仮面ライダーリュウガ 〜暗黒を纏いし黒騎士〜 作:人類種の天敵
「えーっと。どこから話せば良いかな。いや待て、先ずは挨拶が先かな。ああいや、最初に友好的な態度を示すべきだな、うんうん。……友好的な態度、え?なにをどうすれば良い?あ!日本のアニメの話でもしようか。んー、何がいいかなぁ?」
「お、お兄様。落ち着いてださい!」
「あ、セシリア。随分と久しぶりだねぇ。背伸びた?それより僕のこと覚えてるよね?アルスだよ。アルス・ウォルコット。あはは、僕も仕事の方が忙しくてね。今度実家にも顔出さなきゃな〜。あ、そういえばチェルシーは元気?んー1年と三ヶ月くらいだっけ?はあ、ほんと仕事イソガシイ。趣味に没頭したい。出来ない。チェルシーに会いたいなぁ。あ、セシリアには会わなくてもいいとかそんなんじゃないよ?現にこうしてセシリアに会えたんだし、けどそうなるとチェルシーにも会いたくなってきたなぁーってね?」
「はい、はい、はい。わたくしもお兄様な会えてよかったですわ………はぁ」
セシリアは頭を抑えて唸った。
やはりしかし、それと同じくらい嬉しかった。
やはり兄は、アルス・ウォルコットは以前と全く変わりない。
自分とチェルシーの事を気にかける優しい彼のままだと。
「あれ?君って今のIS学園生徒会長?あ、そうなんだ。いや、僕の妹2人もここの生徒会長やってたから。確かカタナちゃんって言うんだよね。こう、ニンジャソウルやサムライダマシイが迸ってていい名前だね!アイエエエエって。あ、これは僕の好きなニンジャアニメのセリフね?一般人の台詞なんだけどなんかね、中毒性があってね」
「あ、は、はい……え?なんで、私の名前」
兄の言葉攻めに生徒会長の更識楯無は呆然とした。
何故なら、彼が自分の真名を知っているからだ。
「あ、ごめんね。当主としては楯無だったね。これから気をつけるよ。さて、お集まりいただいたみなさん、どうもありがとうございます。改めて自己紹介させて貰いますが、アルス・ウォルコット。ICPO所属の仮面ライダーです。以後よろしく」
ICPO所属、そして仮面ライダー。
この単語に集まっているメンバーは全員驚愕した。
「お、お兄様……いつの間に」
「え、ICPO?あ、仮面ライダーの方?とある同好の士から盟友の証として貰ってね。不可解事件や犯人逮捕に一躍買って貰ってるんだよ。ああ、心配しなくても本国では周知の事実だから。今度マー◯ルでヒーローの1人として実写映画出ない?って話もあるよ」
「「「………」」」
規格外だった。
この人物は常識の通じない人物だ。
世界最強、ブリュンヒルデ織斑千冬に負けず劣らず、リアルチート保持者だと更識楯無は顔を引攣らせた。
だがそれはセシリアも同じだろう、知っている人が突然自分は仮面ライダーだと言っているのだから。
そう思い楯無はセシリアを見た。
「お兄様!お兄様は……お兄様は仮面ライダーなのですね。う、うう。嬉しくて涙が……お兄様はイギリスの誇りですわ!!」
感涙していた、それも引くほど。
ブリュンヒルデや学園長2人は動揺したそぶりを見せていない。
(マジですか、この人たち!本当にマジですか!?仮面ライダーよ?彼!…まあ、私もだけど)
「それで、貴方がきた理由はなんでしょうか」
裏の学園長、轡木十蔵は単刀直入に用件を聞いた、そしてアルスの方も、表情を改めて話を始める。
「平たく言えば情報の共有と行動制限の拒否ですよ。学園長。僕は立場上世界を飛びまわらなければいけない。しかしその度に足を引っ張ろうと画策する奴がいると非常に邪魔でして」
「ほう。IS学園はそれに成りかねないと」
「既にIS学園は大なり小なりライダーにとって邪魔なんです。ご存知でしたか?」
「……」
「織斑先生、下がってください」
動こうとする織斑千冬を“学園長”轡技十蔵が押し止める。
彼女ではアルス・ウォルコットを御すことは出来ないと判断した上でだ。
「それに今回は浅倉威を取り逃がしてしまった。これは非常にマズイ事態です」
アルスはそう言い、沈痛な面持ちで頭を下げた。
本人にとって浅倉威を絶好の機会で逃してしまったことが実に悔しいらしい。
「……浅倉威の名前は知っていますが、それほど危険な人物なんですか?確かに彼は刑務所を脱獄したらしいが、それは同時に一度警察に捕まったと言う訳でしょう?」
織斑千冬が視線は鋭くしたままにアルスに切り込む。
当のアルスは織斑千冬を信じられないバカを見る目で口を半開きにしていた。
「……失礼。貴方の浅倉像がどうかは知りませんが、ミス織斑。今の浅倉威は仮面ライダーだ。ISが勝てない仮面ライダーに彼はなれるんですよ」
(アルスさんの言う通りね。私も仮面ライダーの経験があるから分かるけど。浅倉は異常よ、普通のIS操縦者は論外、かのブリュンヒルデですらも容易く蹴散らすでしょうね)
アルスの見解は楯無の見解と同じ、浅倉威はIS神話を根本から破壊しかねない人物だ。
「それに、浅倉…王蛇の毒にやられた仮面ライダーリュウガの容体は芳しくない。王蛇が危険な理由は異常なまでの闘争心、毒、人を殺すことに全くの抵抗を持たない性格です」
「毒、とは?」
「彼の契約モンスターである蛇の化け物と彼が使用する多種多用の毒です。リュウガを動けなくして自分でとどめを刺したいがために神経毒の一種を使ったようですが、それが長く続けば人にとっては致死性の毒になるでしょう。彼が死ぬのは非常に不味い」
ちらりと視線を移す先には黒髪の少年がソファーに寝かされている。
その傍らには何故かメイドもおり、その横では金髪ロングヘアのワンダフルボディの女性が話しかけている。
アルスによれば金髪の女性は彼の契約モンスターという話で、実際はライオン型のミラーモンスターらしい。
「彼が死ぬのは非常に不味いと仰りましたが、それは何故ですか?」
「契約主が死ぬと、契約しているミラーモンスターが暴走するからです。暴走したミラーモンスターは自分が消滅するまで大いに暴れることでしょう」
少年、アギトの契約モンスターが危険な事は一度対峙した織斑千冬が既に承知している。
既に職員も1人殺されており、悪戯に刺激しない事はIS学園も同意する。
「毒に対する解毒薬はあるのですか?アルスお兄様」
「ああ、セシリア。仮面ライダーの中に毒に詳しい人物がいる」
「名前を聞かせてもらってもよろしいですか?」
面の学園長、轡木十蔵の妻が尋ねると、アルスは首を横に振って拒否を示した。
「No、です。彼女は非常に気難しい性格で、ライダーとして相応の実力もある。彼女の情報を公開したと彼女の警戒を強めるのは得策ではないと判断しています。勿論これは仮面ライダーとしての主張であり、ICPOの見解でもあります。どうぞご理解を」
「そうですか。ではなぜ、我々に今回の話を?」
「一つはIS学園という独立した場で僕の存在が公になったこと、もう一つは彼の保護を求めたいことです。見ての通り彼は今無抵抗の状態で、まあ、手を出せば彼の契約モンスターが黙っていない。それで各国が好機と見て工作員を送り込んで契約モンスターが暴走することが一番不味い展開だからですよ。貴方方にはそれを防いでもらいたい」
これで話は終わりとばかりにアルスは席を立つ。
「今回浅倉威をIS学園に招待したのが誰かは分かりませんでしたが、覚えておくと良い。今の世界は、鏡のようなものだと」
「それはどういう?」
織斑千冬の問いかけに微笑みで答えたアルスは金髪の女性を連れて部屋を出た。
「持ち主の本性を醜く表し、それでいて脆く壊れ易い……所が、ね」
暗に女尊男卑の世の中を批判する言葉を残して。
「せんせっ、支倉せんせー」
都内の共学校。
その敷地内に彼女はいた。
「支倉紫穂先生っ」
「あら、今日も元気ね。駄犬」
「う………名前をフルネームで読んだ瞬間のこの仕打ち……コレ…イイ……ハァハァ///」
支倉紫穂、20歳。
身長159㎝、スリーサイズB86 W56 H84(紫穂ファンクラブ有志調べ)、やや紫色を帯びた銀色のセミロング。
都内共学校の講師である女性だ。
その女性は、自分の名を呼ぶ学生に用件を聞くと、学生は彼女に来客だと告げる。
「へぇ、男ね。私に声をかけるなんて珍しいじゃない」
支倉紫穂は有名だ。
美しい容姿もあるが、彼女の名を広めているのは彼女の性格と持論。
女尊男卑の世の中で「ISを否定する」女性は嫌われる、彼女もまたそのうちの1人だ。
そして、彼女は、実にサディスティックな一面を持つ。
涼しげな顔で毒を吐き、相手の反応を楽しむ真性のドS。
美人だと声を掛けるナンパを言葉責めで甚振り、「自信満々の顔をくしゃっと歪まさせるまでゆっくり炒めてあげる♡」のが最近のマイブームだと公言する彼女に一部の変態紳士達がファンクラブを作るほど。
「あら、誰かと思えば」
「やあ、女王様」
「筋金入りのシスコン紳士じゃない(にっこり)」
「ぐふっ………!?ぐ、がほっがは……」
毒を吐かれた相手、紳士ことアルス・ウォルコットはfinal vent級の口撃に思わず胸を鷲掴みにした。AP10000越え。
「あは、あはは……きょ、今日も美しく、弁舌冴え渡ることで…」
「世辞はいいの。そんなこと一ミリも思ってないのは
見せつけるようにコーヒーカップに口をつける紫穂、正に外道…あ、いえ、正に女王様である。
「アハハ……浅倉威の件で君に協力して欲しい」
「浅倉……なら、解毒薬かしら」
紫穂は浅倉威の危険性やライダーの特徴を事細かに知っていた。
それは、アルス・ウォルコットを通じて情報を得ているからだ。
「ああ。実は仮面ライダーリュウガが毒でやられちゃってね」
アルス・ウォルコットはICPOの立場を生かし、組織内にコネや繋がりを作っていて、仮面ライダーと知られても支障の無い土台を作り、世界各国と言えど、容易に手出しはできない。
そして、彼は多くの仮面ライダーとの面識を持ち、“管理者”としてライダーへの無用な手出しを牽制する傍ら、こうしてライダー間の情報のやり取りしている。
支倉紫穂もまた、アルスと交流のあるライダーだった。
「ふぅん。私と同じと思ったけど、やられるなんてつまらない男。それで、毒の種類は?」
「恐らく神経毒。でもベノスネーカーの毒だ」
「直に見ないとどうにも言えないわね」
支倉紫穂は毒使い、その道専門のプロフェッショナル。
戦闘では口から吐き出す毒で相手を揺さぶり、繊細な手つきで色々な毒を用いる。
……その為好き好んでバトろうとするライダーもいなければ言い寄ってくる男もいないので20歳にして男ナシ。
年齢=彼氏れkーー
「うるさいわよ」
「?え?なんか言ったっけ?僕」
「ふん、まあいいわ。仕事が終わった後にでも容態を見に行くから人目のつかない場所に寝かせといて。あとは勝手に入って視るから」
「ああ、彼の部屋番号を教えとくよ」
ライダー同士の会合が終わり、アルスはそそくさと都内共学校を出る。
IS学園に共学校と梯子した彼は次に携帯電話を取り出して連絡を取り始める。
「………あ、もしもし。海洋さんですか?僕です、アルスです。はい、やっぱり今回は天災の仕業と見て間違い無いですね。はい、海洋さんも気を付けてくださいよ?いざとなったら海に逃げ込むって…はは……」
話し相手は世界的海洋学者の亀田海洋。
元自衛官、それも自衛隊の潜水艦ソナー手という異色の経歴の持ち主。
本人は真面目で実直、実質剛健な人物だったが女尊男卑の世の中で女尊男卑派の上官となんだもぶつかり、除隊。
以降、夢を追うように海洋学者となる。
「海洋さんが海に潜ったら洒落にならないですよ?仮面ライダートータスの貴方が海に潜るとね」
仮面ライダートータス、亀田海洋。
自衛隊を辞めて海での活動を始めた頃、神崎士郎と出会い、交流。
その後神崎士郎の試練(強制イベント)に巻き込まれ仮面ライダーになる。
本人としてはライダーの装甲と契約モンスターを使うことで海底まで気軽に行けるから海底調査が楽になった、とのこと。
そして彼もまた、アルスとの交流を持つ仮面ライダーであるが、仮面ライダーの力を利用しての海底地質研究などで論文を出していて超一流の海洋学者として名を馳せている。
彼が1日海に出られないだけで海底の研究が一年以上滞ると言われる程の有名人だ。
「天災が貴方に手を出すとは思いませんが、気をつけるだけはしてくださいよ?はい、それじゃ」
話が終わってスマホの電源を切ったアルスは、これで最後だととある喫茶店の扉を開いた。
カランカラン、と鈴が鳴り、喫茶店特有の芳醇な香りがアルスの鼻腔をくすぐる。
「店員さんはいませんよー……て、なんだ。アルス君か。いらっしゃい」
「どうも、芳野先生」
カウンター席に座る男性。
カタカタとリズム良くタイピングを続ける彼に人懐っこい笑みを浮かべて席に座る。
「いや、それにしても悪いね。アギト君の件」
「いえそんな。仮面ライダーの危険性や情報を集めるのが僕の仕事ですから、何時も情報提供してくれて、先生には感謝してます」
「そう言ってくれると助かるよ。あ、噂だけどライダーの話、聞いてく?」
「勿論」
喫茶店花鶏の常連、小説家高倉芳野はアルスの情報提供者としてのお得意様だ。
小説を書くついでとしてミラーモンスターの目撃情報や新しい仮面ライダー、まだ存在を知られていない仮面ライダーらしい噂を集めてくれている。
色々な話から彼が纏めた噂を元にアルスが直接現場に赴き、支倉紫穂や亀田海洋といった変身者達と交流を結ぶ。
そこから仮面ライダーが別の仮面ライダーと知り合っていく。
それがいつものパターンだ。
「今回は纏めた感じ鷲獅子を従えた騎士とゴリラだね。騎士の方はライダーで間違い無いけど……。そうか、ゴリラかぁ」
「ゴリラ……」
「「ゴリラ……」」
今日も管理者ライダーアルス・ウォルコットの戦いは続く。
管理者……イレギュラー……フロムマジック……最新作はVR……ドミナント厨w…ゲイヴンは勘弁…うっ、頭が……。
はい、というわけで今回は如月猫様から支倉紫穂ちゃん。
M@TSUさんから亀田海洋を出させて頂きました。
アルスの話し方が前話と違くねえか?って方、間違えてるわけじゃ無いですよ?ウンウン、ただこれがアルス君の外客用の口調ってだけなんですよ?