俺のボーダーとしての青春はまちがっている。【俺ガイル編】   作:ばけねこ

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【第十二章 新年と別れと出会い】

新年早々葉山の暴走はボーダー内でも通達されたが目立った混乱も起きていなかった

話を聞いた隊員達もやっぱりだとかあの屑が迷惑なと陰口を叩く程度であった

 

「ねぇねぇヒッキー明日はゆきのんの誕生日なんだよ」

 

「そうなのか・・・それで?」

 

「だからー誕生会やるんだってば。あたしだってやってもらったし」

 

「俺は何もしてもらってないぞ」

 

「だってヒッキーの誕生日なんて知らなかったし・・・」

 

「留美だって実家から戻ってないんだぞ。仲間外れにするとあいつ泣くんだぞ」

 

結局プレゼントを渡す程度にすることにし、代表として俺と由比ヶ浜が雪ノ下の家へ行って渡したのだ

留美が種類を決め由比ヶ浜と小町が選定したパンさん比企谷隊バージョンヌイグルミはなかなか好評であったらしい

 

「このパンさんは目が歪んでいるしこっちは顔が怖すぎるのは作成中に大地震でも起こったのかしら」

 

と雪ノ下がわざわざ指摘したのは俺と二郎への皮肉であろう

 

次に俺と二郎からと渡した等身大パンさんを見た時に態度が急変した

どこに売っているのだとかどうやって手に入れたのだとか煩くなったのだ。たまたま見つけた非売品だと言うと

 

「こういった物は保存用鑑賞用布教用と最低でも3体用意するのが常識なのではないのかしら」

 

お前は何処の海老名さんなんだよ布教用ってなんだよ

要らないのかと聞いた時の雪ノ下の表情は獲物を横取りされないように威嚇する猛獣そのものであった

 

 

新学期が始まった2Fの教室には葉山の姿はなかったHRで葉山が学校を辞めたと伝えられただけに止まったのだ

 

三浦にボーダーで聞いた話を簡単に伝えたところ興味なさそうにスルーされてしまったのは解せぬ

これ俺が無視されたんじゃないよね話に興味なかっただけだよね・・・

 

俺達の会話を聞いていたであろうクラスメート達の反応は様々だったが戸部グループだけは微妙な顔をしていたな

 

 

「そうか・・・葉山には私の言葉は届かなかったのだな」

 

「あいつ自分に都合の悪い話は一切聞きませんでしたからね」

 

「耳の痛い話だな」

 

「平塚先生、要件を早く伺いたいのですが」

 

「いやそうだったな、この隣にいる一色を奉仕部へ入れたいのだ」

 

そう最初から平塚先生の隣には女生徒が座っていたのである

誰も何も言わないから俺だけに見える座敷童の学校版かとも考えていた。そうか実在してたんだなよかった・・・

 

「一色いろはです。先輩たちの活躍は色々聞いていますのでよろしくお願いします」

 

「なぜ彼女が必要なのでしょうか」

 

「まずは本人の希望が一つ

 次が雪ノ下のCMの影響で受験希望者数が増えてな当然4月になれば奉仕部の仕事が増えそうなのだ」

 

なんだと今年は小町が受験するんだぞライバルが増えるのはまずいぞ

 

「そ、そんなに受験倍率があがりそうなんですか・・・」

 

「ん、どうした比企谷青い顔をして」

 

「ヒッキーの妹の小町ちゃんがここを受験するみたいなんですよ」

 

「ほうあの子か、たしか正規のボーダー隊員だったなこれは奉仕部へ入部してもらわないといけないな」

 

「先生、比企谷君は受験倍率が上がることにより小町さんが受験を失敗する心配をしているのです」

 

「なるほどそうか・・・比企谷、受験者数の増加に伴い若干ではあるが合格者数も増やす事が決定した

 特にボーダー関係者は優遇するし聞いてしまった以上私も力になるから心配いらんぞ」

 

「せ、先生・・・」

 

感動のあまり先生の手を握ってしまいそうになった俺を押しとどめたのは

 

「あの~私の事を無視しないで下さいよ」

 

「「「あ」」」

 

「すまんすまん一色、そう言った訳でな奉仕部を増員する事にした」

 

「一色さん貴方自身はボーダーに興味あるのかしら」

 

「はい雪ノ下先輩や由比ヶ浜先輩に憧れてます」

 

「いや~そんな事言われても困るな~」

 

「いえいえ体育祭の時といいCMの中でも活躍してたじゃないですか

 一年生の中ではお二人はカリスマなんですよ」

 

「一色って言ってたな動機としてならばいいが憧れだけじゃ続かんぞ

 ボーダーをアクセサリみたいに考えてるんだったら止めとけ」

 

「あなたさっきから私の邪魔ばかりして、いったい何なんですか」

 

「はぁ?」

 

「「プッ」」

 

「い、一色・・・お、お前比企谷を知らんのか」

 

「比企谷って誰ですか」

 

「俺帰っていいかな・・・」

 

「ひ、比企谷君待ちなさい」

 

「なあ一色総武高初のボーダー隊員の話は聞いた事あるだろう」

 

「ええ一斉検査の時に話題になった人ですよね。なんでもA級隊員でボーダー内でもかなり重要な人物だったとか

 あのCMに出てた部隊の本当の隊長でお二人をボーダー隊員にした立役者だって事ぐらいは知ってますよ」

 

「ああそれだ、その隊長がこの比企谷だ」

 

「え、えーーー」

 

叫び声を上げたかと思うと俺に視線を移ししばらくしたら頭を抱えて座り込んでしまった

シッパイシタシッパイシタドウシヨウコレハキットユメナンダ・・・

 

静寂の中・・・コンコン、反射的に雪ノ下が答えた

 

「どうぞ」

 

前生徒会長と現生徒会長が現れた

 

「え~と・・・お取込みだったかな」

 

二人ともが俺をチラチラ見ているのだが・・・

 

「比企谷君貴方はそろそろボーダー本部に移動したほうがいいのではないかしら」

 

「そ、そうだよヒッキーあたし達はもう少し時間かかりそうだから先に行ってて」

 

「うむ比企谷ご苦労だったな。今日はこっちの二人がいればいいからお前は任務を優先してくれ」

 

追い出されるように奉仕部を後にしたんだがいったいなにが起こったんだろうか

 

 

「小町、嬉しい知らせと悲しい知らせがある」

 

「嬉しい方からお願いします」

 

「総武でも受験時にボーダー関連者は優遇されるようになるらしい。かなり内申点が上がると思えばいいか」

 

「やったー・・・で悲しい方は・・・」

 

「CMの影響で雪ノ下目当ての受験者が増大したみたいだ・・・受験倍率が上がった・・・」

 

「な、なんだってーこの前の模試小町合格ラインギリギリなんだよ困るよそんなの・・・そうだおにいちゃん変わりに受験してよ」

 

「お、落ち着け小町

 あわよくばCMの二人が見たいだけの本命が私立の記念受験者もいるだろうから」

 

「そんなの当てになんないよ。二郎さんもなんか考えてよ」

 

「そうだな、俺だったら受験日にぶつけて二人を出すイベントを起こすな握手会と合わせてな」

 

「それだーみんなイベントを見に行くから受験者減るよみんな私立に行けばいいんだよ。小町は後で録画みればいいから」

 

「それだけじゃないぞ会場を工夫すれば交通機関の邪魔もできる家から受験会場に直接いける小町ちゃんが有利になる」

 

「ちょー二郎おま・・・小町になんて事を吹き込みやがる」

 

即座にそんな悪魔的発想が出来る二郎は相変わらず二郎であった。それって総武だけでなく公立高校全てに影響が出るぞ

 

「もっとも最初の優遇てのがボーダー枠だった場合は、ほぼ合格は保障されていると見ていいんだけどな

 最低でも授業についていける程度の学力は必要だろうが」

 

「そう言えば合格者も増やすって言ってたな。それってボーダー枠なのか」

 

「可能性は高いだろ

 現にボーダー隊員のお蔭で受験者数が増えたのなら今後も期待したいだろうし裏で点数が加算されててもおかしくないぞ」

 

「なんだ、おにいちゃん脅かさないでよ。危うく小町は暗黒面に落ちるところだったよ」

 

「正攻法でも今の成績が合格圏ギリギリなんだったらもう一押しすればいい

 雪ノ下にでも勉強を見てもらえれば安全圏にいけるんじゃないか。あいつ総武でもトップクラスみたいだからな」

 

「うう二郎さんの言葉は小町の心に沁みるよ。おにいちゃんのは有毒だけど二郎さんのは有益だよ

 これが勉強出来るだけの人と頭がいい人の違いなんだね」

 

「小町が酷いよ冷たいよ~」

 

「八幡は八幡で小町ちゃんの体調管理をしっかりやれよ風邪もだがインフルなんかだと致命的だぞ」

 

「あら何を騒いでいるのかしら」

 

遅れてきた雪ノ下と由比ヶ浜が作戦室へ入ってきた

 

 

「ああ、小町ちゃんの勉強を雪ノ下に見て貰えないかって話をしてたんだがどうだ」

 

「ええ構わないわ」

 

「本当ですか、ありがとうございます」

 

「私も小町さんが後輩になってくれれば心強いから」

 

「あたしも小町ちゃんが後輩になってくれれば嬉しいよ」

 

この流れでは二郎に言い返したいが何も言い返せない。なんでスムーズに雪ノ下から許可貰えるんだよ

あいつ天邪鬼なんだぞ入ってきた時のセリフなんか俺達を罵倒するための前フリだったろ・・・

 

「あ、雪ノ下すまん。小町の事よろしく頼む」

 

「あなたの為にやるわけではないわ。勘違いしないで貰いたいのだけど勘違い谷君」

 

「何でも谷を付ければ俺になるわけじゃねぇからな」

 

ほらコレだよこれが雪ノ下なんだよ隙あらば罵倒してくるんだよこいつは

・・・これって俺限定じゃないよね

 

「解っているわ何でもヵ谷君」

 

「わかってねー」

 

「そうだヒッキーが帰ったあとにね」

 

と由比ヶ浜が話し出した内容は俺が奉仕部から出て行った後の話だ

 

生徒会長コンビの話とは受験生の多くからボーダー隊員に会いモチベーションを高めたいとの要望が多く出されている件だった

下手に断った場合不法侵入なども考えられる為学校としても穏便に済ませたいと考えており奉仕部の出番となったのだ

 

「で結論は出たのか」

 

「それがね受験当日に受付でもすればいいかと思ってたんだけど」

 

「受験生以外も来て必ず混乱が起きるだろうな受験どころではなくなるぞ」

 

「そうなんだよ。だからねヒッキーなんかいい方法考えてよ」

 

またこいつ等俺に問題を押し付けてきたよ

俺はしばらく考えるフリをしながら二郎を見たが奴は苦笑いをして俺が言えと催促してきやがる

 

「まあ手はある」

 

「え、何々」

 

「今年から総武はボーダーの提携高になったわけだろ、だから受験生に対して変更事項などの説明会をすればいんだよ」

 

「そっかー流石ヒッキーだよ。あたし達はその説明会に出ればいいんだね」

 

「なるほど、それなら余計な野次馬は排除できるわね。あなたにしては考えられた案だわ」

 

若干毒を含んだ雪ノ下の発言であったが了承されたので問題はなかろう

 

さてあの時俺が部室を追い出された理由は生徒会長選挙の時に関係ないお願いをしてしまって罰が悪かったからだそうだ

決して俺が嫌われていた訳ではなく安心した

 

 

 

由比ヶ浜によると今月に入ってボーダー内で導入されたモールモッド討伐戦が流行っているのだそうだ

開発時には俺や二郎も関わり苦労した甲斐があると言うものだ

 

しかもポイントのつくC級だけでなくA級やB級隊員にも好評だとか

 

「ねぇねぇヒッキーとサクジーも10体討伐はクリアしたの?」

 

由比ヶ浜がボーダー内で流行っている10体討伐の話題を振ってきた

 

「俺達は導入開始されてからやってないな」

 

「あれムズいんだよ。手間取っているとタイムオーバーになったり区域外にモールモッドが出ちゃうとそこで失格になるんだよ」

 

悪い由比ヶ浜その調整したのは俺達だ

 

モールモッド討伐は制限時間が7分で必ずしも隊員を狙ってくるわけではなく放っておくと区域外へ出るようにした

実戦でも警戒区域へ出てしまう前に倒す必要があるからだ。出現箇所も毎回ランダムにし討伐パターン化も封じてある

 

C級のポイント稼ぎの助けになればと数が多くなるほどポイントを増やしたことも関係があったのか

調子に乗ったC級隊員が10体討伐に挑戦して悉くが失敗し手本を見せてやると挑戦したB級隊員も失敗したことが火種となった

 

結局最初に討伐を成功したのは影さんでなかなか面白いなとの感想を出した後

太刀川さんや二宮さん、東さん等の実力者達が次々に成功させ10体討伐が一流の証としてのステータスになったそうだ

 

「ヒッキーなんか簡単に倒す方法とかないの」

 

「ない自分で考えろ」

 

「そうね由比ヶ浜さんあれは武器やポジションによってもやり方が変わるし人に聞くものではないわ」

 

「ヒント、ヒントだけでいいから」

 

よほど成功させたいのか由比ヶ浜が食い下がってきた

 

「留美は成功した」

 

「え~留美ちゃんもうクリアしたの」

 

「小町も終わりましたよ」

 

「小町ちゃんまで・・・」

 

がっくりと項垂れた由比ヶ浜を哀れに思ったのか二郎が助け舟を出した

 

「あのモールモッドは実物を忠実に再現してある実戦経験で動きや特徴を把握していれば攻略方法も見えてくるはずだ」

 

「なるほどそれがヒントなのね」

 

「え~ゆきのん一人だけ納得するのはずるいよ。あたしにも教えてよ」

 

雪ノ下に縋り付く由比ヶ浜はゆりゆりしいぞ

 

 

一月も後半になると3年生たちは自由登校となるそんな卒業生に呼び出された俺ガイル

 

「今日はごめんね。卒業する前に比企谷君にはきちんとお礼を言っておきたくてね」

 

「俺はそんな事をしてもらう程崇高な人間じゃありませんよ」

 

「そんな事ないよ、それにこれは私のケジメなの」

 

「文化祭で私達の目を覚ましてくれてありがとう

 

 体育祭で見事な演武を披露してくれてありがとう

 

 そして生徒会長選挙で私達のミスをフォローしてくれてありがとう」

 

その人とは前生徒会長の城廻めぐり先輩だ、ちょっと別な期待をしていてドキドキしてしまったのは内緒だが

 

俺の目の前で腰を90度まげしっかりと頭を下げた先輩がいた。でもこれって・・・

 

「いやいや先輩頭を早く上げて下さいよ。見る人によっては俺が全力で断られてるように見えるじゃないですか」

 

俺の言葉の意味を理解したのか顔を真っ赤にしてあたふたし始めた

 

「あ、ごめんね、そんなんじゃないから」

 

「わかってますよ」

 

「そうそう新しい生徒会もよろしくね

 比企谷君お世話になりました」

 

こうして城廻めぐり先輩は晴れ晴れしく俺の前から去っていった

 

 

「せんぱーい」

 

部活でも卒業生達との別れがあるのか時々こう言った声も聞こえてくる校庭

俺は習慣であるMAXコーヒーを体内に補給するべき自販機の前に来ている

 

さて、午後の授業を乗り越えるエネルギーを取るとしますか

 

「せんぱい無視しないで下さいよ。可愛い後輩が呼んでるですから」

 

「一色自分で可愛いなんて言うなあざとい」

 

「え~せんぱいこう言うシチュエーション好きそうに見えるのに」

 

「なんでお前が俺の性癖を知ったつもりになってんだ」

 

「いやーせんぱいの事色々調べまくった成果ですよ」

 

なんで一色がこんなに馴れ馴れしくなったのかと言うと

新入部員として後日改めて一色を紹介されたんだが

 

「始めまして比企谷先輩、私は一色いろはと言います。今度奉仕部へ入部することになりました」

 

「この前会ったよね・・・俺達」

 

「今日が初めてなんです!この前のは無かった事なんです」

 

とあの日の事は無かった事にされてしまったのだ・・・そして完全に開き直ったのだ

 

「それでですね私もボーダーかオペレーターを目指したくてですね色々先輩にお聞きしたいんです」

 

「なら雪ノ下か由比ヶ浜にでも聞けあいつ等はカリスマなんだろ」

 

「何を言ってるんですか確かにお二方はカリスマですけど、せんぱいは神と呼ばれてるんですよ」

 

「は?ペーパー?」

 

「ゴッドですよゴッド

 

 ただの生徒が総武高とボーダーに提携結ばせたり、短期間でボーダー隊員を二人も育て上げたり

 終いには偽りのカリスマ悪人葉山を倒したと噂され今や総武の神なんです!せんぱいは」

 

な、なんだといつの間に俺は神にさせられていたの・・・お布施なんか貰った覚えないぞ

しかも提携はメディア対策室長根付さんの仕事だったし二人がB級に上がったのは本人の努力だ葉山なんかは自爆だしな

 

「所詮は噂で真実は違うんだがな。現に俺の顔や名前はいっさい出てこないだろ」

 

「そこが不思議なんですよね。普通これだけの偉業を達成した人ならおっかけやら取り巻きがいるはずなのに

 でも私はせんぱいの秘密を知る数少ない一人になれましたからうれしいですけど」

 

「はいはい、あざといあざとい」

 

 


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