神喰い達の後日譚   作:無為の極

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第147話 人知れぬ事情

 

 普段であればミッションの為に確認をするだけの情報。だからなのか、それ程気にする事は無かった。しかし、ふとした瞬間、何時もとは違う情報。これがまだオペレーターになったばかりの新人であれば何かと動揺するのかもしれない。だが、今の時間の担当は新人ではなくフラン。傍から見ても何の変化も無い様に処理した為に、周囲は何が起こっているのかを知る事は無かった。

 

 

「榊支部長。ヘリポートへの着陸要請が出ています」

 

《着陸要請?今日は特別な用事は無かったと思うけど》

 

「はい。私もそう聞いています。ですが、このコードは本部からです。まだ時間に余裕はありますが、いかがしましょうか?」

 

 着陸要請を断る必要は無かった。何らかの緊急事態になった事による物ではないのは間違い無い。これが通常の要請であれば気にする事は無いかもしれない。だが、生憎と極東支部に関しては色々と発覚すれば困る様な事案が幾つもあった。表面上では問題無いが、支部限定の秘匿事項は掃いて吐いて捨てる程にある。フランが榊に通信を繋げたのも、そんな事由による物だった。

 

 

《念の為に処理はこちらでしよう。フラン君はそのまま許可を出してくれたまえ》

 

「了解しました」

 

 通信が切れると同時にフランもまた端末に情報を入力する。色々な処理は榊がする為に、フランのやる事は何時もと同じだった。淀みなく端末を叩く。画面に映る情報は既に他の事を示していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「突然伺い申し訳ない。少々こちらの事情があったので」

 

「いえ。我々も流石に本部のコードでしたから多少は驚きましたが」

 

 支部長室には何時もの様な乱雑な雰囲気は無かった。秘書の弥生もまた、榊とゲストにお茶を出している。

 本来であれば緑茶の一つも出すが、相手の事を優先した為に器の中身は紅茶だった。琥珀色の液体からは芳醇な香りが漂う。ゲストの男もまた、カップを口にした瞬間、濃厚な香りに笑みが浮かんでいた。

 

 

「いや、本来であれば当家の物を使うのだが、偶然本部の輸送機の空きがあってね。それに便乗させて貰っただけでして」

 

 本部からの便は飛行機やヘリによる物。だが、極東支部に於いては飛行機が来る事は早々無かった。幾ら飛行するアラガミが早々無いとは言え、ここでは他の地域の常識が通用しない。その結果、近隣の支部から立ち寄る体で来る事が殆どだった。これが他の支部からの教導であれば事前に連絡が来ている。今回の様なイレギュラーなケースは稀だった。

 榊としても支部長の立場がある為に、必ず確認をしている。その結果として今に至っていた。

 

 

「それで、今回の用件は?」

 

「ああ、済まない、つい紅茶の香気で忘れる所だった。実は今回の件に関してなんだが、第一部隊の現状を知りたい」

 

「第一部隊の現状……その程度であれば本部でも把握出来るかと思いますが」

 

「いや。端末上の事ではなく、この目で実際に見たままを知りたいと思っての事。ここに迷惑をかけるつもりは無いので」

 

 要領を得ないからなのか、榊もまた疑問に思いながらもそれ以上の追及をする事は無かった。実際に研究者気質が故に人の機微を把握する事は中々難しい。これが紫藤博士であれば良いが、生憎とここには榊しかいない。情報が足りない中での選択は中々に難しかった。

 

 

「そうですか……では。部隊長を呼びましょう。その方が早いでしょうから」

 

「そうして頂けると助かる。こちらとしても生の情報が多い方が有難いので」

 

 榊もまた下手に説明をする位なら、良く知った人物に丸投げした方が早いと判断していた。丁度、今の時間であれば第一部隊は隊長以下、副隊長のマルグリットを除いてミッションに出ている。コウタに説明させるよりも適役だと判断していた。

 

 

 

 

 

 

「第一部隊副隊長のマルグリット・クラヴェリです」

 

「マルグリット君。忙しい所済まない。実は君を呼んだのは僕じゃなくて、こちらの方なんだ」

 

「突然申し訳ない。私の名はヨルグ・フォン・シュトラスブルグ。第一部隊のエミールの親類だ」

 

「エミールのですか……」

 

 突然の紹介にマルグリットもまた少しだけ驚いた表情をしていた。確かに榊に呼ばれたのは事実だが、まさかエミールの親類が来ているとは知らなかった。名乗られた事によって改めて男の顔を見る。だが、どれだけ見てもエミールの持つ雰囲気とはまるで違っていた。だが、よく見れば何となく分からないでもない。自分の意思を明確に貫く雰囲気は紛れも無くそれに近い物を感じていた。仮にそうであっても一個人の感想を口にするだけであれば機密事項には触れる事は無い。そう考えた既に先程までとは思考を切り替えていた。

 それと同時に榊の顔を見れば、どこか安心した様にも見える。恐らくコウタでは色々と難しい可能性があると考えていたのだと判断していた。

 

 

「部隊の事について聞かせて欲しいとの事でしたが……」

 

「実は君の部下に当たるエミールの件で、少しだけ確認したい事があってね」

 

「私が知りる範囲の事で良ければですが」

 

「それで結構」

 

 温和な表情から出る言葉の割に、聞いて来た内容はどこか剣呑としていた。確認する程の問題があるとは思えず、部隊の実務も取り仕切る側からしても、エミールに関しては普段の言動以外に気になる様な事は何も無い。ましてや相手が身内となれば尚更だった。

 

 

 

 

 

「そうか……ここでは彼も立派に騎士道を貫ていると」

 

「そうですね。戦歴だけを見ても既に上等兵ではありますが、実際に他の支部であれば、階級的にはそれ以上の可能性はあるかと」

 

「ほう……ならば曹長クラスだと?」

 

「……他の支部の基準は詳しくは知りませんが、教導担当官の話ではそう聞いています」

 

 ぼかした言い方ではあったが、嘘では無かった。実際に教導担当がエイジだった際、偶然ラウンジでコウタと一緒に話を聞いただけだった。実際に階級が上がるにあ教導教官の文言と実績が必要となっている。勿論、コウタの様に隊長であっても内容に関しては分からない部分が多分にあった。エイジとしても立場的に明確に口にはしない。ただ、コウタと話をしている中で参考程度に聞いただけだった。

 極東支部の基準から考えれば厳しいのは既に周知の事実。そんな極東支部で上等兵以上となれば自然とその判断は曹長になっていた。

 

 

「一つだけ宜しいでしょうか?」

 

「何だね?」

 

「今回の要件に関しては、どんな意図があるのでしょうか?」

 

 マルグリットもまた第一部隊の副隊長としての立場がある為に、今回の件に関してはそれ程多くの時間を費やす事を良しとはしなかった。実際にまだやるべき事は多々ある。今回の件に関しては、任務に関連する何かがあるのであればと判断して時間を割いたが、無意味であれば無為に時間を過ごす事になる。当然ながら何も見えないままの会話をするつもりは無かった。ゲストである事は理解している。ならば、単刀直入に確認した方が何かと都合が良かった。

 

 

「警戒させた様だね。その点に関してはお詫びしよう。今回の件は機密では無いからね。君の立場であれば多少は知っておいても悪くはないだろう」

 

 ヨルグは改めてマルグリットに、今回の趣旨を口にしていた。本来でああれば完全にプライバシーに関する部分。だが、貴族を言う人種はその点に関してはそれ程難しく考える様な事は無かった。よくある日常の中での一コマ。だからなのか、ヨルグもまた隠すつもりは最初から無かった。

 

 

「今回、ここに来たのは甥のエミールの件で間違いはない。だが、少々微妙な事があってね。因みに、マルグリット君だったね。君には近しい人物は居るかね?」

 

「近しい人物ですか?」

 

 ヨルグが何を言いたいのかを、この時点でマルグリットは大よそながらに判断していた。第一部隊に限った話ではなく、極東支部に於いて、一般とは違った身分を持つ人物が二人だけ居た。一人がエミール。もう一人がエリナだった。その関係者からの近しい人の意味。マルグリットの表情を見たからなのか、ヨルグは満足気な表情を浮かべていた。

 

 

「今はそんな時代ではないんだが、地域によっては未だに身分の差がある。ここ極東ではそんな事は無いが、本部に近い欧州では未だにその色があってね」

 

「やっぱりそうですか」

 

「君が聡明で助かった。今回の件に関しては……まあ、その部分なんだ」

 

「因みに本人には?」

 

「その点に関しては構わない。そもそも今回の件に関しては今に始まった事では無いんでね」

 

 理解したと判断したのであれば、あとの説明はそれ程難しい物では無かった。実際にエリナとは違い、エミールは男。当然ながら家督に関しても何らかの影響が出るのは当然だった。実際にフェンリルが管理している様な現状。その大半が上層部に繋がっていた。本人から聞いた事は無いが、エミールの家もまたその可能性を秘めている。調査に来たと言うのであれば、今後の点に関してであるのは当然だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「成程ね。そんな事があったんだ」

 

「実際に物語だけの世界だと思ってたんだけどね。でも冷静に考えれば名前の中にミドルネームが入ってる時点でそうだったのかも」

 

「少なくとも俺には無縁の世界だよな」

 

 部隊の事である為に、今回の情報はコウタにも共有されていた。実際には今直ぐと言った話ではない。ただ、一つの可能性である事と同時に、何時殉職するかもしれない職業である為に、一定量の情報を必要としていた。データ上で分からない事でも現地で見れば別の視点で物が見える。ヨルグはそう判断した上での行動だった。

 意図は分かるが、その件に関してコウタだけでなく、マルグリットもまたどうしようも無かった。エミールの個人的な事情であるだけでなく、家そのものにも大きく影響を及ばす。ゴッドイーターとしても責務も考えれば、何らかの手段を取るにも難しかった。ヨルグの話では、今直ぐの事ではない。だからと言って、安穏と出来る程簡単な話でも無かった。

 

 

「よし。明日にでも直接本人に聞こう」

 

 悩んだ所でどうしようもない。だとすれば直接確認した方が何かと都合が良かった。本当の事を言えばデリケートな内容。だが、本人がどこまで知っているのかを確かめた方が何かと話が早いと判断した結果だった。

 

 

 

 

 

「僕の叔父がですか?」

 

「ああ。ヨルグさんだって」

 

「……そうですか。叔父上が来ていたと」

 

 コウタの話にエミールもまた一定の理解をしていた。実際にゴッドイーターとして活動はするが、実際に貴族階級ともなればフェンリルの上層部にも顔が利く。当然ながら本来の責務でもある十年のくくりすら覆す事が可能だった。当然ながらエミールもまた、そんな貴族の一因。コウタから出た名前を聞いた今でもエミールの態度が変わる事は無かった。

 

 

「詳しい事は何も聞いていないんだけど、色々とここでの生活を聞きたいって事らしい」

 

「叔父上らしいですね。ですが、その件に関しては僕も理解はしています。ただ、今はまだその時期ではないとだけ」

 

「エミールがちゃんと理解してるなら、私は特に問題は無いんだけど」

 

「そうだな。その件に限った話じゃないけど、ここの支部だって異動はあるんだ。俺としても何も言えない」

 

何時もとは違った雰囲気のエミールに、コウタもまた何時も以上に真剣な表情をしていた。実際にマルグリットと話し合った様に、本当の意味でエミールの事を知っている訳では無い。普段の何とも言い難い雰囲気ならばともかく、今のエミールは明らかに違っていた。

 だからこそ、コウタもまたそれ以上踏み込む真似はしない。只でさえ自分には縁の無い世界。その世界の住人の事を詮索するのは何かと問題があると判断した結果だった。エミールが淹れた紅茶を口にする。何時もと違わない香りに、コウタもまた何時もと変わらない対応を心がけようと決めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「中々難しい世界ですね。私には考えられませんが」

 

「確かにここに居れば、そんな特権階級的な物は関係ないからね。でも、他の支部だと色々とあるらしいよ」

 

「極東支部はある意味では完全に実力本位の世界ですからね。下手に権力を振りかざした所で、恥をかくのは明白ですから」

 

 コウタに限った事ではなく、ヒバリからの情報によってどこからともなく今回の件の情報は完全に把握されていた。勿論、守秘義務があるのは当然の事。だが、それはミッションに関する権限であって、それ以外に関しては全く無い。実際に本部経由での来訪程、極東支部からすれば怪しい物は無いからと、自然と監視する部分が多分にあった。

 そんな中での、ゲストがエミールの身内。貴族階級の人間である事を考えれば、その要件は自ずと限られていた。

 

 

「でも、このまま放置しても良い様な内容ではないんだけどね」

 

「でも、今の第一部隊の隊長はコウタなんですから、そっちも頑張ってもらう方が良いですよ。何だかんだで人望はありますから」

 

 ある意味ではアリサの言葉が真意だった。実際にコウタの立ち位置はクレイドルと第一部隊の兼任となっている。だが、ここ最近に関してだけ言えばクレイドルの活動への参加は少なくなっていた。一番の要因は下の人材の育成。第一世代神機の中でも、とりわけ銃型は色々な意味で注目を浴びていた。だが、そこにやっかむ様な輩を見る機会は早々無い。実際に同じミッションに挑んで、初めてその真価を確認するからだった。

 クレイドルの様にゴッドイーターの羨望を集めるのではなく、同じ目線で戦い続ける有様。ある意味では一番の適任だった。

 

 

 

 

 

「そうでしたか……叔父上がご迷惑をおかけした。少なくとも僕自身は自らの騎士道にかけて、一度拝命した任務を途中で放逐する様な事は一切しないつもりです。少なくともゴッドイーターとしても責務を果たしてから考える様にします」

 

「そ、そうか……なら、そうしてくれ。此方としてもエミールの穴を埋めるのは結構大変なんだよ」

 

 コウタの真摯な対応に、エミールは何時もと同じ様な対応で返していた。本来であれば色々な意味で問題発言なのかもしれない。だが、コウタにとってはエミールのどこか尊大な態度は今更だった。真意を確認出来た事によって、コウタの中でも安堵の感情が広がる。普段は何かと問題を起こす事が多いが、今はそんな事を考えるだけの勢いは失われていた。

 実際に極東以外の支部での第一部隊の立ち位置は今更何かを言う様な事は無い。支部の顔でもあり、討伐任務の花形。死傷率は確かに高いが、それ以上に名誉の方が勝っていた。支部の最前線に立つ存在。ある意味では完全に精神的な支柱としての役割がそこにあった。

 

 

「僕の騎士道はまだ道半ば。このまま終わる事は僕自身が許せない!」

 

「お、おう。そうか……とにかく、今直ぐにどうこうする事は無いんだよな」

 

 エミールの言葉にコウタは僅かにたじろぐ。エミールに普段の言動からすれば、この程度の会話は何時もと変わらないはずのもの。だが、今回に関しては完全に自分のプライベートな部分だけでなく、自身の騎士道にも通じるものがあった為に、普段以上にテンションが高かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エミールの立場ならそうかもしれません」

 

「そっか……でも、色々と大変なんだな」

 

「私が言うのも変ですが、あっちではそれなりに柵も多いですから」

 

 隊長としての立場からなのか、それとも、普段の事は割と見ても深く踏み込んだ所までは見なかったからなのか、コウタは似た様な立場のエリナにも同じ様な事を訪ねていた。実際にコウタ自身はそれ程知っている訳では無いが、エリナの兄でもあったエリックもまた貴族としての立ち位置を示していた事を記憶している。今のエリナからはそんな雰囲気は見えないが。万が一のこともあってか、改めて話をしていた。

 

 

「因みにエリナはどうなんだ?」

 

「私は、基本的には本筋からは外れてますから、エミール程何かを言われる事は無いですね。それに、今更そんな事を言われてもこっちも困るので」

 

 余りにもあっけらかんとした言葉だったからなのか、コウタはそれ以上深く追求する事を止めていた。実際にエリナがゴッドイーターになる動機にはエリックの事が多分に含まれている。幾ら自分の部下と言えど、下手に言葉にするにはデリケート過ぎていた。コウタとエリックの接点は殆ど無い。精々がまだ新人だった当時、エイジからソーマと一緒に赴いた際の顛末を聞いただけ。あの時と今は明らかに違うとは言え、メンタルの部分で問題を起こす訳には行かなかった。

 

 

「エリナがそう言うなら、俺も安心出来るからさ」

 

「どうしたんですか急に?ちょっと変なんですけど」

 

「あのなぁ……」

 

 暗さを感じないからこそ、エリナもまた軽口を叩いていた。実際にまだ配属されたばかりの頃であれば、確実にコウタへの株は下がったかもしれない。だが、今のエリナにとってはコウタの気持ちは何となくでも理解出来ていた。

 実際に戦場に新兵を連れて行く事はこれまでにも幾度となくあった。だが、そのどれもが実戦を経験させる為の簡単な物ばかり。難易度が高くなれば必然的に固定されたメンバーでの出動が殆どだった。

 特にエリナに関しては既に一定上の技量は保証されている。事実上の副隊長クラスであれば、隊長次第ではそのまま投入される事もあった。当然ながら戦力に関する見積もりは厳しくなる。そんなコウタの思惑をエリナは感じ取っていた。

 

 

「ねえ、エリナ。参考に聞きたいんだけど、エミールの相手の人って知ってるの?」

 

「そう言えば、写真を撮った事があります。確か………これです」

 

 マルグリットの言葉にエリナは自身の携帯端末を操作し、コウタとマルグリットに写真を見せる。そこに映ってたのは、誰もが納得する程の美貌の女性。少なくともここにハルオミが居れば、間違い無く興味をそそられる容姿だった。

 

 

「………何だか、さ」

 

「コウタの言いたい事は理解したよ」

 

「この方は見た目はかなり良いんですが、その……性格がちょっとアレなんです」

 

 見た目とのギャップが大きい事を知っているからなのか、エリナはどことなくフォローらしい言葉を並べていた。実際に会った回数はそれ程多くは無い。特に最近に関しては送られたメールや添付された写真が大半だった。

 見た目が良いだけに、性格はどちらかと言えばエミールに近い。少々自画自賛が強すぎるのはある意味エミールにはお似合いだった。

 

 

 

 

 

「どうやら僕の婚約者の事を話題にしている様だね。彼女は僕には勿体無いとさえ思う程。僕の神機『ポラーシュターン』にも劣らない程の輝きを持っているんだ」

 

 まさかの人物の声に三人は一斉に振り向く。その先には何時もと変わらないエミールの姿がそこにあった。

 

 

「詳しい事は分からないけど、エミールがそう言うならそうなんだろう。で、用事は終わったのか?」

 

「僕の事に時間を割いて貰った事は申し訳ないとは思う。しかし、まだ僕の騎士道の先が見えない以上、このまま精進あるのみ!」

 

 先程までは周囲には聞こえない程度の会話だったが、エミールの事実上の暴露に近い言葉に、周囲の視線が一気に集まる。まさかの言葉に誰もが驚きを見せたからなのか、珍しくラウンジの時間が僅かながらに停止していた。

 

 

 


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