蒼い月光と紅い皇炎   作:月詠 秋水

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今回は、ちょっと中途半端な所で区切ってしまったかな?と思っています。

ですが、次回も中途半端になりそうなんですよね……(苦笑)




3頁 新たな巣

雅は神界へと戻っていき、3人で教室に戻っていった。教室に入ると、皆の視線が少し柔らかくなった気がしていた。気のせいかもしれないが、とにかく胸を張って頑張ろうと思った。

 

……誰も認めてくれなくったっていい、僕は僕の決意を貫くだけだ。

 

そう冬風は、心の中で別の決意を固めた。

 

 

こうして今日の学校でのイベントは終わった。なんか今日はドッと疲れた感じがしたなと思いながらも、冬風は鞄に荷物を詰め込み夢依の方に向かった。

 

「ようやく終わったね……確か今日から寮生活だっけ?男性寮と女子寮は反対側だから、流石に女子寮までは行けないけど校門近くまでなら送るよ」

 

「そうね、何なら冬風も女子寮に行く?」

 

「ごめん……その冗談は冗談に聞こえないからやめて欲しい」

 

「むぅ……」

 

冬風が苦笑いして即答すると、少し不機嫌そうな顔をした。

 

「冬風ならバレないと思ったのに……」

 

なんて怖い呟きながらそんな感じなことを話し合っていると……淳が僕の側に寄ってきた。

 

「別にいいだろ、女子寮の中まで送る必要はない。玄関口まで送ってやれば」

 

「その案があったわ!」

 

う~ん……と冬風は首をひねらせた。確かに玄関口までは良いのかもしれないと微かに思った。

 

(いや待て……でもそこまで行った場合、夢依に強引に中まで連れて行かれそうなんだよなぁ。そうなった場合僕はこの学園で変態扱いされてしまう、それだけは阻止せねば……)

 

心の中で考えていたが、他に策はないと思い条件付きで了解した。

 

「分かった、送るよ……ただし”玄関口まで”だからね?」

 

玄関口までをを強調すると、夢依が少し顔をしかめた……恐らく冬風の推測は当たっていたのだと思う。正直こう言えてホッとしていた。淳も苦笑いしてたのを見ると、察してくれたようだ。

 

 

「とにかく行こう」

 

「そうね」

 

「あぁ」

 

こうして3人で教室を後にした。冬風達は外に出て、校門のところまで行った。そこで淳が待っていてくれるらしく、冬風は夢依と女子寮の所まで歩を進めた。

 

歩いてる最中後ろの髪に違和感を感じた。気になって触ってみると……いつの間にか髪を留める紐が無くなっており、髪がふわふわと風に揺れているのを感じた。

 

別に髪を留めなくても良いんだけど……なんか落ち着かないな。

 

周りを見回してみると、夢依が

 

(ふふん)

 

と鼻を鳴らしながら、冬風の髪留めの紐を握っていた。

 

そうか、犯人はこの人か。

 

「ちょっ……なんでここで取るのさ、返してよ」

 

「えぇ~……どうしようかな~」

 

少し困ったような表情を浮かべながら言うと、楽しそうな顔をしながら焦らしてくる。

 

完全に遊ばれている……。

 

「それが無いと本当に困るんだよ……いざという時に動きづらいし、それに周りの視線が……」

 

辺りをぐるっと見回した。すると……大勢の女子が冬風と夢依を囲っていることに気付く。

 

「はぁ……良かったね夢依、人気者で」

 

多分本人も気づいていると思うが、あえてこう言った。本当なら夢依を守るための人が当の本人より目立ってはいけないと思ったからだ。周りの声を聞いていると、明らかに冬風のことを言ってるように聞こえた。

 

「皇女様と一緒にいらっしゃる人……男の人の格好をしているけど女性なのかしら?」

 

「女性にしては胸の膨らみがないわね……」

 

「サラシでも巻いているのでは?」

 

「「あぁ~」」

 

……ここにいる人たちの視線が痛い。だって皆僕の事を

 

(男装女子)

 

という視線で見てくるんだもん。夢依の方を見てみると、楽しそうに微笑んでいた。

 

(いやいや、普通は夢依が注目されるべき人なんじゃないかな~……)

 

そんなことを思っていると、一人の女声が冬風に話しかけてきた。

 

「あ、あの……貴方は……男装している女性なのですか?」

 

「いえ、男性ですよ。夢依を寮の玄関まで送り届けてる最中です」

 

微笑んで即答した。その微笑みの裏には困惑や戸惑いなどの感情も含みながら……そういうと、全員が驚いた。

 

「「「え、えぇぇぇ!!??」」」

 

「皆驚き過ぎだよ……」

 

本当にどうしてこうなったし……。

 

「ねぇ、僕ってそんなに女性に見えるの?」

 

さっき訪ねてきた女性に、今度は訪ね返した。夢依だけの評価じゃ少し不安が残っていた。

 

「あ……はい、それは……その、ものすごく……美しいと……思います」

 

そう言われた瞬間、僕の口からはため息が溢れていた。訪ねた女性に礼を言い、ゆっくりと眼を閉じた。腕を前に伸ばし掌を上に向けて顕現を口にする。

 

「……エーテルオブジェクト作成、材質は水、形を形成。形をそのままにし材質を水から糸に変更……生成」

 

夢依や周りの人達は不思議な顔をしながら冬風の方に視線を向けた。すると掌に水が集まってきているのが分かる。その水が紐状に形成され、魔力を加えると水が糸に変わった。その瞬間、驚きの声で包まれた。

 

「何あれ……錬金術?」

 

「それとも魔力で作ってるのでしょうか……」

 

確かに疑問に思う人が多いかも知れない。冬風は生成した紐を咥え、両手で後ろの髪を集めた。片手で集めた髪を持ち、もう片方の手で咥えた紐を取りそれを髪に巻きつけ縛った。

 

「これは多少魔力が多い人で、尚且つ質量のことを分かっているなら誰でも出来るよ。自分の魔力で形を形成し、それを魔力で違う素材に変える。ちょっと消費が激しいけど、問題ないはずだよ」

 

縛りながら言うと、皆納得したような、出来ないような顔で見てきた。

 

まぁ……見たからってそう簡単に出来るようなものじゃないから少し練習は必要だと思うけどね……。

 

内心そう思っているが、それを隠し優しく解説してあげた。

 

「この技術に必要なのは……錬金術の仕組みとちょっとの知識と、自分の属性の把握……あとは想像力だ。頭の中でイメージ出来ないと、形すら作れないからね」

 

「そ、そうなんですか……」

 

「難しそうですわ」

 

えぇ~……簡単に説明したつもりなのだが、それすら理解してもらえないのか……。

 

「と、とにかくこのままじゃ日も暮れちゃうし……歩きながら説明するよ」

 

こうして冬風は歩きながら説明するはめになっていた。

 

夢依はと言うと……。

 

「………」

 

何を作ろうとしてるのか見当も付かないが、真剣な表情で解説を聞いていた。後が怖いと内心思った冬風……。

 

話しながら歩いていると、時間が過ぎるのが早く感じる。あっという間に女子寮の前まで来てしまった。

 

道中で説明できることはしたし、これでようやく開放される……と思った矢先。

 

「……っと、まぁこんな感じだよ。おっと……もう女子寮に着いたから、僕はそろそろこの辺で男子寮に戻らせてもらうよ……?」

 

冬風が校門に戻ろうとすると、夢依が服の裾を引っ張ってきた。

 

「ちょ……夢依?僕早く戻らないと……淳待たせているから」

 

困惑しつつ言った……のだが、夢依は離してくれない。嫌な予感がする……。

 

「ねぇ冬風……折角ここまで来たんだからさ、私の部屋の片付け手伝って欲しい

な……?」

 

甘えるような声で、上目遣いでしがみついてきた。

 

そんな顔をされると非常に断り辛いのだが……今回ばかりはそうは行かない。

 

「だ、駄目だよ。男性の僕が女子寮に足を踏み入れたら、色々まずい事に…」

 

「大丈夫、皆冬風の事女性と見てるから。言わなきゃばれないわよ」

 

「そういう問題じゃないの、体つきとか法的にというか……そんなことしたら、伯父様に怒られてしまうよ」

 

実質そのとおりだと思う。まだ付き合ってるわけでもないのに、女性の部屋に無闇に足を踏み入れたりなんかしたら……世間的にも死んでしまうし、恐らく彦道に怒られてしまう……と咄嗟に言ったが、これは嘘だ。多分あの方はそういうことは気にしない人だからだ。

 

「そっか……お祖父様に怒られるのはちょっとやだな」

 

少し俯きながら呟く夢依。冬風はその頭を優しく撫で、提案を出した。

 

「もし手伝いが必要なら、雅が良ければ雅に行ってもらうことにするよ。多分暇してると思うし」

 

そういった瞬間、背後から雅の声が聞こえた。

 

「夢依の部屋の手伝い?別にいいわよ……?」

 

「そうか、じゃあお願いするよ」

 

「任せなさい」

 

ドンッと胸を叩き夢依の所に行った。夢依は渋々了解してくれて、冬風はようやく自由になった。回りにいた女性たちは、夢依と一緒に中に入っていった。

 

「さて、早く戻らなきゃ……」

 

呟きながら早足で校門の方へ戻った。戻ると、淳がいかにも待ちくたびれたという表情で話しかけてきた。

 

「遅いぞ……かなり話が盛り上がっていたと見えるが?」

 

「あぁ……うん、しかも多くの女性に囲まれて、しかも玄関先で夢依に部屋の整理手伝えって言われて……結局雅に任せたけどね。雅なら女性だから、入っても何の問題もないと思うし。」

 

「お、おう……」

 

話を聞いてる淳も、思わず苦笑いしていた。恐らく容易に想像できたのであろう。

 

「じゃあ、僕達も寮に戻りますか!」

 

「だな」

 

冬風達は2人で校門前を後にした。道中さっきの話を細かく説明してると、話の最中に数人の男性が声をかけてきた。

 

「おや、今日は彼女連れっすか?羨ましいですね~」

 

「でも、男の服装来ているみたいっすけど……まさか、淳さんそっちの趣味が……?」

 

よく見ると、冬風が夢依と初めてあった時に倒した人たちだった。

 

「いえ、僕は女性ではなく男性ですよ」

 

そういうと、さっきの女子達と同じ反応をしていた。

 

「「「えぇぇぇぇ?!まじか~!!」」」

 

いい加減この反応も見飽きてきたと、内心思っていた。冬風は思わず苦笑いに、淳も苦笑いだった。

 

「いいから先に戻ってろお前ら。こいつのことは後でこいつ自身に聞け」

 

「え……」

 

今度は冬風が驚いた。なんで本人に振るのか……解せなかった。

 

(確かに自分のことは自分しか知らないって言うけど、大まかなことは淳が説明しても平気なはずでしょ……?)

 

と思いつつも、頷くことにした。淳の手下らしき人たちはそれで納得すると、早々に寮へ戻っていった。2人も戻り玄関に入りそのまま行くと、掲示板と寮内図が貼ってあった。大浴場があるのを見る限りじゃ、個々の部屋には風呂はついてないようだ。部屋の数は全部で(30号室)まであるらしい。

 

さらにこの寮は旅館と同じ仕組で、部屋への扉を開けると靴を脱ぐスペースがあるらしい。靴を脱いで少し進むと、右手にトイレがあるらしい。まっすぐ進むと部屋だ。スペースは16畳半らしく結構広いと思う。寮の1Fには食堂があり食 事はそこでとるらしい。

 

2人は一通り寮内図に目を通し、玄関の端にある(管理人の窓口)と書いてある小さな出窓をノックした。すると中から若い女性の人が出てきた

「は~い……もしかして寮に入る人?なら……はい、これ鍵」

 

その女性は笑いながら鍵を渡してきた。

 

冬風の部屋は(24号室)、淳の番号は(25号室)

 

だった。つまり隣の部屋だ。ここの寮は来た人順らしく、これで25号まで埋まったことになる。

 

「私は管理人の秋疾真珠よ、よろしくね」

 

元気に自己紹介してきた。2人も自己紹介を済ませ、各部屋へ向かった。




次回は、出来るだけ半端にならないように頑張りたいと思います。

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