続ける。
「……それに信長さんも結構楽しみなんでしょう?」
沖田はそう信長に問うた。
沖田にとって、いや信長にとっても現実世界もゲームも変わらないのである。
強いていうならば命がかかっているかどうかの違いだ。
そして、その堰が切られただけのこと。
ありとあらゆる行いが死と直結している生活を送っている彼女らにとって『死』は別段恐ろしいものではない。
一人は病弱故に、常日頃から死と隣りあわせであるから。
一人はその生まれた立場故に、自らの判断が数多の命と直結しているから。
そして、それでも彼女らはそれを苦に思っていない。
むしろ楽しんでさえいる。
だから、こんなもの、
沖田はそう、
もう、信長に先程までの迷いはなかった。
「で、あるか」
「ええ。で、ありますよ。第六天魔王閣下殿?」
そして、信長は立ち上がる。
いつもどおりの魔王のような、邪悪な、ともすれば子供らしい純粋な笑みを浮かべながら。
「ククク……、わしを倒したければ武田の赤備えぐらい持って来いというものじゃ。他化自在天の主である、わしがこの程度で臆するなど、ありえん」
「そうですよ。いつもどおりの信長さんが一番です」
そんな風に高笑いをする少女と、その神輿を担ぐ少女がいた。
傍から見れば恥ずかしい光景であるが誰も気にしない。
まあ、デスゲームが始まり大半の人間が気にする余裕もないというのが実際の理由だが。
そして、そんないい話的な雰囲気が続くかと思えたその時だった。
あっ、と沖田が気づきそんな微笑ましい様子は終わる。
「……それで、チュートリアル行きましょうか」
「そうじゃな……。そういえばしておらんかったな……」
閑古鳥が鳴く。
彼女たちはまだこのゲームを始めてすらいなかった。
アバターを作ったり、許可をとったり、待ち合わせで時間を取ったせいだった。
そして、すごすごと、はじまりの街近くの草原に向かうのだった。
今回は短め。
まあ、サーヴァントではないけれど彼女たちのその本質がおかしくない訳がないのでこんな感じに。
そして次回辺りからようやくキリト君出せるよ……