インフィニット・ストラトスadvanced【Godzilla】新編集版   作:天津毬

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ロリシカ編突入です‼︎

以前、妖刀さんから許可をいただき、ロリシカ編から妖刀さんの作品の家城燈さんを登場させる事にいたしました。

なお、今回から残酷描写に滑車がかかります。


ロリシカ編
EP-08 失墜ノ大地


 つくば市・JAXA宇宙センター。

 サイロ型シャトル発進シャフト。

 千尋、箒、まりも、まりもの部下である新井信幸曹長と門松洋平一曹、そしてオブザーバーの家城燈一尉と整備要員の山本晃三尉他数名が、そこにいた。

 そして彼らの目の前には、

「で、でけ〜……」

 【ゆうなぎ】型再突入装甲駆逐艦という名の、超大型の”宇宙往還機(スペースシャトル)”が鎮座していた。

 全長47メートル、総荷重量7千トン。

 こんなデカイ機体が一機ならまだいい。一機だけなら。

「早くしろ‼︎戦略機パイロットは1番機に、整備要員は2番機に、予備物資は3番機に載せろ‼︎」

 作業員の男が部下たちに怒鳴る。

 そう、この再突入装甲駆逐艦は一機ではなく、三機もあるのだ。

 正直、何処でこんな物作ってたんだ、と突っ込みたくなる。

「こいつでロリシカまで…」

 千尋が呟く。

 この再突入装甲駆逐艦で一度宇宙まで飛び上がり、そして衛星軌道に乗り、ロリシカ国内の基地、ベルホヤンスク統合基地に到着する予定だ。

 言うだけなら簡単だ。

 言うだけなら。

 だがやはり、想像し難いというか、そういう気持ちが多かった。

「大丈夫だよ。篠ノ之2士、再突入装甲駆逐艦は試験航行もしてるし、厳重に管理されてるから事故を起こす確率は低いよ。」

 千尋を安心させるために晃が言う。

「はぁ、まぁメンテナンスに関しては信用しているのですが、その…実感がないといいますか…」

「まぁ、それもそうか。俺も初めて乗った時はなんか実感湧かなかったよ。」

 笑いながら、晃が応じる。

「あの、いつも再突入装甲駆逐艦を使ってるんですか?」

千尋の隣から箒が尋ねる。

「いやいや、一度飛ばすのにもの凄い電圧とか予算が要るんだ。そんな毎回毎回使ってられないよ。」

 晃が苦笑いをしながら応じる。

「いつもは海自の輸送艦をつかってるんだけど、それだと時間がかかり過ぎる。特に今回は、時間の余裕がない。」

 そう話していると、乗機用のブリッジが降りてきて、今自分たちの立っているデッキと 再突入装甲駆逐艦が接続される。

「予定より12分遅れている。詳しいブリーフィングは現地到着後に行われる。さぁ乗った乗った‼︎」

 まりもが急かす。

 それに各自が反応し、乗機予定の再突入装甲駆逐艦に乗り込んでいく。

 …宇宙…宇宙、か…はじめて宇宙行くんだなぁ…どんなところなんだろ…期待を少し膨らませながら、千尋は少し浮かれてしまう。

「こーら篠ノ之、初めての宇宙、初めての海外で浮かれるのは良いが、今は時間がない。ホラ、早くしろ‼︎」

「あ、ハイ‼︎」

 まりもに注意され、千尋は急いで再突入装甲駆逐艦に乗り込んだ。

 

■■■■■■

 

 ロリシカ・ギジガ統合基地北西約6キロ。

 第4前哨警戒基地・迎撃塹壕。

 この日だけで”3回もの大規模襲撃”を受け、それを退けたロリシカ陸軍第27歩兵連隊第6大隊第2中隊の陣地は、阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。

 壁面を硬化剤で入念に補強した塹壕には、バルゴンの小型種と兵士たちの遺体が転がっていた。

「怖い…怖いよ…助けて…助けて、父さん、助けて…」

 まだ10代半ばの少女がM16A2アサルトライフルを抱えて、塹壕の壁に寄り添いながらうわ言のように呟き続けていた。

 彼女の身に纏っていたBDUだけではなく全身が人間やバルゴンの返り血まみれで、とても子供にさせる事とは思えない状況に彼女は立たされていた。

 あまりに多過ぎる死を目の当たりにして来て、とうとう精神が壊れ始めたのだ。

 彼女は父親に助けを求めるが、当然、父親は来ない。

 いや、いることはいるのだ。ここに。

 彼女の隣で”バルゴンに踏み潰されて圧死した肉塊”となって。

「おいしっかりしろ‼︎おい死ぬな‼︎おいッ‼︎」

 別のところでは20歳前半の男性が同年代くらいの同僚らしい男性に必死で心臓マッサージを続けていた。

 ”腰から下を食い千切られ、既に死んでいる”同僚に。

(もう一度戦えば、全滅する…‼︎)

 中隊指揮官のツァーリェ・アルフォンスキー中尉は部隊の惨状を見て戦慄する。

 昨晩から急激に天候が悪化。

 ベルホヤンスク統合基地との有線ケーブルが積雪に巻き込まれ断線した為、統合基地との通信は途絶状態が続いていた。

 その最中のバルゴンの大規模襲撃。

 今までどうにか耐えているものの、現在は正規の中隊50名の内戦闘可能の人間は––––––いやギリギリ戦える人間は、26名。まともに戦えるのは、19名。

 残弾も枯渇しつつある。

 だが大隊司令部が撤退命令を出していない以上、撤退は許されない。

 つまり自分たちは、ギジガを守る為の、肉壁だった。

 未婚の16歳の男女を徴兵する徴兵制によって徴用されたツァーリェは、半年足らずの速成教育を受けて少尉に任官された彼女には厳しすぎる現実だった。

(援軍は…在ロリシカ米軍は何をしてるの…誰でも良い…はやく、はやく助けて…‼︎)

 寒さと恐怖に奥歯を震わせながら、援軍が来るのを待つ。

 だが、奇跡など、そうやすやすとは訪れてはくれなかった。

「中隊長、来ました‼︎バルゴン群、数は500以上‼︎」

 部下の1人が叫ぶ。

 ツァーリェは弾かれるように顔をハッとあげる。

 吹雪で霞む雪原の果て––––––30メートル近い鉛色のバルゴン中型種30体と5〜10メートルの錆色のバルゴン小型種500体近くが、こちらに突っ込んで、来る。

「総員射撃準備‼︎」

 ツァーリェが叫ぶ。

 全員がアサルトライフルやRPGを塹壕から出して構える。

(神さま––––––どうか…)

「撃ち方はじめーーッ‼︎」

 瞬間、嵐のような銃声が雪原に木霊した。

 

■■■■■■

 

 11分後・同地上空。

 メドヴェーチ中隊の戦略機ガンヘッドは地面から高度3メートルの匍匐飛行で第4前哨警戒基地南方約8.9キロの地点を目指していた。

 目的は大出力の生体レーザーにより航空戦力を撃墜、無力化してしまう最大57メートルにも及ぶバルゴンの大型種撃破。

 既に第4前哨警戒基地の迎撃塹壕地帯を突破したバルゴンを砲爆撃で殲滅するためにも、生体レーザーを放つバルゴン大型種は潰さなくてはならない。

 さらに悪いことに、日本から自衛隊の派遣部隊の一部が再突入装甲駆逐艦で降りて来るという知らせが入ったのだ。

 このままだとせっかくの貴重な援軍が上空で花火になってしまう。

 どうにかして避けねばならない。

 だから、バルゴン大型種を殲滅して制空権を奪還するレーザーヤークトという戦術を行う。

 レーザーヤークトはメドヴェーチ中隊の十八番で、多分レーザーヤークトの成功率は一番メドヴェーチ中隊が高い。

 だがしかし、同時にそれはリスクが伴う。

 大型種は群れの最奥部にいるため、そこにいくまで地表ギリギリの高度での匍匐飛行で 群れの中を縫うようにして抜けなくてはならない。

 少しでも高度を上げればすぐさまレーザーで撃ち抜かれてお陀仏に。

 さらに中型種や小型種と近接密集戦になりやすいために、レーザーにやられなくとも撃破される率は高まる。

 レーザーヤークトには近接密集戦、超低空匍匐飛行、瞬発回避能力、その全てにおいて最高レベルの部隊が求められる。

跳躍ユニットのジェット・ロケット複合エンジンの爆音が鼓膜を震わせる中、ユーゲンは普段の温和で子供らしい感情を押し殺し、硬い表情を変えることなく、ペダルを踏み込み、MF-4R戦略機ガンヘッドの速度を加速させる。

 頭部メインカメラと機体各所のサブカメラから機内モニターに外の風景が映し出される。

 灰色の空に白く覆われた大地。

 焼けただれた森林に家屋だった何かの廃墟。

 雪原に転がるバルゴンの死骸。

 振り返ればバルゴンと死闘を繰り広げる味方陣地が見える。

『総員傾注‼︎』

 モニターに自分と同じ強化装備服を纏った兵士––––––中隊長ニコライ・ジノビエフ少佐が投影される。

『間も無く敵と接敵する‼︎以後、重金属雲下により通信途絶もあり得るが、各機は陣形を維持せよ‼︎』

「了解‼︎」

 他の兵士たちの応答に合わせ、ユーゲンは答える。

 第1独立戦略機中隊・メドヴェーチ中隊は補充として編入されたリーナを含めて8機で編成されている。

 通常、中隊の装備定数は空軍のそれにならい12機だが、損耗の激しいロリシカ軍では、定数を満たしている部隊の方が珍しい。

 特に、陸軍では。

 ゆえに中隊は前衛4機を、指揮官機を先頭にアローヘッド型に陣形を展開。

 残り4機を後衛に配置していた。

(たった8機でバルゴンの群れに突っ込む…”いつも通り”とはいえ、無茶苦茶だよなぁ…)

 ユーゲンは内心呟く。そして心理的重圧がのしかかる。

 瞬間、中隊の上空を空間飛翔体––––––MLRSが放った重金属誘導弾が通過する。

 重金属誘導弾。バルゴンの生体レーザーに撃墜されることで大量の重金属粒子を散布。そしてそれが重金属雲を作り出すことで生体レーザーを減衰させ、突入する戦略機の突入成功率を上げたり支援や砲弾の被撃墜率を下げるという、ありがたい兵器だ。

 ただ難点があるとすれば重金属雲下ではデータリンクなどの途絶やレーダーにノイズが走り、現在地をロストする確率が高い。

 その効果は、ISのハイパーセンサーを阻害、整備状況が悪ければハイパーセンサーをノイズだらけにする程だ。

 だから現在は対バルゴン戦担当の陸軍と対ロシア戦担当の国境警備軍で使用されている。

 そしてもうひとつの難点は、重金属誘導弾を使用した地域では深刻な土壌汚染などの公害が発生するということだ。

 多分バルゴンを皆殺しにして奴らが支配していた地域を奪還しても、重金属粒子による土壌汚染で20年くらいはまともに人が住めない土地になっている––––––らしい。

 実際にユーゲンは重金属粒子による公害の影響で奇形児となった子供や痛々しい人達を見た事がある。

 ソフィアの弟も、重金属粒子の公害によって内蔵が幾つかやられてしまい、ギジガの病院で寝たきりの療養生活を強いられている。

 そういう意味では、重金属誘導弾は正しくないのかもしれない。

 だが重金属誘導弾なくしてバルゴンの大型種を撃破できないのも、事実なのだ。

(なんだか、複雑だよな…)

 ユーゲンは思う。そして感情が操縦に出たのか、

『––––––メドヴェーチ03から05。小僧、軸線がぐらついているぞ‼︎余計な事を考えるな‼︎』

「は、はいッ‼︎」

 思わず、ユーゲンは自身にモニター通信で厳しい声音で叱責してきた胡麻塩顔の男性兵士に焦りながら応じる。

 声の主であるダニィル・ドヴラートフ曹長の年齢は33歳で、17歳のユーゲンより一回りも二回りも年上だ。叩き上げの下士官で、最古参の兵士として、政治的方面のイリーナとは違う方面でニコライの補佐をしており、中隊の指導役でもある。

 ユーゲンは入隊時からダニィルに扱かれた為、少しばかりトラウマともなるような事態も有ったが、実際に救われたこともある為、敬愛はしている。

 瞬間、救援要請のウィンドが展開。

 メドヴェーチ中隊とは別方向からレーザーヤークトを行う為に突入した戦略機部隊が大型種のレーザー照射を受け、地上で身動きが取れなくなったという内容だった。

(このままだと全滅する––––––)

 ユーゲンは思う。待っているのはバルゴンに貪り食われるか、冷凍ガスで氷像にされるかのどちらかだ。

『素人が。部隊間距離を詰め過ぎだ––––––』

 ダニィルが吐き捨てるように言う。

『た、隊長‼︎救援を––––––』

 続いてリーナがニコライに通信を掛ける。

 重金属雲下ではデータリンクが途絶する為、部隊のローカルデータリンクを常に起動させているため、ユーゲンにもリーナの会話内容は聞こえる。

『…残念だが見捨てるしかあるまい。』

 ニコライが言い放つ。当然の選択だろう。……今救援に行けば救出できるかもしれない。

 だがレーザーヤークトの失敗する可能性が極めて高くなる。

 そうなれば次にバルゴンの餌食になるのは自分たちやベルホヤンスクの市民たちだ。

 今優先すべき事は––––––言わずとも、リーナは察した。

 瞬間、広域マップに2000体近くのバルゴン群が映る。

『連中のお出ましだ––––––総員傾注‼︎』

 ニコライが言う。

『我々は予定通りレーザーヤークトを敢行する。前衛は俺、チェスコフ中尉、ドヴラートフ曹長、ストラヴィツキー軍曹。後衛はマツナガ曹長、ドモントーヴィッチ伍長、ジトワ伍長、ベシカレフ伍長。前衛は突撃路を開き、後衛は支援攻撃を行う。

全機複合追加装甲展開‼︎バルゴンのクズ共に、タングステン合金の洗礼を喰らわせてやれ‼︎』

「「「「「「「了解‼︎」」」」」」」

 全員が応答し、全機が、突撃に移る。

 36ミリ突撃砲を構え、バルゴンの群れに向けて、穿つ。

 瞬間、36ミリ徹甲弾が空気を焼きながらバルゴンの群れに吸い込まれていき、表皮を破り、肉をえぐり、赤黒い体液が空中に舞い上がり、白い雪原を赤く染め上げ––––––突撃路を確保する。

『全機突入‼︎』

 ニコライが号令を放つと、ガンヘッド各機は突入を開始した。

 

 

■■■■■■

 

 IS学園・1029号室。

「お、母さん…が…?」

 鈴は、共産党本部の賀から送られてきた手紙を見て唖然としていた。

 内容には––––––母が”自殺”した、と。

 そして『実に残念だよ。彼女は抱いていて楽しめた方だったのに。』と、賀の言葉の中にあった。

 瞬間、鈴は母が賀に抱かれるストレスに耐えかねて自殺したのだと、悟る。

 いや、もしかすると強姦の果てに死んだのかもしれない。

「あ…あ、あ……」

 鈴の中で、いままで苦労して自分を育ててくれた母の姿がフラッシュバックする。

 思わず鈴はベッドに倒れ込む。

 そして、鈴の中で殺意と憎悪が爆発した。

「あ”あ”ぁ”あ”ァ”‼︎糞が‼︎糞野郎が‼︎」

 防音措置が部屋に施されているから、思わず、涙を流しながら憎悪でどうしようもなく歪んだ顔で、半狂乱になって叫ぶ。

「うっく…殺して、やる…殺して…やる……絶対に…殺してやる…殺して…や……う、くっ……………助けてよ、誰か…助けてよ…一夏ぁ………」

 鈴は誰もいない部屋でただただ泣き続けた。

 母を少しでも支えるためにISの道に…共産党に支配される道を選んだ自分を怨みながら、一夏に助けを求める。

 来るはずがない、一夏の救いを求めた。

 それでも一夏を求める。

 今まで一夏と母の為に頑張ったのに、母が居なくなって、そのうえ一夏にも見てもらえなかったら…私ガ幸セジャ、無クナルカラ。

 

 

■■■■■■

 

 IS学園・整備エリア

 簪はセシリアと共に打鉄改ニの整備をしていた。

『織斑墜落事件』の時に破損した機体だった。

「…ねぇ、オルコットさん…」

 簪が呟く。

「なんです?」

「…ISってさ、必要なのかな?」

 簪がふと、呟く。

 それにセシリアが一瞬何か言おうとするが、迷いに満ちた感情をする。

「どう…なんでしょう…」

 セシリアはそう答える。

 以前のセシリアなら、真っ向から反論する。

 だが、織斑の事故を受けてからは、分からなくなっていた。

 周りにいる人間が負傷しても気にする事すらしない。

 周りに気を配る感性が麻痺した人間を生み出す。

 …ISの機能は確かに申し分ない。

 だが、人類に必要なモノなのか?

 そう聴かれれば、答えは出ない。

 いや、出そうだが、これまでISに触れてきた自分が足を引っ張ってしまう。

「あれ?おまえら何してんの?」

 そこに、織斑がやって来て、声を掛ける。

 それに簪は横目で威嚇して、セシリアはそっぽをむきながら、

「別に?見ての通り整備中ですが?」

 そう、言う。

「ふ〜ん。てか、なんでそんなトゲトゲしてるんだ?お前自己紹介の時の、未だに根に持ってんのか?」

「いいえ、あんな些細な事はもう、どちらでもよろしいです。…本当に分からないのですか?何故貴方に対して排外的か。」

「わからん。なんでだ?」

 セシリアは怒りが込み上げているが、織斑は持ち前の鈍感スキルのせいで分からず、頭に疑問符を浮かべる。

「…貴方に殺されかければ普通、排外的になりますが?」

 セシリアは冷ややかに言う。

「は?殺されかけた?」

「…あの墜落事故でそちら側には負傷者は出ませんでしたが、こちらには間接的とは言え貴方が飛ばしてきた破片で負傷者が出ました。そして、千尋さんが庇ってなければ山田先生と箒さんは死んでいました。」

 淡々とセシリアは告げる。

「な、何言って……脅してるつもりかよ⁉︎」

「別に脅してるわけではありません。事実を言っているだけです。」

「俺は誰も殺してないだろ⁉︎」

「ええそうですね。死なせてはいません。」

「じゃあ…」

「ですが負傷者は出しました。」

「…ッ⁉︎」

 セシリアは冷ややかに、淡々といい伏せていく。

「…今後はあの様な失態をしない事と周囲への配慮をお願いします。」

 セシリアはそう言うと、整備を終えた簪と共に立ち去っていき、織斑だけが残された。

「何でだよ…誰も死んでないなら、それで良いじゃないか……」

 織斑は、そう呟いた。

 

 

 

■■■■■■

 

 ロリシカ・ギジガ北西8キロ・重金属雲下。

 見渡す限り銀世界に満ちた雪原には相変わらず36ミリを撃ち出す火薬の炸裂するけたたましい音が響いていた。

 そして相変わらず物量で攻め入るバルゴンの小型種と中型種の溜まり場となっていた。

 小型種は歩兵にとっては脅威だが戦略機や戦車の脅威ではない。よって無視する。

 だが中型種は小型種同様生体レーザーを放たない代わり、モース硬度10のダイヤモンドより硬い、モース硬度11の鼻先についている一角やサーベルタイガーのような鋭利な牙があり、それらはあっさりと戦略機や戦車の装甲を貫くため、脅威だった。

 だから中型種から積極的に、殺す。

(それにしても数が多い…‼︎)

 ユーゲンは36ミリ突撃砲の機関砲を放ちながら、思う。

 こいつらは大型種のような特殊能力はない。だから大型種さえ居なければ烏合の衆だ。

 戦艦の超電磁投射砲の超長距離偏差射撃や爆撃機による絨毯爆撃、ミサイル、ロケット弾の飽和攻撃で、あっさり皆殺しにできる。

 だが今回は…いや”今回も”大型種がいて中型種や小型種を空からの攻撃から守っている。

 まったく厄介なことに。

 大型種の生体レーザー照射器官さえ使い物でなくしてしまえば、即帰投できる。

 …できればの話だが。

 それまでが大変なのだ。無数の中型種を相手取らねばならない。

 でなければ群れの最奥部の大型種にはたどり着けないから。そのためにも、まずは。

「お前らを、ブッ殺さないとな。」

 自分に中型種が角を突き刺そうと、迫ってくる。

 ユーゲンはそれを、跳躍ユニットを吹かし、機体をバルゴンの側面にそらすことで躱し、横腹に36ミリ徹甲弾を叩き込む。すると今度は別の個体が噛み付こうと口を開けて襲い掛かってくる。

 その口に120ミリ短距離滑腔砲で120ミリ炸裂弾を、放つ。

 砲弾はバルゴンの口の中に入ると爆発し、バルゴンの頭を吹き飛ばし、体液と内臓物が飛び散る。

 現在の二体を合わせて、少なく見積もっても150体近くを殺していた。多く見積もれば300体を超える数を殺したかも知れない。

(いい加減品切れになれってんだ…‼︎)

 ユーゲンは舌打ちしながら、そう思う。

 そこにさらに突進してくる2体の中型種。

 突撃砲の銃身を向け、引き金を引く–––––––が、鈍い音を鳴らしただけで、弾は出ない。

「弾詰まり––––––⁉︎くそっ‼︎」

 ユーゲンは突撃砲を投棄すると、下腕部にある突起型兵装コンテナ–––––––ナイフシースを展開。

 近接短刀を搭載したハンガーが、ナイフシースからマニピュレーターに伸びてきたアームに付いたガイドレールを辿って、手元に運ばれてきて––––––すかさず逆手で抜刀。

 瞬間、ガンヘッドの跳躍ユニットのロケットエンジンを点火し、バルゴン2体に向かって突撃する。

 バルゴンまでわずか数メートルというところで跳躍ユニットを吹かし、機体の体勢を右に傾けて、一体目のバルゴンの眉間に短刀を刺し、跳躍ユニットの角度を再度調整し、ロケットエンジンを点火。眉間から脳を斬り裂き、後頭部まで貫通させる。

 直後、もう一体のバルゴンが迫るが、ロケットエンジンは点火したまま、追加装甲盾のスパイクをバルゴンの頭部前方に突き出すように構え、直進し––––––追加装甲盾のスパイクがバルゴンの頭部に命中し、肉を潰し、骨を砕く音が響き、潰れた頭から体液を撒き散らし、バルゴンは絶命する。

 が、しかし。バルゴンの死体を死角に利用して接近してきたバルゴンがユーゲンの倒したバルゴンの死体を乗り越え、ユーゲンのガンヘッドに飛びかかる。

 だがユーゲンはすぐに反応しない。

 いや、攻撃した直後だから、すぐには反応できない。だから、このままならユーゲンはバルゴン中型種に殺される。

 ”味方が、誰もいないなら”。

 瞬間、大気を斬り裂く鋭い音が響くと共にバルゴンの首が宙を舞う。

 メドヴェーチ04、エリザヴェータ・マツナガ曹長のガンヘッドが装備している長刀で首を斬り飛ばしたのだ。

『もう、またナイフで近接戦闘して、もう少し腕を鍛えてからやらないと、殺られちゃうわよ?』

 後衛の部隊にベルホヤンスクに向かっていた群れの一部が引き寄せられ、前衛との部隊間距離狭められた為に前衛と合流しに来た後衛指揮官のエリザがユーゲンの援護に現れたのだ。

「すみません、曹長。お手数をお掛けしました。」

『メドヴェーチ01より各機へ。HQより情報が入った。大型種はこの先の丘の向こうにいる。急いで潰すぞ。』

「「「「「「「了解‼︎」」」」」」」

 ニコライの指示に従い、全機が行動を開始する。

 ユーゲンは背部兵装担架にある、日本経由でイギリスから納入した対大型種攻撃用の127ミリ速射滑腔砲を展開し、右肩の支援コンテナ搭載用の接続口に滑腔砲の銃床をマウントし、固定。

『さて、ストラヴィツキー軍曹、ベシカレフ伍長、丘を越えれば大型種とご対面だ。ビビって小便を漏らすなよ?』

「んなっ⁉︎」

『ちょ、ちょっと隊長…〜〜〜ッ‼︎』

 ニコライの言葉に、ユーゲンもリーナも動揺してしまう。

 だが、それで緊張が解れてしまうのだ。

 恥ずかしいが、ありがたいものだった。

 そして丘を越え–––––––赤い瞳に錆色の堅牢な外殻、その各所から白い突起が生え、薄紅色の結晶のような生体レーザー照射器官を背中に持つ、バルゴン大型種が、眼前に映る。

『大型種確認–––––––全機、追加装甲前面展開‼︎切り込むぞ、ブチかませ‼︎』

 ニコライが檄を飛ばし、全機が追加装甲を前に突き出すようにして構えながら、127ミリを背負うユーゲン以外の機体が、36ミリで砲撃を喰らわせながら突撃する。

 追加装甲を前面に突き出すように展開しているのは、大型種に、”追加装甲が的だと認識させる”ためだ。

 追加装甲と機体の装甲には対レーザー蒸散塗膜が施されており、追加装甲で8秒、機体装甲で6秒防げる。

 そして大型種の生体レーザー照射時間は短くて3秒間、長くて7秒間。

 つまり最大2発までなら防げる。その間に仕留めれれば––––––瞬間、バルゴン大型種の目が妖しく光る。同時にけたたましいレーザー警報音が管制ブロック内に響く。

 初期照射––––––生体レーザーを放つ対象のターゲティングを行う際の照射を大型種が行ったのだ。

 そして対象は––––––ニコライのガンヘッド––––––の、追加装甲。

 瞬間、レーザーが照射され、空気が膨大な熱によりプラズマ化し、目に見えないほどの速さのエネルギーが光速で襲い掛かり、追加装甲に穴を穿つ。

 その間7秒。

 ニコライは穴が開いて使い物にならなくなった追加装甲を投棄。

 すぐ様ダニィルとイリーナがフォローに入る。

 大型種はその3人に気を取られる。

 その隙に、

「行きます‼︎援護頼みます‼︎」

 127ミリ速射滑腔砲を持つユーゲンを先導に後衛部隊が突撃する。

 大型種はレーザー照射後は照射器官の冷却、そしてエネルギーの充填を行う必要がある。

 その隙にをついて127ミリ速射滑腔砲で照射器官のプリズム部を潰すのだ。

『06、07、08は大型種の脚部に砲撃を集中‼︎私は、05と共に照射器官破壊作業を行います‼︎』

 エリザが後衛班に命ずる。

 同時に背部兵装担架から120ミリ短距離滑腔砲の代わりにD-03発射機を搭載した突撃砲を展開する。

 ユーゲンの127ミリ速射滑腔砲同様、レーザー照射器官破壊に必須の兵器だった。

 瞬間、再度レーザーが放たれる。今度は初期照射を知らせる警報が鳴っていなかったことから、こちらに飛んで来た砲弾群を撃ち落としたらしい。

 そして先の照射から今の照射までのインターバルは35秒–––––––その間に、

「仕留めます‼︎」

 跳躍ユニットを吹かし、ユーゲンとエリザが大型種の背部にある照射器官直上に飛び上がり–––––––

 ユーゲンがガンヘッドの127ミリ速射滑腔砲を、真下に向けて––––––生体レーザー照射器官に砲身を向け、マニピュレーターを引き金に掛け、引く––––––瞬間、127ミリ徹甲貫通弾が火薬の轟く爆音と共に凍てついた外気を焼きながら照射器官に、豪雨の如く撃ち込まれていく。

 そして照射器官のプリズム部を、砕く。

 これで、”一応”レーザーは撃てなくなるが、このプリズム部はすぐに再生する。

 だから––––––

「マツナガ曹長‼︎」

 すかさずユーゲンが叫ぶ。

『了解‼︎』

 エリザのガンヘッドが大型種の背中に飛び乗り、D-03発射機を砕けたプリズム部から覗く照射器官内部に向け––––––引き金を、引く。

 瞬間、発射機から先端に掘削用ドリルを持つ誘導弾が放たれ、プリズム部の裂け目から内部に突入し、照射器官本体に突き刺さり––––––先端のドリルが、抉る。

「■■■■■■■■■■■■■■■ーーーッ⁉︎」

 痛みが伝わったのか、バルゴンが暴れる。

 危険と判断したエリザが咄嗟に跳躍し、バルゴンの背中から離れる。

 それより一瞬遅れて、プリズム部の隙間から爆炎が上がる。

 掘削弾頭が照射器官本体の中心まで潜航して、爆発したのだ。

 それで生体レーザー照射器官は完全に破壊された。

『メドヴェーチ01よりHQ‼︎レーザーヤークト成功‼︎繰り返す、レーザーヤークト成功‼︎』

 ニコライがベルホヤンスク統合基地司令部に連絡を入れる。

『HQ了解。直ちに面制圧攻撃を開始する。直ちに退避されたし。』

『了解。総員傾注‼︎高度100まで跳躍‼︎ズラかるぞ‼︎』

 ニコライがそう叫ぶと全機が”制空権を奪回した地域の安全高度”まで跳躍し撤退を開始する。

 数十秒後、ロケット弾と砲弾の雨が、大型種を含むバルゴンの群れを蹴散らして行った。

 

 

■■■■■■

 

 ギジガ統合基地・HSST用滑走路。

 ゆうなぎ型再突入装甲駆逐艦3機がそこに着陸してきていた。

「ここが…ロリシカ……」

 千尋が呟く。唖然とした声音で。

 見渡す限り白銀の雪原––––––と、鮮血で染め上げられた赤い、紅い雪原とそこに転がる人とバケモノの亡骸。

 その景色は、まるで–––––––

「死んでるようなものじゃないか…”ここ(ロリシカ)”…」

「酷い有り様だろう?」

 隣からまりもが言ってくる。

「…17年前からこうなんだよ。ロリシカは。」

「17年前から⁉︎」

 まりもの言葉に驚き。思わず千尋は聴く。

「ああ…17年前からバルゴンと呼ばれる巨大生物とロリシカは戦い続けてるんだ…昔は男が闘っていたが戦死者が増えて行き、女性まで投入するも、さらに戦死していき……今では16歳以上の子供まで戦場に駆り出されるんだ。」

 まりもは憂うように言う。

 見渡す限り阿鼻叫喚の地獄で自分や箒と同い年の子供がバケモノと殺し合っているのだ。

 その、”平和な日本では普通あり得ない異常”に、千尋は戦慄する。

「あ、あのッ…‼︎」

 ふと、後ろから少年が声を掛けてきた。

 ロリシカ軍のBDUに身を包んだ、栗色にアホ毛の生えた少年だ。

 それに千尋もまりもも振り返る。

「ロリシカ国防陸軍第1独立戦略機中隊所属、ユーゲン・ストラヴィツキー軍曹であります‼︎神宮司三佐はこちらにおいででしょうか⁉︎」

 直立不動の姿勢のまま、ユーゲンは敬礼する。

 顔には疲労の色がある。作戦直後なのだろう。

「私が特務自衛隊・ロリシカ派遣隊・戦略機墨田教導隊隊長、神宮司まりも三佐だ。こちらは部下の篠ノ之千尋二士。それで何の用だ?」

「はっ。中隊長より案内役を頼まれましたので、参りました。初参加の方もいると伺いましたので…。」

 疲労困憊なのに無理して笑顔を作りながら答える。

「…そうか。では箒を呼んで…」

 まりもが言いかけるが、基地に鳴り響いた警報がそれを遮った。

 見ると、3機の戦略機が別の滑走路へのアプローチに入ったのだ。

 どの機体も酷い有り様だった。

 1機は左手が肩部からもげていて、もう1機は右腕が肩から千切れ、左手が肘あたりで千切れている。

 そして最後の1機は––––––右脚が膝間接の辺りで千切れている–––––––瞬間、跳躍ユニットのスラスター部が爆発する。

「1機ヤバいぞ‼︎」

 その場にいた誰かが叫んだ。

 普通なら、次に取る手段は––––––

「緊急脱出(ベイルアウト)…」

 千尋が呟く。

 だがその機体は”ベイルアウトすることなく”、滑走路に叩きつけられ、増槽に引火、爆発する。

「⁉︎しなかった⁉︎」

 思わず千尋は驚いて叫ぶ。

「しなかったのではなく、出来なかったんだろう。」

 まりもが言う。

「ええ、多分近接密集戦で装甲のフレームが歪んで…よくある話です。」

 爆発し、炎を上げている戦略機に消防車が消化活動をしている、普通ならパニックになる状況を、まりもも、ユーゲンも、客観的に見ていた。

 千尋はそれに寒気を覚える。

「…千尋、これが戦場の空気というやつだ。覚えておけ。」

 戸惑っていた千尋にまりもが言う。

「…察するところ、篠ノ之二士は初めてなんですね。ここに来るのは。」

 ユーゲンが千尋に言う。

「ようこそ、我がロリシカ共和国へ。【神亡き屍戚の地】へ。」

 

 

 

◼️◼️◼️◼️◼️◼️

 

ギジガ統合基地。

ギジガ郊外にある、アメリカ資本の基地でロリシカ国防陸軍、ロリシカ国防空軍、ロリシカ国境警備軍、在ロリシカ米軍、モナークシベリア支部の軍事施設を集結させ、艦載転用砲やVLS、戦車隊や対艦攻撃部隊などからなる第1から第6要塞陣地や2000メートル級滑走路を6本、戦略機専用カタパルトを36基、補給施設からなる中央司令基地。

そして中央司令基地を囲うように周囲には第1から第14前哨基地が存在し、それら全てをまとめて統合基地としているのだ。

第1首都ヤクーツクにあるヤクーツク統合基地に次ぐ大規模基地…正確には戦略機専用カタパルトの数だけなら国内最大だった。

(何もかもスケールが違い過ぎる––––––。)

千尋は思わずそう思う。

日本ではこの、牙城と言うに相応しい、ベルホヤンスク統合基地や、それ以上のヤクーツク統合基地に匹敵する規模の自衛隊基地を、千尋は知らないから。

先程は”死んでいるような雪原”に気を取られていたが、改めてこの基地を見ると、圧倒される。

今は箒と共にユーゲンに統合基地内を案内されている所だった。

その間に整備班や輸送班が千尋たちの戦略機をエプロン(機体駐機場)に運んでいた。

「…以上がこのギジガ統合基地の説明になります。何かご質問はありますか?」

ユーゲンが疲労困憊な顔を必死で子どもらしい笑顔を浮かべて誤魔化しながら、聴く。

「じゃあ、私が…」

箒が、手を握りこぶしにしたまま、挙げる。

ちなみに握りこぶしで手を挙げるのは、自衛隊の一般的な挙手の仕方だ。

「あの、立ち入り可能な場所と不可能な場所はありますか?」

歳は同じくらいだろうが、階級が上なので、箒を敬語で話す。

「そうですね…基本ロリシカ国防陸・空軍の基地内は司令部や野戦陣地群を除けば立ち入りはあらかた可能だと思います。ただ米軍基地やモナーク機関の敷地内には立ち入りできません。」

「分かりました。」

「他にはありますか?」

「えっと、じゃあ自分が…」

今度は千尋が挙手する。

「…この基地、その…コンビニとかはありますか?」

少したじたじしながら聴く。

「コンビニ…ですか?あー…残念ながら日本の自衛隊基地みたいに”眠らぬ不夜城”たるコンビニはありません。そういうのはギジガ市街に出ないとないかと…何か御買い求めのものでも?」

ユーゲンが応え、純粋無垢な瞳で千尋に聴く。

すると千尋はさらにたじたじして、言うべきか、悩む。

「なんだ?ハッキリ言わねばわからんだろう?」

箒が言う。

「ちょ…あのさ‼︎こっちにだって言える事情と言えない事情があんの‼︎そ、その…女の子には言いにくい事情が…」

顔を酷く赤くして、焦りながら応じる。

瞬間、ユーゲンは察した。

「生理用品や売春本ですか?」

「ちょ⁉︎ちょ‼︎軍曹⁉︎」

「なんだ千尋やっぱりオトコノコだな?」

何気に千尋が恥ずかしくて言えない事をさらりと言うユーゲンに、千尋がさらに顔を赤くして叫ぶ。

それを箒がおちょくる。

「あ、すみません。」

それを笑いながらユーゲンは謝る。

「…生理用品とかは貴重だし、多分ほとんどないかと…それらは大抵が輸入品ですしそれも途絶えつつありますね。みんな食料や弾薬、資材を最優先で輸入してますから…。」

瞬間、上空で爆音をとどろかせながら、在ロリシカ米軍のB-52ストラトフォートレス爆撃機編隊12機がロリシカ空軍のSu-47Rベルクート戦闘機に護衛されながら千尋たちの頭上を通過する。

それを千尋たちは見上げる。

そう、ここは戦場なのだ。それも最前線。

平和な日本みたいに設備や商品が充実してるわけではない。

それもそうだ。戦略機や戦車が常時警戒しているこの中央司令基地から一歩外に踏み出せばバルゴンの支配する灰色の世界が広がっているのだ。

さらにコルイマ山脈の向こう、サハ共和国国境からはロシア軍も領空侵犯してくる。

この国はバルゴンとロシア軍によって板挾みだからこそ、戦力が強大なのかもしれない。

「…大方、残存バルゴンの掃討に行ったんですね…戦車やMLRSによる砲爆撃や超音速爆撃機による絨毯爆撃でも一度だけでは撃ち漏らしも多いですから……。」

ユーゲンが補足するように言う。

3人の視線は、バルゴンの支配する灰色の世界へと飛び立って行く爆撃機編隊に固定されたまま、それを目で追っていた。

 

■■■■■■

 

ギジガ統合基地・多目的室

そこは半ば会議室となっており、まりもと副官である新井はそこで今後行われる銀龍と荒吹壱型丙(寒冷地仕様)の実戦テストの打ち合わせのために、特自ロリシカ派遣隊代表、および防衛省技術試験小隊隊長として各部隊代表と会議を行う予定だったが、こちらの状況はそれを許してはくれなかった。

…正確には”実戦テスト”などという”お遊び”を悠長にしている暇が無くなった、というワケだが。

「バルゴンの再攻勢が差し迫っている、だと…?」

震える声が瀟洒な室内に響く。

「そんな…まだ来るの…?」

呻く兵士もいる。

まりもは冷静な顔で壇上の兵士を見ていた。

まりもだけではない。その場にいる現場指揮官––––––特に、激戦地に送り込まれる国防陸軍メドヴェーチ中隊指揮官のニコライや、いつ激戦地に送られてもおかしくない国境警備軍ジャール大隊指揮官のフィーツィカ・ラトロワ中佐らも冷静な顔でいた。1000単位のバルゴンの大規模侵攻が来た数日後にまた大規模侵攻が来るなど、ロリシカでは、よくある事だ。

「ほぼ確実です…バルゴン群は旧オムクスチャン付近で梯団を形成。確認できただけでも中型種500体以上。小型種に至っては800体近く…梯団先鋒の前哨基地基地群到達はおそらく4日後かと…。」

壇上のプロテクターを背に参謀の兵士が状況を厳しい顔で伝える。

その報告に誰もが戦慄する。

何故なら今日の午前中に同規模の梯団による襲撃を受けているのだから。

「幸いにも大型種は確認されていません。4割程は砲兵や爆撃機で撃破可能です。」

参謀のその一言で場の空気の緊張が僅かに緩む。

だが完全にな緩まない。何故なら––––––

「…今朝より数は少ないが––––––防ぎきれるのか?連日続いた大規模侵攻で戦力は疲弊している。」

第1戦車連隊の指揮官が言う。

それで会議室の空気はまた緊張に満ちる。

何故なら、第1から第14まである前哨基地のうち、すでに第4、第6、第7、第8、第11前哨基地は壊滅寸前。その他の前哨基地も残存戦力はわずか3〜6割。

まともに戦えるのは残存戦力が6割ある第1前哨基地のみだった。

さらに堅牢なベルホヤンスク統合基地もたび重なる大規模侵攻で破損箇所が目立ち、そこから侵入されれば基地を打通して市街地にバルゴンが流れ込み、ギジガ市民5万人が皆殺しにされる––––––。

現存戦力、弾薬の枯渇、兵の疲労…それらの問題を抱えており、今回の大規模侵攻を乗り切られる可能性は––––––酷く低かった。

「それは––––––…」

参謀も口が詰まる。

どうしようもないくらい、絶望的なのだ。最悪ギジガ統合基地のみならずギジガ市自体が玉砕しかねない。

「…ひとつ、提案があります。」

まりもが立ち上がって、言う。

「我が防衛省技術試験小隊を、防衛戦力に加えていただきませんか?」

瞬間、周辺がざわつく。

「…神宮司少佐、参加していただく意思があるのは大変嬉しい限りです。…が、今回は貴官らが想定していた数の数倍近くいる。」

基地司令の男が言う。

つまりは足手纏い。なのだろう。ただでさえ試験小隊という部隊で、さらに新米を2人も抱えているから。

「ですが司令、一個小隊とはいえ戦力が増えることで防衛戦力が僅かでも強化できる…という意味では我々を貴軍の司令系統に一時編入するのが適切かと。」

だが、まりもは喰い下がらずに続けて言う。

「しかしそれでもまだ戦力が…」

参謀の兵士が言うが

「…そこは大丈夫だ。我々国境警備軍の我が大隊を加えれば。」

ラトロワが言う。

確かにジャール大隊も加われば戦力に幾らか余裕ができる。

「だがそれでは…」

だが同時にロシアに対する牽制役がいなくなり、ロシアから侵犯される可能性が跳ね上がる。

かといって国境警備軍の戦力なしにバルゴンからギジガを守る事は出来ない。

バルゴンを相手取るか、ロシアを相手取るか、どうすべきか分かりきってはいるが、ロシアがバルゴンの存在を知れば核ミサイルの2、3発を撃ち込んで来かねない。

「明後日には先週セベロ・エヴェンスク空港に到着した空自のAn227Jアントノフ輸送機から陸揚げされた18式メーサー殺獣光線車部隊がベルホヤンスクに到着します。それらも戦力に加われば、戦略機の穴埋めも出来ますし、国境警備軍全てを導入せねばならない事態は回避できます。」

まりもが、言う。

それなら確かに、ギジガの防衛戦力はまだマシになる。国境警備軍も対ロシア用の戦力を残せる。

それならば––––––

 

 

■■■■■■

 

IS学園・食堂

セシリア、簪、本音、神楽たちは昼食を食べつつ昼のニュースを見ていた。

内容は、ロリシカのギジガ近辺で戦闘が激化している––––––というものだった。

セシリアたちはそれを心配そうな目で見るが、周りの女子たちはまるで気に留めない。対岸の火事と思っているのだろう。

…少し前まで、ロリシカが本当に戦っている敵の事を知らされるまでは、セシリアたちも気に留めなかった。

だが、事情が変わった。

光から、”内戦と偽ってまで”隠しているロリシカの本当に戦っている敵を教えられたから。

だから、特自の都合でロリシカに派遣された千尋たちが心配だった。

「千尋…大丈夫かな…?」

簪が呟く。

「きっと大丈夫ですわよ…少ししたらひょっこり帰って来ますわ…」

確証を持てない声音で、セシリアは呟く。

そんなセシリアたちから離れたテーブルで、織斑と女子たちは昼食の時間を甘く過ごしていた。

「気楽でいいわよね…あちらさんは。」

神楽が言う。

この間の墜落事故の謝罪も織斑からセシリアたちは受けていなかった。

代わりに千冬やクラスのまともな思考ができる女子たちからは謝罪されたが。

 

「い、一夏‼︎あのさ…あ、あたしとの約束…覚えてる?」

女子たちを差し置いて、鈴が聴く。

「あー確か酢豚をおごってくれるんだろ?」

「違うわよ‼︎私が酢豚をご馳走するからそれを食べてって言ったの‼︎」

 

それを遠目に見ていたセシリアが、

「…どういう事ですの?」

神楽たちに聴く。

「日本には味噌汁を飲んでくれる?っていう、女性が使う口説き文句…まぁ、プロポーズね。それを酢豚に変えたんでしょうね。」

神楽が言う。

「でも〜、それって昭和のネタだよね〜。」

本音が言う。

「そうそう。今時それの通じる男の子はいないと思うなぁ…」

苦笑いしながら神楽が言い、セシリアがそれに納得する。

 

「だから‼︎あたしと付き合ってって言ってんのよ‼︎」

鈴が赤面しながら必死で言う。

 

「やだ本音ちゃん聴いた?」

ニヤニヤしながら神楽が言う。

「聴いた聴いた〜。」

本音もニヤニヤしながら言う。

 

「なんだ。そんなんなら最初からそう言えよ。」

一夏が爽やかな笑顔で言う。

「い、一夏…」

鈴は嬉し涙を浮かべながら、笑顔を浮かべる。

周りの女子たちもヒューヒューと煽る。

「付き合ってやるよ。」

やはり一夏は爽やかな笑顔のまま言う。

「あ、ありが…」

(やっと…やっとだ…やっと、あたしはあの汚れた世界から逃げ出せる––––––)

酷く嬉しそうな笑顔を浮かべて、賀や、共産党から逃げ出せると、そう安堵した、瞬間。

「別に付き合ってやるさ––––––買い物くらい」

「は?」

一夏が爽やかな笑顔のまま鈍感スキルを発動し、天にも昇る気持ちだった鈴を再び地獄に叩き落とし、鈴の淡い希望を粉砕した。

周りの女子たちはズッコケ、セシリアたちは唖然とし、鈴は…ハイライトの消えた濁りきった瞳で笑顔を浮かべたまま固まってしまった。

「ん?どうしたんだ?」

そして今の現状にも、一夏は鈍感スキルのせいで気づかない。

「あ、はは…うん、知ってた。こうなるって、なんとなくは…あはは…」

乾いた笑いを浮かべながら、鈴はやはり濁りきった瞳のまま、どうしようもなく怨恨で歪んだ顔をして、食堂から出て行った。

一夏はそれに気づかず、頭に疑問符を浮かべる。

 

「…行きましょう皆さん、山田先生の講座に遅れます。」

セシリアは冷めた瞳を横目で織斑に向けながら言った。

 

■■■■■■

 

ギジガ統合基地・小多目的室

そこには、2つの机が並べてあり、その机とセットで置かれていたパイプ椅子に千尋と箒が座っており、2人の目の前にはホワイトボードを背に立っている特務自衛隊の制服の上から白衣を身に包んだ女性––––––家城燈一尉がいた。

家城燈。特務自衛隊墨田駐屯地技術開発・生体研究所勤務で、主に巨大生物の研究をしている女性自衛官だった。

特に彼女が自衛官に研修として行う【怪獣学】は墨田駐屯地では有名な話だった。

…もっとも、自分たちがそれを受けることになるとは、予想外だったが。

今回は対バルゴン戦でバルゴンに対する戦術やバルゴンの特性を学ぶために受講することになっていた。

まぁ燈自体はモナークシベリア支部に用があったのだが。

「じゃ、始めるわね〜さすがにシミュレーションだけじゃバルゴンの恐ろしさは分かんないし。キッチリ教えるわ‼︎」

燈はやる気満々で、言う。

「じゃあまずはバルゴン小型種ね。」

そう言うと、ホワイトボードに小型種のデータを纏めた紙をマグネットで貼る。

見た目はトカゲっぽい、一角の生えた獣が書いてあった。

「全長は5メートルから10メートル。主な攻撃手段は突進に鋭利な牙による嚙みつき、そして冷凍ガス。

戦略機や戦車の脅威じゃないし、RPGロケットでもあればあっさり殺せるわ。」

燈の説明に、安堵を覚える。だが、

「でもね。彼らの最大の脅威は数よ。彼らは常に100単位から1000単位で行動してるの。戦略機や戦車ならいざ知らず、歩兵で小型種と戦うのは地獄よ…距離を2メートルまで詰められたらそこでお終い。次の瞬間には貪り食われるか、踏み潰されるか、冷凍ガスで凍死させられるか…その、どれかよ。」

燈が恐怖混じりの声音で言う。多分、実際に目の当たりにしたのだろう。

そして千尋たちも燈の説明に、血の気が引く。

「あ、あの、では対処法は…?」

箒が、聴く。

「…まず充分に距離を取ることね。強化装甲殻ならいけるだろうけど、生身じゃ距離をとって銃撃しないとアウトだから……接近されても殺られない場合が極稀にあるんだけどね…そういう時は、戦斧で叩き斬るしかないわ。拳銃じゃ殺せないしね…せめてアサルトライフルか軽・重機関銃でもないと殺せないわ。…これで小型種の解説はお終い。次は中型種ね。」

そう言いながら小型種の紙を外し、今度は中型種の情報を書き込んだ紙を貼る。

今度は小型種の面影を持ちつつも、背中に背骨の上に連なるようにいくつもの突起が生えており、尻尾の先端が薙刀を連想する鋭利な形状をした外見だった。

「これがバルゴン中型種。全長は20メートルから35メートル。だいたい、10単位から100単位で行動しているわ…主な攻撃手段は小型種と同じく突進、嚙みつき、冷凍ガス。新たに加わった尻尾の先端によるなぎ払い。そして…極たまにだけど頭部の角から生体レーザーを照射する個体がいるわ。」

燈が言う。やはり、千尋や箒からは血の気が引いて行く。

「極たまとは言ったけど生体レーザーを照射する個体は主に地中進行を行う場合のみ確認されているから基本はいないんだけど戦略機や戦車でも、数発食らえば破壊されてしまう…でなくても、サイズが理由で戦略機や戦車の脅威になるわ。戦略機や戦車一番の脅威といっても過言じゃない…実際、戦略機や戦車の被撃破数が最も多いのは、この種類なの。

…効果的な対処は側面に回り込んで横腹、あるいは頭上に回避して背面、もしくは頭部に36ミリか120ミリを喰らわせるか、長刀で切断するか…正面からでも良いんだけど、頭部の一角がうまい具合に砲弾を弾く角度になってるから、当てづらいのよ…。正面から攻撃するなら相手が口を開けた瞬間に120ミリを撃ち込むと良いわ。」

すると千尋が質問する。

「あの、生体レーザーを照射する個体への対処はどのように?」

それに燈は困った顔をして、

「…実はまだ分かってないのよね…地中進行をしてくるケース自体が少ないし…」

そう、答える。

「…それに、遭遇した部隊はほぼ全滅しているし。」

「「…え?」」

燈のその一言に2人は驚く。

「いきなり地中から出現して至近距離からレーザーを喰らうのよ?…避けられっこないわ。」

燈がそう言うと、さらに2人から血の気が引いて行く。

「…次はバルゴン大型種ね。」

そう言いながら中型種の情報を書き込んだ紙を外し、大型種の情報を書き込んだ紙を貼る。

そこには小型種、中型種の原型があるものの、体の各部位に突起が生えており、背中には見るからに危ない感じの結晶状の突起が生えている。

「これが、航空機を生体レーザーで撃墜することでこのロリシカから人類の制空権を奪った、バルゴン大型種。全長は45メートルから60メートルほど……大型種は高度1万メートルを飛翔する物体をほぼ正確に捕捉し、有効射程距離10キロメートルに侵入した瞬間、航空機くらいならあっさり撃破できる生体レーザーを放つわ。まぁ、今の数値は地形が平らだった場合だけど…攻略には戦略機で直接破壊するレーザーヤークト、または超音速爆撃機による飽和攻撃があるけど…前者はリスクが高過ぎるのよ…貴重な戦略機と戦略機パイロットを失いかねないし…超音速爆撃機なら、機体が捕捉される確率も撃墜される確率も低い。でも、投下した爆弾の命中率が悪いうえに被撃墜率が極めて高いの。だから精鋭部隊が駆除にあたるわ。

重金属弾展開によるレーザーの減衰を引き起こしたりもするけど、大型種は空間飛翔体の撃墜率が最も低くて66%、最悪98%という数値だから…笑えないわよね…。まぁ作戦時に遭遇する事はないだろうから安心して。」

千尋と箒はもはや真っ青だった。

こんなバケモノがこの国に跋扈しているのだ。

そしてそのバケモノたちとユーゲンたちは絶望的な闘いを繰り広げているのだ。

(…昔の俺を…ゴジラを人間が見た時もこんな感じだったのかな…)

燈の説明を聞きながら、千尋はふと思う。

「…ま、本当はこれを上回るバルゴン超大型種というのがいるんだけど…」

瞬間、2人は稲妻に打たれたような衝撃を感じるとともに戦慄した。

今言ったようなバケモノを上回るバケモノがまだいるというのだから。

「っ、本当ですか⁉︎」

千尋が思わず叫ぶ。

「…まぁ、その反応が普通よね……実はね、バルゴン超大型種の詳細なスペック、対策法は確立してないし、遭遇するかすら不明なの。」

「…?どういう事ですか?」

燈の説明に箒が聴く。

「一切の戦闘記録がない…というか、”バルゴンとは違う別のモノに殺されたであろう死骸”がひとつ見つかっただけで、まだその死骸も解析中なの…それに大部分がひどい損傷で…分かってない事が多いのよ。」

燈が深刻な顔をして言う。

つまり、バルゴン以外に巨大生物が存在する可能性があるというのだ。

「…っと、座学はここまでね。じゃあ、解散‼︎」

燈が言う。それに反応して2人は立ち上がり、直立不動となり、

「敬礼‼︎」

箒が号令をかけ、千尋も敬礼をして、座学は終わりとなった。

 

 

 

 

 

■■■■■■

 

ビキニ環礁・洋上プラント

基盤ブロック。

そこには朝倉がいつも通り瓦礫に腰掛けながら本を読んでいた。

その顔は相変わらず妖艶な笑みを浮かべていて––––––

そこに、少し大きくなったような黒い巨獣––––––ゴジラが基盤ブロックの狭くなっていた縦穴を突き破って上がってくる。

「––––––あら、おかえりなさい。れい。」

朝倉は、れい––––––ゴジラにそう名付けた名前を呼ぶ。

そして、ゴジラもそれを嫌がる素振りもせずに、朝倉に近寄る。

ゴジラは何の警戒もせずに朝倉に近寄る。

ゴジラに面と向かって話してくれる人間だから、自分と互いに似た者同士だから、近寄る。

自分と同じ『人間の勝手で被爆させられた者』だから、近寄る。

「グルル…」

ゴジラが少し甘えるように、朝倉の近くに寝転ぶ。

「…もう、甘えん坊ですね…ずっと独りだったから、当たり前ですかね…」

朝倉がゴジラの素肌に触れながら呟く。

人間に被爆させられ、人間に絶対抗えない力を無理矢理与えられ、バケモノにされてしまった、哀れな獣をあやすように触れる。

「本当に…私にそっくりですね……」

ふと、朝倉は10年前のあの日を思い出す。

突如空気を切り裂きながら飛来したミサイルが自分の住む家と自分の街の原発に直撃した––––––自身に呪いが降りかかった、日の記憶。

人類全てが、1人の”天災”の傀儡となり、自分を殺そうと牙を剥くキッカケとなった日の記憶を––––––。

 

 

 

 




お、終わった…疲れた…このスパンでこの文字数はキツイですね…次回か次次回から大学が始まるので更新ペースが落ちるかもしれません。
ご了承ください、お願い致します。


さて、今回はロリシカ編でした。
いやぁ…ゴジラISなのにガメラ怪獣やマブラヴネタが出て来てる…(汗)

さて、血みどろと絶望(の、予定)のロリシカ編スタートです‼︎
間にチョイチョイIS学園が入ってたり…。
鈴の母親が亡くなり、今回の一夏はアンチっぽくなったり・・・

あ、ちなみに最初の、つくば宇宙センターはGフォース本部が確かつくばだったので、それのオマージュです。

戦略機戦闘シーンは…大丈夫だったかな?少し心配です。

・・・さて、”平和なIS学園”と”殺伐としたロリシカ”、この二つの対比を図る形で今後は書いていこうと思います。




次回も不定期ですがよろしくお願い致します‼︎

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