神喰い達の後日譚   作:無為の極

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第32話 神速の捕喰者

 空が宵闇から朝日を受けて朱鷺色に輝く頃、事態は唐突に動いた。

 これまでの予測を大きく裏切るかの様に支部内の警報がけたたましく鳴り響く。これまでは時間に余裕があったと思われていたはずのアラガミが突如として支部の近郊に姿を現していた。

 

 

「予想を大幅に変更し、アラガミが急接近しています。所定の部隊は速やかに出動して下さい!」

 

 オペレーターの声が人影がまばらなロビーに響く。当初予定していたはずのハンニバルの接近は事態の収拾を無視するかの様に近づきつつあった。

 

 

「アネット。例のアラガミが接近中だ。直ぐに出られるか?」

 

《大丈夫です。現在準備中。クレイドルも既に動いています》

 

「そうか。くれぐれも無理はするな」

 

《了解しました》

 

 緊急呼集を受けたからなのか、支部長室にはいくつもの情報が上がっている。当初の予定よりも大幅な変更はドイツ支部全体に動揺を誘っていた。

 強大なアラガミがもたらすのは恐怖と破壊のみ。本来であれば全部隊を投入したい気持ちはあるが、今ここで投入すれば今度はクレイドルの邪魔になり兼ねなかった。昨日の今日だった事もあってか、今回の趣旨は完全には周知されていない。だからなのか、一部の部隊からは悲鳴の様な声が幾つも上がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヘリのパイロットの声が響く内部では、既にアネット以外にエイジとアリサ。ソーマの準備が完了していた。当初の予定よりも早い行動は今に始まった話では無く、これまでも極東では何度かそんな状況が存在していた。

 厳しい戦いになる事は間違い無い。既に全員の意識はアラガミへと向けられていた。

 

 

「そろそろ作戦領域に差し掛かります。皆さんご武運を」

 

 パイロットの声と同時にアネットを先頭に全員が一気に降下を開始していた。上空から見る分には通常のハンニバルと大差ない。しかし、これまでの情報から鑑みれば警戒するのは当然だった。

 着地と同時に周囲を確認する。上空から見たのと変わらないからなのか、周囲に他のアラガミの姿は見られなかった。

 

 

 

 

 

「これから作戦を開始します」

 

《了解しました。皆さん気を付けて戦ってください》

 

 耳朶を打つかの様にアネット通信機からはオペレーターの声が響いていた。出発する時点では騒がしかったロビーも既に落ち着きを取り戻しているのか、オペレーター以外の声は聞こえない。ここから視界に映るハンニバルは、どこか待ち構えている様にも見えていた。

 

 

「アネット。作戦は任せるけど、最初だけは様子見に徹しよう。行動パターンが分からないままは危険すぎる」

 

「分かりました」

 

 距離はまだあったからなのか、こちらの姿を確認していないハンニバルはゆっくりと歩を進めている。この距離であればあと数メートルもすれば射程距離に達する。既にアリサは銃形態に変形を終えているのか、ゆっくりと狙いを定めていた。

 

 

 

 

「全員散開!」

 

 エイジの怒声に全員が半ば無意識にその場から離脱していた。先程まではまだ距離があったはず。散開の言葉に意味が理解出来ない訳では無かった。

 何故そんな指示が突如出たのかは直ぐに理解出来ていた。数秒前までそこに居た場所にハンニバルの姿は見当たらない。気が付けば、ハンニバルは一瞬にしてこちらの居る場所まで到達していた。

 鋭い三条の爪が自分との距離を開けるかの様に広げる様に振りぬく事で全員がバラバラに散開していた。

 先程の行動はこれまでのアラガミの中でも頭一つ飛び抜けた速度を有している。絶対的な距離が瞬時にして消滅するのは誰も予測していなかった。事実、エイジも指示を出したが、まさかこれ程だとは思ってもいない。これまでの経験なのか勘なのか。指示が出たのは偶然に等しい結果だった。

 

 これ程の速度を持ったアラガミは極東内部でもお目にかかる事は無かった。先程の行動が全員の頭の中にあったからなのか、距離があっても油断はおろか、視線を外す事すら出来ない。それこそ瞬き一つのタイミングで襲い掛かるとなれば、僅かな隙が命取りになり兼ねなかった。

 

 

「アネット!済まないが、指揮権はこっちで良いか?」

 

「はい!お願いします」

 

 エイジの言葉にアネットは逡巡する事無く応諾していた。只でさえ交戦そのものがここでは少ないアラガミである事は間違い無いが、問題なのはその速度だった。

 瞬時に近づくアラガミの対処と同時に指示となれば、確実に自分の事は疎かになるのは必須だった。思考を止める事無く別々の事を考える。新種の討伐であれば当然の事ではあったが、今のアネットにはそれぞれ別の思考を持つ事は困難だった。

 決してアネットが劣っている訳では無い。純粋に経験と実力が一定以上の水準が要求される事実だった。

 先程の攻撃を目視したからなのか、改めてアリサとソーマは神機を握り直し、様子を伺っている。この場でアネットが完璧な指示を出せるのかと言われれば、明言する事は絶対に不可能だと悟った判断が功を奏した結果となっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だよ……あれ」

 

 アネットとクレイドルが交戦を開始したとの情報は支部内に瞬く間に広がっていた。当初は他所の支部が出しゃばったと言った声が出たものの、交戦のログと望遠による映像を会議室内に映し出した事によって、少なからず出た抗議の声は全て封殺されていた。

 アラガミとアネットの距離が一瞬にして消失したと同時に出された攻撃はこれまでのアラガミには無い程の威力を秘めていた。加速によって攻撃の威力は一気に加算されれば、如何にタワーシールドと言えどかなりのダメージを受ける事は必至だった。

 これまでに部隊を数度全滅させたアラガミの正体に誰もが息を飲んでいる。自分達があの場に居たとして、先程の攻撃を確実に回避出来たのだろうか。誰もが分かり切った答えだったからなのか、口を開く者は居なかった。

 

 

「これがクレイドルの力か」

 

「支部長。クレイドルって……まさかとは思いますが」

 

「君が思ってる通りだ。今回本部に予定があるからと、ついでにアネット君も呼び寄せたんだよ。神機のアップデートは既に完了している事は事前に聞いていたからね」

 

 支部長の言葉にアネットが極東に派遣されていた理由を誰もが思い出していた。元々正体不明のアラガミの討伐の為に神機と、それを扱う人間のレベルアップを至上命題として極東に派遣していた。

 事実、ハンニバル種の可能性が高いとは予測していたものの、まさかこうまでの異常な種であったとは誰も予測出来なかった。ハンニバルそのものが支部の管轄内に出没するケースが少なく、また対応も殆ど出来ていない事から、今回の計画を踏み切っていた。

 本来であればアネットが指揮を執るのが筋かもしれない。しかし、ここドイツ支部でアネットを超える人間が居ない状況下で、かつ新種の討伐をしながら指揮を執れるかと言われれば誰もが首を横に振るしかなかった。

 

 

「あれって如月中尉ですよね」

 

「如月中尉ってあの?」

 

 誰かが気が付いたのか、画面上に見える純白の制服の一人がエイジである事に気が付いていた。ドイツ支部に来る事は無くても、誰かが本部に行く事はある。だからなのか、そんな一人の言葉に誰もがその異名を思い出していた。

 

 『極東の鬼』誰もが一度でもエイジの教導を受ければその言葉の意味を確実に理解させれていた。当初は大げさだと言っていた人間ですら、その教導が終わる事には口から魂が出るかと思える程に放心しながらも、言葉の意味を確実に理解していた。

 限界ギリギリまで苛め抜く教導の後は誰もが劇的に数字が伸びていく。これならアラガミと戦った方がマシだと思える程の苛烈な内容は、教導の中身よりも先に異名の事実である事を優先していた。

 既にどれ程の攻撃がハンニバルから繰り出されても、何一つ攻撃が当たる気配が無い。これ程までに何かに特化した攻撃方法を見た事が無かったからのか、誰もがその技量に魅了されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おれは思ったよりも厄介だな。俺の攻撃が隙を狙わない限り当たる気配が無い」

 

 ソーマはこの時、初めて自分の相棒とも呼べるイーブルワンの重量を呪っていた。これまでの様な速度のアラガミであれば、先読みとも取れるアラガミの動きを予測する事は可能だが、今対峙しているアラガミにそのセオリーは通用する事は無かった。

 ソーマの全力の一撃はハンニバルに到達する前に既に離脱が完了している事もあり、空を斬る事が多々あった。

 それだけではない。時折攻撃の隙を付くかのような攻撃は強者が弱者を甚振る様にも見えていた。地面を抉るかの様にイーブルワンの刃が大地に縫い付けられる。既にハンニバルの距離が再びゼロへと差し戻される。握られたハンニバルの拳がソーマへと襲い掛かっていた。

 

 

「ソーマ!」

 

 ハンニバルの顔面に幾つもの着弾が確認出来たと同時に、その方向を見ればアリサが銃口を向けていた。ソーマに向かった意識をこちらに向けさせる事によって時間を稼ぐ。単独ではなくチームとしての機能が十全に発揮されているからなのか、致命傷となる攻撃は未だ受ける事は無かった。

 交戦してから既に30分以上が経過している。予想外の速度は如何にクレイドルと言えど、自分達が持っているイメージと目の前で戦うアラガミとのイメージにギャップを作っていた。

 大きく振りかぶる様な攻撃が空を斬り、銃弾だけが何とか着弾する程度。攻撃そのものは浸食種に近い物があったが、厄介なのはその速度だった。一撃離脱の散発的な攻撃に怯む要素が無いからなのか、ハンニバルは依然として動きに澱みが無いままだった。

 

 

 

 

 

 アネットは内心焦りを生みながらも決して意識をハンニバルから外す事はしなかった。

 一定以上の距離を物ともせずに詰め寄る姿は、走り来る像に蟻が立ち向かう様な感覚だけが残されていた。

 極東支部でもハンニバルの討伐を繰り返し、ここよりも強固な個体を次々と撃破してもこの種に関してはこれまでのイメージを大きく破壊する程だった。瞬時に縮まる距離から繰り出される攻撃の一つ一つが必殺の刃となり各自に襲い掛かる。

 エイジとアリサは回避行動をしているが、ソーマは回避ではなく防御に徹している。神機の特性を考えた末の行動だった。

 まだ見ぬアラガミとの戦いは偏に自分の中にある引き出しから最適解を作る行為と良く似ていた。攻撃のパターンがある程度分かれば、そこを中心に適正な攻撃を繰り出していく。これまで散々新種と戦ってい来たクレイドルだからこそ可能なやりかたに過ぎなかった。

 強大な力がある訳では無い。一人一人の洗練された行動が無駄な行動を削ぎ落し、最短で攻撃を繰り返していく。今はまだ散発的な攻撃をしているも、その表情に焦りが浮かんでいる様には見えなかった。

 

 

「アネット。大丈夫か?」

 

「はい。何とかやれます」

 

 アネットを気遣うかの様にエイジは声をかけていた。このメンバーの中で新種の討伐をする機会が無かったのはアネットだけ。自分やアリサ、ソーマは既に何度も死線を潜り抜けているからなのか、厳しい攻撃を受けながらも直接的な攻撃を受ける事無く様子を伺っていた。

 ハンニバルと姿形は同じでも、繰り出す攻撃の速度と威力は段違い。弱点の種別さえ分かれば、結合崩壊するであろう部分は大よそながら予測出来ていた。

 ここが極東であれば一気に決める事は当然ではあるが、生憎とここは極東ではなくドイツ支部。今後新種が出る度に自分達が今回の様な特例に近いやり方で派兵する事は不可能だと理解しているからこそ、半ば教導めいた行動を取っていた。

 

 

「そろそろハンニバルの行動パターンも分かったから、そろそろこちらから攻撃を開始するよ」

 

 エイジの言葉にアネットは僅かに息を飲んでいた。まだ戦いの中で決定打を与える事も出来ない状態にも拘わらず、攻撃を開始すると宣言した以上、一気に攻勢に出るのは理解出来る。しかし、これまでの行動でそれがどんな意味を持つのかは理解が及ばなかった。

 そんな中で僅かに可能性の一つが脳裏を過る。しかし、戦闘中であるからと、今はそれ以上の可能性を考えるよりも、目の前に対峙するハンニバルの討伐が優先だからと、これまでの思考を一旦放棄していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一気に決めるぞ!」

 

 エイジの言葉と同時にアリサとソーマだけでなくアネットもまた全速力で疾駆していた。足の一部だけを執拗に攻撃した結果、遂にハンニバルの躯体はダメージの蓄積が実を結んだからなのか、地面へと沈んでいた。

 まだ完全に倒せる程の状態にはなっていないのは間違い無い。しかし、この千載一遇とも取れるチャンスは大いに活用するのは当然の結果だった。

 全力で走りながら自身の力を神機の破壊力へと昇華させる。既にブーストハンマーのヘッドは地面に倒れたハンニバルの顔面めがけて全力で振るっていた。

 

 後方から炎を上げたハンマーは、推進力を活かしハンニバルの鼻面へと直撃する。鼻先から頭蓋に向けて衝撃が一気に伝播していた。握った柄から何かが破壊されたかの様な感触をアネットは感じていた。一度ならず二度三度と無我夢中でハンマーを振るい続けていた。

 

 

「アネット!一旦離れろ!」

 

「えっ」

 

 ソーマの声がした瞬間だった。顔面に意識が向かい過ぎたアネットを待っていたのはハンニバルの放った鋭い爪。幾ら倒れようと瀕死では無かった事から、思いの外回復は早かった。

 無我夢中になり過ぎた代償。即時展開したシールドはアネットの身体を護りはしたが、足に力が入っていないからなのか、衝撃を逃がす事が出来ない。かろうじて肉体の損傷は免れたが、そのまま一気に吹き飛ばされていた。

 

 

「アネットさん!」

 

「アネット!」

 

 アリサとエイジの声がアネットへと向けられていた。新種の討伐における最大の要因はオペレーターからの指示は極端に少ない事だった。オラクル反応は分かるが、それ以外の事は何一つ分からない。一旦討伐が出来れば大よそながらでもオレペートは可能だが、今はそれすらもおぼつかないままだった。

 これが熟練した人間であれば、オペレーターからの情報が無くとも経験則から判断も出来るが、今のドイツ支部でそれを可能とする人間は誰一人居なかった。

 

 

「私なら頑丈に出来てますから……」

 

 受け身を取ったからなのか、アネットの声に全員が僅かに安堵していた。アネットには話していないが、今回の新種の討伐にはアネットの経験を積ませる目的がそこにあった。

 本来であれば新種は臆病な程の警戒感を持ちながら、ダウンした際には大胆に攻め、引き際はアッサリするのが鉄則だった。

 本来であればアネットに向けられた攻撃は完全に意識の外からだった事もあってか、最悪は絶命する可能性もあった。しかし、これまでの教導の成果だったのか、アネットは間一髪の所で防ぎ切っていた。既にハンニバルは元の態勢に戻っている。僅かな油断すら命取りになるのだとアネットは改めて肝に銘じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 均衡を保っていた戦いは一気にこちら側傾いていた。キッカケはエイジがすれ違いざまに放った斬撃がハンニバルの右大腿を深く斬り裂いた事だった。

 片方に深手を負ったハンニバルはそのままバランスを崩し、態勢に乱れを生じさせる。

 幾らアラガミとは言え、戦闘中に身体が完全に回復要素はどこにも無い。万が一何かしら捕喰すれば状況は変わる可能性はあるが、生憎とエイジ達はそんな隙すら作らせない。

 既に戦闘区域は誘導されていたからのか、周囲に何かを捕喰出来る様な物は何一つ見当たらなかった。動きの一つ一つが確実に鈍くなり始めている。そんな隙をソーマが逃すはずが無かった。

 

 

「このまま死ね」

 

 冷たく響く声と共に、闇色のオーラがイーブルワンの刃全体に纏い出したのか、既に巨大な刃となり頭上高くまで振り上げられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりレア物だな」

 

「だろうね。まずはコアの解析を優先させて、後は崩壊した細胞片の確認って流れになる?」

 

「ああ。恐らくはオッサンの下に直ぐにデータを送って、コアの本体は後日って所だな。あとはドイツ支部にも報告する必要がある」

 

 ソーマの一撃はハンニバルの息の根を完全に止めていた。首筋を一瞬にして分断した事によりハンニバルは断末魔すら上げる暇なく命を散らす。本来であれば何時もの様に回収作業が待ってるが、今回に関しては元から予定していた新種の解析があった事から、それなりにやるべき事が多々あった。

 コアの抜き取りが完了した以上、後は霧散していくだけだが、その前に結合崩壊した部分の回収や残存している細胞片の採取などやるべき事は多岐に渡っている。既に手慣れていたのか、ソーマとエイジの手が止まる事は無かった。

 

 

「アネットさん。お疲れ様でした」

 

「はい。ありがとうございます。まさか新種との戦いがこうまで厳しいとは思いませんでした」

 

 疲れ切ったアネットは既にその場に座り込みながらもソーマとエイジの作業を眺めていた。先程まで厳しい戦いを繰り広げていたにも拘わらず、今は次の事をすべきと段取りを汲んでいる。

 身も心もタフでなかれば部隊長と務まらないのは知っているが、それでも目の前で作業をしている2人の姿はそんな事は当然だと言っている様にも見えていた。座りこんだアネットにアリサが手を差し出す。掴まる様に立ったアネットの足腰は完全に疲労が蓄積していたのか、僅かに震えていた。

 

 

「私達だって最初からこうじゃありませんでしたから。まだ戦えるだけ有難いです。感応種が出た当初は討伐なんて言葉すら口に出来ませんでしたから」

 

 何かを思い出したのか、アリサはアネットに話しながらもどこか遠い目をしていた。

 『感応種』の言葉にアネットも当時の事を思い出していた。P53偏食因子を無効化する能力はゴッドイーターの天敵とも取れるアラガミだった。当初は何かの間違いだとも思われていたが、極東支部が情報を公開したのを機にアネットも情報を覗いた際には狼狽した記憶があった。

 

 神機を停止させるそれは丸腰でアラガミと対峙するのと同義だった。何時それが発動するかも分からない状況下での戦いは思い切りよく戦えない。どこか警戒をしながら戦うとなれば完全にパフォーマンスが低下する要因でしかない。既に対策は出来ているとは言え、当時の事を考えれば神機は通常稼動する今は確かに苦にならない可能性の方が高いと感じていた。

 

 

「そうですね……ここでは未確認ですが、極東支部では出るんですよね?」

 

「そう毎回では無いですけど、時折出ますね。ブラッドが居ればそのままですけど、居ない時や間に合わない時は結構大変なんですよ」

 

「私も今回の戦いで何かが分かった様な気がします。今後はもっと頑張ってやりたいです」

 

 一人足を引っ張っていると自覚していたからなのか、アネットの握る手には僅かに汗が浮かび上がっていた。

 あのメンバーの中で何がやれたのかは本人以外に分からない。目指す頂きは高いからなのか、アネットは今の状況に慢心する事無く新たな訓練の必要があるだろうと、一人心に誓っていた。

 

 

 


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