おやっさんはプロデューサー   作:デーモン赤ペンP@ジェームすP

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なるべくセリフ外の分量を少なくしようと格闘中

この調子だと、おやっさんがプロデューサーやるのは何時になるのやら。早く原作ぐらいまでは進めたいものです


第二話 ―情報の収集 現状の確認―

―都内某所の病院―

 

 

 

男は「鳴海 荘吉」と名乗った。ようやく患者の名前がわかったことで、白髪交じりの頭髪をオールバックにまとめたナイスミドルな医者、篠原は「スッキリした!」とでも言わんばかりのイイ笑顔でうなずいていた。隣の少女も「鳴海・・・」と小さくつぶやいていた。ピンクのアンダーリムのメガネをかけ、白衣を身にまとった茶髪のツインテールの少女、「池袋 晶葉」だ。その顔は逸らされている。本当に人見知りが激しいようだ。発表の場で見せた堂々とした姿が嘘みたいである

 

「鳴海 荘吉・・・ね。では鳴海さん、今から君が運ばれてきてから今に至るまでを、順を追って話をさせてもらうよ。質問は話し終わった後で・・・それでいいかね?」

 

「ええ、構いません」

 

 

 

篠原はベッドに座るその男性、鳴海 荘吉に質問を投げかけた。予想よりはるかに早く起きたとはいえ、ここ一週間ずっと寝続けていた素性の知れない男がやっと起きたのだ。聞きたいことは山ほどある。荘吉も探偵として過してきた以上、情報は欲しいと考えていたので、異を唱えなかった

 

 

 

「では説明しよう。まず君が発見されてからこの病院に運ばれ、先ほど起きるまで。ここまでで実に丸一週間たっている」

 

「・・・一週間、ですか」

 

「そして彼女、正確には彼女たちがあなたを発見し、ここに通報、運び込まれた」

 

「彼女が・・・ありがとうな」

 

「・・・っ。――――――ぅん」

 

 

 

荘吉は、自分が一週間も眠っていたことを知って、それほど寝ていたのか、と思う反面、良くそれだけの期間で起き上がれたものだ、と考えを巡らす。そして第一発見者が篠原の隣いる少女、池袋 晶葉だと聞いて、どうして彼女が自分の寝ている病室にいたのか合点がいった。彼女たちと言い換えたのは、見つけたのは池袋だが、助けを呼んで運び込んだからだろう、とあたりをつける

 

彼は素直に、危険な状態の自分を発見し、助けを呼んでくれた彼女に感謝の言葉を投げかける。照れているのだろう、息を詰まらせるような音が喉から聞こえたかと思うと、いつの間にかこちらに向いていた顔をまた横に逸らしてしまう。耳が少し赤くなっている。照れているようだ

 

 

 

「ええ。そしてケガについてなのだが。・・・君の背中には弾丸が撃ち込まれていた。それも銃弾が深くに入っていたところを見るに、かなりの威力があったか、近い距離で・・・撃たれた」

 

「確かに銃弾を撃ち込まれた。それも覚えている」

 

 

 

篠原の確認するような質問に壮吉も答えていく。そうなのだ。荘吉からすれば、背中を食い破るようなあの感覚、あの熱。それが起きてみればほとんどなく、一週間しかたってないと来た。篠原からすれば、下手したら助からず、例え助かったとしても高確率で障害者生活になるのでは、と危惧していただけに、双方ともこれはおかしいと考えているのだ。二人とも神妙な顔つきで向かい合い、言葉を交わす。互いの情報をすり合わせるために

 

 

 

「続けるよ。運び込まれてきた時の状況は、とても危険。その一言に尽きる上体だった。なにせ背中には奥深くまで銃弾が抉りこんでいて、更に失血もひどかった。君に合う血液が十分にあって、この病院が持ちうるスタッフの技術や設備をフルに活用したことによって、なんとか一命を取り留めた、という次第だ」

 

「・・・そこまで危ない状態にしては、今感じている背中の痛みが明らかにケガの大きさに見合っていないと思うのですが」

 

「・・・そこは、君自身のもつ回復力としか言えないねぇ」

 

「・・・回復力?」

 

 

 

篠原から状況を聞き、そうなってもおかしくはなかった、と他人事のように考察する壮吉。実際あのケガは、骨やら神経やらを食い破っているだろうと思っていただけに、ほとんど痛みを感じない現状に違和感しか感じていない。そんな荘吉に、何とも言えない表情を浮かべた篠原が言葉を発する

 

 

 

「一命を取り留めた後、この病室に運ばれてきたあなたは、病院にいるスタッフの誰もが見たことのないような回復を見せたんだよ。私たちの見立てでは、どう見ても全治3カ月は固い、下手したら後遺症も残るのではないか、と推測できる重症だった。しかしあなたは、私たちの予想をはるかに上回るスピードで回復しました。院内のスタッフで『彼はバケモノの類か何か』かと疑う人間がいたぐらいでだ」

 

「『バケモノ』・・・か」

 

 

 

「バケモノ」という言葉を、風都では聞き飽きるほど聞いて来た荘吉は苦笑する。彼も同じ存在に「変身」して、街の平和のためその「バケモノ」たちと戦ってきた。戦っているうちに守っている存在からそう言われたことも何回かある。だが改めて言われると、何とも言えない気持ちになるのを抱かずにはいられない。表情にこそ現れないものの、荘吉の心なかにはやりきれないものが、確かにあった

 

複雑な心境の荘吉をよそに、篠原が感慨深そうに独りごちる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でもまぁその回復力も、『若さ』の成せる無茶というものなのだろうね。まぁそれでもこれほどのスピードで回復したのは、世界を探しても君ぐらいなものかもしれないね」

 

「ちょっと待て」

 

 

 

ここ一週間における、荘吉のその回復力を思い出したのだろう、本当に珍しいものを見た、とでもいいたそうな表情と雰囲気をヒシヒシと感じる。しかし、篠原のセリフに無視できないワードが混じっていたことに、彼は気づく。まさかこの年でそんなことを言われるとは、そう考えながら彼は待ったをかける

 

 

 

「はい?どうかしましたか?」

 

「・・・今、あなたはなんと?どうやらダメージが抜けきっていないらしい、聞き取れなかったようなので」

 

「ふむ・・・『これほどのスピードで回復したのは、世界を探しても君ぐらいなものなのかもしれない』と言いはしたが」

 

 

 

ふざけているのか、真剣なのか荘吉が聞きたい部分からずれた部分を繰り返す篠原。この男、お笑いをやったら惜しいところまでは行けるかもしれない

 

 

 

「・・・その前」

 

「ということは・・・『その回復力も、『若さ』の成せる無茶というもの』。という部分だね。それがどうかしたかい?」

 

 

 

若いといったのだこの医者は。確かに依頼のときにヘマを打たないよう、体を鍛えてはいると荘吉は断言できる。周りの同年代と比べても肌のハリや筋肉の付き方はいいほうだし、食生活にも気を遣っている。しかしそれでも「若い」というには無理があるだろうに

 

 

 

「『若い』?俺はもうそろそろ『50』になるんですが」

 

「へぇ、50。目は確かに深みが見えるけれど・・・とてもそうは見えないけどねぇ。でも50。眠っている君を診た時は『20台後半』だと思っていたんだがねぇ」

 

「20代?それは流石に言い過ぎでは」

 

「・・・かもしれないね。僕もこう見えて50半ばを過ぎているし、そういう人は世の中に沢山いるだろう。まぁケガについては軽くそのぐらいにしよう。次は君の入院手続きに関してだね」

 

 

 

今まで30代後半ぐらいには見られたことはあっても、20台後半は流石になかった。お世辞にしか聞こえないセリフだ。その割に冗談を言っているようには見えない篠原に、荘吉は怪訝そうな顔をする

 

そんな流れに気付いてか否か、篠原は話題を変える。チラッと実年齢がこぼれたが、年上だったようだ。40代とあたりをつけていただけに、推理が外れたことで、自分もまだまだ、と戒める荘吉だった。だがその考えも次の話題が始まるとわかると、すぐに気持も思考切り替えた。さすがベテラン探偵だ

 

 

 

「保険証の類はあまり持ち歩かないようにしていたからな・・・今はどうなっていのでしょうか」

 

「今、隣にいる晶葉くんが全額払っているよ」

 

「・・・その子が?11歳でそれほどまでできるとは、恐れ入った」

 

「・・・・・・」

 

 

 

自分が寝ている間の入院費を、目の前の少女が払っていたと篠原から聞かされ、流石に驚きを隠せない荘吉

 

考えても見よう。事故して入院して一週間経った、その入院費を払っているのが目の前の小学生だと言われて、素直に「はいそうですか」と言える人間が何人いるだろうか、しかも身分証明証の類を何も持っていない場合の入院費はバカにならない。下手したら証明証提出時の3倍ほどに膨らむ時があるのだ。それを支払ってくれているという目の前の少女だというのだ。信じるほうがどうかしている。ドッキリ企画だと言われたほうがまだ現実味があるだろう

 

しかし荘吉は思い出す。自分が起きた時、彼女が「新しい発明」を考えていたことを。「依頼」という言葉を口にしていたことを。それを思い出した彼は、探偵として長年培ってきた頭脳で一瞬で考察、推理。彼女が相当な腕と信頼をもった開発者であると位置づけた。それと同時に、少女としてだけではなく、一人の人間としての評価を上げた。

 

しかし顔を直視できない時点でかなりマイナスだ。だから結果はプラスマイナスゼロ。いや、一人の人間としてはむしろまだマイナスではなかろうか。だが晶葉もまだ11歳。子供のこれからの成長に期待したい

 

当の本人は褒められ慣れていないのか、顔を逸らして俯かせ、耳を真っ赤に染めている。晶葉よ、あの発表の場での堂々とした君はどこへ行った

 

 

 

「そうだろう?なんせ彼女は幼稚園のころには、材料さえあれば自力でパソコンを作れたからね。年々作れるものも増えて、規模も大きくなって、今じゃその筋じゃあちょっとした有名人、だ」

 

「・・・わ、私のことは、いぃ・・・だろぅ?」

 

「ふっ、なるほど、なら動けるようになったら、医療費はこの子に払うことになるな」

 

 

 

隣の少女、晶葉を褒められてうれしいのだろう、篠原は彼女の遍歴の一部を得意そうに語りだす。その表情や声色には、親愛が強く感じられた。そんな彼が話す内容が恥ずかしいのか、目の前の荘吉に人見知りしているのか、はたまた両方か。話題を逸らしたいのであろう、絞り出すように声を発する。そんな彼女を見て、荘吉はおかしそうに笑う。探偵として、技術者と何度か会うことはあったが、こんなに初心な反応をする人間は初めて見る、とでも言いたげだ。そんな彼女を見て気分が落ち着く。知らぬ間に気を張っていたのだろう。落ち着いた心のまま、医療費の今後の確認をとる

 

 

「そういうことだね。でだ、君の家族か知り合いに連絡を取りたいのだが・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『君の住所は』?」

 

 

 

妙な間を開けて放たれた篠原の問いかけに疑問を感じるも、証明証の類もなければ住所もわからなかったのだろう、と深く考えずに、ここ十何年も住み続けた「街」の名前を彼は口にする

 

 

 

「住所なら――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                            ――――――『風都』だ」

 

 

 

 

 

 

―――それが自分にとって、衝撃の事実を知ることになる引き金とは、流石の荘吉も思いもしなかった

 

 

 

 

 

 

・Side荘吉・

 

 

「住所なら、『風都』だ」

 

「・・・・・・・・・・・・『風都』、ね」

 

「そうだ。そういえば俺の着ていたスーツに名刺が入っていたはずだ。そこに俺の事務所の電話番号が書かれている。電話すれば、弟子が出るかもしれない」

 

 

 

住所を聞かれたから答えたものの、街の名前をつぶやく篠原の表情は芳しくない。風都に対してあまりいいイメージを聞いていない人間なのだろう

 

風都が外からどう思われているかは少なからず知っている。表向きは風力を利用した発電法が積極的に導入された「エコの街」として通っちゃいるが、裏では「カイブツが出る街」「非合法組織や秘密結社が出入りする危険な場所」と噂されている。実際裏のウワサ、その両方が本当なんだからタチが悪い。どうしたものか

 

ふと、証明書はないものの、名刺がスーツに入っていたのを思い出した。そこに電話すれば話が早い。スーツを持ってきてもらい、そこに電話すれば、翔太郎がでてくれるだろう

 

 

 

「・・・・・・鳴海さん」

 

「どうした?」

 

「実は、君が担ぎ込まれてきた時に、晶葉君に一応事情を聞いていてね、胸ポケットに入っていた名刺を見つけたこともあり、その電話番号にしてあるんだよ」

 

「・・・そうですか。それで、向こうは何と?」

 

 

 

急に改まってどうしたのかと思ったら、すでに電話してくれていたのか。なら翔太郎は故智に来るだろうか、そう考えていたが、それにしては篠原はおろか、隣の池袋もどこか暗い表情をしているが・・・

 

 

 

「――――――繋がらなかったんだよ。その事務所に」

 

「・・・・・・・・・・・・何だと?」

 

「何度掛けても、繋がりません、としか聞こえてこない。どうもおかしいと思ってその『鳴海探偵事務所』を、パソコンなりなんなり使って調べてみたのだが、痕跡の一つも見つけることは出来なかった」

 

「ちょっと待ってくれ。つまり何か、事務所がなかったことにされているのか」

 

 

 

流石に俺も慌てた。そうだろう?ついこの前まで家同然に住んでいた事務所に、電話は繋がらないどころか、その存在が消えている、というのだ。依頼人の何人かはネットに書かれた事務所の評判を見てから来ていた人間がいたらしいから、調べて出てこないということもないはずだ

 

・・・まさかもう「ミュージアム」が動いたというのか?一週間。一週間眠っていたとは言え、事務所がばれるのも、ましてや情報が消されるのも早すぎる。まさか「ミュージアム」を支援しているどこかが動いて・・・

 

 

 

「・・・それは違うね」

 

「・・・違う、というと?」

 

 

 

どういういことだ?なぜ違うと言い切れる

 

 

 

「・・・そもそも鳴海さん、君は・・・どこでその背中に、銃弾を受けたんだい」

 

「それは・・・」

 

 

 

・・・まさかこの篠原という男、「ミュージアム」の関係者なのか?いや違う、俺の勘が告げている。この短時間ではあるものの、話して感じたのはシロだと。ならなんだ、この変な空気は。この妙な胸騒ぎは・・・

 

 

 

「答えてくれないか。これは・・・あなたのこれからに、大いに関係ある、大事な質問だと、僕は考えている」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

篠原の言葉と、なにより池袋の表情が、本心からこちらを心配してくれているのがわかる。理由はどうあれ、彼女は俺を助けてくれた。篠原は俺を治療してくれた。最悪誰にもしゃべらないことを約束してもらえばいい

 

ここは信じて、腹を割って、話す

 

 

 

「・・・・・・―――海岸沖のビルだ。おそらくもう爆破事故あたりで処理されているだろう」

 

「・・・・・・・・・・・・なるほどね。では鳴海さん。君はどこで、晶葉君たちに見つけられたと思う?」

 

「今助かっていることを考えるなら、―――海岸が妥当だろうな。外を見る限り、思ったより遠くに搬送されたようだが」

 

 

 

海岸付近から大分離れているであろう風景を窓から眺めながら、呟くように口から言葉を発する。風景を見ても、海らしきものは見えない。もう少し上の階に昇れば、海も見えるのだろうか。搬送はヘリでも使ったのだろう、海が見えない、見たことない地形から推測することしかできないため、後は想像するしかない

 

 

 

「・・・そうですか。なるほど・・・晶葉くんから話を聞いたときはにわかに信じられなかったが・・・冗談を言っているわけじゃない。ね・・・」

 

「冗談?何を言っている―――」

 

「―――鳴海さん、ハッキリと言いましょう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                  ――――――あなたはこの世界の人間ではありません」

 

 

 

 




いきなり異世界に放り込まれるのって、どんな気持ちなんだろう。仁奈ちゃんならどう表現するんだろう?

前回言ったように、出てくるのは大体Coのお姉さま方を中心にしていく予定です。まだCu1人、Co1人しか出てないけど

ちなみに今出てきている医者の篠原、晶葉と共にちょくちょく出てくる予定です



三年ぐらいCutしてちょくちょく思い出すスタイルにするか、ちゃんと三年描いていくか・・・今のうちに決めておかないと自分がやばくなるなコレ

スカル?もちろん出しますよ。大分後になると思いますけど







2/23  所々変更しました


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