俺のボーダーとしての青春はまちがっている。【俺ガイル編】   作:ばけねこ

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【不協和音】

メガネくんが去った後俺は手持無沙汰になりなんとなく本部内を徘徊している

ボーダーをバカにされたような気がしてイラついていたのかもしれない

 

そんな時に三輪達の姿を見かけたんだが

 

「なんだ今日は三輪隊勢揃いか?」

 

三輪と米屋がつるんでいるのはいつもの事だが今日はスナイパーの奈良坂と古寺も揃っていた

 

「なんの用だ比企谷」

 

「三輪お前この前から変だぞ。妙な事考えてるんじゃないだろうな」

 

「お前には関係ない」

 

「まあまあ比企谷く~ん、秀次のことは俺に任せとけって」

 

「陽介いくぞ」

 

「おーう」

 

ホント頼むぞ米屋。三輪は俺や二郎と同じく近界民の侵攻で家族を失った同志だ

仇を討つその気持ちは俺も一緒なんだからな。早まった事はさせるなよ

 

 

比企谷隊の作戦室に戻ると門発生のアナウンスが本部内に流れる

 

「やれやれ忙しいな」

 

「八幡、鬼怒田さんに呼ばれた件は終わったのか?」

 

俺は二郎にメガネ君を苦労してB級試験を通した話をした

 

「お疲れだったな八幡

 だが・・・そのメガネを本当にB級にあげても大丈夫なのか?」

 

「そんなのは俺の知った事じゃない」

 

「ま、そうだな」

 

俺がメガネ君を気にする必要もあるまいと気持ちを切り替える

 

現在A級1位から3位までの隊は近界へ遠征中なのだ。近界の情報収集は必要不可欠である為仕方ない

だがランク上位の太刀川隊と冬島隊及び風間隊が不在とあってボーダー全体の戦力も下がっている

 

その為留守番をしている他の部隊はシフトも含め普段よりキツイローテーションで本部へ待機をしている状態だ

まあ俺達の隊が遠征部隊に選ばれても小町と留美がいるかぎり断るので代わりに行ってくれてると思えば苦にはならない

 

 

俺が鬼怒田さんとトリガーテストについて話し合っていると木虎がやってきた

 

「比企谷先輩をお借りしてもよいでしょうか」

 

「ああ急ぐ話ではないからな比企谷準備できたら頼むぞ」

 

「了解です」

 

木虎に案内されるまま歩いていくと

 

「で、木虎なんのようなんだよ」

 

「比企谷は黙ってついてくればいいのよ」

 

二人っきりになった途端被っていた猫を脱いだ木虎

 

「なあ俺帰っていい?」

 

「逃がすわけないでしょ」

 

そう言うと俺の腕を強引に掴み会議室の一つに押し込んだ

まさか・・・このシチュエーションは・・・

 

 

「おう比企谷よく来たな」

 

待っていたのは嵐山さんでした。どこかで残念がっている俺ガイル

 

「嵐山さんでしたか、で何の用なんですか」

 

「つもる話もあるからな、まあ座れ」

 

俺が椅子の座ると木虎が話始めた

三雲というC級隊員がモールモッドを2体倒した事

先日の新型トリオン兵を討伐したのは木虎でありもともとC級トリガーを無断使用した三雲を連行中だったそうだ

街へ向かって墜落していくトリオン兵が突然川へ落ち木虎は投げ出された事

 

そこに俺の知っている情報を追加した

三雲と言うC級隊員はB級昇級テストが合格できずにいた為俺がなんとか合格させた事

実力的にはモールモッドを2体倒すのは不可能だった事

イレギュラー門の原因は門発生装置を備えた改造型ラッドでバムスターなどの腹部に隠れて隠密行動をしていたらしい事

その解決に三雲が関与していた事

木虎の言うようなトリオン兵の向きを変えるようなトリガーはボーダーには無い事

 

「やっぱり、あいつ怪しいじゃない」

 

「状況証拠から言うと真っ黒だな」

 

「まて比企谷、彼は俺の妹と弟を助けてくれたんだぞ悪い奴じゃないはずだ」

 

「悪人だって子供を助ける事もありますよ」

 

「そうは言ってもな俺は彼が悪人には見えないんだ」

 

「嵐山さんはあいつに騙されてるんです」

 

「その三雲って奴には注意が必要と思いますね。何かを隠してそうですが・・・

 そうそう最近三輪の様子がおかしいんですが何かしりませんか」

 

「そっちの情報は特にないな」

 

「そうですか・・・」

 

今後も俺達は頻繁に情報を交換し合う事とし分れたのだが

作戦室へ戻る途中で三輪がベイルアウトされて戻ってきたことを知らされた

 

「三輪何が起こっている」

 

「お前には関係ない」

 

「なんだと」

 

「・・・」

 

結局三輪は何も話さないままだ俺を置いて指令室へ向かってしまった

その後迅さんとメガネ君も玉狛から本部にやって来たが話もせずに上層部達と打ち合わせに入ってしまったのだ

 

 

 

数日が経ち遠征部隊が帰ってきた翌日俺は木虎に呼び出された

 

「玉狛支部が襲撃された?遠征部隊と三輪隊に?」

 

「そう、城戸司令の命令だったみたい」

 

「目的は?」

 

「新しく玉狛支部に配属になった近界民のブラックトリガーの奪取」

 

「正気か!

 

 ブラックトリガーなんか適合する人間がいるかなんて保障されてないんだぞ

 ましてや近界民のブラックトリガーなんだろ・・・

 

 その為だけで味方の基地を襲撃するなんて正気の沙汰じゃない」

 

「まあ私が防いだけどね」

 

「よくやったな木虎、万が一玉狛支部の職員が被害を受けたらボーダーは崩壊してるぞ」

 

「そこまでの問題なの?」

 

「あたりまえだ。誰が味方を襲撃する組織を信用すると思う

 対策を練る少し時間をくれ」

 

「比企谷何するつもり?」

 

「情報をもう少し集めるのと、整理に時間が欲しい」

 

「なにするつもりかわからないけど・・・何かやるなら私にも声かけなさいよ」

 

「ああその時は協力してもらう」

 

木虎と別れ俺は作戦室で二郎と対策を練る。玉狛の小南にも連絡をとり情報を集めた結果

 

近界民の名前は空閑遊真と言うらしい父親は空閑有吾と言いボーダー立ち上げ時の関係者だとか

持っているブラックトリガーはその父親の犠牲の結果だと・・・

 

ブラックトリガーとは優れたトリオン能力を持った者が自分の命と全トリオンを犠牲にして作られる特別なトリガーだ

ブラックトリガーには作った人間の人格や感性が強く反映されるため使用者と相性が合わなければ起動できないという難点がある

 

ますます城戸司令の考えがわからない空閑遊真は恐らく帰国子女ではないのか?

生まれも育ちも近界かもしれないがもともとこっちの人間かもしれないのに・・・

 

騒動の終息結果は迅さんが自身の持つブラックトリガー風刃を本部へ返上することで治めたらしい

 

「さて、どうする八幡」

 

「まあ上層部は俺達の話なんか聞かないだろうな」

 

「だろうな。排除するか?今ならスポンサー関係者もいるし、最悪政府にチクれば完全に排除できるぞ」

 

二郎も今回の件は問題ありと考えているようだ

受け取り方によっては上層部はボーダーを私物化しているとか派閥争いに部隊を動かしたように見えるぞ

 

人の口には戸は建てられない少なからずこの話はボーダー内に広まることだろう

最悪は上層部へ不信感を持った隊員の反乱や上層部が暴走して組織が立ちいかなくなる

 

ならば・・・先手をとるしかあるまい

 

 

 

俺達はボーダーの隊長達や主要なメンバーを集めた。勿論遠征部隊や三輪隊は除いてだ

 

「それで比企谷どうするつもりだ」

 

嵐山さんの言葉に答える形で俺は現状の問題点を話した

話し合いも警告もなく起こった今回の事件の問題で最後に話した内容は

 

上層部だけでなく何の疑問もなく動いた遠征部隊に今後任務中後ろからいきなり襲撃されたあげく

近界民のスパイに仕立て上げられ反論も許されずに殺害される恐れもあると・・・

 

そして俺達が考えた案を説明した

 

「いいのかそんな事して」

 

「風船が破裂する前に空気を抜きたいんですよ」

 

「なかなか面白れえ事を考えたなハチ」

 

「何等かの罰を与えなければ周りが納得しないでしょうからね

 今の上層部には期待できませんから」

 

そしてその日からボーダー内の空気が変わった

 

「なあ比企谷レポート手伝ってくれないか。最近みんな冷たいんだよ」

 

「お断りします。今の太刀川さんとは話をしたくないのでこれで」

 

「おい待てどう言うことだ」

 

遠征部隊である太刀川隊、風間隊と三輪隊のメンバーと冬島隊の当真はボーダー隊員達から完全に浮いていた

冬島さんだけは遠征艇の船酔いで襲撃に参加していなかったらしく対象外になっている

 

「なあ比企谷く~ん、俺等の扱い最近冷たいんだけど。なんか知んない?」

 

「さあ」

 

「なんかみんな余所余所しいんだよな~もー最悪」

 

「比企谷なんかに聞く必要はない。いくぞ陽介」

 

「まてよ秀次。正直俺等なんでこんな扱いされてるかわかんねーんだよな

 じゃあなんかわかったらよろしく」

 

どうやら米屋は自覚がないらしい自分達がどれだけ危ない事をしていたのかを・・・

だが太刀川隊のオペレーターの国近や風間隊のオペレーターの三上には事前に話はつけてある

 

「それなら仕方ないね」

 

俺達から事情を説明すると渋々ながら納得はしてもらえた。仲良くやっている隊員が上層部の命令一つで敵に回るのだ

傭兵や兵隊なら納得するだろうその為に雇われているのだからだが近界民からの脅威に対抗すべく有志で集まった学生達である

 

それが明確な理由もなく上層部の命令一つで仲間であるボーダー隊員を襲ったのだ

誰がそんな人間と親しくしたいと思うのか距離を開けるのは当然であろう

 

この事を完全に秘密にしてしまっていたら後でバレた時に取り返しのつかない事態になっていただろう

安心して背中を任せられない隊員がいると・・・いつ自分達に牙を向けてくるかわからない隊員が紛れ込んでいると・・・

 

いやそれよりも重大なのは上層部に化けた近界民が偽の命令を出して同士討ちをさせる可能性があることだ

トリオン体による変装の危険性もあり明らかな利敵行為だと考えずに命令に従ってしまう行為はボーダーの壊滅を招く

 

 

 

そしてそんな空気の中A級ランク戦が始まった

戦いの実況?そんなの面白くないからパスだ。だって・・・戦いになっていないから

 

俺と二郎の提案でA級ランク戦では太刀川隊や風間隊、三輪隊とは一切まともに戦わなかった

他のチームと示し合せポイントを与えない作戦を実行したのだ

 

作戦とはその3チームと戦う場合は他の隊とはポイントを分け合いメンバーの何人かを相討ちにさせた後

バッグワームでレーダーから消え時間まで隠れる。また位置が悪い場合はその場でベイルアウトする

 

去年俺達がやられた戦わない戦法を改良したものだおかげで3チームはポイントが稼げずに下位を低迷している

卑怯だって?ルール違反なんかしてないぞこれも作戦の内だろ。そうそう唯我みたいな隙がある奴は倒してから隠れるけどな

 

ランク戦も後半になるとポイント差は明確となりとうとう太刀川さんが切れた

 

「いい加減にしろ」

 

「なんの話ですか太刀川さん」

 

「お前等なんでまともに戦わない」

 

「だって敵になるかもしれない人に自分達の戦闘スタイルなんか見せたくないじゃないですか」

 

「俺達は同じボーダー隊員だろ」

 

「違いますよ」

 

俺はここでネタバラシをすることにしたのだ

玉狛襲撃事件で3チームは信用を失ったといつ命令で自分達に襲い掛かってくるかわからない人を仲間だと思えないと

 

太刀川さんは俺の話を聞くと立ちすくんだままとなった。きっと深く考えていなかったんだろうな

 

 

 

ランク戦終了後各隊長達が集められた上層部ではなく太刀川さんが集めたのだ

 

「まずは謝罪をしたい。すまなかった」

 

頭を深々と下げた太刀川さんと風間さん

 

遠征から帰ってきてすぐに近界民の討伐と言われた為疑うことも影響も考えずに行動してしまった

そもそも仲間であるボーダーの支部へ実力行使で向かうことが浅はかであったと・・・

 

俺は散々言われている今回の危険性を改めて説明した

ボーダーの戦力+ブラックトリガーだったものをわざわざ減らす事になりかねないと

 

二郎も続ける

 

「もし俺が襲われたら敵対するし任務中の隊員を襲って防衛の邪魔するな

 いや、今ここを襲っている近界の国と連携して妨害や門の誘導なんかもするかもな」

 

二郎の発言は衝撃的だった完全にこちらにいるブラックトリガーと敵対したら・・・

初動で倒せればまだしも負けたり逃げられたらどんな被害が出るのかもわからない

 

市民を人質に取られたら・・・ここから距離のある場所東京などに門が開いたら・・・

ブラックトリガーの性能だって把握しきれていないのだ敵対していない相手に手を出すべきではない

 

「近界民は全て敵だ」

 

黙っていた三輪が突然発言をした

 

「なあ三輪例え話をしよう

 

 アメリカの兵隊に家族を殺された仲間が集まって復讐の準備をしてました

 準備も終わりいざと言う時に外国人だからと言ってフランスの軍人に襲い掛かった奴がでました

 

 襲われたフランスの軍人は怒って敵対しアメリカと手を結びました

 折角の準備も敵が増えた事で無駄になったばかりか強力になった敵に味方は次々と倒されてしましました

 

 さて、最初にフランスの軍人に襲い掛かった奴はどうなったでしょうか」

 

「黙れ俺が全ての近界民を倒す」

 

「お前じゃあ無理だ精々敵に利用されて見方を攻撃しかねないな

 なあ城戸司令が近界民の化けた偽物だったらお前どうしてた?」

 

三輪は無言もまま俺を睨むと会議室を出て行ってしまった

しかし三輪が居なくなても会議は続けられた

 

「今回の汚名を挽回したい」

 

太刀川さんが言うが

 

「それを言うなら返上ね」

 

加古さんがあっさりと返す

 

結局太刀川さんと風間さん達は本部で地道に信頼を取り戻す事とし各隊長も協力することで会議は終了した

会議室からの帰り道俺は那須と一緒だったわけだが

 

「佐久間君は相変わらずね」

 

「ああ二郎は敵に回すと怖いが味方なら心強い」

 

「ねえ私が偽物と並んでいたら判別できる?」

 

「さっきの話か簡単だ」

 

そう相手がトリオン体なら傷をつければ一目瞭然だ。なにせ血でなくトリオンが漏れてくるからな

 

「そっかわかるんだ私の事」

 

「おーい玲どうなった?」

 

「あっ比企谷先輩」

 

熊谷と日浦が那須を待っていたようだ。那須から二人に今後は3チームの態度を見守ることになったと説明

まあ詳しい話は作戦室に帰ってからだろう

 

「やっと奈良坂先輩とお話しできるんですね

 比企谷先輩は責任とって指導して下さいよ」

 

「なんで俺が?俺ぜんぜん悪くないよね。どうするかは各自に任せたよね」

 

「いや比企谷が悪い」

 

「そうね比企谷が悪い」

 

「そうそう比企谷先輩が悪い」

 

「いつも俺の扱い酷くない?」

 

なんか那須隊のメンバーと話すといつの間にか俺は悪者にされてしまう

まあこいつ等の顔を見るかぎり本気ではないようだし問題ないか

 

とりとめのない雑談をしていると俺の腕がひかれた

 

「比企谷先輩を借りていきます」

 

今度は木虎に連れられていく俺なんか似たような事あったな

連れられて行った先には米屋達が待っていた

 

「さあ会議がどうなったか教えて下さい」

 

「お前は嵐山さんに聞けよ」

 

「教えて下さい!」

 

うっ木虎が怖い・・・三輪は米屋に話をしなかったのかと会議の内容を話してやった

 

「マジか!やーばい俺達そんな目で見られてたの」

 

「そうか三輪はいなくなったか」

 

「まあ三輪の代わりに米屋か奈良坂がやるんだな」

 

その後本部では太刀川隊や風間隊、三輪隊のメンバーがジュース片手にうろつく姿が見られるようになる

奢りながら謝罪と言い訳をしているようだ

 

だが木虎お前は俺にまでたかるのは筋違いってものだぞ

こうして今回の事件は終息を迎えた上層部への不信を残したまま・・・

 


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