インフィニット・ストラトスadvanced【Godzilla】新編集版   作:天津毬

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今回は戦略機のコックピットでシミュレーションを用いた訓練回です‼︎
え?もうISじゃなくて良いんじゃないって?
…それ言ったら全部終わっちゃうんでそれはNGで…お願いします。

なお、マブラヴを知ってる人は、なんとなくですが詳しく分かる描写もあったりします。


EP-04 仮想世界での訓練

 IS学園・第2シャフト・戦略機格納庫。

 

 

 シミュレーター内の仮想世界に作られた廃墟を、6機の戦術機…3式銀龍ほか、16式荒吹壱型丙、トーネードⅡ、16式荒吹3機が、腰の左右両位置についた跳躍ユニットのメインスラスターを吹かして、短距離跳躍で、ところどころアスファルトにヒビがはいり、場所によっては抉れて、クレーターになっている道路を移動する。

 銀龍や荒吹壱型丙、荒吹の機体の右肩には日の丸、トーネードⅡの右肩にはイギリスの国旗のマークが描かれ、全機の左肩には【学守-02】–––––––『学園守備隊・第2部隊所属』を意味する文字が、明朝体で書かれて、そこに仮想世界の人工太陽の光が反射していた。

『HQ(ヘッドクォーター:本部)より学園守備隊第2部隊【ハウンド】各機に通達。前方に戦術機6、IS4機。これを撃破せよ。』

 戦術機の管制ユニット内…ようはコックピットに響き渡る上官、学園守備隊に戦力を割いている、特務自衛隊第1戦術機大隊【サーベラス】大隊長・神宮司まりも三佐の号令。

 千尋は前方の情景と戦況ウィンドを交互に見分けながら聞いている。

 慣れたとはいえ、シミュレーションとはいえ、やはり気は抜けない。実戦と同じ気持ちでなければ本番で、真っ先に死ぬ。

 学園に通う前にまりもに鍛えて貰った時、一体シミュレーションだけで何回殺されたか…それを思い出すとゾッとする。

 それに、まりも、という可愛らしい…かな?そんな名前なのに率いる部隊名は【サーベラス】…地獄から逃げようとする者を捕らえて貪り食う、三首の魔犬・ケルベロスの英語読みだ。

 それと猛将ぶりが理由か、まりもは別名・狂犬神宮司、なんて呼ばれている。

 そして千尋たち学園守備隊第2部隊【ハウンド小隊】は、その、まりもの大隊の傘下に置かれていた。

「「「「「「了解」」」」」」

 全機が応答する。

 だが千尋と箒、神楽以外は余裕のない声音で言う。

 当然だろう。

 戦術機を––––––人殺しの道具を使ってシミュレーションとはいえ、人を殺すのは初めてなのだから。

『ハウンド1は4と6を随伴させ、戦略機を排除。ハウンド2は3と5を率いてISを排除せよ––––––。』

「「了解‼︎」」

 千尋––––––コールサイン・ハウンド1はハウンド4––––––セシリアとハウンド6––––––本音を率いて、

 箒––––––コールサイン・ハウンド2はハウンド3–––––神楽とハウンド5––––––簪を率いて、

 部隊は二手に分かれる。戦術機とISの混成部隊を、挟撃するのだ。

 …普通は戦術機とISで部隊を組むなんて無いらしいが。

 千尋は戦況ウィンドを見る。

 前方、11時の方角から戦略機。数は2機。残り4機はその場で待機。IS部隊は箒の部隊に食いついていた。

 接近中の戦術機の兵装は突撃砲…36ミリ機関砲と120ミリ短距離滑腔砲の複合ライフルだ。

「俺が突撃する。ハウンド4、6、援護射撃頼めるか?」

 千尋が、問いかける。

『え、援護なんてどうしたらいいの〜』

 本音が聴く。

「適当に弾をばら撒いてくれりゃ良い。射線に俺が出ても、システムが正常に作動してれば敵味方識別機能が味方誤射防止の安全装置を作動させる」

 千尋はそういうと––––––

「…行くぞ」

 千尋は低い、それでいてまるで野生の獣が放つような殺気を孕んだ声音で、言い放つ。

 瞬間、跳躍ユニットのロケット/ジェットハイブリットスラスターのロケットエンジンを点火。

 同時にセシリアのトーネードⅡが127ミリ速射ライフルと、本音の荒吹が36ミリ機関砲のけたたましい砲声を轟かせながら、マズルフラッシュを放ちながら、援護射撃を開始する。

 その間、千尋は一気に加速し、ジェットエンジンに切り替え、速度を維持しながら、左手に持つ追加装甲シールドを前方に突き出し、36ミリ突撃砲の下部についている複合装備、120ミリ短距離滑腔砲から、戦術機2機の内、手前の機体に向けて、タングステン合金の徹甲弾を、穿つ。

 砲弾が敵戦術機の、コックピットブロックに命中し、タングステン合金の砲弾が装甲と相互侵蝕を引き起こし…コックピットブロックが、爆ぜる。

 実戦なら、これで敵戦術機のパイロットは御陀仏になる。つまり、死んだ。

 千尋は、今シミュレーションの中とはいえ、人を殺した。

 だが、千尋は止まらない。

 そんな”今更、人を殺した程度の事”では止まらない。

 撃破した敵戦術機の僚機がすぐ反応し、千尋の銀龍に36ミリ突撃砲を発砲する。

 千尋はすぐ様追加装甲シールドで36ミリを防ぎ、メインスラスターを吹かし、接近しながら自身の突撃砲を脇の下を通すダウンワード方式の背部兵装担架に格納し、右腕の上腕部に格納されているアームブレードを展開し、敵戦略機の眼前に迫る。

 敵戦術機も回避する手段もあったが、腐ってもイギリス代表候補生で狙撃の腕が高い セシリアと、日本代表候補生で暗部の一員である本音による射撃が敵戦術機をその場に釘付けにしてしまう。

 動けば36ミリや、それに混じって120ミリや127ミリが飛んできて、撃墜されてしまうから。

 そして今、追い打ちをかけるように千尋の銀龍が接近してきている。

 だから、まずはそれを撃破しようと判断し、下腕部のナイフシースから近接自衛短刀を取り出し、構える。

 それを千尋は、シールドを左腕マニピュレーターで一度引き、左ストレートの容量で、勢いを付けて、敵戦術機に殴り込む。

 ガゴォンという重金属のぶつかり合う音が響き、敵戦術機は体勢がぐらついてしまう。

 瞬間、千尋は右腕のアームブレードを、敵戦術機のコックピットブロックに向けて突貫させ––––––

 アームブレードの刀身がコックピットブロックの装甲に突き立てられた一瞬、火花を散らして装甲がアームブレードを防ぐが、千尋は、ひと思いに、力を込めて、アームブレードを突き刺した。

 それで、敵戦術機は沈黙する。

 …シミュレーター開発者の趣味か、それとも人を殺した実感を持たせる為か、アームブレードを突き刺した衝撃で装甲が裂けたコックピットブロックの隙間から、赤い、紅い鮮血が垂れていた。

 …現実ならコックピットブロックの中にいた奴は、突き刺されたアームブレードの刀身に潰されて、ミンチになっている筈で––––––よそう。

 千尋は首を振ってその思考を振り払う。

 殺らなきゃこっちが殺られる。罪悪感を覚えないと言えば嘘になるが、いちいちそんな事に構っていては、次に自分が死ぬ。

 だから、他人に構うのは、特に敵に構うのは、後回しだ。自分が死んだら元も子もない。

 千尋は自分に言い聞かせた。

 残り4機。

 瞬間、ハウンド2––––––––箒の戦略機・荒吹壱型丙が敵ISを舞うように、叩き落とすのが見えたと同時に、4機の戦術機が箒の部隊に接近するのが、戦況ウィンドに映された。

「オルコット…ハウンド4は箒の部隊に接近する戦術機を狙える位置に移動!ハウンド6はついて来い‼︎」

『…わかりましたわよ』

 セシリアは男に命令されるのがまだ不満なのか、少し膨れた声音で応じる。

 だが、うまく行けば敵を挟撃できるとわかっているから、従う。

『うん、わかった〜』

 本音は本音で気の抜けた返事をするから千尋は、若干困る。

 けれどすぐに平静を立て直し、本音の荒吹を引き連れ、箒の部隊への、合流に向かう。

 

 

 

■■■■■■

 

 

 

 同時刻。

 ハウンド5––––––荒吹に乗りながら、36ミリと、複合されている120ミリで援護射撃を務める簪は前方の光景に唖然としていた。

 今、世界で当たり前のように世界最強、といわれているISが、あっさりと、ハウンド2–––––––箒の戦術機・荒吹壱型丙の振るう、長刀の一振りを機体に受け、絶対防御が発動するも、さらに駄目押しの、左脚部の姿勢制御用の補助スラスターとメインスラスターを全力で吹かして速力を付けた左脚部の蹴りによる質量エネルギーと移動エネルギーで、絶対防御は貫かれ、敵IS…モデルは恐らくラファール・リヴァイブは、蹴りの衝撃で仮想世界のビルの壁面に叩きつけられ、砂埃を上げた。

 砂埃の晴れた場所には、形容し難い姿になった、”人間だった何かの残骸”が転がっていた。

『簪ちゃん?ボーッとしてないで、援護射撃してよ』

 両腕の突撃砲と脇下からダウンワード方式で前面に展開した兵装担架の突撃砲、計4門同時射撃でISを攻撃する神楽が、簪に言う。

 それで簪は我に返り、左手のシールドで身を守りながら、突撃砲を構え、ISに向けて、撃つ。

 だが、やはり伊達に世界最強と言われているわけではないIS、ちょこまかと回避し、当たっても絶対防御が作動してダメージを防いでしまう。

 計6基の36ミリとたまに放たれる120ミリが飛び交うが、今の所、箒が落とした2機を除いても1機しか撃破出来ていない。

 元よりその場に釘付けにする為だから落とさなくても良いのだが。

 …今更だが、戦略機部隊は全員の顔が各機のモニターに映っており、簪は当てるのに必死の顔、神楽は羽虫を前にしたような忌々しげな顔、箒はまるで”機械か兵器のような涼しい顔”をしていた。

 敵も当然、50口径アサルトライフルで撃ってくる。けれど荒吹の90式戦車と同じセラミック複合装甲やダイヤモンド合金の追加装甲シールドに、全て弾かれてしまう。

『あ”〜もう、鬱陶しいったらありゃしない。箒ちゃん、やっちゃってよ』

 神楽が、酷く鬱陶しげに、言う。

 

 それを聞いていた箒は

「分かった」

 背部兵装担架から予備の長刀まで抜き、二刀構えになり、メインスラスターを吹かす。

 先程より圧倒的に速い。

 ISに迫り、接触する…寸前のところで高度を僅かに上げる。

 ISより僅か数メートルといったくらいの高度で両腕部の姿勢制御用補助スラスターを吹かして、二太刀の長刀による斬撃を、加える。

 当然ISは対処しようとするが、遅い。

 躱す前に落とされる。

 だから防御に徹する。シールドエネルギーの大半を使って絶対防御の出力を上げる。

 確かにそれで箒には対処できる。

 けれど、”敵は、箒だけじゃない”。

 瞬間、箒の荒吹壱型丙の眼前にいたISは、”真下”から36ミリと120ミリの4門同時砲火を受ける。

 神楽の荒吹壱型丙のものだ。

 そのせいで絶対防御の出力が激減してしまう。

 そこに、箒が斬撃を加える。

 一撃目。

 絶対防御はまだ耐え抜く。けれどほぼ防御力はないに等しくなる。

 そこへ、もう一太刀が、来て––––––

 僅かとはいえ、物体が自由落下する落下エネルギーと機体の両腕部が加速した時の移動エネルギー、そして長刀の質量エネルギーが加わり、

 一閃。

 絶対防御が破られ、パイロットの肉体がそれらのエネルギーに耐えられずに、”弾けた”。

 瞬間、赤い、紅い、数秒前まで人だったモノの鮮血と臓物の花火が、仮想世界の空に上がる。

 箒の荒吹壱型丙が地面に着地すると、同時に箒は表示されている各機のパイロットの顔色を見る。

 神楽は、やるじゃん、と言いたげな顔だが、簪は殺人鬼を見るような顔をしていた。

 一瞬、いっそ何か言ってやろうかと思うが、辞める。

 初めてだし仕方ない。それに当然だろう…あいつは、慣れてないんだから。

 と箒が思った瞬間、

 ・警告:2時方向より敵機接近

 そう、モニターに映される。

 箒はチッと舌打ちすると、バックブーストで後退し、近接戦でISを撃破する際に地面にスパイク部分を突き刺して置いていたシールドと、その脇に置いていた突撃砲を回収し、予備の長刀を兵装担架に収納し、神楽の隣に立つ。

『ねぇ、突撃砲のマガジン交換するから援護頼める?二人とも』

 神楽が声をかける。

「分かった」

 箒がシールドを構え、突撃砲を構え直し、36ミリの発砲を開始すると、簪も我に返って、

『あ、う、うん‼︎』

 急ぎ、応答する。

 突撃砲はマガジンが尽きたら、予備の突撃砲に切り替えて使うのがセオリーだが、先程神楽は4門同時射撃をしたため全ての突撃砲の残弾が限りなくゼロだった。

 さらに戦術機はエレメントを組むのが常識で、1機がマガジン交換中はもう1機がフォローして応戦するのだが、簪が戦術機に不慣れであるが故に、射撃が苦手な箒まで、カバーに入る。

 神楽が突撃砲の2丁目のマガジンを交換し終えようとしたその時、敵戦術機部隊の最後尾の戦略機の兵装に目が行く。

 肩部装甲にマウントされているミサイルコンテナ、92式16連装多目的自律誘導弾システムに。

 しかも、そのミサイルコンテナを積んだ機体に、ロックオンされる。

 同時に、箒は血の気が引いた声音で、反射的に叫ぶ。

「–––ッまずい‼︎総員遮蔽物に‼︎」

『『え?』』

 二人とも反応が遅い…‼︎

 今まで自分たちは路上でシールドを遮蔽物にして撃ち合っていたが、あれはシールドでは防げない。

 あれは”シールド諸共貫通して目標を破壊できる”、フルメタルミサイルを積んだタイプのミサイルコンテナだ。

 しかも、たちの悪いことにあのミサイルは厚さ1メートルのコンクリート10枚を易々と貫通してくる。

 市街地でいきなりロックオンされたらやり過ごせない。

 そして、ミサイルが、放たれる。瞬間、

 ドォンという砲声と共にミサイルコンテナが貫かれ、ミサイルの弾頭内の推進剤に引火し、爆発した。

 

 

■■■■■■

 

 

 仮想世界の市街地にある、一際高いビルの屋上。

「ふぅ…どうにか間に合いましたわね……」

 セシリアの乗る、戦術機・トーネードⅡが屋上に寝そべり、127ミリ速射ライフルを構えていた。

 先程のミサイルコンテナを搭載した敵戦術機のミサイルコンテナをそのライフルで狙撃したのだ。

 ミサイルコンテナを積んだ機体が見えた時は肝を冷やしましたわ…全く、心臓にも悪いですわ。

 セシリアは思う。

 敵戦術機部隊は先程のミサイルコンテナが切り札だったのかして、撃破された機体を前に困惑していた。

 最前衛の1機だけが箒の部隊に対してまともに攻撃できていた。

「ハウンド4…ミサイルコンテナ(障害)はクリアしましたわ、いつでもどうぞ」

 セシリアは言い放った。

『サンキュ』

 千尋は、無線で礼を言った。

 

 

■■■■■■

 

 

 敵戦術機部隊の最後尾。

「行くぞハウンド6援護を頼む。…突撃開始‼︎」

 千尋が命じる。

 瞬間、敵戦術機部隊最後尾の隣のビルの壁を、千尋の機体がメインスラスターを吹かしながら、シールドを前に構えながら、突き破る。

 すぐ右手にはセシリアが狙撃し爆発、大破させた機体、左手に今の所健在の最後尾がいた。

 最後尾の機体は直ぐには反応出来ず、すかさず銀龍の上腕部アームブレードを展開し、千尋は、その機体に斬りかかる。

 まず、背後からの敵襲にも対応でき、迎撃も可能な兵装担架を斬撃で破壊する。

 その敵機の背後では中衛の機体が本音の荒吹の援護射撃をシールドで防ぎながら応戦しているが、そこにすかさずセシリアのトーネードⅡが放った127ミリ速射ライフルの砲弾が頭部に命中する。

 さらにその機体には後方から、箒の部隊のメンバーである神楽が突撃砲の120ミリによる砲撃を加える。

 さらに、その手前では、

『頭上が、ガラ空きだぞ‼︎』

 箒が簪の援護を受けつつ、前衛の敵機を頭上から長刀で斬りかかり、一閃。

 そして千尋は、右腕のアームブレードで、自分の攻撃対象の機体を左腰から右肩にかけて斬り裂いた。

 

 

 それで、敵機は全滅した。

『シミュレーション、トラックナンバー17、ISと戦術機の混成部隊との市街地戦終了。各自、降りていいぞ』

 管制室のまりもが告げる。

 シミュレーションが、終わり、各機の管制ユニットのカバーがイジェクトされ、管制ユニット内に新鮮な空気が流れてくる。

 ふぅ、と千尋は息を吐いて、機体を動かす為に生体電気を読み取るためのコードを手の甲の装甲部から外し、延髄の装甲部にも刺さっている関節思考制御の為に脳波を読み取る為のケーブルも抜いて、手の甲で汗を拭い、管制ユニットから出た。

 

 

 

 

■■■■■■

 

 IS学園・戦術機格納庫

 そこにはシミュレーションを終えた千尋たち学園守備隊第2部隊が神宮司まりも三佐の集合を受けて集まっていた。

「では、総合評価と今後の反省をまとめて行こうと思う」

 まりもが言う。

「まず今回の功労者は…オルコットだな」

 そういうと、セシリアはわかりやすい程嬉しそうな顔をする。

「敵ミサイルの発射阻止、味方の突撃支援。よくやってくれた」

 まりもが言う。

「ありがとうございます」

「…次は反省を言って行こう。まず篠ノ之姉弟」

 瞬間、千尋と箒がビクリ、とする。

「いちいち何故近接戦に持ち込むんだ?貴様らが突出したばかりにそれを援護するのに 必死の後衛が別部隊に後方からやられたらどうするんだ?」

「「う”…」」

「貴様らが近接戦が得意なのは知っている。だがチームワークが重要な場面では味方を引っ張る足枷になる可能性だってある。そのクセは治すように。」

「「はい…」」

「特に箒」

 箒がまりもに再び呼ばれ、さらに驚く。

「何故退路を確保しなかった?今回オルコットが狙撃でミサイル発射を阻止したが、もし阻止できなければ貴様の部隊は全滅していた」

 さらにマップには戦略機丸々一機通れる地下鉄もあった。そこから挟撃されたら、終わっていた。

 箒がさらに身をちぢこませる。

「仮にも分隊長を…指揮官を務めたんだ。部下は指揮官に命を預けている。指揮官がしっかりしなければ部下は死ぬ。そしてその責任は、貴様が負うことになるんだ」

「…はい」

 それは箒が今回のシミュレーションでよく学んだ。

「総合評価としては…新米もいるから、まずまずだな。今回の反省を生かして、次回の訓練で結果を残すように。以上、解散」

 まりもが、言う。

「「「「「「ありがとうございました」」」」」」

 そういうと、各自は散って行く。

「怒られちゃったね〜」

 神楽が千尋と箒に寄ってきていう。

「うるっせぇなぁ…今度から射撃訓練もしねぇと…」

 千尋は鬱陶しげに神楽に言う。

「時に、オルコット」

 今度は箒がセシリアにからむ。

「先程のは助かった」

 狙撃によりミサイル発射阻止の事の、礼を言う。

 それが意外だったのか嬉しかったのか、セシリアは嬉しそうな顔をして、

「感謝してますの?…あ、ならもっと敬って頂いてもよろしくてよ‼︎」

 …すこし、調子にのる。

「嫌だ」

「んなっ⁉︎」

 箒は酷く面倒くさい顔をする。

「敬いはしない。でも、助けてくれたことには感謝している」

 なんて、少し場の雰囲気が、和む。

 …でも––––––と、千尋は思う。

 いつかは、きっと、今年に世界が壊れるなら、いつから壊れはじめるんだ?

 千尋はただ1人、そう思った。

 




…といった感じで訓練回終了です。

総合評価と反省、思わぬ人物からの接触(*束じゃありません。)を次回は予定しています。

次回も期待せず、薄目で待っていて下さい。

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