神喰い達の後日譚   作:無為の極

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第108話(幕外) 変異種

 アラガミの大群の中にまるで切り取ったかの様にマルドゥークはそびえ立っていた。

 通常の個体に比べれば、その体躯は一回り大きい。本来であれば1チームが事前に完全に装備を備えた状態で戦うのが好ましい個体だった。

 

 極東に感応種が現れてから、それ程時間が経過した訳では無い。しかし、このマルドゥークと言う種に関してだけはブラッドの中では未だに因縁とも取れるべき内容なのは間違い無かった。

 今でこそ、それ程話題には上らなくなったが、それでも尚ブラッド全員の中では特別な存在。そんなアラガミと対峙しているからなのか、北斗は人知れず神機を握る力が強くなっていた。

 

 

「北斗。入れ込み過ぎは良くないよ」

 

「すみません。ですが、何度あれを見ても力がつい入るので……」

 

 現在地点の高低差を活かしているからなのか、アラガミはまだこちらに気が付いていなかった。

 実際に、この人数で全部の個体を討伐するのは流石に無理が生じる。当然ながら少ない労力で何とかする戦略が必要だった。

 見た限りマルドゥークは大群の後方から移動している様にも見える。そうなれば少なくともある程度アラガミの大群の意識をどこかに向ける必要があった。

 

 

「気持ちは分かるけど、冷静さを失ったら次に落ちるのは自分の命だ。感情的になるなとは言わないけど、少なくともせ冷静な対応が必要になるから」

 

 エイジの言葉に北斗は改めて大きく深呼吸していた。いつかどこかで聞いた様な話。北斗にそんな事を言いながらエイジはその当時の事を思い出していた。

 

 

「ブラッドとマルドゥークは因縁があるのは知ってるつもりだけど、少なくとも今回は2人で対応する事になるんだ。後からは派遣されるみたいだけど、それでも冷静に戦う事に変わりないよ」

 

「そうですね。すみませんでした」

 

 エイジの言葉に北斗も漸く冷静さを取り戻していた。

 元々の個体は当の前に討伐が完了している。実際にアラガミは霧散した時点でその個体の能力が継続される事は殆ど無かった。

 あの当時に戦ったマルドゥークは狡猾さを持っていた。しかし、アラガミの固有能力ではなく、どちらかと言えば個体差でしかない。当然ながらそれが継承される事実はこれまでに確認されていなかった。

 そんな中で当時の記憶が蘇る。完全に達観した訳では無いが、少なくとも折り合いだけは確実に自分の中でつけていたつもりだった。

 改めて見るマルドゥークに北斗の心の中の何かがざらついた様に感じている。今はエイジが言うように冷静になる事が先決だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エリナ。絶対に無茶だけはするな。引くべき時は絶対に引けよ」

 

「了解です」

 

「俺がアラガミを誘導するから、エミールは止めを刺すんだ。今回のこれは何時もとは違う。俺達が最終防衛ラインだと思ってやるんだ」

 

「我が騎士道に負けはない!」

 

「いや、だから、無理はするなって……」

 

 コウタ達第1部隊もまた、迫り来るアラガミの情報を常に確認しがら、それぞれが最適な陣形を整えていた。

 今回の様なケースはこれまでにも何度かあったが、基本的には第1部隊はアナグラの最終防衛ラインの手前に配置される事が多い。

 実際に討ち漏らした物は防衛班が完全にシャットアウトするのが今の戦術の流れだった。コウタの耳朶には既にブラッドだけでなくクレイドルもまた交戦を開始しているアナウンスが流れている。

 未だここにアラガミは見えないが、戦場特有の雰囲気だけは伝わっていた。

 

 

「ハルさん。そっちは大丈夫ですか?」

 

《こっちも準備か完了した。あとはアラガミを待つだけだ》

 

「了解です」

 

 今回の布陣で一番の要点はここに来ている外部組の扱いだった。

 元々お客さんの様な扱いではあるが、今回の様なケースでは元々の戦力と同じ様にカウントされている。

 情報の共有と同時に戦力としての情報公開。瞬時に寄せられた情報を元にサクヤはそれぞれの適性を見て配置を決定していた。

 それはコウタだけでなくハルオミも同等だった。

 本来であればコウタが両方の指揮を執るのが筋だが、実際には外部組の心情を優先してハルオミがその任に就いている。

 幾らゴッドイーターが実力主義とは言え、旧型の銃型ではこんな状況でも侮る人間は少なからず出る。僅かな油断が死につながる事を誰もが理解しているからなのか、過去の反省点を踏まえた上での結論だった。

 

 

《コウタさん。そちらにもアラガミが向かい出しました。今の所は気になる様な個体はありませんが、エイジさん達の所で変異種が確認されています。万が一の事もありますので気を付けて下さい》

 

「了解!」

 

 コウタはヒバリからの通信を切ると同時に、周囲の状況を改めて見直していた。

 既に配置についたそれぞれもまた視線は前を向いている。程なくして目視出来る距離にアラガミの姿が見え始めていた。

 

 

 

 

 

「今回の件はちょっと厄介ですね」

 

「何かあったの?」

 

「いえ。実はソーマさん達の報告だと、本来であればかなり強い個体が居たはずなんですが、実際には大した事がなかったんです。事実、レーダーの光点もかなり違ってましたので」

 

 ヒバリの懸念はサクヤも同じだった。

 結果的にレーダーに異常が確認出来ないのであれば、後はその情報を信じて行動するしかない。

 レーダーはあくまでも偏食場パルスを察知し、画面に表示するだけの存在。当然、現地の状況を確認するには当事者から聞くしかなかった。

 それと同時に変異種の存在が更に懐疑的な情報に拍車をかける。変異種に関しては完全にレーダーの索敵でも判断が出来ないままだった。

 

 

「そう言われればそうなんだけど、今はその情報を信じるしかないわね。それよりも今回の外部組の方が少し心配だわ」

 

「そうですね。こちらも常に状況を確認するしかありませんね」

 

 サクヤが言うのは今回の外部組の内容だった。

 一時期に比べれば外部からの派遣の質は大きく変わり出している。

 一番の理由は一度極東に行った人間の討伐の速度とスコアだった。少なくとも極東で慣れると、自分達の所属する支部に戻った際のアラガミのレベルは雲泥の差があった。

 一つ一つの攻撃が致命傷になりがちな極東のアラガミは自分達の支部では出てこない。

 時折高レベルミッションとなる難易度の高さで漸く中堅レベルと同等だった。

 

 当然ながらゴッドイーターの世界は完全実力主義。幾らベテランであっても支部からすればアラガミを大量に討伐する方を優遇するのは当然の流れだった。

 当時はそのたびに小さな衝突が起こる事もあったが、教導によって対アラガミだけでなく対人戦も組み込まれた事によって、結果的にはその実力を体感していた。

 当然そうなれば、新人だけでなく中堅もまた極東に派遣されていく。それが今の極東支部の状況だった。

 元々大規模作戦を経験しないままにゴッドイーターとして終わる事も少なくない。

 これが中堅やベテランであれば多少なりとも対処が出来るが、今回の派遣の内容は大半が新人に近い物だった。

 数人のベテランはいるが、それでも十全に実力を発揮できるのかは分からない。それがサクヤの不安の正体だった。

 

 

 

 

 

「総員、気を抜くな!」

 

 警告を発した事によって周囲のゴッドイーターの緊張が急激に高まっていた。既に目視出来る距離だからなのか、その姿はさながら死をもたらす戦士だった。

 口から漏れる紅蓮の色は既に臨戦態勢の証。それと同時に、この場に於いてこのアラガミと対峙するのは完全なミスマッチだった。

 ハンニバルが疾駆する事でその大きなが如実になっていく。これまで極東に派遣で来た人間は初見だったからなのか、その迫力に戦意は少しづつ削がれていた。

 

 改めて鼓舞するかの様にハルオミが周囲に聞こえる様に声を張り上げる。普段であれば余程の事が無い限り、ハルオミが声を荒らげる事は無かった。

 実際に精神的なゆとりは自身の持つ動きを代々現に高める。しかし、ハンニバルを初めて見た人間は僅かに恐怖を感じ取っていた。

 

 

「コウタ、こっちに来れるか?」

 

《何が出たんですか?》

 

「ハンニバルだ。しかもこっちは対策をしていない人間ばっかりなんでな。厳しいとは思うが頼む」

 

 通信機越しとは言え、コウタ達がどんな状況になるのかはハルオミを知っていた。

 実際に防衛の最先端で出来る限り殲滅を担当しているのは第1部隊を中心とした複数の部隊。

 コウタはそこで実質的な指揮を執っていた。

 少ない人数で対処する為には実力も去る事ながら物事の全体を俯瞰で見る目が必要となってくる。

 実際に第1部隊ではコウタがその役割を果たしていた。旧型神機使いの中でも銃型であれば、無駄撃ちを避け、常に効率よく攻撃する必要が出てくる。

 元々コウタはそんな資質は持っていない。まだクレイドルが第1部隊だった頃にその動きを少しづつ学び、自身の力を昇華させることに成功したからこそ今があった。

 

 見た限りではこれまでの第1部隊の中では火力が足りない事は極東の古参なら誰もが知っている。しかし、その火力不足を補う為にコウタが自身が努力した結果だった。

 エリナにしてもエミールにしても階級以上の実力は多分にある。しかし、それが必ずしも戦果に繋がる訳では無い。

 適材適所。コウタが采配する事によって火力不足をおぎなって来た証だった。

 しかし、それ以上にハルオミは要る部隊は火力ではなく経験が足りなかった。

 ハルオミ以外で恐らくまともに動く事が出来るのはカノンとアランの2人だけ。ハンニバルへの視線を僅かに切って周囲を見れば、既に勢いは無くなりつつあった。

 事実上の恐慌状態。そうなれば当然その結末は予測出来る。ハルオミだけでは難しいと判断した結果だった。

 

 

《了解です。ですが、こっちもまだ時間がかかりそうなんですけど、大丈夫ですか?》

 

「任せておけと言いたい所だがな………」

 

 コウタの声を聞きながらもハルオミもまた当時の状況を思い出していた。

 実際にハンニバルと対峙する場合、現時点では上等兵以下は即スタングレネード使用後に撤退が推奨されている。

 それは偏に神機のミスマッチやハンニバルの細胞対策をしていない事が起因されていた。

 実際に命をかけて討伐した後に5分と立たず復活されれば戦線は崩壊する。

 ハルオミもまた事前に調べていたからこそ冷静に対処出来ただけだった。

 理論上は派遣されている人間は全員が曹長以上。だとすればハンニバルとの交戦は止む無しだった。

 

 

 

 

 

「くそっ!極東はこんなのばっかりかよ」

 

「もう少し辛抱してくれ。援軍を呼んだ!」

 

「できるだけ早く頼む!」

 

 アランは珍しく悪態をつきながら交戦を開始していた。

 一番の理由は未経験による攻撃能力の把握だった。

 イタリア支部ではハンニバルとの交戦経験はこれまでに一度も無かった。事実、イタリア支部で交戦経験があったのは現第2部隊長でもフェデリコ・カルーゾただ一人。

 しかも極東でまだ研修中に偶然交戦しただけだった。

 当時のフェデリコと今のフェデリコでは、当然ゴッドイーターとしての経験は段違いになっている。

 しかし、これまでにイタリア支部では交戦していない以上、今戦えばどうなるのかは大よそながらに想像出来ていた。

 アランも多少なりとも極東に行く際に話しはしたものの、やはり聞くと実戦ではまるっきり違っていた。

 

 アラガミ特有の膂力でアランの展開する盾を激しく殴打する。タワーシールドが幸いした事で直撃は避ける事が出来たが、それでもその衝撃はそのまま地面に二本の溝を作る勢いだった。

 ハルオミの声にアランもまた声を出す事無く全身の力で攻撃を防ぐ。これがスモールシールドであれば、自身の躯体は容易く宙を浮く程だった。

 

 

「ハルさん!」

 

 カノンの忠告とも取れる言葉にハルオミはハンニバルの影に隠れるかの様に現れたヴァジュラテイルを一刀の下に斬り捨てる。

 戦っているのはハンニバルだけではない。僅かな油断は死を誘う。ハンニバルが出現した事によって、既に苛烈な環境へと変化しつつあった。

 

 

「悪いなカノン」

 

「いえ。それよりも今は目の前に集中しないと」

 

 既にカノンは数度のオラクルリザーブを経て、神機にはかなりのオラクルが凝縮されていた。

 ブラスト型特有のオラクルリザーブは、バレットエディットを通じてこれまでに無い破壊力のバレットを撃ち込む事が可能となっている。それはブラッドだけに留まる話ではない。実際に銃形態がどれ程のアドバンテージを誇るのかは、極東の人間であれば打もが理解している。

 既にヴェンズガーリーは何時でも射出可能な状態へと変化していた。既に経験しているからなのか、それともこれから起こるでであろう凄惨な未来を察知したからなのか、ハルオミの顔は真っ青に変化していた。

 

 

「カノン。まさかとは思うが……」

 

「何を言ってるんですか。当然じゃないですか。折角のブラストなんですから」

 

「アラン!退避だ!死にたくなかったから射線を開けろ!」

 

 未来を予知したかの様にハルオミの怒声がアランへと届く。

 アランもまた何かを感じ取っていたからなのか、戸惑う事は無かった。

 まるで予定調和の様に素早く横に避けた瞬間、これまで感じた事が無い程の衝撃が大気を震わしていた。

 爆発に近い音と同時に着弾したからなのか、衝撃波が後からやってくる。

 本来でれば近接攻撃中にアラガミから視線を外すのはあり得ない行為だった。

 大よそながらにその発生の原因とも言えるカノンに視線を移す。既にカノンの表情は何時ものホワンとしたものから、どこか怪しげな表情に変貌していた。

 

 

「ははっ。不様ね」

 

 アランはカノンの変貌に驚きながらも先程の攻撃の内容を理解していた。

 カノンが持つヴェンズガーリーの銃口からは膨大な熱量を発したかの様に湯気の様な何かが出ている。これが通常の火薬を用いた銃であれば分かるが、少なくとも神機からそんな物が出るとは思ってもいなかった。

 

 音の大きさからかなりの高威力である事に間違いは無い。そんな経験があるからこそ、幾らハンニバルと言えど無事では無い事だけは理解していた。

 改めてハンニバルへと視線を動かす。既にハンニバルは衝撃のあまり右腕は完全に吹っ飛んだからなのか、肩口から先が完全に消滅していた。

 

 

「今だ。ここで勝負を決めろ!」

 

 先程の威力にハンニバルは既に横たわっていた。

 こんなチャンスを見逃す程、ゴッドイーターは甘くない。ハルオミの声にアランは直ぐに意識を取り戻していた。

 渾身の一撃を与えるべくバスター型神機を上段へと持って行く。闇色のオーラは既にチャージクラッシュをいつでも放てる状況だった。

 渾身の一撃はそのままハンニバルの頭部に直撃する。完全に横たわった頭部はアランの格好の的だった。

 

 

 

 

 

「あれ、もう倒したんですか?これって変異種ですよね」

 

「まぁ、カノンがちょっとだけやらかしんたんでな」

 

「……あれって、そうなんですよね?」

 

「そうだな。今までの中で一番ヤバいって感じたな」

 

 コウタが驚くのも無理は無かった。カノンの放った一撃は完全にハンニバルの肉体を破壊していた。

 本来であればこんなに簡単に倒せる相手ではない。

 しかも変異種となればその脅威度は段違いに高く、これまでにコウタ自身も何度か対峙した事があったが、どのアラガミも厳しい戦いだった記憶しか無かった。

 災厄とも言える変異種は個体によってその違いは統一されていない。

 変異種に関しては、まだこれからの調査が引き続き必要になるのが通例だった。

 黒い咢が大きく開く。そのままハンニバルのコアを抜き取った瞬間、狙い済ましたかの様に一体のアラガミがこの地に舞い降りていた。

 

 

「あれは……ハルさんスタングレネードを!」

 

 舞い降りたのは一体のシユウ。本来であればコウタが焦る必要はなかった。

 偶然にもこの場に居たのはコウタ達第1部隊と第4部隊とアランだけ。

 その正体が何なのかを正確に理解してたのはコウタだけだった。

 コウタの叫びにハルオミもまたシユウへと視線を動かす。僅かに逡巡した瞬間、声なき咆哮が周囲一帯に響き渡った。

 

 

「おい、神機が動かねぇぞ!」

 

「くそっ。ここで感応種かよ!」

 

 本来のシユウには無いはずの赤い触手の様な器官を持つのは感応種の証。

 これまでにコウタだけでなくハルオミもまたその特徴だけは事前に知っていた。

 それと同時に何も知らないアランは驚愕する。

 先程までは自身の手足の様に動いたそれは、まるで死んだかの様にピクリとも動く事は無かった。狙いすましたかの様に翼手にはエネルギーが集中していく。

 誰もが回避だけを余儀なくされていた。

 

 翼手から放たれたエネルギー弾はアランへと襲い掛かる。何時もの癖で盾を展開しようとするも、神機が反応する事は無かった。

 迫り来る攻撃。今の状況で出来るのはバスターの刃で身を護る事だけだった。

 

 

「アラン!それは無茶だ!」

 

 ハルオミの声が響く。アランとて無茶であることは百も承知だった。仮に刃が折れたとしても出来る事はそれしかない。まさか神機を放り投げる訳にはいかないと、半ば無意識の行動だった。

 

 

「ぐわぁああああ!」

 

 容赦ない衝撃はそのまま襲い掛かっていた。

 ギリギリ持ち堪えたまでは良かったが、刃の根本には僅かに亀裂が走っている。

 次の攻撃を食らえば待っているのは自身の死だった。

 

 吹き飛ばされながらもこれからの行動を考える。しかし、これまでに感応種の言葉は聞いたものの、実際に対峙した事がなかったアランには次の行動をどうすれば良いのかが分からないままだった。

 ゆっくりと聞こえる死神の足音。今のアランにはなす術も無かった。

 

 

「スタングレネード行きます!」

 

 突如として聞こえた声に、その場にいた全員が無意識の内に目を閉じる。瞬時に聞こえた音と同時に白い闇が周囲に漂っていた。

 閃光をまともに見たシユウは既に視覚を失っている。

 その瞬間、僅かに聞こえたのは斬撃の音とシユウの悲鳴だった。

 

 極東の中で一番の脅威でもある感応種の中でも、事実上の原始の存在でもあるシユウ感応種は、これまでにブラッドが来るまでに一番の脅威となっていた。

 如何に強靭な肉体と身体能力を誇るゴッドイーターと言えど、生身でアラガミ対峙する事は無い。

 仮に出来たとしても一時的な時間稼ぎしか出来ず、結果的には退却するまでの時間稼ぎしか出来なかった。

 しかし、この種だけに関してはその後の調査の結果、致命的な弱点があった。

 異常な偏食場パルスを発生させるのは赤い触手の様な物を失わせる事。即ち、スタングレネードからの一連の流れが確立していた。

 女の声に、誰もが理解を示している。だからなのか、白い闇が晴れた後に残るのは既に偏食場パルスを発生させる事が出来なくなったシユウだけだった。

 

 

 


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