Accelerated Red Invader   作:4E/あかいひと

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積極的に原作に関わらせるつもりはないんですが、レッドである以上避けては通れないお方はいるということで。

ちなみに全くの余談ですが、なんか次のパックで『禁断の轟速 レッドゾーンX』なんていう害悪カードが出るらしいですねぇ…………(いいぞもっとやれ)


ギア4-其の色は災いを呼び

「レッドゾーンでバイクが分解すんのは、なんか理由があるんとちゃうか?」

 

特訓と称した、一鉄先輩との対戦で先輩がそう言った。

 

一鉄先輩との初邂逅以降、最低限の暗黙の了解とバーストリンカーとしての現実での動き方を教えてもらいながら、俺の戦闘能力向上に付き合ってもらっていた。

結果、確かに学校の外での勝率は格段に上がり、バーストポイント…………BPももう少しで300を越えるまできた。

 

しかし、それとは別に感じる劣等感。幾らレベル差が3もあろうと、一鉄先輩のデュエルアバター:ヴァーミリオン・デストロイヤーはあまりにも強く、どんな作戦を建てても、あの巨砲から放たれる暴虐に吹き飛ばされてきた。

 

先輩曰く、『鍛えられた』とのことだが…………まあ十中八九、リュー兄だろうなぁ。

 

それはともかく、先輩の台詞だ。

 

レッドゾーンで分解することに、理由があるだって?

 

「正直な、その《レッド》って赤バイク。あまりにもデメリットが強過ぎんで」

「そうですか?」

「そや。教えてもらったスペックから考えても、マゾいとしか言いようがないわ。よーそれでそこそこの勝率叩き出せるよなぁそーやん」

 

あ、今褒められた。ちょっと照れる。

 

「ちなみにデメリットが強過ぎるって断言できるポイントな? 明らか自滅し易いようにできとーやろソレ」

「ええ、そうですね」

 

減速したら自爆、壊れたら自爆、レッドゾーンを超えたら次回、撒き散らす炎で本体にもダメージ…………確かにあり得ないほど死に易いよな。

 

「確かに、罠すら物ともせーへん走破能力と、衝突時なんかの物理ダメージ、撒き散らす炎による特殊ダメージと、中々な攻撃性能やけど、それにしたってデメリットと釣り合わへんし、本体が弱過ぎる。まだなんか隠されてると思った方が自然やな」

 

しかし、それで何故レッドゾーンを越えると分解することに意味があると言えるのだろうか?

 

「そらアレや。分解して自滅する時だけは、バイクが爆発せーへんもん」

「…………ソレ、本当ですか?」

 

力強く頷かれて、俺は頭を捻る。

 

確かに、ソレは妙だ。分解=壊れる、即ち爆発となるはずなのに、である。

 

「ソレに、赤系アバターやのに近接バリバリやのも気になるし」

「確かに、先輩や外の赤系アバターは、大体が遠距離でしたね」

 

そう考えると、確かに《レッド》にはまだまだ何か隠されている気がする。

 

「とは言え今の状態でも戦えることは他ならんそーやんが証明しとる。やからもっと訓練を積まなアカンで?」

「ええ、もちろんです」

 

とりあえず、目下の目標は目の前の胡散臭い大砲使いを轢き潰すことだ。この《レッド》ならば、それができると俺は信じている。

 

「…………頼むぜ、相棒」

 

そう言うと…………一瞬、《レッド》が誇らしげに光った気がした。

 

「ほな、今日もいくで! 準備始めい!」

「言われなくとも!!」

 

いつもの様に相棒に跨り、急加速。今日のステージは風化し易いタイプのステージで、いつもの校舎が廃墟となっていた。

 

100km/hを維持しながら校舎に入り、荒々しく走りながら爆走。

 

今回の作戦は、建物を思いっきり破壊することで轟音を立て、相棒の音を軽減し、奇襲し易くするという、無謀なモノであった。

 

初の試み故に、最初から上手くいくとは思っていないが、この作戦がどこまで通じるかによっては普段の対戦で使っても良いかな? と思うわけだ。

 

ガリガリと走り回り、炎を撒き散らしながら破壊し尽くしたところで、校庭の裏方向にある正面玄関から出る。

 

風化し易いという後押しもあったのだろうが、爆走する中で重要な柱を壊すことができたのだろう、ゴゴゴゴという音を立てながら学校が揺れていた。

 

…………想定外だが、砂埃も立っている。もしかしたら先輩の視界も遮れて、射撃に師匠が出るかも?

 

被害が来ない様に少し離れながら、校舎が陥ちるまで待った方がいい───────

 

『あまいでーそーやん!!』

 

大声と共に、校舎を貫いて現れる見慣れた砲弾。玉自体は余波の影響のない位置を飛んだので問題なかったが、そのせいで降り注いできた瓦礫に関しては話は別だ。

 

「う、うぉぉぉおおおおっ!!!!?」

 

アクセル全開、もう止まれないことを承知で隕石の如く降り注ぐ瓦礫を避けつつ回りこみ、校庭へと戻って行く。

その際派手に校舎が陥ちるのだが、死と隣り合わせとなった現状ではあまり気にしてられなかった。

 

「ちくしょォォォオオオッ!!! 結局コレかよォォォォォオオオオオオッッッ!!!!」

 

飛んでくる砲弾を回避しながらレッドゾーンに突入、相棒がピシピシと音を立て始める。

 

「せめて相討ちに持って行ってやらァァァアアアアアッッッ!!!!」

 

叫びながら、何も恐くないと己を騙しながら、突っ込む。

 

その時、分解を始めた《レッド》の一部が、本体のアバターの周りに漂い始めたのだ。

 

「ッッッ!!!?」

 

いつもと違うその現象に、驚愕していると、

 

「余所見厳禁やで!!!」

 

容赦なく、先輩にぶち抜かれた。

 

…………せめて、今のは見逃して欲しかったすよ。

 

 

◇◇◇

 

 

『暴走赤バイク』と言う、レベル1にして二つ名をつけられたレッド・インベーダー。これは実力云々よりも、その色と挙動から付けられたものと言える…………が、それは置いておいて。

 

6大レギオンの一つ、赤の王『スカーレット・レイン』率いる『プロミネンス』は、この暴走赤バイクの存在に頭を痛めていた。

 

何せこの『プロミネンス』を元々率いていた王は『レッド・ライダー』。文字通り純色の赤だったのだ。

 

レッド・ライダーが全損したことで大いに荒れた加速世界、その中で最も赤く、レベル9になったスカーレット・レインが2代目となることで完全な瓦解を防ぐことができたが、新たなる『レッド』が登場したことで、それが揺らぎかねなくなっていた。

 

無論、今現在『プロミネンス』に所属しているバーストリンカーは、今の王に忠誠を誓っている者ばかり。その点に関しては問題はない。

 

が、外野に目を向ければどうだろうか?

 

現状では、レッド・インベーダーはレベル1だ。これで巨大レギオンを任せようだなんてことは起こりえない。

 

…………が、これが後々レベルを上げ、それこそレベル9まで届いてしまえばどうだろうか?

 

今すぐどうこうと言うことはないだろうが、他者に付け入る隙ができてしまうことは事実。特に黄の王辺りは嬉々として突っ込んで来るだろうことは想像に難くない。

 

…………そしてなんの偶然か、暴走赤バイクの名が、『プロミネンス』の領土である練馬区にて現れたのである。

 

コレはチャンスと、『プロミネンス』の面々が彼に乱入するのは、極めて自然な流れと言えた──────

 

 

◇◇◇

 

 

一鉄先輩に、

 

「『パティスリー・ラ・プラージュ』ってトコのケーキが美味しいらしいで?」

 

と言われて練馬区やってきたら、急に乱入された件について。

 

加速世界での現状を、敢えて聞かないことにしていたが、今それを後悔している。

 

「……………………」

「……………………」

「……………………」

「……………………」

 

観客が、押し黙ってる上に、赤系アバターが多い。もしかして、練馬区は『プロミネンス』の領土か?

 

それならばこの状況にも理解できる。一応その辺りは無理矢理一鉄先輩に聞かされたから。

 

曰く、『プロミネンス』は赤の王『スカーレット・レイン』率いるレギオン。

曰く、先代の赤の王は『レッド・ライダー』。

 

この時点で、因縁付けられる心当たりがあり過ぎて冷や汗ものだ。

 

降参、できないだろうか? すぐにでもこの場から逃げ出したい。

 

「よぉ、初めましてだな『暴走赤バイク』」

 

そんなことを考えてると、後ろから声が聞こえてきた。小学生くらいの女の子の声だが、其処に含まれる圧が尋常でない。

 

振り返らないワケにはいかないので、油の切れたブリキロボットの様に、ギギギギとゆっくり振り向くと。

 

「アンタとは、1度じっくりと話したかったんだ。じっくりと、な」

 

ツインテの、真っ赤な女の子アバター。前情報が無ければかわい〜ぐらいで済んでいたはずの感想は、とても恐いという物騒なモノに変貌していた。

 

「あ、ああ、ああああ、赤の王…………スカーレット・レイン…………!!!!?」

 

今このとき程、自分の色を恨んだことはない。

 

 




ちなみに現在のレッド・インベーダーのビジュアルは、『轟速 ザ・レッド』というデュエマのクリーチャーと同じであります。興味がある方は画像検索で調べてみましょう。一緒に『轟く侵略 レッドゾーン』も見れるかも。

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