蒼い月光と紅い皇炎   作:月詠 秋水

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どうも、月詠秋水です。

この前の土曜にインフルみたいなのになり、医者に行ったのですが陰性でした……(´・ω・`)

熱も38度以上あって、頭痛も酷かったし夜寝れませんでした。

それでも頭の中に、この作品の続きが湧き上がったので書いてみました。
今でも少し頭沸いてますが、見てくれると嬉しいです!


2頁 予測出来ない出来事

「さて……すっかり長話になってしまったが、一つ良いかな?」

 

冬風は、聞かれたことに多少戸惑っていた。何故ならば、いつもは彦道の決めた事に異を唱えずに従っているだけだったからだ。

 

「はい、何でしょう?」

 

「冬風君はこれから学園に手続きに行くのじゃろう?ということはやはり寮に入るのじゃな?」

 

「はい……というよりも、寮の方が宿よりも安く済みそうですし」

 

「それでは、制服とかも自分で購入するのか?」

 

「そうですね……秋水兄様からお金は頂いておりますし、どうにかなると思います」

 

実質、学費は秋水が払っている。その金が何処から出てくるのかは謎だけど……。それに制服代に食費も貰っている、冬風は改めて秋水の優しさに胸を打たれた。

 

「そうか……しかし今は2月じゃ、入学式のある4月までどうするつもりじゃ?」

 

そうか、そのことを考えていなかった……といっても、木刀も道着もあるしどこかの宿屋探してそこの庭で鍛錬する以外は無かった。

 

「特には……ただ、そこらの宿屋に泊まり宿の庭で鍛錬する日々になると思います。」

 

「なるほど……よし、ならここの城の一部屋貸してやろう!庭なら好きに使うが良い」

 

意外の言葉に、驚きの色を隠し切れずにいた。

 

「い、いえ…そこまでお世話になるわけには……」

 

若霧魔法学園に入学させてくれるだけでも、かなりお世話になっているというのに……。

 

これ以上彦道に甘えるわけにはいかないと、これ以上迷惑はかけたくないと思っていたからだ。

 

「子供がそんなこと気にするもんじゃない、儂が貸してやるといったのだから貸してやる。毎日3食付き、家事炊事洗濯等は全てメイドがやってくれる……どうじゃ?」

 

(やばい、その条件にはすごくクラっと来る……)

 

ここ暫くまともなガッツリとした食事を取っていないため、栄養不足状態で飢えていたところだ。

 

「そ……そうですか、もしご迷惑にならないというのなら……寮に入るまで暫く部屋をお借りしてもよろしいでしょうか?」

 

冬風は両親が居ない……というよりも、父は行方不明で母は他界してしまっている為、かなり遠慮しがちに育っていると秋水に言われたことある。

 

「あぁ、良いとも!」

 

彦道はフンッと鼻を鳴らしながら、胸をドンッと叩いた。すごく頼りになる。

 

「それじゃ、ご厄介になります」

 

冬風は深々と頭を下げた。

 

「がっはっは、そこまで畏まらんでも良い」

 

笑いながら冬風の頭をわしゃわしゃと撫でていた。懐かしく感じ、胸の奥が暖かくなるような感じがした。

 

こうして話が終わり、冬風はメイドに部屋まで案内されベッドに寝転んだ。

 

「ふぅ~……疲れた、それにこんな豪華な部屋に案内されるとは…」

 

照明はシャンデリア、他にも全て家具は揃っている。ベッドは当たり前のように広いダブル……これが王家の屋敷かと思いつつ、冬風は学園に行かなきゃと思いベッドから起き上がり、書類を持って部屋を出て、彦道に行き先を伝えてから城を後にした。城を出て、すこし遠回りに歩き街を散策しつつ学園を目指した。

 

「やっぱり、賑わっていていい街だな」

 

独り言のように言いながら歩いている内に、いつの間にか学園に着いていた。早速中に入り、いろんな人に聞きながら学園長室に入った。

 

そして、学園長室前で身なりを整え、優しく戸をノックした。

 

「失礼します」

 

中に入った途端、学園長の姿に驚いた。

 

「やぁ、冬風君。久し振りだね、4年ぶりと言ったところか」

 

ここの学園長はまさかの……彦道の執事の河嶋雄斗だった。よく昔に冬風を可愛がっていて、よく誂われた人でもある。見た目は髪が少し短く、男性の割にはすごく可憐と言っても良いくらいだ。

 

「お久しぶりです、雄斗さん。今年からお世話になります」

 

頭を下げると、雄斗は

 

「いいよ、そんなに堅苦しいのは苦手なんだ。先ほど国王様から電報が来てね、城に4月までお世話になるんだってね、これからもよろしく」

 

優しく微笑みながら手を差し伸べてくれた。冬風も微笑んでその手を握った。

 

こうして無事に手続きが終わり、生徒手帳を渡された。どうやらこれは通貨代わりにも成るらしく、自動販売機や食券販売機にかざすと自動で支払いしてくれるらしい。とても便利だ。構内は入学した時に改めて見させてもらうと言い、冬風は学園長室を後にした。外に出てお城に帰ろうとした最中、野次馬が集まっている場所を発見した。

 

「ん……?何か騒がしいな」

 

「冬風、見てみようよ」

 

興味津々で、すごくワクワクしている雅が言った。

 

「分かったよ、だけど面倒事は御免だからすぐに退散するよ」

 

「へーい」

 

全然人の話を聞いていない……そう思い、冬風は行列に近付いた。すると、一瞬自分の目を疑った。制服を着てないから、新入生だと思うのだが……燃えるような紅い眼、眩しいほどの白銀色の髪の少女が、ガタイの大きい男と口論を繰り広げていた。しかも男の方は数人の部下らしきものを引き連れて…耳を澄ませてると、喧騒が聞こえてきた。

 

「おい、人にガン垂れておいてその態度は何だ!」

 

「だから、アンタなんか眼中にないって何度も言ってるでしょ?放っておいて!」

 

「この女……言わせておけば!」

 

あ、やばい……この展開は殴り合いが始まるかも……でも女性に手をあげようとしてる場面を見逃したなんて、兄様に絶対怒られる。面倒くさいけど、助けるか。

 

冬風はあの少女の前に狙いを済ませ、魔力転移をした。魔力転移は、予め決めておいた地点に魔力を消費して瞬間移動する技だ。冬風の場合は、魔力属性が水…しかも高位なため多くの霧が冬風の体を包み込み、消えたように錯覚させる事もできる。

 

「くたばりやがれ!!」

 

「っ…!」

 

大男が拳を振り上げ、少女目掛けて振り下ろした。少女は眼を瞑り明らかにビビっている様子だった。そしてあと少しで少女に届きそうになった瞬間……

 

「はいはい、喧嘩はここで終わり。大体男性が女性に手を挙げるなんて、男性失格だよ?」

 

冬風が転移で間に割って入り、拳を片手で受け止めた。もちろん魔力を手に集めて防御力を高めていた為、痛くなかった。

 

「……!」

 

少女はびっくりしたと同時に腰を抜かした。大男は気に食わない口調で。

 

「おい……お前は何者だ?しかも人の喧嘩に割って入ってきやがって……どうやってここまで来たか知らねぇが、その女の方を持つならお前が代わりにボコられろ!」

 

大男は勢い良く冬風に蹴りを繰り出した。少女は逃げて!と叫ばんばかりに僕に目で訴える。

 

やれやれ……

 

「遅いっつーの!」

 

冬風は拳を片手で受け止め、身を翻しながら大男の腹部に蹴りを食らわせた。蹴られた大男は地面に膝をつき、苦しそうに唸りながら冬風に訴えた。

 

「このっ……野郎!」

 

「ふんっ、君程度なら何十人束になってかかってきても結果わ変わらない。僕に傷一つつけることすら出来ないよ?」

 

冬風は相手の魔力武装や結界、魔法の中の魔力を触れた瞬間に全て奪い取り冬の枝のように脆くして砕くことが出来る。つまり、傷どころかかすり傷さえ与えることは不可能。

 

「生意気言いやがって……この程度で終わったと思うなよ?俺とこの十数人を相手に何処まで強がれるかな?」

 

大男はニヤリと笑った。

 

全く、体は大きいのに器はすごく小さい。

 

「はぁ……雅、少し力借りるよ」

 

そう呟きながら、腰を抜かした白銀髪の女性の前に立つ。

 

「…水神結界」

 

指を鳴らしながら呟くと、薄青色の膜が少女を包む。

 

「こ、これは……何?!」

 

少女がびっくりしたように言う。

 

「その中でじっとしてて、その結界があるかぎり外からの攻撃は一切君に届くことはないから」

 

言い放ちながら振り返る。皆魔力武装を持ちながらゲヒヒッと笑っている。自然と冬風も薄っすら笑いながら指でチョイチョイっとカモンのサインを出した。すると、一斉に武器で切りかかってきた。野次馬はどよめき、悲鳴さえ上げるものも居た。しかし、そんなの気にもとめずに次々と素手でなぎ倒していった。一人一人の魔力武装を破壊しつつ、確実に沈めていった。沈めると言っても、一時的な気絶のようなもの。

 

そして、全員倒し終わる頃には大男もだいぶ回復し、冬風も少し体が温まってきていた。

 

「やるじゃねぇか、大口叩くだけの実力は持ってるようだな。だが、俺が相手な以上お前は終わりだ」

 

大男が魔力武装を開放した。すると、大男は両腕にごついアーマーを、装備していた。

 

「……装備型か」

 

「ご名答、いくぜ……!」

 

笑いながら冬風に殴りかかってきた。それでも、避けようとする動作はなかった。そして大男の拳が冬風の腹部に当たった瞬間、大男の装備していた魔力武装は全て粉々に消え去った。

 

「「はっ……?」」

 

皆信じられないものを見たかのように、冬風を見てくる。後ろの腰が砕けた少女もまた然り。

 

「その程度……?」

 

まるで期待外れかの様な表情を浮かべ、ため息をつく。

 

「ちょ……な、何が……」

 

慌てふためく大男、冬風が沈めた奴らの中でも眼が覚めた奴が居たらしく、そいつらも唖然としていた。

 

「じゃあ……おとなしく寝てて」

 

冬風がにっこり微笑み、大男の懐に一瞬で潜り込み首に手を置いた。その瞬間、大男は意識を失ったかのように倒れた。

 

説明すると、人は魔力を回復する方法は幾つかある。眠るか、他人から分け与えてもらうか。魔力を使い果たせば、回復するのにそれ相応の時間がかかる。起きてても回復はするが、睡眠時より2倍以上の時間がかかる。僕は魔力を移す方を使い、大男の魔力を全回復させてやると同時に溢れさせた。その溢れた分を睡眠薬に変換し、大男の全身に巡らせただけ。

 

冬風は水神結界を解き、少女にそっと言い放つ。

 

「大丈夫か?こいつらの目が覚める前に早く帰ったほうが良いよ」

 

冬風はコートを翻し、去った。少女はその場でポカンっと呆けつつも立ち上がった。冬風は校門を出て、魔力転移で城の前まで帰り、彦道に報告し、自室に戻った。

 

「いやぁ、楽しかったわね」

 

喜々として笑っている雅、冬風は少し疲弊していた。そしてそっと呟く……。

 

「にしても、あの少女から何か懐かしい魔力を感じたのは気のせいなのかな……?」

 

ずっと疑問に思っていた。雅はきっと偶然だよと言うけれど、そんな感じじゃないと思う。冬風は悩みを吹っ切るために、道着に着替えた。

 

「どこいくの?」

 

「中庭、剣術の修行は一日怠っただけで感覚を忘れちゃうからね」

 

冬風は道着のまま中庭に出た、芝生が生い茂り、適度に木が立っておりベンチなどがある。その中の中庭の端っこの方で木刀を素振りしていた。冬風の剣術の鍛錬のメニューは至ってシンプルだ。素振りを1500回した後に雅と木刀で稽古。雅は剣術がすごく上手く、雅のレベルに付いてこられるまで何千回負けたことやら……こうして夕方まで稽古をしていると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「あ……あなた、なぜここに!」

 

今日の昼出会った白銀髪の少女が、冬風に指さしながら中庭の出入り口で固まっている。気が付いた冬風は修行の手を止め、少女に歩み寄った。少女も冬風に歩み寄った。

 

「君は…学校でびびってた子だ、なんでここに?」

 

「それはこっちのセリフよ!それにあれはビビってないわよ!」

 

「いや、完全にビビッてた」

 

「そうね、ビビッてたわ」

 

二人同時に頷くと、少女は悔しそうにしながら冬風に言い放ってきた。

 

「まぁ、あの時のことは例を言っておきますけど、それとこれは別問題!なぜここにいるか説明して!」

 

「いや、ただ雅と鍛錬するためにここにいるのだが…?」

 

不思議そうに首を傾げた。

 

「大体、ここのお城の人たちは僕が居ることはすでに知っているはずだ。それを知らないってことは……どちら様?」

 

「なっ……?!嘘をつきなさい、そんなことあるわけ…」

 

言いかけた瞬間、一人メイドが通りかけた。メイドは笑いながら

 

「あら、冬風様。ずっとここで鍛錬されてたんですか?」

 

と聞いてきた為、冬風は頷いた。すると、メイドは

 

「あらら、お嬢様もお帰りになってたのですね。それでは、お茶の支度をしてまいります」

 

と頭を軽く下げ、どこかに言ってしまった。

 

え、今あのメイドさん…この少女のことお嬢様って……まさか…

 

「ねぇ、まさか君……夢依…さん?」

 

恐る恐る聞いてみた。すると少女は胸を張っていった。

 

「そうよ、ユスティア第一皇女の渚夢依よ!」

 

う、うわぁ……マジか。

 

「えっと……僕は今年から若霧魔法学園に入学する月詠 冬風だ。4月まで伯父様のご厚意でこの城の一部屋をお借りしている」

 

自己紹介を済ますと、ますます信じられないという顔で見てきた。

 

「伯父様…?あなたの伯父様って誰よ!どうせろくな人じゃ…」

 

「んー……この国の国王様をしている人かな」

 

「え……」

 

「いや、だから…」

 

夢依は思考回路が停止し、固まっている。しばらくした後戻り、何かを思い出したように冬風に指差して言った。

 

「まさか、あなたがお祖父様の言っていた頼りがいのある同年齢の子?!」

 

頼りがいはあるかどうかはともかく……

 

「まぁ、そういうことになる」

 

そういうと、夢依は唖然とした。

 

「ま、まぁ学校にいる間だから……何卒よろしく頼むよ」

 

冬風は頭を下げ、夢依に会釈程度の挨拶した。暫く返事が帰ってこないから少し上げてみると、夢依さんは顔を赤くしながらモジモジしていた。

 

「あの……?」

 

訪ねてみると、すごく慌てた様子。

 

「な、ななな……なんでもないわよ!」

 

そう言ってそっぽ向いてしまった。何か悪いこと言った?と思いつつも首を傾げていると、先ほどのメイドがやってきた。

 

「冬風様、夢依様。ご主人様が及びです、皇玉の間へお越しください」

 

とだけ言ってメイドは姿を消した。冬風と夢依はお互い無口で皇玉の間に向かった。冬風は途中で着替えたため、少し遅れてしまったが。




3頁に続きます。

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