リヴァイアサン・レテ湖の深遠   作:借り暮らしのリビングデッド

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14ー1《人の見る夢、クジラたちの見る夢》

白が舞っていた。

 

 

そのまぶたの裏には、雪振る寒々とした海。

 

寂寥感で出来た海を覆い隠すように、白が舞う。

その白には何も宿っておらず、ただ海が宿す寂寥感を浄化しようとするかのように、ただ真っ白に。

 

「レイ、今日はここまで」

 

赤木リツコの声が聞こえて、彼女はそっと目を開けた。

 

まるで水族館のように水槽に囲まれた部屋。

セントラルドグマにある実験室。

その中心にあるカプセルから白い少女を覆うように様々なコードがつながれていた。

 

まぶたの余韻を壊さないように、ゆっくりと上半身を起こす。

傍らに待機していた伊吹マヤがごくろうさま、と言いつつその体からコード類を外していった。

 

それを横目に、リツコは嘆息交じりに言った。

 

「…少し、難航してるわ」

 

そうなのだろうな、とここ最近の様子を思い返して納得する。

すると、しばらく考え込んでたリツコは懐からタバコを取り出し、と、場所を思い出してそれを引っ込めた。

 

「マヤ」

 

少しイライラしたような様子でマヤを呼び、いくつかの会話。

すると、マヤは一瞬白い少女の様子を眺め、そのまま部屋を出て行った。

 

「レイ、しばらく休止しましょう」

 

やっぱりタバコを吸いたそうにしつつ。

 

「ここしばらく根をつめすぎたし、碇指令からは計画を最優先と言われてるけど、あなたも疲れてるでしょう。どうあれ私とマヤは別の計画も平行して行ってるし、これじゃ私達ももたない。碇指令に進言してみるわ。

 少しだけ計画を休止して、あなたもゆっくり体休めなさい」

 

はい、と涼やかに返事をして。

 

「四号機ですか」

 

その返答にリツコは意外そうにしつつ。

 

「そうよ。でも、コアは『彼女達』じゃないわ。今のところあなたが乗る予定はないの」

「はい」

 

相変わらずの涼やかな声に、リツコは何となく探るように言って見た。

 

「不服?」

「いいえ」

 

やはりリツコには少女の内面は計れず。

 

「コアの製造が、上手く行ってないんですか」

 

見抜かれたことに内心動揺しつつ、だが欠片も表面には出さず。

リツコは珍しいものを見るように少女を眺めた。

少女がこんな風にリツコ達の仕事に興味をもつのは珍しいからだ。

 

「…慎重に、行っているだけよ。『彼女達』を使ったのは慣れているけど、それ以外の素材を使うのは私達も初めてだから」

 

リツコはとうとうタバコを取り出し、火をつけずに咥えた。

そして少女を観察するように眺め。

 

「気になる?」

 

少しの間があって。

 

「いいえ」

 

と、少女はささやいた。

やはりリツコには、彼女の内面を推し量ることはできなかった。

 

 

 

 

白い少女は更衣室で帰りの支度をしながらぼんやりと、さきほどの景色を考えた。

あの水族館のような実験室で『彼女達』と繋がりながらまどろむとき、時にあのような情景が移るのだ。

 

白が舞う、寒々とした海。

悲しみと美しさが同居したような風景。

 

なぜかは彼女にもわからない。

特に報告もしていない。

 

だが彼女は時々それ以上のものが見えることがある。

 

『あの子』

 

あの子は、寂寥感で出来たような海のほとりでいつも独りたたずんでいる。

黒い長袖のセーラー服に、黒いタイツに、目が覚めるような蒼いマフラーを巻いた、同じ白い髪のあの子。

 

時に彼女は心でその子に問いかけることが合った。

 

あなた、誰?

 

でもその声はその少女には届かず。

ただ、彼女はその子の後姿を遠くから眺めるだけだった。

 

ただ遠くから、そっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

綾波レイはいつも琴線に触れてくる少女だった。

 

そう、彼女は心に残る少女だった。

事実、しばらく会ってなくても少年の心には彼女の形のくぼみがはっきりと出来ているのだから。

 

シンジ少年はなぜか彼女を思い出しながら、坂の途中から見下ろした湖のまぶしさに、目を細めた。

 

太陽の身勝手なほどの強く暑い日ざしを、でも水面は逃げもせず受け止めていた。

その反射があまりにきらびやかで、長く見ていると目を傷めてしまいそうだった。

だから、そんな正面から受け止めず少しぐらい逃げてもいいのに、などとくだらないことを一瞬考えた。

 

視線を戻して目の前の黒いジャージの背中をぼんやり眺めた。

 

自転車の二人乗りは当然禁止されていたが、それでもわざわざ注意するほど熱心な大人は第三新東京にはあまりいないようだった。

ふと、自転車の二人乗りなんていつ以来だろうか、と考えた。

 

でも、思い出せなかった。

 

「なんでおまえそんなじゃんけん強いねん…」

 

トウジが汗だくになりながら苦しげにぼやいた。

シンジを後ろに乗せて坂道を登るのはさすがにきついようだった。

 

「あの、降りようか…?」

「ええねん。勝負の世界は厳しいんや」

 

どちらが漕ぐかの勝負で三回連続で負けてそろそろ体力の限界になりつつもそう宣言する彼は確かに男らしかった。

 

ようやく坂道の頂上に来て、坂を下った。

風が気持ちよくてシンジ少年は目を細めた。

一瞬の風がくれる気持ちよさは、それだけで汗ばむ不快さをまあいいか、と許容させる気分にさせてくれた。

 

公園の木の根元に座って、コンビニで買ったアイスをとりだした。

 

ふと木々の間から空を見上げた。

 

木の葉がざわめいて、その隙間から踊るように光が漏れた。

まるで水の底から空を見上げてるような気分になって、でも、そのときめきはやはり長くは続かなかった。

 

「なあシンジ」

 

トウジは横でカキ氷をがしがし崩しながらその様子を眺めて、ぼそっと言った。

 

「おまえ、まだ委員長のこと気にしてるんか」

 

と、その言葉にシンジは少しうなだれた。

 

「おまえのせいやないって言ってるやん。委員長だっておまえのこと責めてないやろ。

 妹さんやてきっともう治ったんちゃうか、多分」

 

その言葉にシンジはトウジを見て、一瞬口を開きかけた。

でも迷って。

 

そしていくつかの逡巡の末、やはりそっと口を閉じた。

ますます暗い気配を纏ってうなだれたシンジを横目にして、トウジは眉を下げた。

 

ガシガシ、とカキ氷を崩す音だけが少しの間響いた。

どうやらずいぶん硬く凍ってしまってるようだった。

 

何か、気まずいような沈黙だった。

それからトウジはぼそっと、静かにつぶやいた。

 

「…ほんまに、すまんかった」

 

それにシンジはきょとんとした。

 

「俺のせいやんな。殴って、すまんかった」

「そんなの…」

「だからあれやで。もしおまえがあれや、その、委員長のことあれなら、応援するで」

 

もちろん意味を図りかねて。

 

「それが俺に出来る謝罪やねん。全力で協力したるわ。俺にはそういう資格しかないねん、きっと」

 

 

 

 

アスカはふと空を見上げた。

彼女が見てすら今日の入道雲は見事だった。

 

きっと、今日のあいつは普段の三割り増しで空ばっかり見てるに違いない、と確信する。

それから隣を歩いてるお下げの少女を見て、やはり沈黙した。

 

一緒に帰ってからほとんどしゃべっていなかった。

ヒカリはやはり普段のそれより心なしか面差しは暗かった。

 

彼女はいつもは穏やかで、でもどこか暖かい熱を放っている少女だったはずだった。

だからアスカは、そんなヒカリを改めて探るように眺め、そっと口を開いた。

 

「ねえヒカリ、あんた何か合ったの」

「え?ううん…」

 

ヒカリはやはりどこかぼんやりとしていた。

 

「アスカこそ、よかったの?」

「何が?」

「碇君」

 

いつも一緒に帰ってるし、と呟いたヒカリをアスカは眺めた。

すると視線に僅かに剣呑な、何かひんやりとした冷たさを感じて、ヒカリは少し困惑した。

 

「別に。一緒に暮らしてるんだから別行動するのもめんどうでしょ?ただの義務よ義務」

「そうなんだ?」

「なんて嘘に決まってんでしょ」

 

と、その言葉にヒカリは虚をつかれた。

そして少し微笑みながらつぶやいた。

 

「やっぱりアスカ、そうなんだ」

 

そう言うヒカリには、つまり警戒してたある種の印象を感じなくて。

でもそれでもやはり覗き込むようにじっと見つめ、それにヒカリは目を瞬かせた。

 

それからアスカは、ふむ、と肩から力を抜いた。

その様子にヒカリは不思議そうにアスカ?とつぶやいた。

 

「べっつにい。何でもない」

 

さっきよりどこか明るいというか、気楽そうな印象になったアスカを眺めつつ。

するとアスカは突然こんなことを言い出した。

 

「ヒカリこそ好きな奴いんの?」

「え?」

 

と、ヒカリは少し躊躇して。

 

「…うん」

「へえ、誰?」

 

興味深そうに聴いたアスカに、ちょっと迷いつつ、でもそっと口を切った。

 

「その…鈴原」

 

アスカはあんぐりと口を開けた。

 

「鈴原って、あのジャージ!?」

「う、うん」

「あんな暑苦しい奴のどこがいいのよ?」

「だって、優しいし…」

「あのジャージが?」

「うん。だって、何度もお見舞いにだって来てくれて」

「ふーーーん」

 

アスカは物好きねえ、と言いたい感じでヒカリを眺めた。

 

そう、鈴原は何度もお見舞い着てくれた、とヒカリは思い返した。

私の、お見舞い。

でも妹にお見舞いしてくれたのは、家族や妹の同級生を除けば一人だけだったな、と彼女は気づいた。

 

ふと、あの美しくたおやかな花が脳裏を過ぎった。

 

最初は誰がくれたのかすら分からなかった、あの花。

その控えめな香りが一瞬蘇ったかのように彼女の心をゆらした。

でもとうとう妹は、そのおだやかな香りもたおやかな姿も知ることはなかった。

 

「…アスカ、碇君と暮らしてるのよね」

 

ふ、と呟いたヒカリに、アスカは何も気づかないまま返した。

 

「上司も一緒だけどね」

「その、好きな男の子と一緒に暮らしてるって、すごいね」

「そうね」

 

あっけなく肯定したアスカに、そうかあ、とヒカリはどこか弱々しくうなずき。

 

「でも何もないわよ。だってシンジだし」

 

その言葉に、ああ、とヒカリは納得した。

 

「碇君て、他の男子と違うもんね」

「違いすぎて心配になるわよ」

「そこまでなんだ?」

 

ヒカリは微笑みながら言った。確かに、そうなんだろうな、と思えた。

彼女が見てすらあの少年がそういう欲を持ってるなど想像できなかった。

繊細で、どこか浮世離れしてるような、実存を持たないような。

 

「そういえば、碇君てピアノ上手いよね」

「ピアノ?」

 

やはりふと蘇ったあの悲しいような美しいような旋律を思い出し。

 

「うん。凄い上手だった。だって聞き惚れちゃったもん」

 

それにアスカは眉をひそめ、ああ、と声をもらした。

 

「そういやあいつ言ってた。ずっとピアノ弾いてたって…」

「だよね。だってほんとに綺麗で、でも悲しくて、なのに暖かいような…」

 

 

あの黄昏を思い出す。

 

 

まるで影と融和したように、ただひたむきに音をつむいでいた少年の姿はなにか神聖なものに思えた。

でも触れたら壊れてしまいそうで、だからあの時ヒカリは怯えたように、それが終わるまでただ身を潜めるしかなかった。

 

彼女の脳裏にまざまざとあの情景が蘇った。

その美しい旋律が今まさに目の前で響いてるかのように彼女の聴覚を愛撫した。

 

なんであんなに寂しい旋律なんだろう。

なのにどうしてあんなに暖かいんだろう。

どこか稚拙で、なのにどうしてあんなに美しく胸に響くんだろう。

 

あの時ヒカリは漠然と思った。きっと誰かを想った曲なのだろうと。

でも、それにしてはその旋律は悲しく寂しすぎて、どこか違和感があるようにも思えた。

 

ああ、とヒカリは思った。

そうか、と彼女は気づいた。

 

今の彼女にはようやくその違和感の意味が理解できた。

そう、誰かを想った曲。でも根底にこめられているのは多分、愛や恋とかではなく。

 

きっと、失われた人への憧憬なのだ。

 

ヒカリはそっと、空を見上げた。

今更ながら今日の空と雲の美しさに気づいた。

 

もうすぐ夕焼けになり始めるであろう青空は、ほんの少しだけ黄昏の黄金色が混じって、青よりもほんの少し明るい、深い緑がかった色だった。

 

あまり見たことのないその色彩に、綺麗だな、とヒカリは思った。

でも、見上げたその空が次第に水の底のようにうるいで。

ヒカリは、ふ、と無意識に呟いた。

 

本当に、欠片の自覚すらなかった。自分がそれを呟いたことすらまるで気がつかなかった。

なぜなら、それはただ情動で満ちた心から零れ落ちた一滴のしずくにすぎなかったのだから。

だからこそ、それは偽りようがない言葉だった。ただそっと、本当に小さい声でそっと。

 

…また、聴きたいな…

 

その僅かな囁きを聞き逃さなかったアスカはまじまじヒカリを見つめ。

 

それに篭っていたわずかな熱に、今度こそ、強張ったように眉をひそめた。

 

 

 

 

アスカはリビングから窓を見た。

 

そろそろ本格的に黄昏の時間だった。

どうせシンジはどこかで夕日を見てから帰ってくるだろう。

 

ダイニングテーブルにつっぷして、ふと、気がつく。

最近、自分は明らかに部屋に居るよりこうしてリビングに居る時間が多い。

それに、ふん、と鼻を鳴らした。

 

西日の夕日がまぶしかった。

あんまり見てると目が痛くなりそうだった。

 

赤い光が濃い影を作っていた。

ダイニングテーブルに座ってる彼女の陰が伸びて床に長い影を作った。

 

ふと、何か奇妙な寂寥感に襲われた。

わけがわからなくて、でもあまりにふいうちだったその寂寥感の強さに一瞬ぶるりと身を震わせた。

 

だからアスカはそろりと、立ち上がった。

 

そっと、その部屋のふすまを開ける。

 

相変わらず少年の部屋は殺風景だった。

必要最小限のものしかなく、その質素さは確かにシンジ少年の人となりを表していた。

 

さっ、と周囲を見回す。

 

もちろんだれも居ないのにそんな行動をしてしまったのは後ろめたさがあったからだった。

そして少年の部屋に踏み込むとそっとふすまを閉めた。

 

なんとなくベッドに腰掛けてぼんやりと部屋を眺めた。

 

アスカはその殺風景な部屋を改めて不思議に思った。

そこそこのお金は持ってるはずなのに、シンジが何かを買ったり欲しがったりを見たことがなかったのだ。

当然アスカは色々なものに使ってるし、住み始めたころに比べるとますます彼女の部屋は物であふれていた。

 

…あいつが欲しいものってなんなんだろう。

 

アスカは自分がシンジの好きなものだとか、そういうのすら知らない事に気づいた。

というより、今まで知ろうとすらしていなかった。

 

そう、あいつの好きなものを、何一つ。

 

『碇君、ピアノ上手いよね』

 

彼女は、ふ、と眉をひそめた。

 

それから、ぼふ、とベッドに横たわる。

枕からはそこはかとなく少年の匂いがした。

男臭い、とはまだ言わない、だが確かに男の子のにおいだ。

ここ最近はよく嗅ぎなれた匂いだった。

 

ふと、一緒にベッドに横たわった時の少年の体温が頭によぎった。

触れるか触れないかの、人の熱。

 

彼女は強く、枕に顔をうずめた。

 

すると、組んだ手に何かが当たった。

枕もとのカバーがついたままの文庫本。

 

まさかポルノとかじゃないわよね?と一瞬考えた自分に呆れる。

馬鹿シンジに限ってんなわけないでしょうに。

手にとってぱらりとめくる。それから彼女は思わず目を丸めた。

 

ブレイク詩集。

 

ブレイクってあのブレイク?

読んだ事はないが(そもそも彼女が詩に興味があるはずもなく)有名な詩人ではあった。

意外に思いつつ。でもまあ、あいつならおかしくないか、と思って。

 

ぱらぱらめくり、そのうちの一つにさっと目を走らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ひとつの夢

 

 

 

 天使に守られた わたしの寝床の上で

 

 あるとき ひとつの夢が 陰を織った

 

 それは 一匹の蟻が道に迷った夢

 

 わたしは 草の上に 寝ていたと思う

 

 

 

 難渋し 行きなやみ たよるものなく

 

 日は暮れ 行き暮れ 旅につかれ

 

 からまる小枝を ふみ越え ふみ越え

 

 世にも切なく 蟻の言うのを聞くと

 

 

 

「おお 子供らよ! 泣いているのか?

 

 父さんの嘆くのを 聞いているか?

 

 わたしを探しに そとへ出てみたり

 

 またもどっては わたしを思って泣いてみたり」

 

 

 

 かわいそうにと わたしはひとしずく涙をおとした

 

 すると蛍が すぐ近くにあらわれ

 

 蟻に答えた 「どこの誰です 嘆き苦しみ

 

 夜の万人の わたしを呼ぶのは

 

 

 

 かぶと虫が 持場をまわるあいだ

 

 わたしは地面を照らすことになってる

 

 さあ かぶと虫の羽音のあとを追い

 

 小さな 流放者よ はやく自宅(うち)へおかえり」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぱさ、と本を閉じた。

 

 

ひどく、静かだった。

 

何の物音もしなかった。

あまりの静寂に耳が痛くなりそうだった。

 

そっと、音もなくベッドを降りて部屋を出た。

 

目に焼きつくほどの赤い西日が染みて、思わず目をそらして背を向けた。

そらした先に彼女の影が長く長く伸びていた。

 

伸びたその影が一体誰のものか一瞬わからなくなった。

 

アンタ、誰なの。

 

だから思わず、囁くようにそんな言葉を漏らして。

陰から目をそらして、赤く染まったリビングをうろうろと歩いた。

 

ふと、口を開いた。

誰かを呼ぼうとして。

でも、誰の名前を呼べばいいのかわからなかった。

 

 

 

“難渋し、行きなやみ、たよるものなく”

 

 

 

何をどうしていいのかもわからず、彼女はただ何かに駆られるように部屋中を歩き回った。

うろうろ、うろうろと。

 

 

 

“日は暮れ、行き暮れ、旅につかれ”

 

 

 

ふと、突然強い衝動が彼女を襲った。

なのにそれが何に対する、何をしようとする衝動なのかすらまるでわからなかった。

一瞬外へ出ようとして、でも意味が分からず。

 

 

 

“わたしを探しに、そとへ出てみたり

 

 またもどっては、わたしを思って泣いてみたり”

 

 

 

息が荒くなって、でもなぜ荒くなってるのかすらわからなかった。

嗚咽のような声が漏れた。

でもそれがどんな意味の嗚咽かすらもまるでわからなかった。

 

ひどい疲労感が彼女を襲った。

歩いていられないほどの疲労感に、彼女は壁に寄りかかって、でもそのままずるずると座り込んだ。

 

ようやく音がした。

 

と思ったら、どうやら耳鳴りのようだった。

キーンと、うなって頭蓋に痛みを走らせた。

 

赤黒いリビングに彼女のか細い呼吸だけが響いた。

 

強く自分を抱き絞めた。

でも彼女が思ってるほどにはその腕の力は強くはなく、すぐに落ちて、力なく床に投げ出された。

 

 

 

“小さな、流放者よ、はやく家へおかえり”

 

 

 

口を開いて、言葉が喉まで出掛かって。

 

なのに、どんな言葉を出したいのかすらわからなくて。

 

 

 

それから、そっと、口を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青ⅩⅡ  《人の見る夢、クジラたちの見る夢》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・Ⅰ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴオーーン…ゴオーン…

 

 

 

夕暮れのその団地はよりいっそう寂寥感を強めていた。

 

日が暮れ始めた空は青というより緑に近い色だった。

でも雲を隔てたその向こうは斜陽の残滓でオレンジに光り、どぎつい、でも不思議と上品なコントラストを作っていた。

 

だからこそ、その空を背景にしたその団地は、ますます浮世離れしていて、廃墟というより別の世界の建造物にすら思えた。

 

『俺、綾波苦手やねん。だから頼めるか』

 

別れ際にトウジに渡されたプリントがしっかり入ってるのを確かめる。

 

綾波、居るかな。

 

もうずいぶんと会っていなかった。

会いに行こうかなと何度か思いつつ、でもタイミングがつかめなくて。

 

ふと、唐突にブレイク詩集を買ったあの日のことを思い出した。

高台の公園で偶然会って、それから。

 

あの時、僕は綾波の内側に居た。

 

確かに、シンジはあの時彼女以外誰も存在しないその内側に入ったのだ。

何度思い出しても不思議な感覚だった。

まるで、見えない手に抱擁されているような、もしくは透明な家の中に受け入れられたような。

 

あるいは、存在を許してもらえたような。

 

シンジはどこかそわそわと、そして急ぐように、でも一歩一歩確かめるように階段を上った。

 

廊下はやはり薄暗かった。

緑とオレンジはますます光り、なのにどんどん周囲は薄暗くなった。

 

空を見上げる。

 

その深い緑は空というよりどちらかというと海の色のようで。

黒と混ざり、まるで水の底から見上げたような鈍い明るさだった。

 

一瞬海の中に居るような気分になって。

ふと、誰も気がついていないだけで本当はもう何もかも水の底に沈んでしまってるんじゃないか、そんな事を考えた。

 

この宇宙は実は海で、空と思っているものはただの海中に過ぎないんじゃないか。

この世界や星々はもしかすると、ただのあぶくに過ぎないんじゃないか。

 

 

深海から浮き上がる、透明な空気の膜に覆われた、たった一粒のあぶく。

 

 

そこまで考えて、シンジはその意味不明な思惟を振り落とすように頭を振った。

 

 

402号室。

 

 

おずおずとノック。

 

でも返事はなくて、二度、三度ノック。

チャイムもして(やはり壊れていた)二度ほど彼女の名前を呼んで。

 

でも、返事はなく、何の物音もしなかった。

 

居ないのかな。

 

さっきまでの浮ついたような微熱が嘘だったかのように心が寒くなった。

ふと、ひどく静かなのに気づいた。ひぐらしすら鳴いていない。

だからこの夕暮れの団地に居るのが急に怖くなって、とっさにドアノブをつかんだ。

 

鍵は、相変わらずかかっていないようだった。

 

キイ、と錆びた音を鳴らしながらその部屋のドアを開けた。

まるで何かから逃げるように玄関にすべり込む。

そうしてドアが閉まって、ふ、と息を吐いた。

 

改めて部屋の様子を眺める。

当然電気もついておらず、カーテンすらない開けっ放しの窓の暗い、でも強く光る緑とオレンジの黄昏が鮮明だった。

 

小さな声で彼女の名前を呼んでみた。

薄暗い部屋に彼の声だけが響いた。

 

返事はなかった。

 

今度こそ彼はうなだれると、気だるげにかばんからプリントを取り出す。

それからタンスの上において置こうと、靴を脱いで、部屋に入り。

 

と、目の端に光るものがあった。

 

割れたビーカーが、廊下に放置されていた。

 

ガラス片が飛び散って、緑とオレンジの黄昏を反射していた。

まるで壁に投げつけてほったらかしにしたようなありさまだった。

 

どうしてこんな風になったんだろうと、首をかしげて。

それからその破片を拾っていった。

 

もし、綾波が帰ってきて気づかず踏んでしまったら危ないし。

でも、夕闇の明かりでするには少し難儀する作業だった。

 

ちくり、と痛み。

 

案の定、指先から、一滴の血が流れた。

少し息を吐いて、ほうき無いかな、と周囲を見回し。

お邪魔します、と改めて部屋に入って、ようやく彼は気がついたのだった。

 

彼女が、まるで胎児のように丸まってベッドで寝転んでいた。

 

あ、と咄嗟に声を上げそうになって、でも飲み込んだ。

それから改めて眠る彼女を見た。

 

彼女はシャツ一枚だけで、制服は床に乱雑に放置されていた。

顔がひざにつくほど丸くなり、その足を両手で抱きしめていた。

寝顔はあどけなくて、まるで幼子のようだった。

 

夕闇の光に照らされたその姿は、何か、親の帰りをまつ幼子が待ちくたびれて寝てしまったような。

そんなどこか寂しいような、切ないような印象を与えた。

 

シンジはしばらくその寝顔に見ほれて。

それからどうしようと悩み。

 

すると。

 

「碇君?」

 

と、彼女が猫のように目を細めて彼を見ていた。

 

あ、と彼は口を開いて。

 

「あの…ご、ごめん、起こしちゃった?」

 

彼女は目を細めたまま涼やかに答えた。

 

匂い。

 

「え?」

「碇君の匂いが、したの」

 

その言葉に、シンジは目をしばたかせた。

すると彼女は目をこすり、少しだけ仰向けになると、窓から黄昏を見た。

シャツの隙間から見える彼女の白い乳房がその動きに合わせるようにたゆんで、青い影を作った。

 

相変わらず白かった。

はだけたシャツから見える乳房やむき出しの太ももはやはり陶器のような艶があり。

緑とオレンジの光を反射してぬめるように光っていた。

 

それから、その姿勢のままそっと彼に視線を合わせた。

しばらく見詰め合った。やっぱり綺麗な目だった。

ふと、何か訴えるような感覚があって、何だろう?と彼は少し首をかしげた。

 

すると、透明な何かが覆いかぶさる感覚があった。

 

あ、またあの感覚だ、とシンジは思った。

まるで透明な腕に抱かれるような。

と、何か、その腕に招かれたような感じがして、ふとシンジはその内側に一歩二歩踏み出した。

 

少しだけ距離が縮まって、彼女は彼を見上げるようにじっと見つめた。

それからそっと、右手で彼の右手をとった。

やはりひんやりと、心地いい感触だった。

 

それから彼の指先にそっと唇を合わせた。

 

ちゅ、とすする音。

それから薄いピンクの舌でちろりと舐めた。

ぞくり、とするような、あるいは恥ずかしいような感覚があって、シンジは慌てた様に声を上げた。

 

「あ!あのごめん、ガラスで切っちゃって、その」

 

その唇と舌の柔らかさに彼はしどろもどろになりながら。

すると、彼女は満足したかのようにあっさりと手を離し。

 

何か、飲む?

 

何事もないようにそう囁いた。

 

 

 

割れたビーカーをきっちり紙で包んで玄関先においた。

 

改めてなんでこんな風になっていたんだろうかと考えた。

まるでイライラして、ビーカーを壁に投げつけて放置したような。

 

ドラマで良く見るようなその光景を一瞬想像して。

でも、綾波がそんな事するイメージがどうにもわかなかった。

 

ふと、そういえば指先がまったく痛くない事に気づいた。

 

指先にはすっと薄い線が走っていて、でもまるで治りかけのように傷がふさがっていた。

彼はそれを不思議そうに眺めた。すると気配がしたので振り向く。

 

彼女がシャツ一枚で作りたてのココアをもって立っていた。

 

「あ、ありがとう」

 

ベッドで隣り合って、例によって一つしかないコップで一口。

それから彼女に渡して、彼女もこくり、と一口飲んだ。

 

電気もつけてない部屋はわずかな光で薄暗かった。

でもやっぱり、電気をつけようとはお互いに言わなかった。

魔法の時間の余韻はまだ部屋の隅々にたゆっていたから。

 

彼は彼女の横顔を見た。

 

両手にもったコップを見下ろしている横顔は何か儚いように思えた。

白いうなじに黄昏の残滓がわずかに反射して美しい艶を作っていた。

 

すると、視線に気づいたように彼女が面を上げて彼を見た。

 

『何?』

 

その視線の問いかけに、彼はううん、と頭を振って。

ふと、割れたビーカーのことを聞こうとして、でもなんとなく、彼はこんな無難なことを口にした。

 

「その…久しぶり」

「そうね」

 

相変わらず涼やかな声。

やっぱり水面の側にいるように心地よくて、彼は少しはにかんだ。

 

そう、本当に久しぶりだった。

あの弐号機が大破した時以来だった。

 

ふと、あの時彼女が心配で泣きじゃくってしまった自分を思い出して、少し赤面した。

それを誤魔化す様にずっと気になっていたことを口にした。

 

「あの…あれから具合はどう?」

「平気よ」

「ずっと学校来ないから、心配してた」

「そう?」

 

マヤさんが単に実験でこれないだけと言っていたから大丈夫なのだろうけど。

でも、もしかしたらとやはり心配だったのは確かだった。

 

「ずっとネルフ本部で実験していただけ」

「マヤさんもそう言ってたけど…実験て、エヴァの?」

「いいえ」

 

沈黙。

彼はじゃあ何の実験なんだろうかと、聞いていいかわからなくて。

 

すると、彼女はぽつりと言った。

 

「…碇君は?」

 

それに一瞬意味を図りかねて。

それからおずおず、と。

 

「あの…うん、元気だよ」

「そう。よかったわね」

 

どうやら、心配してくれていたらしい。

それが嬉しくなって、彼は少しはにかんだ。

 

「それであなた、どうしてここに来たの」

 

やはり台詞ほどには冷たくなく、ただ事実確認するだけのようなトーンだった。

それで彼はようやく、思い出したようにカバンをあけた。

 

「あのこれ、修学旅行のプリント、沖縄だって」

 

彼女はちらと一瞥して、いらない、と答えた。

 

「そっか…綾波は行かないんだ?」

「ええ。きっとあなたも」

 

彼はきょとんとして。

 

「エヴァのパイロットだもの。原則この都市から出るのは禁じられてるわ」

「そうなんだ…?」

「ええ。セカンドも含めて、近く待機命令が通達されるはずよ」

 

なら、ミサトさんもっと早くに言ってくれればいいのに。

沖縄の海が見れるのかと少しだけ楽しみにしていただけ残念だった。

すると、その心理を読んだかのように彼女はささやいた。

 

「行きたかったの?」

 

その涼やかな声に、少し、と答えた。

 

「海が見れるかなあ、って」

「海?」

 

うん、と。

 

「おじさんの所に居たときは、たまに電車で海見に行ってたんだ。少し遠かったし、お金なかったからたまにだけど」

「そう」

 

彼女はこくりとココアを飲んで。

 

「海、好きなのね」

「うん。でも、好き、というか」

 

なんと表現したらいいかわからなくて、シンジは少し沈黙して。

 

「落ち着くんだ、何か。海鳴りとか何時間聞いてても飽きないし、その」

 

やはり上手い語彙が見つからなくて。

 

「…戻ってきた、みたいな、そんな感じがするんだ」

 

少しの沈黙があって。

それから、そう、とだけ彼女はささやいた。

 

「綾波は海見たことあるの?」

「多分」

「多分?」

「ええ」

 

よくわからず首をかしげてると。

 

「でも、見たくないわ」

「どうして?」

「帰りたくなるもの」

 

少し沈黙して、彼はそっとささやいてみた。

 

「…何処に?」

 

彼女はコップを見下ろしていた視線をあげると彼を見た。

視線が絡み合って、でも。

 

彼女は、そのまま何も言わなかった。

 

交互に飲みあってたコップが空になった。

ふと窓を見るともう薄暗く、でもやはり水の底のような暗い青緑がわずかに光の残滓を宿らせていた。

 

もう、帰らないと。

と、彼は思って。でも。

 

すると。

 

「何か、あったの」

 

彼女のその問いに虚をつかれて。

 

「…どうして?」

「なんとなく」

 

彼は少し思案して。

 

「委員長さんの妹さんが、その…」

「ええ。知ってる」

 

そっか、とシンジはうなだれた。

 

「エヴァに乗るの、嫌になったの」

「…ううん。そういうわけじゃないんだ」

 

すんなりと答えた。

それに少し自分でも驚いて。

 

『綾波を、エヴァに乗る理由にしちゃ、だめかな』

 

あの時の 高台の公園での言葉を反芻する。

 

「まだ、自分のせいと思っているの」

「…わからない」

 

ぽつりと言った。

 

「委員長さんは、普通に話してくれるし…でも」

 

でも、と言って、そのまま言葉は続かなかった。

少しの沈黙の後、ぽつり、と言葉を重ねた。

 

「そう。彼女、まだあなたに話してないのね」

 

その言葉に首をかしげた。

でも、彼女はそれ以上何も話さなかった。

なんとなく見詰め合った。

 

「あなたのせいじゃないわ」

 

それになんと言ったらいいかわからなくて。

すると、彼女は、いいえむしろ、と。

 

「きっと、私のせいよ。」

 

当然意味を図りかねて。

すると、また、何かが覆いかぶさる気配がした。

 

あの、空気だ。

 

それにすっと背中をおされるような、そんな感覚があった。

彼はその感覚に逆らわず。

 

やはり、彼女は唇を合わせても目を瞑らなかった。

猫のように細めた瞳を覗き込んで、するり、と彼女の手が彼の首筋にからんだ

 

ひんやり、すべすべしていた。

それが蛇のようになまめかしく動き、彼の背中にす、っと入り込んだ。

なにかぞくりとするような、しびれるような感覚があって、彼は頬を染めた。

 

やっぱり、これ以上は不可能な距離でお互いに瞳を覗き込んだまま長い口付けをした。

 

少し口をあけて、肺の空気を交換しあった。

彼女が瞬きをすると、そのまつげが彼のまつげをくすぐった。

だからつい、同じタイミングで瞬きをした。

やはり、いつからか同じ呼吸と心音で、どちらがどちらのものかよくわからなかった。

 

どちらかともなく唇を離して、頬を寄せて抱きしめあった。

もうとっくに夜で、シンジは帰らないと、と思い。

 

どこにだろうか、と考えた。

 

ここはこんなに安心するのに。

彼女の側はこんなにも落ち着くのに。

こんなにも、何かが満たされるのに。

 

なのに一体、どこに帰るんだろうか。

 

でも一瞬緋色の髪の彼女が脳裏に浮かんだ。

今日もミサトさんは遅くなるから、彼女は今一人っきりだ。

 

そう、帰らないと。

 

帰らないと…。

 

でも。

 

「帰るのね」

 

すると、彼女がそっと頬を離した。

 

あ、と彼は名残惜しいような声を上げて。

逡巡して、でも。

 

 

…うん。とつぶやいた。

 

 

 

 

後ろ髪を引かれる様な気持ちで、シンジは帰り道をとぼとぼと歩いた。

 

なにかぽっかりと心に空白が出来てしまったような気分だった。

それが一体何なのか彼にもよくわからなかったが。

 

マンションの電気はついてなかった。やっぱりミサトさんはまだ帰ってないらしい。

アスカは洞木さんと遊んでるのかなあ、と、薄暗いダイニングの電気をつける。

 

すると、アスカがテーブルの上につっぷしていて驚いてしまった。

 

「アスカ?」

 

なんで電気もつけずこんなとこに居たんだろうと思い、寝ちゃったのかな?と一人納得する。

 

すると彼女が顔を上げた。

シンジはその彼女の表情に眉をひそめた。

 

ひどく充血した目に、頼りなくゆれる瞳。

 

…どうしたの、とそっとつぶやいて。

 

「どこ、行ってたの」

 

彼女のその声もかすれて頼りなく、さすがに心配になって。

 

「何かあったの?アスカ」

 

しばしの沈黙。

それから、何もない、とそっけない返事。

でも明らかに様子が変で。

 

「あんた、何が好きなの?」

「え?」

 

脈絡のない質問に困惑するだけで。

 

「あんたのピアノ、聴かせて」

 

やはりあまりに唐突な言葉に彼はこう返すしかなかった。

 

「えっと。でも、ここピアノないし…」

 

そうよね、とアスカは気だるげに言う。

そして、そのまま立ち上がると、静かに、自分の部屋に戻って行った。

 

 

 

 

白い少女はその壊れためがねを手に取ると、ぎゅ、と握り締めた。

 

まるでつぶそうとしているようだ。

でも、その顔は無表情だった。

 

きりきり、と、力をこめて。

でも、ふ、と力が抜けた。

 

ふと、視線を横に向ける。

空になった彼と交互に飲んだマグカップ。

 

少し視線を絡めて。

 

 

そして、無表情に、夜に浮かぶ月を見上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

20/8/3

 

参考文献 ブレイク詩集

 


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